矯正前に親知らずは抜きましょう!:矯正家がつくる医原性疾患に要注意
「イントロダクション」
本日,遠方からtwitterをご覧になりう蝕治療に患者さんが来院されました。 この患者さんは矯正の動的治療期間中でブラケットやワイヤーが口腔内に装着されていました。
主訴は犬歯のエナメル-象牙境部(Cej:歯冠と歯根の境界部)に出来たう蝕を治療して欲しいとのことでした。
う蝕はCej部に沿って以前帯状にコンポジットレジンが充填されていました。その一部が充填不十分で穴が開いていたところが気になるので充填して欲しいとのことでした。
矯正のブラケットやワイヤー等が装着されたままでは歯頸部のう蝕治療は制約がありますが、何とか充填は完了しました。動的期間中に問題が起きない程度の充填は出来ました。
まず今日は治療前にレントゲン撮影(パノラマ画像)を撮影しました。
レントゲン画像を観れば一見して解ることは、智歯が4本抜歯されないで放置されていることです。
そもそも特別な意図で智歯を利用する場合以外はこうした智歯は動的治療前に抜歯するのが常識だろうと思います。
今回のように前方の歯との間にう蝕を作る可能性が有ることと抜歯しないで放置すると後方から前方の歯を押すことで動的期間が終わって矯正が完了された歯列を乱してしまう可能性があります。このように矯正治療では智歯の抜歯は必須の合目的な治療行為になるのは歯科界では極く初歩的基本事項です。
しかし、このような歯科常識も抜歯して治療開始が後にずれて患者の気が変わって治療を止めると言い始めたら治療費がもらえなくなるので、必要な抜歯をしていない不完全な状態でも一日も早く動的治療を始めてしまおうとする思惑が如実に表れています。こうして矯正治療も他の歯科治療同様に歯科医の都合が優先する傾向が強い治療だと解ります。
この画像から想像すると、既にう蝕病巣は歯髄腔にまで及んでいる可能性も想像されます。
概ね歯髄は失活している可能性が大ですが、画像上では根尖病巣は確認されません。
* この患者さんには、矯正担当医にレントゲン像を観てもらうためにCDにこのレントゲン画像を焼いてお土産に持たせてお帰り頂いた。
こんなトンデモナイ治療でも私から担当医に直接助言するのは一種の内政干渉ですから患者さんご本人にまともな治療をする様に担当医にクレームを言ってもらうことにしました。
矯正治療の有無にかかわらず特に最後臼歯の智歯は前方の第二大臼歯と遠心部で接して歯垢の堆積が助長され清掃困難なことから第二大臼歯の遠心面(や智歯の歯冠部)にう蝕が形成されます。
第二大臼歯遠心面のう蝕は器具操作の関係で充分な治療が困難ですから、このようなう蝕を作らないように早期に智歯を抜歯することが肝要です。
こういったタイプのう蝕は最近、最も頻繁に見受けられるう蝕形態の一つといっても過言ではありません。
「まとめ」
以前から私は成人歯科矯正の問題点をブログ記事に書いていますが、矯正治療で矯正を担当した先生が作る医原性疾患は非常に多くまた,動的治療期間中は治療が困難な場合が多いので患者さんが来院されても治療を充分に行えないで困る事が多いのも実状です。
何よりも矯正医にはう蝕と歯周病の問題は適切なケアで防いで頂きたいと思います。 また逆にそれが出来ない矯正医に治療を受けるのは危険ですから止るべきです.
いつも説明していることですが、動的期間中にクリーニングを含めた諸々のオーラルケアが院内で不可能な矯正歯科医院の場合には他院で管理してもらえるように依頼して適切なオーラルケアの体制を整えるのが最低限の矯正医の臨床的ルールだと考えます。
しかし、未だ日本では"ただ歯を動かすだけの矯正医" が多い事は信じられないほど無責任な状態ですが歯科矯正治療の分野ではそういった事が常態化している実態の反映だとも思います。
歯科矯正を受ける予定のある方は、私が言及した歯科矯正の問題点を理解して学問的見識が高く良心的治療をしてくれる素性が確かな矯正医を探して是非受診して下さい。
ー当院へ受診希望の方へー
最近,他院での歯科治療の方針に関するセカンドオピニオンや治療に関する説明を行うカウンセリングへおいでになる方々が増えています。充分時間を割いて予約で行っているため1時間自費1万円(税抜き)で行っていますのでご了承下さい。
また、今回のように矯正関連で歯周病やう蝕治療を矯正科医の先生からご依頼頂く事も有りますが、どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。矯正前に歯周病の治療を済ませられるように余裕を持ってご来院頂けるよう御願い致します。
私の診療姿勢に共鳴され,ご来院希望の方は是非ご予約下さい。
診療に関しては麴町アベニューデンタルオフィスにお問い合わせ下さい.