歯ブラシと それにまつわるエトセトラ
【 歯科医院専用と一般消費者向け歯ブラシは同じ会社が売っている 】
今更ですが、歯ブラシについて少しだけ書かせて頂きます。
ドラッグストアに行くと沢山の歯ブラシが売られています。時々、患者さんから「どのような歯ブラシが良いでしょうか?」といったご質問を頂きます。とお答えしています。
↑ Butler #211
植毛のカタチで特徴有る代表的なモノには、L社製の山型植毛(山切りカット)の歯ブラシ↓があります。
これが噂の山切りカット ! 最初期のモノと比較すると新たな改良が加えられているようですが...
メーカーの説明では、歯間部と咬合面の裂溝部が磨きやすいそうですが....
歯磨き粉・歯ブラシメーカーでは、一般消費者向け商品と歯科医院専用商品の2種類を両方とも販売しています。
すなわち、教科書に出てくるようなオーソドックスなButler#211のようなモノを主に歯科医院販売専用に作る一方で、山形植毛(山切りカット)のような一般消費者向け商品を発売しています。
一般消費者向け商品は目新しく独特な形状や工夫を施されたモノなど解りやすいキャッチコピー付きでその商品を多くの消費者が購入してくれるように別個の意図で作っています。
メーカーも利益を上げる方法を当然考えますから、このように二枚舌の二刀流になってしまいます。
実は私が大学生の時に、L社から大学の歯周病学教室に依頼があって授業の一環で山切りカットの歯ブラシに関する使用感などアンケートに答えたことがありました。
私は、「バトラーの製品のような歯ブラシを作るべきで、これは子供だましだ」といったコメントをした記憶があります。実際に、私には磨きづらい刷掃効果の低い試作品(現製品とほぼ同じカタチ)でしたから素直な感想を書いただけです。メーカーとしても、一般向け商品であっても多くの消費者に好まれるような商品で、しかも大学のような研究機関である程度のお墨付きがもらえる(工夫に確かな根拠のある)モノを作る必要を感じていたのでしょう。開発部のヒト達は、多少矛盾を感ながらノルマをこなすために本音では製品の刷掃効果など疑問でも、無難なカタチでもっともらしく商品化せざるを得ないのだろうと思います。
【 Butler#211は歯ブラシのマスターピース 】
歯ブラシの専門的見解からは、やはりになります。
現在日本では、サンスターが歯科医院のみならずドラッグストアなどを介しても販売していますので、皆さんも購入してはいかがでしょうか?

↑歯ブラシの中の歯ブラシ!正にマスターピースです。
良い歯ブラシとは毛の材質はナイロンなど洗浄性がよく衛生的なモノで、植毛の幅や列もあのような状態の(#211のような)モノが良いでしょう。年配の患者さんの中には、「やはり豚毛の歯ブラシがいいですか?」などと、未だにお聞きになる方がいますが、毛に腰が無く洗浄性が悪く不衛生なので動物毛は適当ではありません。その他、歯ブラシには様々なスペック(規格)が研究し尽くされています。
しかし、そういったスペックを一々言及しても意味がないので、ただButler#211のような使いやすい・磨きやすい歯ブラシを選ぶようオススメしています。もちろん、可能ならばButler#211を購入すれば良いと思います。
歯ブラシの研究は世界で沢山発表されていますが、形状に関しては、余り奇抜なモノではなく使いやすい当たり前なカタチであればどれでも問題有りません。また、使い古しで少々毛が曲がって広がったような歯ブラシであっても、程度にも依りますが、歯垢除去効果はそう落ちなかったといった研究結果も出ています。すなわち、歯ブラシのカタチや規格(スペック)が云々いったことよりも、正しい磨き方で歯並びなど患者さんの口の状態に合った適切なブラッシングを充分に行うことの影響が他の要素に比べて遙かに大きいということです。ですから、使いやすいモノで正しく磨いて下さるように患者さんにはお知らせしています。
しかしながら、正しい歯ブラシの有り様から言えば、 毛が曲がり広がったような歯ブラシは磨きずらいのでどうか早めに交換して下さい。
【 歯ブラシで歯肉は磨かないように 】
: 歯肉を歯ブラシでマッサージしても歯周病は治りません
以前、大学で診療していた頃、「歯茎が痛くて浸みて仕方がないから診てくれ」といってある患者さんがお越しになりました。拝見すると、歯肉が傷だらけでした。その傷はどうしたのかお聞きしたところ、「歯ブラシ教室で教わった通り、歯茎をマッサージしたらこうなった」と、おっしゃっていました。
東京には、患者さんを集めて歯ブラシの指導に大変に熱心な先生もいらっしゃいます。ただ、そういった中に幾つか学問的に間違った指導内容もあります。その中の一つは、歯周病の患者さんに歯ブラシで歯肉をマッサージするコトを強調して指導されていることです。そして、誤解して硬組織である歯牙と同じように軟組織である歯肉を磨いて傷を付けてしまう患者さんがいたのです。
今日、歯周病の原因論がはっきりして歯周病の治療は、すなわち歯茎(歯周ポケット)から歯垢(細菌)を取り除く原因除去療法であることが明確になりました。しかし、血行をよくするためのマッサージを歯周病のマストな治療方法として指導する先生が未だに生きた化石のようにおりました。
真面目な患者さんは、歯ブラシで歯肉が傷つくほど一所懸命に歯肉にブラッシングをしてしまったのです。ここで、これをお読みの方々には認識を改めてもらいたいと思います。
【 何でも患者さんのブラッシング不足のせいにする困った先生 】
: あなたの歯茎の出血の原因を考えましょう
ブラッシングを熱心に指導をしている先生の中には、何でもブラッシングで治療できるような姿勢で指導する方がいます。すべてブラッシングが足りないから治らないといった事を言及される方もいます。
例えば歯科医師サイドがイイ加減に治療してポケット内に歯石やプラークを残しているから出血(BOP:プロービング時の出血)がなくならない場合に、患者さんのブラッシングが足りないことが原因だと言い張っている先生がいます。
こういった先生に受診している患者さんの歯はすり減ったようにピカピカです。しかし、残念なことにこういった方の歯周ポケット内には歯石が残っていてスケーリング&ルートプレーニング(SRP)は充分に行われていないことが明白です。
こういった先生は、まるで戦前の歯科医師のように、現代の学問的コンセンサスを正しく認識していません。
BOPが有ることはポケット内に炎症が存在することを現しているから、ポケット内の歯石やプラークが存在することを意味します。ポケット内をSRPし再評価で出血(BOP)が一度無くなったならば,その後の出血はプラークコントロール不良で細菌が歯肉縁上からポケット内へ戻ったことを意味し、プラークコントロール不足を患者さんへ指摘できます。しかし、最初からSRPが完了していなかったのであれば、歯科医師サイドの診療が不良だということを意味します。実は、こういった恥ずかしい勘違いが巷には多いと思います。これらは 正しい認識を持って、良い歯科医院を選択しましょう。そして、不良診療にはくれぐれも気をつけましょう。
【 ブラッシングではポケット内を充分には掃除できません 】
:
歯ブラシ(ブラッシング)では、歯周ポケット内をほとんど清掃できないので、歯科医師や歯科衛生士がポケット内をSRPで清掃する必要があります。
ただし、歯肉炎(歯肉に限局した炎症)の初期の状態では、丁寧に適切なブラッシングをすれば、これのみでも治療可能です。しかし、歯周炎(歯周支持組織にも破壊を伴う炎症)に移行し深いポケットが形成されれば、ポケット内に歯ブラシの毛先が充分に入らないことから、ポケット内の清掃は不可能です。
ですから、SRPを適切に行えない歯科医院では患者さんがいくら歯ブラシを努力したからといって、歯周病は決して治療できません。
◎口腔清掃の守備範囲
・歯肉縁上:ポケットより上のプラークコントロールは主に、患者さんが主体となる清掃範囲です。
・歯肉縁下:歯周ポケット内は、歯科医師・歯科衛生士など医院サイドの清掃範囲です。
歯周病治療では、上の2つの守備範囲の清掃の各々が両者、良好に行われて初めて完璧な口腔清掃が達成され、歯周病治療は可能になります。
*ただし、歯肉縁上でもpmtcのように歯科衛生士のお仕事もあります。
【 ブラッシング指導をお受け下さい 】
ブラッシングは、患者さんのお口の中の歯並びを頭に入れた状態でブラシの当て方を考えて頂き、正しい磨き方を工夫して頂きます。患者さんのお口の中に合ったブラッシングのキーポイントを衛生士が実地でご指導いたします。これを患者さんが守ることで飛躍的にブラッシング効果が上がります。
ブラッシング指導(TBI:tooth brushing instruction)は、歯科医院で歯科衛生士より直接指導を受けて下さい。書面でいくら説明するよりも実地で教わる方が確実に身に付きます。ご希望の方は、トゥースクリーニングもかねてTBIを受けにオフィスまでお越し下さい。当院では、「お手軽トゥースクリーニング」でお受けします。