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2011年1月 5日

○歯垢は付着性がよいため除去にはブラッシングが必要

歯科疾患の原因の多くは、口腔常在菌である細菌です。細菌は、ただ単体で唾液中に存在し続けるのではなく、仲間同士群れを作って、ネバネバした物質に包まれて歯の表面や口腔粘膜に付着して生きています。その際のネバネバした物質は、細菌が作る「菌体外多糖」といわれる物質で、これは細菌自らが産生しています。肉眼的レベルでは、歯垢染色液で染まることで歯垢(デンタルプラーク)として認識できます。このように、歯垢染色液で染まるものを臨床的には「歯垢」と呼んでいます。

忘れないで欲しいことは、歯垢は非常に吸着性が良いために、「うがい」だけでは除去できないこ
とです。
ですから我々は歯ブラシを使用して機械的に歯の表面から歯垢を除去することになります。当たり前のようですが、毎日歯ブラシで清掃するのは、歯の表面から歯垢を効果的に除去するためです。

また、"ウォーターピック"という名の水圧を使って口腔清掃をするディヴァイスも市販されていますが、食物残渣(食べカス)の除去には確かに効果的ですが、歯垢に関してはブラッシングほどの除去効果はありませんから、もし使用するならばブラッシングを併用すべきでしょう。


○バイオフィルムという細菌たちのコミュニティー

歯垢を歯ブラシで除去できずにいると厚い重層構造を作ります。また、歯周ポケット内では、特に歯根面上に付着した歯石の粗造な表面や周辺から付着し出し、次第に歯垢が厚い構造を作ってゆきます。この中では栄養の供給路や情報伝達物質の交換が可能なシステムが出来上がっているといわれています。あたかも、これらは人間社会における上下水道・交通網・インターネット回線のような意味合いがあると解釈できます。このように「ソシアルな存在」として我々人間社会のような構造が歯垢の中には存在することが明らかになり、これが生きた細菌達の作った層状構造内に存在するので"biofilm"(バイオフィルム)という新しい用語で表現されるようになりました。


バイオフィルムの実態は、多種類の細菌達の集まりです。地球上に沢山の国があり、多民族が暮らすのと同じように、細菌には沢山の種類が存在します。細菌の分類は形態学的には、ビー玉のような球菌、球菌の連なった連鎖球菌、細長い糸状の糸状菌、紡錘状の紡錘菌、バネのような螺旋状菌、細長いソーセージ状の桿菌など多くのモノが存在します。また、酸素要求性からは、う蝕の時に多く見かける通性嫌気性菌、空気のないところを好む(偏性)嫌気性菌、運動性のある運動性菌など色々な性質や性格を持っています。また、マイノリティーとしてピロリ菌のように酸の強い胃粘膜上でも生育できる菌もいます。このようにバイオフィルム内には、人間社会のような多民族や少数民族のような多義の構成による細菌達が共存しています。

ここでは詳細に書きませんが、こういった共生関係のバランスを乱さないためにも、安易に抗生物質を使うべきではありません。今まで大人しくしていた細菌が突然暴れ出す可能性があるのです。間違った抗生物質の使用により耐性菌を作ってしまったり、一部の菌だけ突発的に増える細菌叢のバーストも生じます。
気をつけなければいけないのは、「薬で歯周病を治す」といったことを宣伝して間違ったコンセンサスがない抗生物質の治療法を行っている歯科医師が残念ながら歯科業界にはいます。

Variety of Bacteria in Biofilm(final).jpg

バイオフィルムは元々、自然界に存在する細菌達の特性として近年、微生物学や食品・公衆衛生の分野などで注目され盛んに研究されている概念です。むしろ一歩遅れて、十数年前から歯科界では歯垢に対してこの用語が使われるようになりました。
我々の身の回りや自然界には沢山のバイオフィルムが存在します。身近では、キッチン・シンクの凹んだところに水がたまったまま放置されていれば水が濁ったように見えるバイオフィルムが数日で観察できます。また、水流のある水道管内にも少なからずバイオフィルムが付着し得ます。ましてや、マンションの屋上にある貯水槽の貯水タンク内面には比較的管理が良い場合にも、少なからずバイオフィルムが付着しています。衛生環境を考えれば、バイオフィルムが付着し難い水道管や貯水タンクの素材と水の浄化方法の開発も必要です。


新しい用語を使用することで、「新しい概念」を明確に伝えることに役立ちます。しかし、その実体は従来までの歯垢(デンタルプラーク)に他なりません(同じモノに対する別の用語です)。
バイオフィルムという用語を使用することで、単に歯垢と呼んでいた時と比べ、その有機的な特性を表現し伝えることにも一躍かっています。この記事では、ここからは「歯垢」に代わり「バイオフィルム」という用語を使います。


○バイオフィルムは細菌達の危機管理体制

特に歯周ポケット内に存在するバイオフィルムは、細菌達の共同体(コミュニティー)を非常に分厚いディフェンスで守る構造ともいえます。バイオフィルムには、抗生物質のような薬剤も浸透しづらいことが解っています。例えれば分厚い城壁に囲まれ、敵から身を守る生活環境を作っているものといえます。国家でいえば、隣国からの侵入を阻止する軍隊のようなディフェンスです。

ですから、バイオフィルムがそのままのカタチでは、抗生物質の内服でも十分な効果は得られないのです。抗生物質でポケット内の細菌に殺菌効果を狙う時には、バイオフィルムを超音波スケーラ-などで洗浄して破壊するか、可能な限り細菌達をキュレットでスケーリング&ルートプレーニング(SRP)により除去した後に使用する必要があります。バイオフィルムがそのまま存在した状態では薬効が充分に働きません。これは内服薬のみならず、注入する形式の抗生物質(ペリオクリン等)でも同様です。
periocline1.jpg

20年ほど前に日本では、ペリオクリンという商標で歯周病治療薬としてポケット内注入式の(シリンジに封入された)抗生物質が治験が終わり、当時の厚生省に認可され発売されました。その時には、何人もの先生から「使ってみたけど効かなかった」といった事を言われた経験がありました(当時、私の大学で治験をしたために言われたのですが..)。

よく聞けば、ポケット内にSRPなど機械的清掃もしないまま注入していたということでした。上に説明したようにバイオフィルムが存在するので薬剤が細菌に充分に到達していなかったためです。そういった先生達は、「バイオフィルムの概念」も理解できていなかったのでしょう。たぶん未だに理解していない先生が業界内に沢山いると思います。ちなみに、保険治療でもある条件の下、ペリオクリンは歯周病治療に使用できます。

「歯周病は薬で治す」といったことを医院のウリ文句にしている歯科医院があります。例えバイオフィルム内に存在する細菌に感受性がある抗生物質を使用しても、細菌達のところまで薬剤自体が到達しなければ、全く効果は期待できません。歯周病原性菌に対する薬剤療法は、上のような幾つかのポイントがクリアできれば、症例や症状によっては意義を持つ戦略的治療方法になり得ます。しかし、「歯周病は薬で治す」といった安易な宣伝には勘違いして騙されないようにして下さい。

かなり前から世界中で、薬剤を使った歯周病治療に関しては多くの研究が発表されていますが、内服薬の服用だけでは歯周病は治せません。内服薬の服用だけで治れば、歯周病専門医も積極的歯周病治療も必要なくなるでしょう。結局、未だに「薬剤の服用だけでは歯周病は治療できない」ので、ポケット内の原因因子と修飾因子すなわち細菌と歯石の徹底的除去(SRPなど)が依然として必須です。これは現在の歯科界での世界的コンセンサスです。よって、こういったコンセンサス(常識)を無視した勝手な治療法や怪しい主張を信じてはいけません。結局それでは歯周病が治せないのですから。


○バイオフィルムを好む歯周病菌

ポケット内のバイオフィルムの厚い構造の中では、極めて空気が少ない状況が生まれます。この環境には空気の少ない場所を好む「嫌気性菌」といわれる種類の細菌が好んで生息するようになります。むしろバイオフィルムの特徴のために嫌気性菌である歯周病原菌が住む場所として極めて好ましい生育環境になっています。

また日常臨床では、定期検査の時期に入った患者さんの定期検査時には、ポケット内にエアスケーラ-やキュレットでのバイオフィルムの除去・清掃を行います。 これは、前回の定期検査時からバイオフィルムの再形成がおこっている可能性を懸念して行う処置です(BOP(+)部は必須)。すでに幾つもの研究から、患者さんが3ヶ月ブラッシングを怠るとポケット内のバイオフィルムの状態は、SRPする前の状態に戻ってしまうことが解っています。ですから、 可能ならば3ヶ月に1度ポケット内の細菌学的環境をリセットする必要があり、清掃します。

患者さんの努力で常に高いレベルの縁上のプラークコントロールができていればバイオフィルム再形成のリスクは少なく、逆に充分にできていない時にはバイオフィルム再形成のリスクは高くなります。  とにかく、定期検査時にはポケット内にバイオフィルムの再形成を懸念して、ポケット内とポケット縁上の清掃を行います。このようにバイオフィルムを意識して、バイオフィルム再形成のリスクを低下させる治療方法で歯周疾患の管理を行う必要があります。

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麹町アベニューデンタルオフィス 麹町アベニューデンタルオフィス 院長 戸村真一

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院長 戸村真一

こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

街の歯科医院へ行くと感じる嫌な感覚を皆様が受けないような雰囲気にしました。 スカンジナビアン調に私自らがエントランスから室内の隅々に至るまでデザインし、 患者さんがリラックスできる清潔で清々しいセンス溢れる空間をご用意しました。

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