平易な表現にすれば解り易いのか?:歯科疾患や歯科知識
この頃、患者さんに説明するのに以前にも増してより平易で、当たり前の解り易い表現を使うようにしています。
私の医院が千代田区中心地である麹町のオフィス街に有るため,多くの患者さんは一流最高学府を卒業した教養のある方々が多く,比較的観念的知識や難しい理論的な話もよく理解して頂ける方が多いのですが、これはこのエリアの患者さんの特徴といえます。ですから、私も一から十まで小学生に説明するような子供相手の妙に簡単な説明は敢えてしないようにしていました。
先日もブログに書いたように全く歯を削らせてくれないような異常心理に取り付かれた患者がいるので、少し子供のような目線で歯科疾患の危険性を表現しなければ患者さんには歯科疾患予防の重要性や歯周病の危険性が伝わらないのではないかと思うようにもなりました。
また一流会社や一流法人組織に属す方がよく来院されますが、日本人の場合、そういった社会的ステータスに相応した歯科保健意識や受診動機が無い方が意外にも多く、我々のように臨床経験からその患者さんが近未来にどうなるのか予想出来る者の話に聞く耳を全く持たない方が非常に多く、臨床家として大変にこういった患者さんの健康意識が欠如する姿勢が残念です。
ここで私は、2,3の歯科知識を簡単に説明した例を以下に挙げ列記しておきます。皆さんには歯科的認識を変えていただたいと思います.ごく当たり前の事は、常識として受け入れ治療に積極的に協力して、口腔内の健康を担保して下さい。ごく当たり前の事につまずいて治療を受けられない患者さんが多すぎます。
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○歯垢はキッチンシンク排水溝のヌメリと同じです:
歯垢のように細菌達が共同生活を円滑で安全に送るための構造物は一般に細菌学ではバイオフィルムと呼んでいます。
バイオフィルムが口の中に出来たから特別にデンタルプラーク(歯垢) と呼んでいるだけです。
その実態はキッチンシンクのヌメリと同様のバイオフィルムに他ありません。皆さんは、あのような汚いヌメリを口腔内に放置して平気ですか?
今後、歯科的知識を色々と平易な表現で解説していこうと思いますので、今後のブログ記事には乞うご期待です。
○虫歯は歯が腐った状態です:
歯の構造を理解すれば解り易いので歯の解剖学的構造を参照して下さい。
歯の頭の上に載っているようなヘルメットのような白い部分は、エナメル質です。これは1ミクロンの千分の一レベルの目に見えないカルシウムとリンなどによるブロックのような結晶体(アパタイト結晶)が沢山隙間無く結合して綺麗な透明感のある層を形成しています。言ってみればエナメル質はだいたい大理石のような硬い綺麗な結晶体で無機質と言えます。
このエナメル質は2,3mmの厚みがあります。そこに虫歯の細菌が歯垢として付着すると細菌が出す酸でエナメル質の結晶が崩壊して穴が空きます。すなわち、これがエナメル質上で生じた虫歯(エナメル質う蝕)の正体です。
一方、エナメル質を過ぎるとその下の層は象牙質と呼ばれる歯質です。象牙質は歯の中心の歯髄に向けて象牙細管と呼ばれる細い管でつながっています。
ところで、この象牙質はエナメル質とは対照的に、構造がコラーゲンと色々なタンパク質が豊富な有機質で構成されています。 エナメル質は大理石に喩えられますが、象牙質は肉と同じ様なモノです。よって、虫歯になって象牙質に細菌が入り込んだら細菌のご馳走が豊富なので、コラーゲンとタンパクの構造を食い尽くします。すなわち象牙質が細菌感染で腐敗し崩壊して軟化象牙質になります。もっと簡単に表現すれば象牙質が腐ります。
左(金属インレー除去後)のように、象牙質が腐って 軟化象牙質の状態です.
虫歯は歯垢内の細菌がエナメル質を溶かし穴を開けて象牙質に入り込んで象牙質を腐らせるのが実態です。
どうかお読みになった皆さんは歯垢や虫歯を簡単な言葉や表現で実態をよくご理解して下さい。
私が一所懸命に患者さんへ説明しても、歯科疾患の危機感もご自身の口腔内の状態も伝わらないのではないかと危惧するようになりました(実際に先日の患者がそうでした)。
この頃、"大人の幼稚化"や"国民の劣化"いった表現を度々私は使用する事がありますが、現実的に子供のような目線で表現しなければ、全く理解出来ないような方々が多くなったようにも感じます。これは社会全体の民度が劣化する空気にも連動しているのか否かまでは私には解りませんが、一臨床家としての責務をどのように果たして歯科臨床に反映させてゆくのかが目下の課題です。
○医院へおいで下さい:
我々は。皆さんに治療の概念をご理解頂いた上で治療を受けて頂けるように考え、丁寧な説明に時間を掛けています。時間を充分考慮しておいで下さい。予約は電話でのみ受け付ています。
また、十分に説明と相談にだけ時間を削く予約でお受けするカウンセリングもお受けしています。