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2017年11月18日



先日、誤嚥性肺炎のブログ記事を書いたら、有難いことに患者さんから幾つも好意的なご意見をいただきました。

皆さん一様に歯の治療で苦労されている方々です。それはご自身の歯の治療でトラブルがあった方やご家族やご両親の歯科治療に迷っている方々もいます。

先日のブログで手短に書きましたが,高齢化社会での真っ当で安全な歯科治療をもっと街の歯科医が真剣に考えるべきです

例えば、入院中や認知症など高齢者の歯科的ケアが極めて軽視されている状況をまず知って下さい。

入院中は頭や手指が充分機能する比較的健全な方ではご自身で口腔ケアが出来ますが、そうでない患者さんはどうなるでしょうか?

日本の病院や介護施設では看護師やスタッフが口腔ケアのために患者や入所者の口腔ケアをしてあげるような口腔ケアの質の高いシステムは殆ど有りません

すなわち、入院中や介護施設では高いレベルの口腔ケアが行われていないので、必然的に口腔内は汚れたまま放置されることになり、歯周病の進行やう蝕の発生が生じ易い状況です。

このように、高齢者の方々は認知症や手指が不自由になった場合だけでなくても、口腔内の充分なケアがないまま極めて悲惨な状況に陥るケースが巷では散見されます。高齢者の場合には、どこにいても健常な若い患者さんとは全く違った口腔清掃が不良な状況が起き得ます

現実問題としては口腔ケア不良な状態で多くの歯科的トラブルが起き得ます。こういった歯をダメにするリスクが高い状況を過小評価しないで真剣に考え下さい

よって、アナタがもし口腔ケアを充分に行えない身になったことを仮定したら、高いレベルで清掃し続ける必要があるインプラント治療を受けて、それを維持出来る自信はありますか?

インプラントを埋入していれば、その周囲を常時高いレベルで綺麗にしていないとインプラント周囲炎を発症する可能性が高いといえます。
また、インプラント周囲炎は一般的な天然の歯に生じる歯周炎と違って、その治療方法は未だに学問的に確立していません(=治療が困難です).

よって進行してしまえばインプラント体はダメになり抜去する事にも成り得ます。
インプラント治療では日常的ケア不足で周囲炎になる可能性があるという事実があります。
これと治療方法が学問的に未確立だという事実を前提条件として治療を受けなければなりません。

しかし歯科医がこれらインプラントの欠点を説明をしないまま治療に着手する場合が日本では多いようです。
全く"説明と同意"も曖昧なまま治療が行われているのが日本でのインプラント治療の一般的な酷い現状です


インプラントの諸々の概念,利点や欠点の歯科医側からの説明を患者さんが理解して受け入れた場合はインプラント治療するのは良いことだと思います。私はこういった常識が守られないことが日本の歯科界でのインプラント治療の恐ろしい実態だと主張しています



ここが重要!


また、我々歯科医師はまともな先生ならセルフケアが出来そうにない患者は専門家として確実に想像出来き解ります。
私の常識から人工歯根をそのような患者にはススメないのが良心的臨床家だと考えます。

  他の安全な治療方法を選択肢(以下義歯の選択肢も述べています)として挙げるのが良心的な先生のはずです。


にもかかわらずそういったインプラント周囲炎を回避できない非適応症の患者に平気でインプラント治療するような臨床家が良心的な良い歯科医師と言えるでしょうか?   

私はそのように患者を騙すような臨床医が多い事が同業者として誠に残念です。 
患者さんには、そのような歯科医に騙されないように、真摯な歯科医を選んで頂きたいと切に御願いします。



○殆どの歯科医師はアナタの老後の生活など想定していません:

  以前にも書きましたが、依然として街の開業医に受診して、いきなりインプラント治療を執拗に勧められる患者さんが多く危険性を感じて転院してくる患者さんが沢山います。

そして歯周病治療を希望して受診したにもかかわらず,いきなり歯周病の歯を抜歯してインプラントを埋入する治療計画を話し出す歯科医が多いとの多くの患者の訴えには呆れてしまいます。

患者の主訴を理解して処置を検討する常識的な診療態度が全くない例が多いのが巷の歯科医院の一部での実態のようです。

このような歯科医の態度に不信感を持たない方がむしろ異常です。こういった常識的な診療態度がない場合には受診を止めて,より良い歯科医院の選択を再検討すべきです。

未だに多いのは、比較的安易に高額自費診療が可能だと考え歯周病治療など基本的大切な治療を無視して人工歯根を埋入したがる歯科医が多いようです。


皆さんはそういった歯科医の魔の手から逃れて、アナタの健康や将来の生活まで充分考慮してくれる良心的で患者本位の歯科医を探して下さい


そしてインプラントのような周囲炎の治療方法が学問的に確立していないものでは無く、従来型の局部床義歯総義歯などの治療方法で将来修理可能で安心して使用できる治療方法を選択することを考えましょう。

総義歯写真 2'.jpg

何年も利用した総義歯をリベースと呼ばれるレジン材料の裏打ちで修理して新たに義歯の吸着が甦った総義歯です。キチンとした義歯を作っておけば緩くなってもいつでも修理出来て新品同様に出来ます。高齢者には安全で長持ちする良い治療方法です。

10fa51e1.'jpg.jpg
これは局部床義歯です。前歯部と小臼歯だけのこって大臼歯部を失ったケースで利用します。
   *この場合も総義歯と同様にリベースで修理出来ます。

局部床義歯は残った支えになる歯(鉤歯など)を歯周病治療して定期検査も行ってゆきます。

従来型の義歯もまともに作れないような歯科医がなぜか高額なインプラント治療する傾向は全く狂気です。

私は、原則的に高齢者には義歯を第一選択にオススメしています。

長い歴史で高齢者歯科治療で明確に治療方法が確立したそういった義歯を中心にした歯科治療をもっと安全で長持ちする治療方法として再評価すべきです。

こういったことを高齢者の方が身内にいらっしゃるご家族は充分に認識して長く安全で修理可能な補綴物やその治療方法を選択して下さい

学問的に治療方法他に未知な部分が未だに存在するインプラント治療ですが、患者さんの生活全般の背景も充分考慮しないで安易にインプラント治療を奨める歯科医は良心が無い極めて馬鹿で危険な歯科医だと私は思います。


結局、そういった歯科医達がインプラントを勧めるのは高額治療費を得るための思惑に他なりません。

    この思惑にアナタは騙されないように!


   世間の歯科治療に疑問を感じたら、義歯治療も当院まで是非お越し下さい。  
       電話予約制です



















2017年11月 2日



私も20年程前までは、高齢者の生活実情を想定した歯科治療への考慮がまだ足りなかったように思います。


以下の画像(ある高齢者の臨床写真)をご覧下さい。
この患者さんは高齢者ですが、非常に口腔清掃が良い優等生タイプの患者さんです。

この方の歯科治療は主にう蝕には封鎖性が良く歯垢の付着が抑制されるアマルガム充填によって綺麗に研磨しう蝕を治療しました。この患者さんは歯の清掃時には補助器具(歯間ブラシ)も使って歯垢のコントロールが高齢者とは思えないほど良好な方でした。


高齢優良患者.jpg


ところが口腔清掃が優等生の患者さんが数年経って来院された時には、下の画像のように酷い状態に口腔清掃が悪化していました。
たぶん転倒などして前歯部をぶつけたような経緯もあったように思わせる前歯部の脱離も気になりました(高齢者の転倒は致命傷になるので用心しています)。

認知症後.jpg


とにかく、高齢になれば、それまで頭脳や生活がシッカリとしていた患者であっても、認知症で口腔清掃が極めて悪化する事があります。またその他転倒など偶発事故も起きて口腔内に異変を生じることが有り得るという悪い典型例のように思います。


この症例に遭遇した頃から、私自身の臨床が変わったように記憶しています。

正に高齢化社会日本での私自身の歯科臨床のパラダイムシフトと換言できます。


すなわち必要なことは特に高齢者やお年寄りを診察する時にはあらゆるケースで今すぐにでも"認知症や肢体不自由になる可能性を想定すべきだといった心得"を持つことです


○高齢者歯科治療での留意点:


以前、「週刊朝日」でインプラント治療の問題点を特集した際に私も臨床家としての視点でブログ記事を書きました。そのブログには今でも多くのアクセスが有ります。

とかく、現代の歯科医院過剰化時代で儲けどころとしてインプラント治療をする歯科医が多い状況では歯科医がマイナスの印象を与えるようなインプラントの欠点を解説をすることが歯科界に極めて都合の悪い事になっているようです

初診患者さんにも「先生のブログぐらいしかインプラントの欠点を語る歯医者のブログはありませんよ」などと言われることが未だに多いのが反省の無い日本での現状です。

しかし、安倍一強のいかがわしい日本の政界のように真実が語られない政治では国民の疑念や政治不信は払拭できませんが、それと同様で正しく現実を認めて真っ当な歯科治療を歯科界が行っていない現状では歯科界や個々の歯科医師が患者さんから信用されないのは至極当然です。

もちろん、インプラントの欠点や特性、特にインプラント周囲炎が起き得る事実を丁寧に説明しない歯科医師の治療を 信用して受ける事は馬鹿げていることは言うまでもありません。


   ・インプラントの特性や欠点を正しく患者に説明して"説明と同意"を成立させる事がインンプラント治療に際しての最低限の条件です.

  まずインプラントの周囲は口腔清掃不良でインプラント周囲炎が起きる事があります。

このインプラント周囲炎は現在でもその進行を止めることだけでも難しく、歯周病のように完治させる治療方法は学問的に確立されていません. よってインプラント周囲炎が進行すれば歯を失う危険性があります。

一方、人工歯根(インプラント)とは違って局部床義歯義歯などでは鉤歯(義歯を固定し支える歯)はもし歯周病になっても従来の歯周病治療で充分治療できます。入れ歯は化徹性故に清掃もし易く従来型の義歯(いわゆる入れ歯)は正に高齢者向きだと私は硬く信じています。

もちろん一切インプラント周囲に歯垢を付着させないようにケア出来るなら理論上はインプラント周囲炎は起きないはずですが、実際の患者口腔内で特に高齢者や認知症患者になった方や入院患者になった際に質が高い口腔ケア出来るのか?   アナタはこのような不都合な事態を考えたことがありますか? 


*日本では病院で口腔ケアを看護師が患者に替わって行う丁寧なケアを実践する医療機関は滅多に無いと思います。インプラントは歯垢が付着したまま放置されればインプラント周囲炎は生じ得ると考えるのが現代の歯科常識です

ところで、どのような高齢者にも患者が希望すれば無批判にインプラント治療を行ってよいのでしょうか? 例えば基礎疾患が有り、もし身体が弱く入院するケースが想像出来るのにインプラント治療を勧める事が歯科医として患者本位の良心的視点の判断でしょうか?


歯科医師は個々の患者にある治療(補綴、歯周病治療等々)を行った後、将来どのようなことが起きるのか?馬鹿で無ければある程度予後が想像出来ます。例えば,私は患者がいい加減でブラッシングしないようなヒトには時間や治療費をかけてまで全顎にスケーリング&ルートプレーニング(SRP)することを敢えて奨めません。それは全て行った治療(SRP)がプラークコントロールが悪いため無駄になるからです。

そして高齢でインプラントを希望する患者なら、入院や認知症など自分で口腔ケアができなくなった際に代わりにケアしてくれるようなサポートが担保されていなければ、インプラント周囲炎になり悲惨な末路が待っていることも必ず正確に説明して、それでもなおインプラント治療を希望するのか聞く事にしています。

最近ではインプラントのネガティブな情報が溢れているので手放しでインプラントを安全な治療だと必ずしも歓迎しない方が増えつつある事がむしろ私にとっては多少救われた気がしています。


○まずは従来型の可徹性の義歯を奨めます:


  従来型の可徹性義歯(いわゆる入れ歯)ならばインプラント治療に派生するような致命的な問題は生じません
そうした簡単で明解な理由により、多くの患者さんには従来型の可撤性義歯(局部床義歯・総義歯など)の使用を選択肢に入れて考えるようにして頂いています。


パーシャルデンチャー1'.jpg この画像は可徹性局部床義歯を装着して快適に暮らしている患者さんの一例です.
下顎の左側臼歯部が欠損しているので金属フレームの義歯を装着しています。


もちろんインプラントの長短所やその科学的特性を十分理解して受け入れた方にはインプラントを選択してもらって良いと思いますが,充分な臨床的情報を歯科医師から説明された後の選択として正当な姿勢と言えるのであって、日本ではこの前提が存在しないことが多いので、そのような場合には患者にインプラント治療することが法的にも問題(説明と同意の不在ゆえ)になり得ます。

若い歯科医は 私が通常作製している遊離端 可徹性 局部床義歯義歯 が作製出来ないのでインプラントを行うと言い張る者もいて私は全くその馬鹿さ加減に呆れ果てます。

とかく歯科医は自分の勉強不足を棚に上げてどんな場合にでもインプラント治療のような高額治療を最新歯科医療だと正当化するので問題があります。


口腔ケアが出来ない状態でインプラントが口腔内に埋入されている患者さんはどういったことが起こり得るのか、もし歯科医が想像出来ないとするなら全く患者の視点が無い自分等の都合だけで治療する身勝手な存在としか患者からは思われないでしょう。我々の業界はいつになったら反省が出る真っ当な職業人になれるのでしょうか?


 口腔内に入れた補綴物が壊れず長持ちするような安全な治療を優先的に行うことが当オフィスの姿勢です。すなわちこれが特に高齢者の方には喜ばれる歯科医療の要だと確信しています。


 ○まとめ:

  歯科界は患者本位の良心的な歯科医の視点が欠如しています。
患者さんは歯科医が行っている臨床を実際に確認出来る確かな医院の選択肢から良心的で確かな視点がある歯科医師を彼等とじっくり話をして判別する事をオススメします。

もし、歯科医が真っ当なコミュニケーションができないなら危険ですから真っ当な他院へ転院すべきです。

歯科医が自身の臨床を提示し説明できない先生は日常的に説明すらしない人間で一方的に治療のみしているようなトンデモない人間ですから即座にそこを止めて良い歯科医院へ転院しましょう。

多くの巷の歯科医は患者と必要な話さえろくにしないで,もちろん治療の説明もしないし説明する能力すら無いトンデモない人間です。歯科医(院長)と話せばそういった簡単な観点で直ぐに無能な歯科医が鑑別できるはずです。

患者から聞いて最近多いことはメニューのような自費治療費表を見せてインプラント治療をいきなりススメ出す先生が多いという事です。
そういった極端な歯科医院が恐ろしくて私のオフィスに逃げ込んでくる患者が多いようです。

    
    

   信用できない歯科治療に困惑したら、  当オフィス  へ是非電話予約して下さい。
 

























 

2017年11月 1日


イントロダクション:


ある日、前歯部の継続歯(5歯連結.側切歯1歯欠損のブリッジ)が脱落した患者さんが来院されました。


元々,お嬢さんが私のオフィスに治療にお見えになったことが切っ掛けでお嬢さんからのご紹介で来院された方です。

初診当日には応急措置のため脱落部に即時重合レジン製の仮歯を作製してこれをセットしてお帰り頂きました。
初診日と次の来院から約2回程充分な時間を掛けてご本人と世間話から始まり生活全般の話をしました。それが済んだら三回目から私が計画した全顎的な治療し直しに関する説明と相談を開始しました。


NF前歯部3.JPG
*前歯部が無くなった状態で来院されましたが、その画像は記録にありません。



上の画像の通り上顎前歯部にはレジン製の側切歯1歯欠損のブリッジを暫間装着しています。各々の破折残根周囲組織は炎症による腫脹と発赤や出血を認めました。

NF初診五枚法2.jpg


この患者さん=藤川直美(仮名)さんは70歳代のご婦人です。
お嬢さんご夫婦と二世帯住宅の上下で暮らされているとのことです。
藤川さんは大変論理的な思考をされる一種日本人離れしたセンスをお持ちの知的な女性で、我々にとっては最も治療しやすいタイプの歯科治療を高いレベルでご理解いただける患者さんです。

趣味で競技ダンスをされているそうです。
お話からすると週数回練習する趣味の競技ダンスを中心に生活されているようなライフスタイルだと理解出来ます。そのように楽しい日々を謳歌されていることが解りました。
何よりもお歳からは想像できない程活動的かつ若々しい魅力的で聡明な女性です。



高齢化社会に突入した現代、藤川さんの様な活動的で若々しいシニア層が益々増える事が予想されます。生活の質(QOL)を担保できるライフスタイルに即した歯科診療上の配慮が歯科医師サイドにも要求される時代が到来しつつあると感じます。

正に、これからは現代の歯科医療は患者本位であるべきと換言できます。



NFパノラマ2.jpg
全顎のパノラマレントゲン画像:上顎前歯部は脱落し歯冠が無く残根が残っているだけです。左側臼歯部ブリッジは支台歯歯根が破折して咬合する度に痛むような状態です。小臼歯部も継続歯です。(その他詳細を後述)



継続歯:歯科医師法に抵触する不良治療

継続歯で歯根破折2.jpg


俗にいう"差し歯"の語源はこの継続歯に由来しています。
文字通り形成した根管へ継続歯のコア部を差し込むからです。

現在、大学の歯科教育では歯冠部とコア部が一体化したこの継続歯は一切教えていません。
これは継続歯が歯根を破折させ易い危険な前時代的補綴治療方法だからです。

上の模式図のように継続歯は歯根へクサビを打ち込む様な危険で過剰な力を与えます。
更に継続歯にジグリングフォースなどの傷害的力が掛かる事によって今回のように歯根破折し継続歯自体も脱離します。


我々の親世代が現役時代は継続歯で治療することが日常的にありました。
昭和30〜40年代なら、それは歯科常識として充分通用していました。
しかし現在臨床でこれを行うことは,現代歯科水準に即さないために不良歯科治療と見なされます。
歯科医師法に則れば「歯科医師はその時点での学問水準に準ずる臨床を行うよう規定されています」よって現在は継続歯を臨床で行うことは歯科医師法に抵触します。

藤川さんの言によれば、前医は余り年配の先生ではなく比較的若い先生だったそうです。
治療過程を割愛できるので、このような危険な治療方法を比較的若い先生でも時間短縮や経費節減のために採るのでしょう。このような継続歯は未だに患者さんの口腔内によく見かける事があります。



一方、比較のため現代の前歯部支台築造(コア)を下の模式図を参照してご理解下さい。


適正な支台築造2'.jpg

上の図のように、コアを根管へ装着してから支台歯形成して印象採得しその支台に精度良くジャストフィットする歯冠補綴物を装着します。

これは現代の常識的歯冠補綴の方法です。このようにコアと歯冠補綴物は別個に作製されコアがまず根管へ合着された後、支台歯形成後印象採得されて、ラボで歯質にジャストフィットするような精度の高い歯冠補綴物を作製して口腔内に装着します。

図のような方法なら歯冠部の圧力がクサビ状に歯根を破壊する暴力的ストレスを発生させないで破折のリスクは軽減されます。コアの適切な直径やマージン部に残す歯質の歯冠軸方向の高さを充分にとれば歯質にクサビ状の過負担を掛けないコアと歯冠補綴物によって安全な歯冠補綴になります。



フジワラ前歯継続歯2.JPG
上の継続歯が脱落して藤川さんが来院されました。
上の5前歯(1本欠損ブリッジ)の4本の根管が偶然並行だったために前医はこれを継続歯として治療できたのでしょう。

NF前歯破折2.jpg
継続歯のコア部を挿入する歯根が全てヒビが入っていました。すなわち歯根破折によって継続歯が脱落しました。継続歯はこのように歯根を破折させ易いので危険です。


暫間的に即時重合レジンでチェアーサイドで仮歯を作製し元の位置に装着しました。

*歯根が破折しているので継続歯の形態のまま仮歯を残根根管へ装着するのは不安がありますが、その方法以外にこの時点では仮歯を装着する方法が無いため、ある期間限定で藤川さんには前歯部にはこの仮歯で我慢して頂きました。

前歯部の破折した残根は第2弾のプロビジョナル/レストレーション装着時に抜歯しました。




歯科治療は患者さんの生活を考慮すること:


特にこのケースのような全顎的治療し直しでは患者さんのプロフィールや生活全般、すなわち患者さん自身を深く理解することが必須です。

どんな場合でも同じですが、まずは患者さんと充分にお話をする事から始めます。
今まで歯科治療で嫌な思いをされてきた方ですから、我々のポリシーをご理解いただき信用して頂けるに足るだけの説明や意思の疎通を先に確立すべきです。
歯科界では現在、高価なインプラントなど自費歯科治療を行う先生でもこういった常識的なステップを経ないで話しさえ充分にしないで治療を始める傾向が強く歯科界の信用が得られないのはそのような心のない点も大きな原因だと私は考えています。

患者さんの生活の背景を理解出来たら治療計画を立てて治療概念を丁寧に説明してゆきます。
藤川さんの場合には、好奇心が旺盛な方だったので毎回治療と歯科界の話などを時間を掛けてお話してから治療を開始するのがおきまりのスタイルでした。

藤川さんは競技ダンスを趣味として生活を楽しまれている方です。
そんな藤川さんの生活の質を落とさずに大いに趣味を楽しんで頂けるように歯科医としてサポートすることも大きな私の使命です。少なくともダンスの障害になるような補綴治療は禁忌となります。

また、藤川さんも歯科情報をよくご存じで昨今頻繁に行われているインプラント(人工歯根)はお嫌とのことで、無理のない安全で予知性の高い治療方法を受け入れてくれ私の治療案を採る事が出来ました。



補綴設計:とにかく安全で妥当な方法論


この症例の難点は継続歯は全てそのままの状態で支台として使用しなければいけない点です。
歯質も弱く支台のやり替えは不可能です。これ等の継続歯の歯冠を形成して支台として使用するための工夫も必要です。
このように補綴の治療し直しは現状で可能な方法論の中で最も安全で妥当なモノを採用する事です。これが経験則を必要とする治療し直しの難しい点です。

私はこの20年以上、他院で行われた全顎的治療のし直し(再治療)を手がけています。


単に歯科疾患を治療するといった狭い範疇で歯科医療を捉えてはいけません。
私はまず藤川さんの競技ダンスの障害にならないような補綴物を設計すべきと考えました。

例えば,ラテンダンスのような激しいダンスでも障害にならないように上顎欠損部には可撤式義歯ではなく固定性のブリッジを設計すべくフルブリッジが可能か否かの判定を石膏模型上で診断しました。診断の結果、上顎残存歯はフルブリッジとしての平行性が保てる事が解ったので上顎をフルブリッジで補綴する事にしました。

NF作業模型&プロビジョナル2.jpg


ラボで技工操作に使った作業模型(左)をご覧下さい。支台となる歯が8本と少なく維持力も弱そうな貧弱な支台が多い事が解ります。また前歯部には4本欠損部があります。
この症例のように個々の支台歯が不完全なケースで有利な固定性補綴物がフルブリッジと言えます。一種の相互補完的役割で、いずれかの歯に問題が生じてダメ(抜歯やカット)になっても上部構造のブリッジは長期間維持出来るというコンセプトです。


一方,下顎は左側臼歯部の破折したブリッジ支台歯とブリッジ本体を除去した後、局部床義歯で補綴すれば激しい競技ダンスでも躍り上がらない安定性が高い可徹性義歯が作製可能と診断されたので従来型の金属床フレーム(ヴァイタリウム合金)による局部床義歯の作製を計画しました。

脱落した上顎5前歯の継続歯部は初診日に応急処置として作製したモノをしばらく使いその他の歯冠補綴物は全て歯間部を形成(小臼歯部は装着されている継続歯の陶材部分を削合しその中心部に存在する金属コアを支台歯とした),即時重合レジンでプロビジョナル・レストレーション(仮歯)をチェアサイドで作製し装着しました。またこれを(第1弾のプロビジョナル・レストレーション)として暫間的にしばらく使用して頂きました。

そしてスケーリング&ルートプレーニングなどの基本的歯周病治療を行いました。歯周組織の治癒を確認して支台を形成し直し、印象採得して技工ラボで第2弾のプロビジョナル・レストレーションを作製しこれを装着しました(以下写真参照)。


NFTEK(5枚法)jpg.jpg
第2弾のプロビジョナル・レストレーションを装着時に前歯部の破折した残根を抜歯しました。そして顎堤が安定した形状に治癒した後に欠損部のポンティックにレジンを足して顎堤にタッチするように修整しました。画像は修正後の状態です。また,下顎左側臼歯欠損部は局部床義歯が装着されました。

プロビジョナル・レストレーションという言葉は最終補綴物に準ずる形態で最終的な補綴物の機能的なシュミレーションをするための暫間補綴物といった概念を強調した専門用語です。

もちろん私も第2弾のプロビジョナル・レストレーションで機能的な状態を確認しました。必要な箇所は形態修整し良い機能的形態の情報を得る事が出来ました。
プロビジョナル・レストレーションで完全に快適な咀嚼運動が出来るようになってから、この情報を参考にして最終補綴物を作製しました。

こういった機能的な最終補綴物のシュミレーションチェックが補綴治療の世界標準の専門医レベルのスタンダード・メソッドです。
私は原則的にこういった学問的常識に則り全顎補綴を行っています。どうしても長期間の治療になりがちですがプロビジョナル・レストレーションで快適に咀嚼できれば患者さんにも専門的な治療意図が体感的にもご理解頂けます。長い期間、快適な咀嚼も十分出来ない状態で放置しては患者さんの理解も得られないはずです。
プロビジョナル・レストレーションで満足して頂ける咀嚼機能の回復が出来て初めて上質なテーラー・メイドの補綴治療が可能になります。





NF臼歯破折2.jpg
左側下顎の臼歯部に装着されていたブリッジのレントゲン像です。
大臼歯のブリッジ支台歯が割れています。これを担当した前医は太い金属コアを根管内へ過分な圧力で装着しているのでしょう。ルートセパレーション(歯根分割)をしていた形跡がありますが歯根破折しています。


実は私のオフィスに歯に問題を生じて来院された患者さんの補綴物の特徴には不適切な支台築造(コア)を認める点が挙げられます。
根管治療された歯髄神経が無い失活歯ですからデリケートな配慮がなければ破折するのは当然です。
コアは根管の直径・残存歯質の厚み・コアの材質・接着方法など予後を左右する要因が沢山ある治療です。

極言ではコアの扱い方を観れば歯科医のレベルがわかります。
不見識な歯科医ほど支台築造を雑で不適切に行う傾向があります。





1年以上かかって最終補綴物が出来上がりました。


NF最終3.JPG


藤川さんもこの補綴治療には喜んで頂けました。
若々しく、綺麗な笑顔が素敵です。


NFsmile2.JPG




NF最終補綴(5枚法)2.jpg



最終補綴物の簡単な追加解説:


上顎は支台歯の維持力に不安があるため、それでも維持出来るようにフルブリッジを採用。軽量化するためにセラモメタルクラウンは重量の問題で止めて,今回はハイブリッドセラミックスにより軽量化したフルブリッジとしました。これで審美性を保ったまま軽量化できて患者さんの審美的要求性にもお答えできました。

また下顎は,画像のような金属床局部床義歯(パーシャル・デンチャー)を装着しました。
維持力が良好でシンプルで壊れない軽量の義歯はまさに患者さんの機能的要求にも答えるものとなりました。
昨今,このような義歯を作らないでファーストチョイスに人工歯根を選択する歯科医が多いので、敢えてアンチテーゼとして・このような補綴方法を多くの臨床家に観て頂きたいと思います。 

partial denture02.JPG

クラスプが掛かる右側大臼歯には全部鋳造冠(FCK)を、右側ブリッジにはハイブリッドセラミックス、左側のクラスプが掛かる犬歯には耐摩耗性を考慮してセラモメタルクラウンを装着しました。

また、上下顎咬合面はハイブリッドセラミックス築盛ではなくメタルの咬合面とし破折や耐久性を考慮しました。藤川さんは通常の会話や笑顔では殆ど下顎の歯が見えないタイプの口元をされた方なので、ほぼ上顎のフルブリッジの綺麗な審美的印象が強く表情に反映され咬合面のメタルによる審美障害は全く気にならないので躊躇無くメタル同士が咬合する最も安全でリジッドな咬合関係を達成できる補綴治療が可能になりました。




○治療をご希望の患者さんへ:

このブログは私自身が実際に行った臨床例を紹介したものです。治療概念や治療根拠を細かく解説する活きたブログ記事です。
オフィスHPと同様に院長の私自らがコンテンツ一切を作成しています。
よって私の歯科医師としての姿勢を厳密に反映しています。
当オフィスの治療をご希望の方,う蝕治療1本から丁寧な我々の治療をお受け下さい。
カウンセリングやセカンドオピニオンも自費(1万円)で承っています。

お問い合わせや予約はメールではなく電話でお受けしています。

最近、 歯科医院ブログを業者が作成しているケース も存在しています。こういった業者ゴーストライターが作成したブログも存在しますから、そういったモノを掲載する不誠実な歯科医院に騙されないようにご注意下さい。






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麹町アベニューデンタルオフィス 麹町アベニューデンタルオフィス 院長 戸村真一

麹町アベニューデンタルオフィス
院長 戸村真一

こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

街の歯科医院へ行くと感じる嫌な感覚を皆様が受けないような雰囲気にしました。 スカンジナビアン調に私自らがエントランスから室内の隅々に至るまでデザインし、 患者さんがリラックスできる清潔で清々しいセンス溢れる空間をご用意しました。

 巷の歯科治療の嫌な記憶を思い出すことのない快適な環境でお持ちしております。気持ちよく治療をお受け下さい。

日本の医療機関のホスピタリティーは低くセンスが感じられないのが現状です。 当院の室内環境は、私の診療哲学の現れです。 また、私のオフィスでは正しく丁寧に本当の歯科治療を致します。 正に、日本の酷い歯科医療のアンチテーゼを具現したのが私のオフィスです。