根面う蝕と患者のコンプライアンス:約束を守れない患者はダメ
○根面う蝕とは:
去年、途中で予約をしていたにもかかわらず通院を止めたある患者の口腔内写真を思い出したので記事を書きます。
下の写真に写っている茶褐色の部分(黄色の矢印部)が根面う蝕です。
正確にはこのケースでは根面う蝕から少しエナメル質の境界部を越えて一部エナメル質にまで及んでいます。
一般には、根面う蝕は歯肉が退縮して露出した歯根面にできるう蝕(虫歯)です。
歯肉退縮は生理的には歯周病治癒後やブラッシングなどの機械的刺激意外にも加齢でも生じます。
露出した歯根面は露出初期にはセメント質で覆われています。
特にセメント質は比較的中性域に近い弱酸で脱灰される特性があるために
弱い弱酸を出す乳酸桿菌といった種類の細菌にも容易に侵されてしまいます。
cf.エナメル質に生じるう蝕を作る原因菌はミュータンス菌のように強い酸を出すことでエナメル質が脱灰されてう蝕病巣が形成されます。
セメント質は数十μmの薄い層なので,容易に摩耗してその下の象牙質が露出してしまいます。
さらにその下層の象牙質に至れば大変にコラーゲンが多い有機質故に、細菌感染で変質(腐敗)して茶褐色を呈します。
上に口腔内の側方面観を一枚だけ掲載しますが、口腔内は左右とも同様に根面う蝕とエナメル質う蝕が沢山有りました。 また今回の記事では咬合面や他の口腔内画像は割愛しますが、臼歯は全て重度にう蝕に侵されています。
通常は,歯周病の治療により歯肉が退縮して引き締まった後に根面の露出は生じますが、
そういった歯周病治療後やメインテナンス期に起き易いのがこの根面う蝕です。
歯周病のコントロールは出来ていても口腔内の細菌叢に乳酸桿菌のような弱酸を出す細菌が沢山存在するヒトにはこの根面う蝕歯は非常に起き易いので注意が必要です。
*根面う蝕局所は、ある種のセメント系の充填材やフッ素含有レジン系充填材など適切な充填が可能です。
科学的リサーチによれば、口腔清掃が良好な方にも生じ易い点が大変に厄介です。
すなわち、細菌叢にそういった細菌が多い患者では起き易いので細菌が産生する酸に負けないように歯質側を耐酸性に歯質強化する方法を採ります。
具体的にはフッ素によるう蝕抑止が世界的にコンセンサス有る有効な方法論と言えます。
定期検査でのフッ素剤や日常的なフッ素含有の洗口剤等の塗布や洗口を励行する事が進められています。
特に、根面う蝕が認められる患者はう蝕活動性が高いハイリスクグループと認識して
徹底したオーラルケアを患者がセルフケアとして行うと供に
歯科オフィスで定期的(通常3ヶ月毎)に徹底したプロのオーラルケアを受ける必要性があります。
○歯科治療の成功は患者の性格やコンプライアンスで決まります
写真の患者は30才前の比較的若いヒトですが、う蝕活動性が高い患者でしたが、予約を勝手にキャンセルして連絡不能になって終了した極めてコンプライアンスが低い患者でした。
概して、う蝕多発ケースでは一般的ケースよりも患者のコンプライアンスが低い傾向があります。
すなわち、当たり前の理屈を認識して行使でき無いイイ加減な性格だからこそ、重度の歯科疾患に罹患したと換言できるでしょう。
極言では歯科治療の成功は患者の性格で決まります。
このようにう蝕も歯周病も概して重度に進行した患者ほどコンプライアンスが低く約束を守れないで
中途で治療を止めることが多いのは歯科医師なら幾度も経験する事です。
SNSのフォロワーでさえ、理解して来院されたにもかかわらず途中で通院しなくなる救いようが無い方も幾人かいました。
ちなみに、私はそういった認識が低い迷惑な方々の診療は時間が無駄になるため皆様にはご協力を御願いしています。