«  2012年10月  » 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
2012年10月12日




◎iPS細胞の臨床応用関連で早くも誤報が出現


公演中の山中教授.jpg




先日ノーベル医学生理学賞を山中 教授が受賞されました。

人体の任意の部位から採取した細胞でいわゆる万能細胞を作る技術が評価されて、受賞したものです。
これは正に1世紀に一つの生物科学に関する革命的方法論です。
しかし、山中先生自らが言及している通り、まだ臨床応用へはいくつもハードルがある状態です。
難病を抱える患者さんは臨床応用を待ち望んでいるものと思いますが、
臨床応用には慎重になることが必要です。




そのような中、昨夜ニュースを見ていたら、すでに森口尚史氏という研究者がiPS細胞を使った移植の臨床応用に成功したという記事が目に止まりました。


どうやら、森口氏のこの報告は誤報らしいと言われています。

誤報というより全くのデタラメを意図的に発表したと考えた方がよいでしょう。
移植事実はどうであれ、ハーバード大学内部の倫理委員会もそのような手術の実施を承認した事実を否定しています。よって、デタラメの売名行為だったように思います。
結果的には、売名行為などでもなく、むしろ森口氏の研究者としての信用を著しく低下させただけだと思います。




今後、ノーベル賞を受賞してiPS細胞の臨床応用を期待される中で、同様にいかがわしい情報や詐欺医療が全世界で問題になるだろうと私は心配している。

たとえば、重症の患者を騙す詐欺医療にだって"iPS細胞"という言葉を使って騙す輩が出てくる可能性があります。    偽の再生医療を語る詐欺には要注意です。






◎新しい技術の臨床応用に関する幾つものハードル


例えば、新薬の研究などでは臨床応用されるまでにはステップワイズで基礎研究から確実に積み上げて行く過程を経てやっと臨床治験を行うことが可能です。

臨床治験の膨大なデータを精査して、やっと新薬として一般に臨床応用される段階になります。
そして、厚労省が認可して初めて一般的な使用が許可されます。


研究では、最初は体外の細胞レベルの基礎実験を試験管やシャーレの中で、いわゆるin vitroの実験系でラボで行う実験を沢山重ねます。

ラボ.jpg

ラボ実験での実験系(in vitro)では、生体内のマルチ・ファクターでの
複雑系の環境(in vivo )とは異なるために、in vitroレベルで得られた結果が生体内で反映される保証はありません。

そうした数々のin vitro の研究成果を元に生物の生体内での試験である動物実験(in vivo)をする初期段階に入ります。

動物実験で得られた数々の成果で、やっと生物体内での知見が明らかになります。
世界的には、動物実験を前にして、かなり厳密な倫理規定が関係し始めます。
例えば、北欧ではヒトに近いサルを使った実験が承認されずに、ビーグル犬を使った実験をする傾向があります。
動物愛護団体等の影響力が大きく、ヒトに近い動物種を使用できない事情があると言われています。


この動物実験で良い知見が得られたからといって、すぐに臨床応用をされることはありません。
人間の生体での効果を実際に確かめるいわゆる臨床治験にも、幾つもの厳格なハードルがあります。

当たり前の事ですが、治験参加者の人間に応用する訳ですから、動物実験のような扱いを出来ない訳です。より厳しい倫理規定を課す必要があるのは言うに及びません。






医療関連の研究では、人間を対象にする医学研究には厳しい倫理的原則があります。

これは ヘルシンキ宣言 といわれる原則です。

1964年に初めて採択されて、幾度か条項を時流に合わせて変更しています。
最新では2008年のソウル総会で更に幾回めの変更が加えられています。

研究者が臨床研究を行う時には、このヘルシンキ宣言に準拠した倫理規定の下で、研究が行われています。

大学病院など研究機関では、研究に関する倫理委員会が存在します。
特に、臨床的に応用する前提の研究には厳格な倫理規定の下で行われることが必要です。
幾つものハードルを越えて、やっと人間の生体での効果を確かめる臨床治験が行われます。

同様にiPS細胞を生体に応用するまでには数々のハードルがあります。
これから、その段階へ進むための前段階にやっと来たか否かといったまだ初期段階なはずです。

到底、ヒトへの臨床応用を行って良い段階ではないはずで、ハーバード大学で一気に臨床応用を許可するはずもない段階です。 森口氏のデマ報道は、研究者なら誰でも疑う全くのデタラメでしょう(ニュース参照のこと)。








◎臨床医はコンセンサスを得られたことしか行ってはいけない。


基本的には、臨床医は自分勝手な治療法など行ってしまうと危険です。
私は、歯科界にはびこるエセ治療を以前から非難しています。

以前にも幾度かブログに書いた自家製薬剤を使用するう蝕治療など、その典型です。

iPS細胞の臨床応用へのハードルが幾つもある事を上で述べましたが、
医療における研究はとにかく厳密な規定の下、積み重ねる必要があります。

そして、その先には学会など公の場で多くの研究者の眼に触れて、議論され複数の研究者に追試されて効果や安全性が確かめられた時に、初めてそれは研究者の間でコンセンサス(多くの同意ある認識)を得られることになります。



こうした過程があって初めて安心して臨床応用出来る段階になります。
公的場である学会でも森口尚史氏の場合は、ポスター発表でさえ、疑義があるために却下されたとのことですから、学会は一種の倫理的フィルターの役割が発揮されたことになります。



ちなみに、学会には各々関連する専門雑誌があります。

投稿された論文は審査委員会で審査されて雑誌への掲載が許されます。
特に有名医学雑誌ではこの審査が厳しい傾向があります。研究者は、インパクトファクターが高い有名医学雑誌への掲載が許可された事だけでも名誉に思うような部分があります。
これは、審査を経て掲載許可された事は研究を高く評価されたことになるからです。


実は、歯科界にはステップワイズな合理的かつ倫理的思考ができないヒト達がいます。
一番危ないことは、勝手に自分で考えた事(治療方法など)を患者さんに直に臨床応用する先生が沢山いる事です。そして、学会で発表しています。


驚くべきことに通常なら基礎研究から積み上げられるステップを割愛して、いきなり臨床で自分の考えた方法や治療法や機械などを試して、発表しているものを見かけることがあります。

患者さんは実態を知らずに最新の治療法だと思って受けている中にも、そのような科学的根拠が疑わしい倫理的でないモノがあるだろうと思います。

ですから、皆さんは最新の治療法などという売り文句には注意して下さい。

学会や歯科界で充分なコンセンサスを得たそものならば、多くの先生がその効果や安全性を言及しているはずです。
一般的に広く言及されていない方法論は、効果や安全性まで怪しいモノである可能性さえもあります。
臨床では、一定の評価と安全性が確認されて評価が定まったものを選択すべきです。
こういった倫理的常識が無い医療人の治療は信用できません。





このような事は、本来は臨床医が厳密に理解すべきことですが、どうも医科のみならず歯科界にもそういった倫理的で地道な概念が欠けているように思えます。





追記(10/15): 
ワイドショーやニュース番組で森口氏の件で時間をさく割合が妙に多くなり、彼を袋叩きにし始めています。  

メディアは客観的に観るようにして下さい。丁度、最近では演歌歌手の独立問題等で2,3人の芸能人が毎日のように取り上げられた事がありますが、これと同じような状態です。

一種のスピンコントロールに利用され始めているようにも思います。

国難のこの時期に、大切な国民的な本来の関心事から眼を背けてしまうことは止めましょう。

皆さんも客観的な視点を失わないようにして下さい!


追起その2:

メディアの堕落ぶりを武田邦彦教授がブログで語っているので、ご覧下さい。

基本的に私も同意見です。
このようなことをTVのような媒体では語らない世の中になってしまいました。
この風潮は、現在の福島の事故を起こしたことと同根のようにも思います。


では、また(^_^)ノ
















« 2012年9月 | メイン | 2013年1月 »

Powered by
本サイトにて表現されるものすべての著作権は、当クリニックが保有もしくは管理しております。本サイトに接続した方は、著作権法で定める非営利目的で使用する場合に限り、当クリニックの著作権表示を付すことを条件に、これを複製することができます。
麹町アベニューデンタルオフィス 麹町アベニューデンタルオフィス 院長 戸村真一

麹町アベニューデンタルオフィス
院長 戸村真一

こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

街の歯科医院へ行くと感じる嫌な感覚を皆様が受けないような雰囲気にしました。 スカンジナビアン調に私自らがエントランスから室内の隅々に至るまでデザインし、 患者さんがリラックスできる清潔で清々しいセンス溢れる空間をご用意しました。

 巷の歯科治療の嫌な記憶を思い出すことのない快適な環境でお持ちしております。気持ちよく治療をお受け下さい。

日本の医療機関のホスピタリティーは低くセンスが感じられないのが現状です。 当院の室内環境は、私の診療哲学の現れです。 また、私のオフィスでは正しく丁寧に本当の歯科治療を致します。 正に、日本の酷い歯科医療のアンチテーゼを具現したのが私のオフィスです。