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2012年4月21日

「やさしい歯内療法の話」その1

       :正しく歯科治療をお知りになりたい方へ

○イントロ
先日の「歯科保存学のお話」でも書きましたが、「歯内療法学」とは文字通り、主に"歯の中"に存在する歯髄が入っている根管に対する治療を研究する学問です。
神経線維と毛細血管や繊維組織に富むモノである"歯髄"(皆さんが単に"神経と呼ぶモノ")への細菌感染などにより障害を受けて歯髄が死んだ(失活した)結果、歯髄の入っていた空間である歯髄腔(根管)は荒れた廃墟のようになります。もしくは障害を受けて炎症で痛んだ歯髄を除去(抜髄)した後は、根管の中を清掃してその空になった空間を根尖までしっかり充填材で充填して歯根を正しく保存します。
簡単に言えば、「歯内療法学」はこういった歯根にある根管(根管治療)の治療を研究する学問分野です。以下に、もう少し詳しい説明を列記します。


臨床では歯髄炎併発時以降、もしくは歯髄が失活した後を取り扱うことが多い治療分野ですが、臨床家は自信を持って行った歯内療法後の予後が思いの外不良であるケースも目にします。術者がコントロールできない解剖学的問題など難しい要因に予後が影響される歯内療法ですから、歯内療法学を正しく研究した先生ほど、歯内療法をしないで済むように歯髄を保護することの重要性を良く心得ていると思います。
私が日常的に不良治療が原因で生じた深在う蝕(深いう蝕)の「再治療」で多くの歯を歯髄が活きた状態(「生活歯」)で保存しているのも、こういった理由からです。臨床上「治療の大原則」は、「症状が進まないように可能ならば手前で保存治療を行うこと」です。

このように歯内療法学で扱う症例の多くは、う蝕が発端で生じます。う蝕も初期の時点で適切な処置をしないと、細菌は象牙質の更に奥の方へ進行し歯髄に近づき歯髄炎を生じ、結果的に歯内療法学的治療(根管治療など)が必要になります。


○う蝕発生から歯髄炎へ、そして歯内療法へ

細菌が、歯髄付近まで至ると、象牙質にある細い管(象牙細管)を通して何らかの刺激が加われば、歯髄に軽い炎症が生じ始めます。こういった状態を「歯髄炎」と呼びます。細菌が歯髄内にまで感染していない時点の初期の歯髄炎ではう蝕処置だけで歯髄炎が治る・可逆性の状態です。通常のう蝕治療時がこういった状態です。疼痛と軽い炎症は生じていますが、う蝕治療を適切にすることで、生活歯のまま保存可能な場合が多いのです。正にこれが、日常的に行っているう蝕治療です。

深在う蝕1.jpg

DSC_0042.JPG
深在う蝕の1症例:上の概念図の臨床例です。咬合面からう窩を観察したところ:濃く茶色い軟化象牙質(腐っている状態)を放置していた状態。これでも、生活歯で保存できました。

細菌が歯髄に入り込み,すなわち歯髄に細菌が感染したら不可逆な歯髄炎へと時間と供に進展し著しい疼痛を惹起して、保存不可能な状態になります。我々は、こういった歯髄炎では保存不可能と判断して、歯髄全体を根尖まで完全に除去します。この処置を「抜髄」と呼んでいます。この後、完全に歯髄腔を清掃して根尖まで無菌的操作で適切に根管充填材で充填し歯髄腔を完全閉鎖します。

○根管治療について

根管治療とは、歯内療法で根管に対して行う治療行為や処置の総称です。
細菌が根管に感染した状態を治療するときには、根管内の内壁歯質は、細菌が入り込んでいる可能性がある部分で諸々の異物にも汚染されています。ですから、充分に削り取る必要があります。こういった細菌に感染された状態の根管を「感染根管」と呼びます。また、こういった時の根管治療を特に「感染根管治療」と呼びます。

ラバーダム.JPG

 歯内療法ではこの↑ように必ずラバーダム防湿法を使用します。
ラバーダム防湿法は歯内療法治療の基本ですからこれを使わない歯科医の治療は危険ですか避けて下さい。予後が悪い事の他にリーマーファイルの誤嚥のリスクも高いのです。


特に感染根管治療では、根管内を機械的にファイルやリーマーといった器具で充分に内壁を削り取って拡大します。根管の歯質を充分に削り取り、適切に根管充填できるように根管の空間を仕上げる行為を「根管形成」と呼んでいます。

files2.JPG
根管治療に使用するファイル:ファイルの太さは色々あり、太さに合わせて色分けされている。
files box.JPG
ファイルボックスにセットされオートクレヴ滅菌されたファイル一式:滅菌もされていない薬液消毒以下の状態で使用する医院が大変に多い。予後が悪く、感染対策も不備で非常に危険です。もちろん充分に治りません。

感染根管1.jpg

根管内の有機質を溶解する次亜塩素酸ナトリウムの水溶液やEDTAと呼ばれるカルシウムと結合して石灰化物を脱灰するキレート剤で化学的に清掃も行います。通常は、機械的清掃と化学的清掃を併せて行い根管を充分に清掃します。
また、根管治療では、ある程度殺菌的効果を狙って薬剤を根管内に貼薬してしばらく置くことがあります。薬剤には数種類の選択肢はありますが、私は最もオーソドックスで世界的にその効果や安全性が評価されている水酸化カルシウム製剤を根管に貼薬しています。時には、数ヶ月薬剤を放置してより完全な感染根管治療を行うこともあります。


根管貼薬も終わり、こうしてきれいに形成され清掃された根管は、空のままでは、二次的に細菌が入り込んだ場合は、その温床になる可能性もありそのままにはしないで、根管充填剤で緊密に根尖まで充填して完全に閉鎖します。


○「根尖病巣」とは:
    原因がなくなれば根尖病巣は消える

歯髄に細菌が感染して、歯髄が死んでしまったまま放置されると細菌と供に歯髄が腐ったことで生じる物質(変性タンパクなど)や細菌が出した代謝産物と供に根尖孔(根尖にある穴)を通して根の外に出ます。

う蝕から根尖病巣.jpg

ここで、ヒトの体に存在する「免疫システム」が働いて細菌やこれら異物を本来自分の体にない存在・すなわち、「非自己」の「抗原」として排除しようと攻撃し始めます。
免疫システムの攻撃で戦場となった根尖部は"焼け野原"のように骨組織が破壊されます。これが「根尖病巣」の実体です。少し難しい話ですが、このプロセスでは、骨を破壊する細胞の破骨細胞などが活性化されて関与しています。このように防御する働きも二次的には破壊を伴います。

例えれば、これはウルトラマンと異星から来た怪獣の戦いと同じです。ウルトラマンは、怪獣を倒そうと攻撃しますが、結果的に我々の住む街をめちゃくちゃにしてしまいます。現実社会での内戦も同じで、弾丸やミサイルなど爆弾により、街も壊れてしまいます。

「根尖病巣」は骨の破壊によりレントゲン写真上では丸く黒い像として認められます。根管治療が完了し、根尖からこういった異物や細菌が出てこなくなると根尖病巣は治癒へ向かいます。
具体的には「根管治療」をして適切に根管充填された後は、根尖部には根管内から非自己である何モノも出てこないはずですから、もう免疫システムによる攻撃は必要なくなります。こうして根尖病巣の修復と治癒が始まり、次第に根尖病巣も縮小してゆきます。根管治療が上手くゆけば根尖病巣は跡形もなく消えてしまいます。実際の戦争でも、例えば、戦争が終わり焼け野原も
人々の努力で復興します。根尖病巣も骨を作り修復する働きを担う骨芽細胞などで修復されて直りますから、全くお同じです。

支台築造後.jpg
根管充填後、支台築造と呼ばれる歯の頭の部分に相当するものを金属やレジン(樹脂)などで作り装着して歯を正確に形成し印象を採ります。これをもとに冠などを作製し装着します。歯内療法により適切に治療された歯を土台として確実な補綴治療が可能になります。

○歯内療法学を正しく理解して、治療にご協力を御願いします

上のような説明をお読みになれば解る通り、「根尖病巣」自体を恐れる必要はないと思います。「免疫システム」が正常に働いている印と思って下さい。また、「根尖病巣」が有るからといって、根尖病巣を理由に歯を抜くといったコトは通常有りません。対照的に、歯周炎が進んだ場合は歯を支える歯槽骨など支持組織が歯根の周り全体に渡って破壊が進んでしまう場合があるので、重度歯周炎では、抜歯する場合があります。根尖病巣では根尖部に限局されて始まる破壊現象なので即抜歯といったことは通常ありません。ですから、治療を早めにお受けになり、しっかりと治療すれば大丈夫なのです。


歯内療法は、上のような作業を直接目で見えない空間に行う治療のため、ある一定の方法論を正しく守って順序よく行うことで理想的な状態に治療を仕上げるのです。今回は簡単に書いていますが、正しく一連の治療を行うには、正しい知識や治療技術(技量)と充分な治療時間が必要です。これをお読みになった皆さんに、正しい歯内療法の治療価値を知って頂きたいと思います。歯内療法学をご理解頂き、ご協力の下正しい治療をさせて下さい。ご来院を、お待ちしております。

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麹町アベニューデンタルオフィス 麹町アベニューデンタルオフィス 院長 戸村真一

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院長 戸村真一

こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

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