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2011年1月25日

【 歯科医院専用と一般消費者向け歯ブラシは同じ会社が売っている 】

今更ですが、歯ブラシについて少しだけ書かせて頂きます。
ドラッグストアに行くと沢山の歯ブラシが売られています。時々、患者さんから「どのような歯ブラシが良いでしょうか?」といったご質問を頂きます。「当院で使用しているButler#211のようなスタンダードなカタチの使いやすい歯ブラシが良い」とお答えしています。

DSC01004.JPG

↑ Butler #211

植毛のカタチで特徴有る代表的なモノには、L社製の山型植毛(山切りカット)の歯ブラシ↓があります。

yamagiri_cut.JPG

これが噂の山切りカット ! 最初期のモノと比較すると新たな改良が加えられているようですが...
メーカーの説明では、歯間部と咬合面の裂溝部が磨きやすいそうですが....


歯磨き粉・歯ブラシメーカーでは、一般消費者向け商品と歯科医院専用商品の2種類を両方とも販売しています。

すなわち、教科書に出てくるようなオーソドックスなButler#211のようなモノを主に歯科医院販売専用に作る一方で、山形植毛(山切りカット)のような一般消費者向け商品を発売しています。

一般消費者向け商品は目新しく独特な形状や工夫を施されたモノなど解りやすいキャッチコピー付きでその商品を多くの消費者が購入してくれるように別個の意図で作っています。

メーカーも利益を上げる方法を当然考えますから、このように二枚舌の二刀流になってしまいます。

実は私が大学生の時に、L社から大学の歯周病学教室に依頼があって授業の一環で山切りカットの歯ブラシに関する使用感などアンケートに答えたことがありました。
私は、「バトラーの製品のような歯ブラシを作るべきで、これは子供だましだ」といったコメントをした記憶があります。実際に、私には磨きづらい刷掃効果の低い試作品(現製品とほぼ同じカタチ)でしたから素直な感想を書いただけです。メーカーとしても、一般向け商品であっても多くの消費者に好まれるような商品で、しかも大学のような研究機関である程度のお墨付きがもらえる(工夫に確かな根拠のある)モノを作る必要を感じていたのでしょう。開発部のヒト達は、多少矛盾を感ながらノルマをこなすために本音では製品の刷掃効果など疑問でも、無難なカタチでもっともらしく商品化せざるを得ないのだろうと思います。


【 Butler#211は歯ブラシのマスターピース 】


歯ブラシの専門的見解からは、やはり Butler#211のような歯ブラシが良い手本になります。正にButler#211は、ペンで言えばモンブランの万年筆のような歯ブラシのマスターピースです。
現在日本では、サンスターが歯科医院のみならずドラッグストアなどを介しても販売していますので、皆さんも購入してはいかがでしょうか?

Butler#211スライド1.jpg
 ↑歯ブラシの中の歯ブラシ!正にマスターピースです。

良い歯ブラシとは毛の材質はナイロンなど洗浄性がよく衛生的なモノで、植毛の幅や列もあのような状態の(#211のような)モノが良いでしょう。年配の患者さんの中には、「やはり豚毛の歯ブラシがいいですか?」などと、未だにお聞きになる方がいますが、毛に腰が無く洗浄性が悪く不衛生なので動物毛は適当ではありません。その他、歯ブラシには様々なスペック(規格)が研究し尽くされています。

しかし、そういったスペックを一々言及しても意味がないので、ただButler#211のような使いやすい・磨きやすい歯ブラシを選ぶようオススメしています。もちろん、可能ならばButler#211を購入すれば良いと思います。


歯ブラシの研究は世界で沢山発表されていますが、形状に関しては、余り奇抜なモノではなく使いやすい当たり前なカタチであればどれでも問題有りません。また、使い古しで少々毛が曲がって広がったような歯ブラシであっても、程度にも依りますが、歯垢除去効果はそう落ちなかったといった研究結果も出ています。すなわち、歯ブラシのカタチや規格(スペック)が云々いったことよりも、正しい磨き方で歯並びなど患者さんの口の状態に合った適切なブラッシングを充分に行うことの影響が他の要素に比べて遙かに大きいということです。ですから、使いやすいモノで正しく磨いて下さるように患者さんにはお知らせしています。

しかしながら、正しい歯ブラシの有り様から言えば、 毛が曲がり広がったような歯ブラシは磨きずらいのでどうか早めに交換して下さい。

【 歯ブラシで歯肉は磨かないように 】

 歯肉を歯ブラシでマッサージしても歯周病は治りません


以前、大学で診療していた頃、「歯茎が痛くて浸みて仕方がないから診てくれ」といってある患者さんがお越しになりました。拝見すると、歯肉が傷だらけでした。その傷はどうしたのかお聞きしたところ、「歯ブラシ教室で教わった通り、歯茎をマッサージしたらこうなった」と、おっしゃっていました。

東京には、患者さんを集めて歯ブラシの指導に大変に熱心な先生もいらっしゃいます。ただ、そういった中に幾つか学問的に間違った指導内容もあります。その中の一つは、歯周病の患者さんに歯ブラシで歯肉をマッサージするコトを強調して指導されていることです。そして、誤解して硬組織である歯牙と同じように軟組織である歯肉を磨いて傷を付けてしまう患者さんがいたのです。

今日、歯周病の原因論がはっきりして歯周病の治療は、すなわち歯茎(歯周ポケット)から歯垢(細菌)を取り除く原因除去療法であることが明確になりました。しかし、血行をよくするためのマッサージを歯周病のマストな治療方法として指導する先生が未だに生きた化石のようにおりました。

真面目な患者さんは、歯ブラシで歯肉が傷つくほど一所懸命に歯肉にブラッシングをしてしまったのです。ここで、これをお読みの方々には認識を改めてもらいたいと思います。


【 何でも患者さんのブラッシング不足のせいにする困った先生 】

 あなたの歯茎の出血の原因を考えましょう


ブラッシングを熱心に指導をしている先生の中には、何でもブラッシングで治療できるような姿勢で指導する方がいます。すべてブラッシングが足りないから治らないといった事を言及される方もいます。
例えば歯科医師サイドがイイ加減に治療してポケット内に歯石やプラークを残しているから出血(BOP:プロービング時の出血)がなくならない場合に、患者さんのブラッシングが足りないことが原因だと言い張っている先生がいます。

こういった先生に受診している患者さんの歯はすり減ったようにピカピカです。しかし、残念なことにこういった方の歯周ポケット内には歯石が残っていてスケーリング&ルートプレーニング(SRP)は充分に行われていないことが明白です。

こういった先生は、まるで戦前の歯科医師のように、現代の学問的コンセンサスを正しく認識していません。

BOPが有ることはポケット内に炎症が存在することを現しているから、ポケット内の歯石やプラークが存在することを意味します。ポケット内をSRPし再評価で出血(BOP)が一度無くなったならば,その後の出血はプラークコントロール不良で細菌が歯肉縁上からポケット内へ戻ったことを意味し、プラークコントロール不足を患者さんへ指摘できます。しかし、最初からSRPが完了していなかったのであれば、歯科医師サイドの診療が不良だということを意味します。実は、こういった恥ずかしい勘違いが巷には多いと思います。これらは全て歯科医師の学問的認識不足による患者さんへの迷惑行為です。 正しい認識を持って、良い歯科医院を選択しましょう。そして、不良診療にはくれぐれも気をつけましょう。


【 ブラッシングではポケット内を充分には掃除できません 】

 ブラッシング(歯ブラシ)だけでは歯周病は治せません 

歯ブラシ(ブラッシング)では、歯周ポケット内をほとんど清掃できないので、歯科医師や歯科衛生士がポケット内をSRPで清掃する必要があります。

ただし、歯肉炎(歯肉に限局した炎症)の初期の状態では、丁寧に適切なブラッシングをすれば、これのみでも治療可能です。しかし、歯周炎(歯周支持組織にも破壊を伴う炎症)に移行し深いポケットが形成されれば、ポケット内に歯ブラシの毛先が充分に入らないことから、ポケット内の清掃は不可能です。
ですから、SRPを適切に行えない歯科医院では患者さんがいくら歯ブラシを努力したからといって、歯周病は決して治療できません。

 ◎口腔清掃の守備範囲

・歯肉縁上:ポケットより上のプラークコントロールは主に、患者さんが主体となる清掃範囲です。

・歯肉縁下:歯周ポケット内は、歯科医師・歯科衛生士など医院サイドの清掃範囲です。

歯周病治療では、上の2つの守備範囲の清掃の各々が両者、良好に行われて初めて完璧な口腔清掃が達成され、歯周病治療は可能になります。

*ただし、歯肉縁上でもpmtcのように歯科衛生士のお仕事もあります。


【 ブラッシング指導をお受け下さい 】

ブラッシングは、患者さんのお口の中の歯並びを頭に入れた状態でブラシの当て方を考えて頂き、正しい磨き方を工夫して頂きます。患者さんのお口の中に合ったブラッシングのキーポイントを衛生士が実地でご指導いたします。これを患者さんが守ることで飛躍的にブラッシング効果が上がります。

ブラッシング指導(TBI:tooth brushing instruction)は、歯科医院で歯科衛生士より直接指導を受けて下さい。書面でいくら説明するよりも実地で教わる方が確実に身に付きます。ご希望の方は、トゥースクリーニングもかねてTBIを受けにオフィスまでお越し下さい。当院では、「お手軽トゥースクリーニング」でお受けします。


   

2011年1月13日

【 伊達直人運動 】

1月11日朝のワイドショーでコメンテーターが 「伊達直人運動ができればイイですね」 と語った。それを聞いた夕方には、全国に沢山の伊達直人の輪が広がった。

伊達直人の名前で児童養護施設にランドセルなどが寄付された話を既に数日前からメディアが報じていたため、気になっていた方も全国には多かったのだろう。しかし、ただメディアが報じただけではこうした善意の輪はこれほどまでには広がらないだろう。
正に、世の中の空気というか、国民的な集団意識というか、多くのヒトの気持ちにある潜在的な意識か何モノかによる共感を呼んだのかも知れない。これはシンクロニシティーかも知れない。

不況で国民全体が厳しい状況を味わっているからこそ共感できるモノがあるのだろう。これを機会に今まで話題に挙がらなかったヒト達のことを真剣に考えるような空気が世の中に生まれてくれれば良いのにと思います。

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タイガーマスクの生みの親・梶原一騎氏もあの世で喜んでおられると思います。

思い起こせば、私が学生時代はバブル絶頂期だった。当時、土地転がしで何億儲かったなどというウソのような話が街でも日常的に聞かれた。下宿の近くのある建築業者は週3日以上も接待ゴルフをして公共事業の暗黙の入札で仕事をもらっていた。真っ黒に日焼けして夕方には近所の寿司屋で酒を飲む毎日だったようだ。当時タレント主婦までノウハウ本を出すような株で利殖生活をするブームもあった。真面目に地道に働くことやそういったヒト達をあからさまに笑うようなトンデモナイ風潮が実際にあった。しかし、狂乱の時代も「東京ラブストーリー」が最終回を迎えて幕を閉じた。
正に、うたかたの夢は泡と消えてしまった。

そういった経験をしていながら20年もすれば忘れてしまうのがヒトの性であります。ほんの10年近く前までITバブルとその余波で少し景気が上向きな傾向もあったが、この数年リーマンショック後は極めて厳しい日本経済の状況がある。これは世界同時で生じた未曾有の不況でもあります。

地球温暖化を世界各国が真剣に考え始めたのも、20世紀以降、先進国といわれる大国のエゴで無計画に利潤主義を貫いた負の総和が結果的に極めて大きかったということに他ならない。
換言すると、全ての国も人々も、皆自分のことしか考えなかったからだろう。中国・インドのような新興産業国が巨大になって来た現在、レアアースなど希少地下資源獲得の熾烈な水面下の戦争が始まったいる。世界的規模では、大国のエゴはますます大きくなるだろうと思います。


【 ヒトのことを考えること・優しさの時代】


そんな中、今年の冒頭にJ-WAVEである評論家が、「今年は、少しは自分のことだけではなく他人のことを考えてヒトの役に立つことを考えるような年にしたい。そうした方が気も楽になるはずです。」といった抱負のような話をされていた。これには私も大賛成です。

我々の業界も懲りずにトンデモナイことを多くの歯科医師がしている現状は、本当の医療のあり方を忘れて、極めて利己的な利潤追求が疑問なく続けられて皆頭の中が麻痺してしまった結果だろうと思います。

患者さんは,そういったことを全く知らずに治療を受けているのですから、これは正常な状態ではありません。
私は、インプラント関連の記事を既に幾つか書いている関係で、それを観た方からメールをいただきました。
全顎的に沢山インプラントを埋入したある主婦からです。「とても良く噛めるから良いといって、勧められて治療したのにダメになったんです」「こういったことは、先生は予想してなかったんでしょうか?」といった内容でした。

はっきり言って、リスクを考えた管理(ケア)の必要性もインプラント自体の特性も全く話されず・適切なケアも実行されていなかったようです。

また、抜歯した本数だけ二十数本もインプラントを埋入するなどということ自体が歯科医師の頭がどうかしています。たぶん、沢山埋入して儲かればリスクを増やしても良いと思っているようです。結局患者さんのことなど最初から全く考えていないのです。

遅すぎたことではありますが、この辺で、自分の行ってきた臨床を省みて。歯科医師も患者さんのコトを高いレベルで考える歯科治療を実践する時代に来ていると思います。

この主婦の話など聞くと、全く「優しさがない歯科治療」です。

勇気を出して正しいことを行う。正しいことを語る そういったことなら、まともな大人であれば誰でもできるはずです。今年からは実践してゆきます。

世の中、今年からの10年を特に「優しさの時代」にできたら良いのにと私はそう思っています。


2011年1月11日

 【   間違った認識は患者さんをも困らせる   】


この頃、ますます歯科矯正に対するニーズが高まってきています。ここで、一般の方々が持つ誤った認識を訂正させて頂きます。

「歯並びが悪いとう蝕や歯周病になる」といったことをおっしゃる方がいますが、これは一見正しいように聞こえますが、根本的に勘違いをしています。
歯並びが悪いヒトは、概して歯の清掃が不良になり易い傾向はあります。もちろん磨きづらいからでしょう。しかし、自分の歯の状態に合った歯の正しい磨き方や清掃方法を身につけて励行すれば、全く問題はありません。充分に清掃できていないために、歯や歯ぐきに歯垢が停滞することでう蝕や歯周病になります。



【歯並びが悪くとも口腔清掃が正しければ問題有りません】


"歯並びとう蝕や歯周病との関係"について、思い出すのは10年ほど前、ある患者さん親子が来院された時のことです。

学校から春の歯科検診の後、「歯並びが悪いので専門の先生に相談するように」といった通知を渡されたので、早速矯正専門の歯科医院へ行ったら、矯正には随分お金がかかるらしいので困った。やはり治さなければいけないのでしょうか?」といった旨でした。

ここでまず問題は「歯並びが悪いと虫歯や歯周病になる」という勘違いです。

原因論から言え 歯科疾患は歯ぐきや歯表面局所への細菌感染により生じるので、口腔清掃をしっかりすれば歯並びが悪かろうが歯周病やう蝕にはなりません。 
しかし、多くの方は"原因が歯並びが悪いことだ"と勘違いしているようです。

歯科医師も、短絡的に「歯並びが悪いとう蝕や歯周病になる」といった言い方をすることにも問題があります。
もし歯並びが悪いことが原因ならば、う蝕や歯周病の治療には時間とお金がかかって大変です。
矯正の先生は儲かりますが、原因論が間違っています。
強いて言えば「口腔内の環境因子として歯周病やう蝕罹患のリスクを高める」といった言い方ならば可能です。
このように、歯並びが悪いことは発症の修飾因子であっても、原因ではありません。


【  私からのこの患者さん親子への実際に行った説明  】


そして、この患者さん親子に私は次のようにお答えしました。

「歯並びはきれいな方が良いですね。歯科矯正で歯並びがきれいになれば素晴らしいですね。」

「歯並びが悪いから、う蝕や歯周病になるのではありません。歯並びが悪いことは直接的なこれらの原因ではありません。」

「私がう蝕や歯周病にならないように正しいお口の清掃・ブラッシングの仕方などお手入れの方法を今からお教えしますから、それを毎日実践して下さい。そして悪くならないように時々定期検査にもおいで下さい。」

「歯科矯正は、確かに治療費と時間はかかりますが、大変に意義のある歯科治療です。しかし経済的な負担もありますし、ご両親も経済的に大変でしょうから今すぐにおやりにならなくても、これから説明する方法(ブラッシングなど)を励行していればう蝕や歯周病は予防できますから心配は要りません。」

「もし、歯科矯正をご希望でしたら、社会人になってからお子さんの判断で通っても遅すぎるということはありません。治療費だってご両親に全部負担してもらわないでもご自身の稼ぎから支払っても良いでしょう。最近は大人になってから歯科矯正をする方が沢山います。成人の矯正では、皆さん自覚を持って自身の判断で通っていらっしゃるので、矯正治療に非常に協力的で治療も上手くゆくことが多いようです。」

説明はこんな↑ところです。
しかし、こういった患者さんの立場で考えた当たり前のことが、矯正専門医の口から説明されなかったことが誠に残念です。


一般業種と同じで、歯科界にも医院経営に厳しい現状が有ります。ですから、患者さんが来院されたら逃さないといった思惑による変な対応や先生の一方的な都合で治療を勧めるようなケースも増えているようです。昨今の歯科業界では、インプラント関連のみならず患者さんの立場で、ものを全く考えていない歯科医師の話や危ない治療の話が沢山聞こえてきます。


誰も、自分の利益につながらないことは本当のことを正確に語らない時代になってきました。これは職業人として全く残念なことです。 
本当の正しい話を誰も語らないので、私は僭越ながらブログ記事の中や来院された患者さんには、できるだけ正確に歯の本当に正しい知識をお話しています。 


歯科矯正は、意義がある歯科治療です。ですから不見識な矯正科医に騙されないで、正しい医院を選択して綺麗な歯並びで良い人生を送って下さい。


2011年1月 5日

○歯垢は付着性がよいため除去にはブラッシングが必要

歯科疾患の原因の多くは、口腔常在菌である細菌です。細菌は、ただ単体で唾液中に存在し続けるのではなく、仲間同士群れを作って、ネバネバした物質に包まれて歯の表面や口腔粘膜に付着して生きています。その際のネバネバした物質は、細菌が作る「菌体外多糖」といわれる物質で、これは細菌自らが産生しています。肉眼的レベルでは、歯垢染色液で染まることで歯垢(デンタルプラーク)として認識できます。このように、歯垢染色液で染まるものを臨床的には「歯垢」と呼んでいます。

忘れないで欲しいことは、歯垢は非常に吸着性が良いために、「うがい」だけでは除去できないこ
とです。
ですから我々は歯ブラシを使用して機械的に歯の表面から歯垢を除去することになります。当たり前のようですが、毎日歯ブラシで清掃するのは、歯の表面から歯垢を効果的に除去するためです。

また、"ウォーターピック"という名の水圧を使って口腔清掃をするディヴァイスも市販されていますが、食物残渣(食べカス)の除去には確かに効果的ですが、歯垢に関してはブラッシングほどの除去効果はありませんから、もし使用するならばブラッシングを併用すべきでしょう。


○バイオフィルムという細菌たちのコミュニティー

歯垢を歯ブラシで除去できずにいると厚い重層構造を作ります。また、歯周ポケット内では、特に歯根面上に付着した歯石の粗造な表面や周辺から付着し出し、次第に歯垢が厚い構造を作ってゆきます。この中では栄養の供給路や情報伝達物質の交換が可能なシステムが出来上がっているといわれています。あたかも、これらは人間社会における上下水道・交通網・インターネット回線のような意味合いがあると解釈できます。このように「ソシアルな存在」として我々人間社会のような構造が歯垢の中には存在することが明らかになり、これが生きた細菌達の作った層状構造内に存在するので"biofilm"(バイオフィルム)という新しい用語で表現されるようになりました。


バイオフィルムの実態は、多種類の細菌達の集まりです。地球上に沢山の国があり、多民族が暮らすのと同じように、細菌には沢山の種類が存在します。細菌の分類は形態学的には、ビー玉のような球菌、球菌の連なった連鎖球菌、細長い糸状の糸状菌、紡錘状の紡錘菌、バネのような螺旋状菌、細長いソーセージ状の桿菌など多くのモノが存在します。また、酸素要求性からは、う蝕の時に多く見かける通性嫌気性菌、空気のないところを好む(偏性)嫌気性菌、運動性のある運動性菌など色々な性質や性格を持っています。また、マイノリティーとしてピロリ菌のように酸の強い胃粘膜上でも生育できる菌もいます。このようにバイオフィルム内には、人間社会のような多民族や少数民族のような多義の構成による細菌達が共存しています。

ここでは詳細に書きませんが、こういった共生関係のバランスを乱さないためにも、安易に抗生物質を使うべきではありません。今まで大人しくしていた細菌が突然暴れ出す可能性があるのです。間違った抗生物質の使用により耐性菌を作ってしまったり、一部の菌だけ突発的に増える細菌叢のバーストも生じます。
気をつけなければいけないのは、「薬で歯周病を治す」といったことを宣伝して間違ったコンセンサスがない抗生物質の治療法を行っている歯科医師が残念ながら歯科業界にはいます。

Variety of Bacteria in Biofilm(final).jpg

バイオフィルムは元々、自然界に存在する細菌達の特性として近年、微生物学や食品・公衆衛生の分野などで注目され盛んに研究されている概念です。むしろ一歩遅れて、十数年前から歯科界では歯垢に対してこの用語が使われるようになりました。
我々の身の回りや自然界には沢山のバイオフィルムが存在します。身近では、キッチン・シンクの凹んだところに水がたまったまま放置されていれば水が濁ったように見えるバイオフィルムが数日で観察できます。また、水流のある水道管内にも少なからずバイオフィルムが付着し得ます。ましてや、マンションの屋上にある貯水槽の貯水タンク内面には比較的管理が良い場合にも、少なからずバイオフィルムが付着しています。衛生環境を考えれば、バイオフィルムが付着し難い水道管や貯水タンクの素材と水の浄化方法の開発も必要です。


新しい用語を使用することで、「新しい概念」を明確に伝えることに役立ちます。しかし、その実体は従来までの歯垢(デンタルプラーク)に他なりません(同じモノに対する別の用語です)。
バイオフィルムという用語を使用することで、単に歯垢と呼んでいた時と比べ、その有機的な特性を表現し伝えることにも一躍かっています。この記事では、ここからは「歯垢」に代わり「バイオフィルム」という用語を使います。


○バイオフィルムは細菌達の危機管理体制

特に歯周ポケット内に存在するバイオフィルムは、細菌達の共同体(コミュニティー)を非常に分厚いディフェンスで守る構造ともいえます。バイオフィルムには、抗生物質のような薬剤も浸透しづらいことが解っています。例えれば分厚い城壁に囲まれ、敵から身を守る生活環境を作っているものといえます。国家でいえば、隣国からの侵入を阻止する軍隊のようなディフェンスです。

ですから、バイオフィルムがそのままのカタチでは、抗生物質の内服でも十分な効果は得られないのです。抗生物質でポケット内の細菌に殺菌効果を狙う時には、バイオフィルムを超音波スケーラ-などで洗浄して破壊するか、可能な限り細菌達をキュレットでスケーリング&ルートプレーニング(SRP)により除去した後に使用する必要があります。バイオフィルムがそのまま存在した状態では薬効が充分に働きません。これは内服薬のみならず、注入する形式の抗生物質(ペリオクリン等)でも同様です。
periocline1.jpg

20年ほど前に日本では、ペリオクリンという商標で歯周病治療薬としてポケット内注入式の(シリンジに封入された)抗生物質が治験が終わり、当時の厚生省に認可され発売されました。その時には、何人もの先生から「使ってみたけど効かなかった」といった事を言われた経験がありました(当時、私の大学で治験をしたために言われたのですが..)。

よく聞けば、ポケット内にSRPなど機械的清掃もしないまま注入していたということでした。上に説明したようにバイオフィルムが存在するので薬剤が細菌に充分に到達していなかったためです。そういった先生達は、「バイオフィルムの概念」も理解できていなかったのでしょう。たぶん未だに理解していない先生が業界内に沢山いると思います。ちなみに、保険治療でもある条件の下、ペリオクリンは歯周病治療に使用できます。

「歯周病は薬で治す」といったことを医院のウリ文句にしている歯科医院があります。例えバイオフィルム内に存在する細菌に感受性がある抗生物質を使用しても、細菌達のところまで薬剤自体が到達しなければ、全く効果は期待できません。歯周病原性菌に対する薬剤療法は、上のような幾つかのポイントがクリアできれば、症例や症状によっては意義を持つ戦略的治療方法になり得ます。しかし、「歯周病は薬で治す」といった安易な宣伝には勘違いして騙されないようにして下さい。

かなり前から世界中で、薬剤を使った歯周病治療に関しては多くの研究が発表されていますが、内服薬の服用だけでは歯周病は治せません。内服薬の服用だけで治れば、歯周病専門医も積極的歯周病治療も必要なくなるでしょう。結局、未だに「薬剤の服用だけでは歯周病は治療できない」ので、ポケット内の原因因子と修飾因子すなわち細菌と歯石の徹底的除去(SRPなど)が依然として必須です。これは現在の歯科界での世界的コンセンサスです。よって、こういったコンセンサス(常識)を無視した勝手な治療法や怪しい主張を信じてはいけません。結局それでは歯周病が治せないのですから。


○バイオフィルムを好む歯周病菌

ポケット内のバイオフィルムの厚い構造の中では、極めて空気が少ない状況が生まれます。この環境には空気の少ない場所を好む「嫌気性菌」といわれる種類の細菌が好んで生息するようになります。むしろバイオフィルムの特徴のために嫌気性菌である歯周病原菌が住む場所として極めて好ましい生育環境になっています。

また日常臨床では、定期検査の時期に入った患者さんの定期検査時には、ポケット内にエアスケーラ-やキュレットでのバイオフィルムの除去・清掃を行います。 これは、前回の定期検査時からバイオフィルムの再形成がおこっている可能性を懸念して行う処置です(BOP(+)部は必須)。すでに幾つもの研究から、患者さんが3ヶ月ブラッシングを怠るとポケット内のバイオフィルムの状態は、SRPする前の状態に戻ってしまうことが解っています。ですから、 可能ならば3ヶ月に1度ポケット内の細菌学的環境をリセットする必要があり、清掃します。

患者さんの努力で常に高いレベルの縁上のプラークコントロールができていればバイオフィルム再形成のリスクは少なく、逆に充分にできていない時にはバイオフィルム再形成のリスクは高くなります。  とにかく、定期検査時にはポケット内にバイオフィルムの再形成を懸念して、ポケット内とポケット縁上の清掃を行います。このようにバイオフィルムを意識して、バイオフィルム再形成のリスクを低下させる治療方法で歯周疾患の管理を行う必要があります。

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麹町アベニューデンタルオフィス 麹町アベニューデンタルオフィス 院長 戸村真一

麹町アベニューデンタルオフィス
院長 戸村真一

こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

街の歯科医院へ行くと感じる嫌な感覚を皆様が受けないような雰囲気にしました。 スカンジナビアン調に私自らがエントランスから室内の隅々に至るまでデザインし、 患者さんがリラックスできる清潔で清々しいセンス溢れる空間をご用意しました。

 巷の歯科治療の嫌な記憶を思い出すことのない快適な環境でお持ちしております。気持ちよく治療をお受け下さい。

日本の医療機関のホスピタリティーは低くセンスが感じられないのが現状です。 当院の室内環境は、私の診療哲学の現れです。 また、私のオフィスでは正しく丁寧に本当の歯科治療を致します。 正に、日本の酷い歯科医療のアンチテーゼを具現したのが私のオフィスです。