«  2010年12月  » 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
2010年12月27日

その1では、歯内療法の基本的なお話をしました。詳しくはそちらを読んで下さい。

○リスクの話:歯科治療とリスクの話

世の中、最近は「リスク」といったキーワードがメディアには溢れています。簡単に言えば、悪いことが起こる可能性=危険度のことです。いってみれば確率論でその危険性の大きさを認識することで、安全か危険かを知る合理的な考え方です。

金融商品がいち早くこの言葉を使い始めたように思います。ネット上やメディアでは、リスクへの対応策としての「リスクヘッジ」や「リスクマネジメント」...などといった言葉も良く目にする単語です。

絶対安全といったことは究極的にはありません。安全と思って投資したら、損失を負ってしまったといったコトは当たり前のように起こってきます。特にリーマンショック以降は、更にリスクの認識が高まったことと思います。金融商品では、「リスクがあることを前提に契約してくれ」といったことです。リスクを無制限に保証できないので、こういった考え方を業界では強く提示する必要があったのです。
同様に歯科治療にも、「リスク」といった概念を持っておくべきです。現実的には我々歯科医師は、「リスク」を最小限にする努力をすることがすなわち、「患者さんの立場に立った良い治療をすること」です。

日常臨床では、私はリスクの少ない治療法を第一選択で行い、患者さんにもリスクの少ない治療方法をオススメしています。

当院が、特に保存治療では「ラバーダム防湿法」の使用を励行しているのは、歯科治療におけるリスクマネジメントであり、リスクを最小限にする世界標準の方法論です。逆に、巷でのラバーダムを使用しないような不良な治療は、リスクが大きく歯をダメにすることはお解り頂けると思います。

例えば昨今、問題になっている「インプラント治療」は、インプラントが生体に埋入されること自体にリスクがあることを患者さんが充分認識していないために、世間ではトラブルが生じているようです。

本来はリスクを認識した時からインプラントの適切な管理が始まるのですが....
そもそも、こういったリスクに関する認識がない臨床医は、適切にリスクマネジメントできるわけもありません。もちろん患者さんへリスクの説明などする訳もありません。はっきり言ってしまえば患者さんへ多大な障害や損害を与えかねません。非常に危険ですから、インプラント治療を選択する前にインプラント治療自体にリスクが内在することと、そのリスクマネジメントの方法論と問題点を患者さんは是非とも考えて下さい。その上で治療を行って良いか否かを決定して下さい。


○コロナルリーケージという理論

 ところで、歯科治療の「歯内療法」では、正しい手続きで根管治療を行いきれいに根管充填された場合でも、"cronal leakage"(コロナルリーケージ)と言われる歯冠部に根管への漏洩ができます。歯冠部から隙間が生じて根管へ漏洩が生じます。この隙間を通じて細菌が根管内へ移動し得るというこの学説が幾つもの研究で証明され最近ではコンセンサスを得ています。

またさらに、根管内の根管充填材の中にも、どんなにベテランの歯内療法学の専門医が根管充填しても大なり小なり狭い隙間(micro leakage)による漏洩が生じることも解っているのです。

コロナルリーケージの細菌侵入経路.jpg
実際の患者さんのお口では、歯冠部に装着された補綴・修復物と歯との隙間からcoronal leakageで根管へ細菌が移動し、根管内・根管充填材の間もしくは根管壁と根管充填材の間に生じるmicro leakageを通じてさらに根尖孔へ細菌の移動通路ができるのです。
つまり、口腔内の細菌は、補綴物と歯質との隙間から入り込んで根尖部へ移動して根尖病巣を生じる可能性が示唆されているのです。

一度根尖病巣が消えたように見えても、再度coronal leakageによって根尖病巣が生じる可能性があると換言することができます。もちろん、coronal leakageや根管充填部での漏洩の影響で根尖病巣が治らない可能性があります。

よって、根管充填の状態が云々よりも、歯冠部に装着された補綴物の適合性など補綴精度が歯内療法の予後にはより大きく影響するといった考えが、専門医の間では支持されてきています。
ですから、補綴治療の精度は非常に大切なのです。


○根管治療後、根管充填された歯は、早期に歯冠補綴物を装着すること

根管充填された歯牙ではcoronal leakageを前提に、歯科治療には注意すべきことがあります。
coronal leakageが生じるリスクを最小限にするために、できるだけ充填物と歯質との界面を正しく処理して完全な接着が可能になるように充填物での閉鎖を行うことが大切です。しかし、これでも時間が経つと接着部が破壊されcoronal leakageが生じる可能性があるところに難しさがあります。
ですから、リスクを最小限にするように精度の高いfull coverage(冠タイプ) の補綴物装着を早期に行います。精度の高い補綴物で覆うことで隙間(micro leakage)の長い経路の入り口である補綴物辺縁部を閉鎖させてしまいます。マージンフィット(辺縁適合性)の良い歯冠補綴物でリスクを低下させます。

コロナルリーケージと歯冠補綴.jpgcoronal leakageの防止といった書き方をしましたが、いわゆる従来から行っている補綴処置を精度高く正確に行うことが一番重要だといった意味です。


歯冠補綴物を装着するよう早い時期に移行しないと細菌が根管内へ継続的に移動する状態を許してしまいます。結局、予後が悪くリスクが大きいので、根管充填後はできるだけ早期に歯冠補綴物の装着をさせて頂けるように患者さんへはご理解頂いております。

よく見かけるのが、前歯部の根管治療で歯冠部の歯質が沢山残っていて見かけ上気にならない時には、数年にわたって根管治療をしたときの窩洞にただコンポジットレジンを充填しただけで放置してしまうことです。もっと悪いのは、切り株のように根管充填されたままむき出しで臼歯部に放置されているモノもお口に見かけます。これは大変に予後が悪く歯冠部を補綴しても長く持たないと思います。上述の理由から、根尖病巣の再発で根管治療が無駄になるリスクが高いのです。早く歯冠補綴をして歯牙を機能的なカタチできれいに保存しましょう。


○補綴修復物の精度が悪いと歯内療法の予後が悪い

精度の高い補綴治療が、歯内療法の予後に関係することが示唆されたことから,「私は精度の高い補綴処置を行うよう最大限の努力をしています。」

ごく最近も補綴物の作製でも、精密印象をやり直しているケースが2例ほど有ります。患者さんの唾液や歯肉のコンディションなどにより細部まで充分に細密な印象が採得できない時があります。患者さんにお時間を更に頂き、再度印象をすることがございます。そういった場合には、どうか精度ある補綴物作製に必須であるため,ご協力をお願いします。


○総合的にレベルの高い処置で安全な歯科治療が可能になる

補綴学と保存学では、交わらないような印象を歯科医師でも未だに持っている先生が多いようですが、実際は相互によい処置が成された時にリスクの低い安全な歯科治療が可能になります。
昨今、ただ白くきれいな歯にしたいといった一面的な審美志向へ偏った要求をされる患者さんには、認識を改めてもらいたいと思います。「審美歯科」といった造語を使う歯科医師と患者さんの両者に言っておきたいことです。目に見えないところが大切なのです。


2010年12月 8日


【 IT時代のパラダイムシフト】

現代は、情報化社会と言われて久しいですが、歯科関連の情報もネット上に溢れています。歯科に関しては、CMでも流れているような簡単な口腔衛生に関するモノも多く観られますが、これ等は大衆に対する啓蒙には良い効果を上げています。しかし取るに足らない不確かで怪しい宣伝の域を出ないモノも沢山観られます。不見識な歯科医院の宣伝文には、多くの患者さんが被害を受ける可能性があります。ですから、皆さんに注意を促しています。

何年か前、「トンデモ本」という言葉が流行ったことがありました。これはトンデモナイ荒唐無稽な非科学的作り話をまことしやかに似非科学者が本にしたものです。これはエンターテイメントとして読む分には面白いのですが、額面通りに無批判で信じると大変なことになります。ところで、「トンデモ歯科医師」の治療は人間という生体を治療する訳ですから、取り返しのつかない被害や障害を被る可能性があります。

ネット時代になって、個人がHPやBlogから発言できるようになりました。これは素晴らしいことです。海上保安官が流したYoutube画像のように、個人で体制を向こうに回して国家の機密情報でさえも世界に発信できるような時代になったのです。20世紀までの情報発信とは全く異なった21世紀の情報発信の仕方と取り扱い方を考える必要があります。法制度も後手に回っています。まさしくパラダイムシフトといえます。今日、wikileaksの創設者Julian Assange氏が逮捕されました。全世界を揺るがすような発信ができる時代になったのです。

Wikileaks-founder-Julian1.jpgJulian Assange氏

私のように歯科医としての考え方・診療哲学や症例の呈示も簡単にできるのです。以前なら本を出版するか、新聞や雑誌のコラム欄に投稿して採用されない限り、多くのヒトの目につくような文章にはならなかったでしょう。現在、Blogといわれるモノは日本が一番件数が多いらしいのですが、私見では読むに値しないものが圧倒的大多数です。ネット上の情報は正に玉石混合といえます。ネット情報の内容を無批判に鵜呑みにすると大変なことになります。これは、ネット情報全般に言えることです。常に客観的判断で情報の真偽を吟味できるだけの知性を持っていないヒトは、ネットを使用してはダメです。いい歳の大人でもネットの使い方を知らないヒトが大勢います。そろそろ、義務教育の段階からネットに関する教育をすべきでしょう。「学校裏サイト」で、友達をイジメるような子供達がいる現状ですから、尚更そう思います。

【 トンデモ療法には気をつけて】
また先日、3MiXMP法によるう蝕治療を受けたという患者さんが来院されました。麹町に来てから何人めでしょうか? とにかく歯が痛いので診てほしいといったことで来院されました。元々細菌に感染した象牙質を残してその上に抗生物質を砕いた混合パウダー(自家製剤)を塗布する療法なのです。
これは原因である細菌を除去しないで感染象牙質(軟化象牙質)を介して残存細菌を抗生物質により死滅させ、歯髄を保存しようとするコンセプトなので、う蝕治療の原因除去をする基本から考えて、コンセプト自体が全く間違っています。

詳しくは以前に書いた私のBlog記事を参照して下さい。結局、細菌が残存したままなのですから、抗生物質の効果が不十分ならば、痛みは止まらなくても当然です。一言でいえば、完全に根本から間違った方法論です。
歯科医師会でさえ、自家製剤を作りそれを使うこの3MixMP法の薬事法違反に抵触する可能性を通達文で会員へ流した経緯があり、そのような問題のある療法です。しかし、なぜか特殊な療法として自費治療の方法論として使用する先生が未だに多くいます。現在は、学問的正しい勉強をするより儲けになることが優先する状況です。若い先生方は、こうしたことに疑問さえ持ちません。

【肩書きに弱いヒトは要注意】

また、この療法を研究する研究会主催の講習会のようなものがあるようで、そういった会へは多くの先生が未だに受講しているようです。こういった研究会や学会といった名称は、任意に勝手に語ることができるため、権威ある会として勘違いする患者さんがいるようです。こういった研究会や学会は、任意団体の会でありながら認定医とかいった名称まで勝手に付けている場合があり、患者さんは「その先生は権威ある会で認定医になって、勉強された特殊な方法を使える先生だ」と間違ってしまうこともあるようです。
こういった実態を良く知って、患者の皆さんはご自身で判断して下さい。

我々の世界では、名刺に「歯学博士」「○○県歯科医師会理事」「○○大学○○教室兼任講師」「学校法人○○学校歯科医」「ロー○○ークラブ○○支部○○長」・・・三つも四つも肩書きが書かれた先生の名刺を頂くことがあります。日本人は肩書きが大好きな国民なのでしょう。こういった先生で本当に尊敬できるような方に会ったためしがありませんが..... とにかく、肩書きと勲章が好きなヒトは世の中には沢山いるのです。そして、肩書きや"○○の権威のようなモノ"に見えるモノに騙されるのです。もっと、本質で物事を理解するモノの見方をすべきです。

ネット上に出ている情報の信憑性に関しては、皆さんは知性を持って吟味して判断して下さい。「行間を読む」といった言葉が有りますが、背後にはすべて発信者の思惑があります。それを探れば、多くのモノがいかがわしい意図で書かれたことは明白になります。


【怪しいモノを見分ける知性を持って生きてゆく】

レイシック手術で、未滅菌・消毒の治療器具を使用して、患者に術後に感染症を併発させた医療過誤で「銀座眼科」の院長が逮捕されました。この逮捕は当然です。しかし、こういったずさんな儲けのみしか考えていない院長の医院でありながら、患者さんは非常に多く集まって当時ははやっていたそうです。
こういった医療過誤で問題になった医療機関の多くが、かなり患者が多く集まる医院であったという共通点があります。理由は、例えば女性ファッション雑誌などに大々的に派手な宣伝をする医院であって、認識の甘い患者さんがそういった宣伝に騙されているからだと思われます。

また、厚生労働省の元技官だった医師の美容整形外科で、その院長兼経営者である医師が逮捕された。このケースも事情は同様で、この医院は沢山訴えられて、TVの情報番組でも元従業員のインタビューまで交えて告発されたにもかかわらず、その医院には沢山の患者がその後でも集まっていたといわれています。

医院選択の場合は、良い先生に巡り会うことは全く大変なことです。でも、逆に「不良診療」を平気でするような危ない医療機関を見分けることは絶対にできるようになって下さい。これが「怪しいモノに騙されないで生き残るための最低限のサバイバル術」といえます。

【 頭の中の正しいアルゴリズムを作りましょう】

問題になった医院の広告を見ただけで、医療にはそぐわない何モノかを感じなければいけません。観る側に常識程度の知性的判断が求められます。

我々の頭には、今までの人生で経験してきたことや多くの知識がファイルにしまわれている訳です。そういったファイルの情報と現実の物事を照らし合わせて、脳の中の複雑な「思考回路のアルゴリズム」で判断されます。
これはコンピュータのプログラミングレベルでいえば、非常に複雑ですが、我々の頭脳のプロセッサーはスーパーコンピュータ以上のスピードで、この判断を瞬時に行っています。

ある人物に会った時にその人間を怪しいとか信頼できるとか判断する時に"勘"でそう思ったといったことをよく我々は口にしますが,実は頭脳ではその複雑なプロセスを無意識に近い状態で行っています。我々がいう"勘"という言葉がありますが、これはいわゆる根拠のない当てずっぽうではなく、このように根拠があることが多いのです。ヒトによっては、この"勘"が全く狂っているヒトがいるようです。これは思考回路のアルゴリズムが狂っているのです。

algorithm_01.png

そういったヒトは、概してヒトに騙されやすいと思います。頭の中の物事の判断に必要な思考回路のプログラミングである"アルゴリズム"を正しく論理的に構築することが、すなわち知性や教養だと思います。広く物事を勉強して、物事の論理的な考え方をトレーニングすべきです。

皆さんも、健康を得るためには、知性を磨きましょう!

2010年12月 6日

【 歯科保存学とは 】

歯科保存学とは、意味合いは文字通り、歯やその歯髄や歯周組織を機能的状態で保存するための学問分野の総称です。「歯周病学」、「歯内療法学」、「保存修復学」などといった科が、日本の大学では一般的に保存学といわれ、各大学に講座が存在しています。

books.JPG

私自身は、このうちの歯周病学に興味を覚えて、大学院で歯周病学を勉強しました。さらに、卒業後は日本の歯周病学の権威として著名なスウェーデンデンタルセンター弘岡秀明先生の下、歯周病関連の論文を幾編か執筆し、日本初のエムドゲインによる歯周組織再生療法の教科書を2000年には執筆し共著で出版してもいます。

保存学の中でも、歯周病学が少し遅れて科学的根拠に基づく学問的体系が出来上がった分野で、他の分野より学問的充実が今後も更に期待できる余地が多く残されています。ですから、大変研究者にとっては魅力的歯科分野でもあります。

【 う蝕治療を中心とした再治療ばかりの日々 】

麹町に来てからは、歯周病ももちろんですが、歯科臨床の基本であるう蝕治療(虫歯治療)に余りにも不完全でデタラメなものが多いため、毎日のように過去に何らかの治療が加えられているう蝕に罹患した歯の再治療(治療し直し)をしています。

この頃は、う蝕治療に限らず巷の歯科医療が間違ったものが氾濫しているので、色々な種類の再治療ばかり行っているのが現状です。 また、私のブログや医院HPをご覧になって、東京近県から、たった1本のう蝕治療だけのためにでも、来られる患者さんも出てきました。
昨日は十数年間、数々の歯科医院をめぐった結果、ある症状を的確に治療してもらえなかった患者さんが茨城県からお出でになりました。

【患者さんは良医を探し始めています】
はっきりと言えるのは、気軽にう蝕治療だからとか○○の治療だからといって、近所のどの歯科医院でも同じだと思い歯科医院選択を間違えると歯の寿命を短くするような大変なことになります。

はるばる遠方から千代田区麹町までお越しになる患者さんが出てきたということは、こういったことを患者さんが感じ始めて必死に医院捜しを始めた状況を現しているように思います。


【 歯科保存学の学問分野とは 】
実際のう蝕治療では、コンポジットレジンを使用し即日治療が完了する充填処置、精度の良いハイカラットの金合金インレーや歯質色のセラミックや第三世代の丈夫なレジン系材料による自然な充填物の装着などを行います(過去のブログ記事を参照のこと)。

インレー装着やコンポジットレジン充填に関する学問は、大学の講座では「保存修復学」に分類されることが多いと思います(大学により名称は異なります)。
保存修復学は、欧米や一部の日本の大学では、最近は補綴学に含まれることが一般的になってきました。「保存修復学」という名称の学会は米国ではもうありません。

修復学(restorative dentistry)の細菌学的な学問的根拠は、う蝕学(Cariology)という講座で研究されています。日本では、単独で「う蝕学」の講座は余り存在せず、修復学の一分野として含まれることが一般的です。
また、コンポジットレジンや充填金属など材料学的な側面での研究は、「歯科理工学」という講座でも行われています。

ですから、「歯科保存学」とは、幾つもの学問分野が集約した総合的学問分野ともいえます。

日本では残念ながら、歯科臨床の基本である「う蝕学」に関する教育が充分でないようです。う蝕治療がデタラメな状態で放置されているものを毎日目にしています。毎日のようにインレーが外れ、変色したう窩を持つ患者さんがお越しになります。今更ながら、日本でも「う蝕学」をしっかり正しいカタチで教育する大学教育が必要だと思います。


【 歯科医師の一番大切な仕事:感染の除去 】
具体的な歯科臨床のお話に戻りますが、歯科疾患の原因は主に口腔内にいる細菌の感染です。二大歯科疾患すなわち、「う蝕」も「歯周病」も口腔常在菌(我々の口の中に存在する細菌)の歯質や歯ぐき(歯周ポケット)局所への感染で生じます。

ですから、治療法でまず一番大切なことは、原因である細菌の除去を行うことです。歯科治療の基本は、細菌を感染部位局所から除去(感染の除去=原因除去療法)することなのです。

その具体的治療法は、「歯周病学」ではスケーリングルートやプレーニングといった治療行為で、徹底的に歯周ポケット内根面に付着した歯石とその周囲のプラーク(歯垢)の除去を行うことです。

Scaling.JPG
キュレット(下写真参照)でスケーリング&ルートプレーニングをしているところ
ポケット内の作業なので、歯石を目で見ることができない。よって、適切なトレーニングが必要な治療行為です。巷にはこの処置が適切に行えない医院が誠に多い。

probe&curette1.jpgキュレットと呼ばれる、歯石除去用の器具:先端部で歯石を除去する

また、「歯内療法学」では、例えば根管治療では根管内に感染した細菌を、リーマーやファイルといったヤスリ様の細い針金のような器具によって、リーミングやファイリングという往復回転運動やヤスリがけのような往復運動の操作方法で根管内から細菌が侵入している可能性のある象牙質を削り取ることにより根管壁を清掃して細菌を除去することなのです。そして、除去した後の空間である歯髄腔を緊密に根管充填剤で根の先(根尖)まで充填することです(そして治癒します)。
DSC00982.JPG
リーマーとファイル  :主に手指で丁寧にリーミングやファイリング操作をします。
file holding.JPG

また、保存修復学では、う窩(虫歯の穴)から感染歯質(細菌が入り込んでいる象牙質)を完全に削り取って、可能ならば歯髄(神経組織と毛細血管による歯の中心の組織)を保存して、う窩を完全に閉鎖・充填して可能な限り生きた歯(生活歯)として機能できるようにう蝕になった歯を治療することです。

dentine1.jpg
インレーが外れた窩洞は、焦げ茶に変色しています。軟化象牙質を充分除去しないでインレーが装着された典型例です。
rest1.jpg
コンポジットレジンで充填物と窩洞に隙間無く適切に接着され、処置が即日完了した。
隣在歯の大きく隙間が空いた保険の不良補綴物と比較して下さい(後日、冠で補綴した)。

ですから、私は毎日のように、う蝕に罹患した歯から細菌を除去して、歯髄を保存して生活歯として保存させて、快適にお噛み頂けるように治療しています。これは、歯の寿命を長く保ち機能させるための重要な保存治療なのです。けして歯を白くするためにコンポジットレジンなどを充填しているわけではありません。

こういった治療のコンセプトを丁寧に私は、日常臨床で行っているのです。


【 日本では、健康保険制度が災いして、雑で間違った治療が目立ちます】

日本では、健康保険のシステムから、こういった保存領域や補綴治療を効率的に行い沢山の保険点数を得られるように歯科医師は一所懸命に働いています。効率的治療を行うこと自体はけっこうなことで、悪いコトではありませんが、点数を稼ぐことを優先して考える余り、学問的に正しく充分な治療行為が必ずしも行われていないのが一般的傾向だと、毎日他院から廻ってきた患者さんの再治療に励む私は確信をもって、そう考えます。
悲しいことに、これが現実です。私のブログで毎度言及している歯科界の現状の背後には、出来高払いの保険システムの弊害も大きく影響しているのです。

【 すぐに抜髄する困った「審美歯科」の先生 】

先日、ある先生の葬儀で某有名歯科雑誌の編集者と久しぶりにお話しました。
その中で出てきた話では、「未だに審美歯科系の先生方は、平気で前歯を補綴する際には生活歯を抜髄して、クラウンなど補綴物を装着してますよ。」とのことでした。

私が学生時代から、そういった間違った補綴方法を講習会などで勝手に教えている困った有名な先生方がいました。彼らの一派は未だに一つも変わらずに大切な歯髄を抜髄して「審美歯科」的(?)補綴治療をしているのです。
これを聞いて私のような保存学系で勉強した歯科医師は、そういった先生方は医療人として大きな過ちを犯しているのだと考えています。同じ歯科医師でありながら、こうも違うものかと不思議でなりません。

生活歯として歯牙を保存することが歯科医師としての責任だと思う私のような歯科医師には、そういった先生方が軽薄以外の何ものでもいないと思うのです。これは,真っ当な保存学を知る先生ならば常識中の常識です。呆れたことに、保存学系の学問知識に欠ける一部の先生方が、勝手な造語である「審美歯科」なる言葉の下でそのような間違えた認識で補綴を行い、しかも講習会でもそれを教えているのです。その講習会や見識のいい加減な商業誌を通じて、更に認識の低い歯科医師によって真似されて、間違った治療のコンセプトの悪循環がずっと続くのです。

「審美歯科」といった勝手な造語を看板に掲げる医院の歯科医師の中には、そういった間違った歯科治療を平然としているヒトが多くいるようです。

前歯を補綴するからといって、う蝕もないのにすぐに生活歯を抜髄してしまう困った先生方は、自身の治療行為の過ちを省みることを知りません。勝手に抜髄し無髄失活歯にして、歯牙の寿命を縮めるリスクを与えておきながら、高額な治療費を患者から頂いて平然としているのです。
ココに書かれたことは、明らかに不良診療の一例にすぎません。技量もなく、認識や知識不足の危険なインプラント治療まで加えると、そういったことはまだまだ沢山あります。受診する医療機関に怪しい部分を感じた時には、不良診療を回避して下さい。

【 良医を探している患者さんへのアドバイス 】

良医を探している聡明な患者さんには、正しく歯科の現状を知って、間違った歯科医療に騙されないように注意して頂きたいと思います。私のブログや見識有る発信者の先生の意見などを聞いて、ある程度の知識を基に良医を探す"勘を磨いて"下さい。


こういった現状を、皆さんはどう思いますか?
これをお読みになった皆さんは、慎重に医院を選択して下さい。

当院・「麹町アベニューデンタルオフィス」では、正しい保存学的アプローチで日々診療しています。一般の歯科医療にご不満・ご心配のある皆様、安心して当院へお越し下さい。ご連絡をお持ちしています。


2010年12月 1日

以前、ある若い女性が虫歯の治療にお見えになりました。「ホワイトニングできますか?」私は当時からホワイトニングは健全な歯牙に良くないので、行わないという主義だったので、「あなたは充分きれいな歯だし、そのままが良いと思いますよ」とお答えしました。むしろ、そういったことよりもどこかで治療した前歯の補綴物(メタルボンド冠)が不良で歯肉炎を起こしていることレントゲン写真でその歯は歯内療法が全くの不良で根尖病巣ができている点や冠と歯根との継ぎ目(マージン)部の適合不良が気になりました。
そして、その女性の持っていたルイヴィトンのバックがコピー商品だった点がやけに気になって仕方がなかったのです。

LouisViton2.jpg

↑イメージ映像です。一応、これは本物です

この患者さんの受けた治療は、はっきり言えば偽物です。さらに持っているブランドのバックまで偽のヴィトンだったのです(LV・LVのモノグラムの模様がシンメトリーではなく少しずれていて明らかに偽物とわかるようなコピー商品)。表向きをきれいにすればそれでよいと思うタイプの女性なのかも知れません。歯は、眼にしみるほど白くなければイヤなのでしょう。そして根管充填されていない歯にメタルボンド冠が被っていのです。もっと実質的に健康を考えればよいのにと私は思いました。


"ホワイトニングで"思い出すのは夏休にとある会社が主催した会で、西海岸にクリニックを持つ日系2世の歯科医師(以下M先生と略す)とお会いしました。彼とは初対面でしたが少しだけ米国の歯科事情の話をお聞きしました。

まずM先生にホワイトニングについて少しお聞きしました。

私:「米国では、ホワイトニングのニーズは相当に高いのでしょうね」

M先生:「確かに、クリニックにホワイトニングを希望されて来院される方はいますね」

私:「週に何人もいるんでしょうか?」

M先生:「数年前まで、かなりニーズが多かったんですが、今はそれほどでもありませんね」

私:「どうして変わったんですか?」

M先生:「もう、ホワイトニングの余り良くない側面の事情がある程度認識されたからでしょう」

私:「日本では、未だそういった真っ当な情報はメディアになかなか載りませんね」

M先生:「クリニックも引っ越して、ビジネス街に近いロケーションで良い層の患者が増えたから余計だと思うね」

私:「それじゃ、レッドカーペットの医院ですか?」

M先生:「それほど大した医院ではないけど、以前より良い階層の患者が多いからかも知れないね」  「だいたい、パリスヒルトンをセレブリティーとか呼んでいるようなティーンがホワイトニングをしたがるんじゃないかな?」

paris_hilton.jpg
私:「大人はやりませんか?」

M先生:「大人の教養がある連中なら、chemicalに歯を漂白しようなんて思わないでしょう?」

私;「私も同感ですね。だから立派な社会人には認識を改めるように説明してるんですよ」

M先生「どうぞ、米国の真似をしないでまともに治療して下さい(^_^)」

私:「どうも先生、今後とも、ポリシーは大切にします」

まあ、こんなところです。

結局、正しく健全な健康観の問題です。確かにM先生が言及しているように、分別有る知的な大人なら理解できるようなことです。
皆さんも、正しい健康の知識と健康観を持ってゆきましょう!


« 2010年11月 | メイン | 2011年1月 »

Powered by
本サイトにて表現されるものすべての著作権は、当クリニックが保有もしくは管理しております。本サイトに接続した方は、著作権法で定める非営利目的で使用する場合に限り、当クリニックの著作権表示を付すことを条件に、これを複製することができます。
麹町アベニューデンタルオフィス 麹町アベニューデンタルオフィス 院長 戸村真一

麹町アベニューデンタルオフィス
院長 戸村真一

こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

街の歯科医院へ行くと感じる嫌な感覚を皆様が受けないような雰囲気にしました。 スカンジナビアン調に私自らがエントランスから室内の隅々に至るまでデザインし、 患者さんがリラックスできる清潔で清々しいセンス溢れる空間をご用意しました。

 巷の歯科治療の嫌な記憶を思い出すことのない快適な環境でお持ちしております。気持ちよく治療をお受け下さい。

日本の医療機関のホスピタリティーは低くセンスが感じられないのが現状です。 当院の室内環境は、私の診療哲学の現れです。 また、私のオフィスでは正しく丁寧に本当の歯科治療を致します。 正に、日本の酷い歯科医療のアンチテーゼを具現したのが私のオフィスです。