«  2009年2月  » 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
2009年2月20日

皆さんは、歯周病の治療を受けたことがありますか?

歯周病の発症は口腔内に常在する細菌によって起こされます。
ですから これら細菌を歯周病に罹患している歯周組織から除去することで治癒を促す。
すなわち、原因除去療法 を行い治療します。

診査を行った後、具体的にはまずスケーリングやルート・プレーニングという除石(歯石を除去すること)を行います。
また、細菌の住み家になり得る環境を修整したり(*),歯内療法(歯の神経などの治療)やう蝕治療を行い口腔内感染巣から細菌感染を除去します。

こういった一連の処置が歯周病治療における"初期治療"です。

*歯と辺縁が適合っていない不適合冠の除去・修整など。冠を除去した歯には暫間的にレジン(一種のプラスチック)性の仮の冠(テンポラリー・クラウン:TEK)を被せます。こういった補綴物の除去や修整は必要に応じて可能な範囲で行います。


では歯周病治療における基本である"初期治療"の内容を簡単にご覧頂きます。







      /////////////初期治療 /////////////  


「 診査・診断 」

口腔内撮影


問診を行った後、初診時の口腔内の状態を、写真撮影します。当院では、基本的には口腔内を5枚法で撮影しています。

写真撮影の詳細は以前のBlogを参照してください。



通常は口腔内撮影とレントゲン撮影を初診来院時に行います。



X線14枚
*上の14枚法の画像は一例としてアナログの従来型のX線フィルムを示します。


口腔内を全顎的にレントゲン撮影
ます。

現在、我々のオフィスではデジタルX線撮影を行っております。
現像を必要としないため撮影後すぐにディスプレーで確認できます。またデジタル装置による撮影での放射線線量は従来型の1/8~1/16程で安全性もより高い方法です。
得られた緻密なレントゲン像から歯槽骨の破壊状態などが明解に確認できます。



この後、患者さんの歯周組織をプローブという器具で診査します。



probe


これがプローブ(probe)と呼ばれる診査器具です


probe先端



プローブ先端には写真のように目盛りが付いています。
*直径は0.5mmが世界標準です.


いくつかのタイプのプローブが存在していますが世界中の専門医や教育機関で推奨されている直径0.5mmの目盛り付きプローブのPCP-11を主に使用しています(写真上のプローブ)。


*残念ながら日本の歯科医院にはこのようなプローブがない医院もあります。
またあっても、ルーティンで使用していない医院も多いようです。適切な歯周病治療はそういった医院ではできません。まともな医院へ受診しましょう!




probing



上顎中切歯遠心をプロ-ビングしているところ


歯の周りには溝が存在しています。解剖学的には健康で正常な場合は歯肉溝(gingival sulcus)と呼びますが、歯周病など病的状態の場合にはこれを歯周ポケット(periodontal pocket)もしくは単に"ポケット(pocket)"(以後こう呼ぶ)と呼びます。

プローブでポケットを測定することをプロービング(probing)と呼びます。プロービングによってポケットの深さや出血の有無を測定・確認します。



 概ねポケットが深いほど歯周病の侵襲が進んでいると思われより重度と診断されます。

BOP(+)



中切歯遠心部のポケットを測定した後、同部に出血が認められました。



プロービング時に出血が認められることをBleeding on probing(BOP(+))と記します。この部位には炎症が存在していると考えます。 

特に初期治療終了時などの再評価時にはBOP(+)部を記録します。BOP(+)部は炎症が残存するため更に何らかの治療が必要であることが示唆されます。

概して、再評価でBOP(+)の割合が高くなるほど、歯周治療の効果が無かった(=更に治療が必要である)、患者さんの清掃が不良(の可能性が大)もしくはその両方だと疑われます。

ペリオチャート記入



プロービングで得た測定値を記録しているところです。



この記録用紙をペリオチャート(periodontal chart)と呼びます。
世界中には沢山の形式のペリオチャートが存在します。
各々には特徴がありますが、当オフィスのチャートはスウェーデン・イエテボリ大学・歯周病科で使用しているモノを採用しています。(積極的な歯周病治療の対象になる4mm以上の箇所だけ記録されます。)


1本の歯をその四隅で近心・頬側・遠心・舌側の四面に分け、各々の最深値を記録します。ポケット底の最深部を探し記録することが必要です。
任意の何点かを測定して記録している術者が多いので、そういった場合は深いポケットを見逃してしまう可能性があります。


プロービングはトレーニングが出来ていないと適切な測定は難しいものです。
正確に測定できないと正しい治療は不可能です。かなり進んでいる歯周病でも進行度を過小評価してしまいます。

私は講習会で歯科医師を指導した経験から臨床医の多くが正確なプロービングさえできない現状を見てきました。これは一度も正確な臨床トレーニングを受けていないからです。こういったことは臨床全般に関して言えます。
その背景に大学教育で正しい臨床実地が殆どの歯科大学で行われていない実情を反映するものと考えています。




このように歯周組織を診査をした結果、歯周病の診断がつき治療計画が立案されます。



*患者さんには最初に歯ブラシの仕方など口腔清掃法に関してご指導しますが、ここでは割愛しまた別のブログで解説します。





「 スケーリング&ルート・プレーニングなど 」

キュレット



我々のオフィスで用いるグレーシータイプのキュレット(GRACEY11-12、GRACEY13-14)


チャート記録が完了したら、その結果を参照しながら歯周組織の治療を行います。
写真のようなキュレットと呼ばれる手用器具を使用し根面に付着した歯石を術者が直接手で丁寧に除去します。


キュレット先端



刃部の小さいminiタイプ(写真上2本)とregularタイプ(写真下2本)



キュレットの先端はこのようにスケーリング部位に合わせて適切な角度設定がなされ、先端部の刃部も軸に対してオフセット(offset:ある角度を付与)が付いています(図参照)。
実際に器具をご覧頂けば解りますが、刃の先端部は3ミリ弱~5ミリほどの小さなモノです。これを正確にシャープニングして、目に見えないポケット内を十分にスケーリングなどするのは、かなり繊細な技量が必要になります。

スケーリング



グレーシー型手用キュレットでスケーリングしているところ



ポケットの中にある歯石は歯根表面に付着しています。歯肉縁下では直接根表面が見えないためこれは難しい除去作業です。
また、歯石を取り残さないようにポケットの最深部(=底)までキュレットの先端を到達させ、そこに付着する歯石を除去することが必要です。
ポケットが深くなるに従いスケーリングやルート・プレーニングは難しくなります。
特に深いポケットがある進行した歯周病の場合は初期治療後の再評価(再診査など)で治りきってい
ない部位が明らかになります。こういった部位にはもう一度スケーリングをし直すことや明視下でスケーリングするために歯肉を剥離する"歯周外科手術"を行う必要性が出てきます。

*一般に前歯より臼歯に向かうほどスケーリングは難しい作業になります。
前歯の切歯・側切歯・犬歯は単根で根の断面も比較的楕円形に近くスケーリングも比較的し易い傾向です。
一方、臼歯の一つである小臼歯は主に単根、一部複根(2根)で単根でも断面が前歯より陥没した形態がありスケーリングはやや難しくなります。
また、大臼歯は複根(2根や3根が多い)でより根の断面のカタチもバリエーションがあります。根の間には分岐部と呼ばれる又のような部分が存在します。分岐部を清掃することは非常に難しく、分岐部に細菌が侵入すると分岐部病変を生じることで治療が更に難しくなります。


♣ 歯石とは:


 もともと細菌の塊であるプラーク(dental plaque)が唾液やポケット内の浸出液由来のカルシウムを取り込んで石灰化したモノです。歯石自体は細菌の死骸の固まりで病原性は無いと言えますが、歯石表面が粗造であり、ここに新たな細菌達が付着して生育し始めてプラークを形成するので問題になります。
歯石表面に生きた細菌の塊であるプラークが付いていると考えて間違えありません。
よって,ポケット内から"歯石を除去すること=細菌を除去すること"と考えます。 すなわち歯石を除去することが歯周病の治療の最も重要な概念と考えます。


♣ ルート・プレーニングとは:



 スケーリングで歯石を除去するのみならず更に除去した後の根面から治癒を阻害する壊死物を除去しプラークの再付着を防ぎ治癒を促す滑沢な根面にする徹底的な根面の機械的清掃操作をルート・プレーニング(root planing)と呼んでいます。

臨床的に厳密にはスケーリングと区別していませんが、概念的にはスケーリングの延長上にルート・プレーニングが規定できます。我々臨床家は単に歯石を除去することから根面を滑沢に仕上げることまでを含んでこの操作をスケーリング&ルート・プレーニング(SRPと略す)と呼んでいます。換言すると、 SRPを丁寧に全顎に行うことが歯周治療の基本といえます。

エッジがダル



キュレットのエッジ(刃)がシャープなモノと鈍くなったモノ

*鈍い場合はエッジが光って見える(右のエッジが鈍い場合=光っている)



ある程度スケーリングやルート・プレーニングを行うと、先端の刃部(エッジ)が鈍くなり、除去効率が下がります。術中何度もエッジをシャープニング(研ぐこと)する必要があります。

(こういった基本を教えない大学もあるので、ここでは歯科医へ啓蒙の意味合いも含めて紹介しています)


シャープニング



シャープニング方法は、主に上の2種類の方法があります。

左:砥石をテーブルに置きシャープニングする方法

右:砥石を手で持ってシャープニングする方法



*手ではなく機械を使用してシャープニングする方法もあります。







キュレット図解



キュレット先端部の名称など参照





stone とfaceの角度



キュレットのfaceと呼ばれる面と砥石との角度は、110度でこの位置づけを一定にしてシャープニングする必要があります。刃の幅は1ミリ強です。小さいキュレット先端をシャープニングするのは難しく、トレーニングが必要なことがご理解いただけると思います。



SRPではシャープニングを正確に行うことが必要です。

術中1回もシャープニングをしない衛生士や先生がいますが、こういった場合には鈍い刃先により歯石の取り残しを生じますし歯石の表面を擦った(varnish)だけで済ませてしまうことになります。
つまり、これでは治療したことになりません。
シャープニング一つとっても、適切にできない術者が多いのが現状です。これは徹底した基本的臨床教育を指導できる水準の高い機関が少ないことも大きな原因です。
残念ながら、日本の大学がその充分な機能を果たしていません。




エアースケーラーでスケーリング



エアースケーラーでスケーリングしているところ



手用キュレットに替わりこのようにスケーラーという機械でスケーリングする場合があります。
スケーラーという機械は先端の金属製チップが振動することでスケーリング効果を得るモノです。種類としては写真のようなエアースケーラーや超音波スケーラーがあります。


一般に、スケーラーを使うとスキルに関係なくあるレベルのスケーリングが可能なものと考えられています。多くのリサーチで手用キュレットと同等な効果が得られるとの結果がでています。

しかし、リサーチのデータや実験条件を参考にすると、1本当たりの操作時間5~8分・術者の解剖学的な知識による違いなどにより効果が異なることが解ります。

理屈から考えれば、ポケット底までチップ先端が至っている必要があり根面にチップが良い状態で当たっている必要もあるので、これらは手用キュレットと同じです。
一般臨床の状況を考えると、時間だけでも(数秒から数十秒程度)この条件(5~8分)に至っていない場合が多いし、経験の浅い術者の場合も取り残しが多くなることが考えられます。
換言すると十分に時間をかけて、知識のある術者が超音波スケーラーやエアースケーラーを使ってスケーリングするときにより良好な治療効果が得られるといえます。


*一般の歯科医院で行われている超音波スケーラーを主体にした短時間のスケーリングやSRPでは中等度以上の歯周病の場合には歯石のポケット内での取り残しを生じ十分な治癒は難しいと思います。
ですから、もし進行した患者さんが完全な治療を望む場合には歯周治療の本質を理解して実践している医院に受診する必要があります。


スプラソン&オドントソン



当院で使用している超音波スケーラーのスプラソンP-MAXとオドントソン



我々のオフィスではエアースケーラー&超音波スケーラーと手用キュレットを共に使用しています。非外科的処置では手用キュレットによる根面の性状を関知しながらSRPをする事が完全な根面清掃には必須と考えています。また外科手術の際の根面清掃の仕上げには、超音波スケーラーを使用しております。いずれも、上に述べた特性や基礎的コンセプトを理解して行っています。




POLISHING





スケーリングやルート・プレーニングを行った後は、ポケットの入り口や縁上周辺を研磨ペーストを付けたゴム製のチップやブラシでポリッシング(研磨)します。
ポリッシングは表面に存在するプラークの沈着を助長する付着物や微細な歯石の粒を除去し滑沢に仕上げるため行われます。


また、メインテナンス時などでも縁下のプラークの除去と共に、ポリッシングします。専門的にはプロフェッショナル・トゥース・クリーニング="PTC"や、"PMTC"(←商業的用語)などと呼んでいます。これは、質の高いメインテナンスにも必須です。

2009年2月10日

この頃、審美的歯科治療が脚光を浴びています。いろいろな場所で、いわゆる"審美歯科"なる言葉を私はあえて使わないと主張していますが、歯科の審美的側
面に無関心いったことではありません。むしろ、審美性には常に気をつけております。ただ、"審美歯科"という安易な使われ方や、多くの臨床家が使う"上部
だけの語感"を嫌っているのです。



女性や人前に出る患者さん、審美的要求が高い方には、健康な歯周組織のもと綺麗な修復ができるよう努力しています。



今回の症例は、口腔内の不良金属修復物で口の中が暗く見えることを主訴に来院された患者さんのお話です。



[ 症例 H.Y. ]



45歳女性



主訴:「口の中が暗く見えるので綺麗にして欲しい」





術前・正面



前歯部から不良なコンポジットレジンの充填が目につきます。こういった指で詰めたような充填がされていること自体、担当医の責任感を疑います。また、下顎
左側側切歯には、4/5冠という金合金の充填物が見えます。これもやけに目立ちます。金属と不良充填物、欠損の放置で、失礼ながらはっきりと言えば大変に
品のない口元だったと思います。





術前・5枚法







この患者さんの場合、お話をしていて前歯のみならず、口の中の充填物がかなりよく見えるしゃべり方をしています。同じような治療をされていても、それらが
目立つヒトとそうでないヒトがいます。例えば、タレントの久本雅美さんのように、歯茎がむき出しになる笑い方をされるヒトは、口の中の治療状態が他人に露
わになります。ですから、そういった方の場合はしっかりと恥ずかしくない治療が必要です。また、そういったケースでは、金属の露出は避けたいと思うのは,
特に女性では当たり前だろうと思います。



先日のブログでは、ご老人の修復で審美的側面を問題にしないので、金属冠で奥歯を修復した例をご呈示しました。反対に、今回のケースのように"金属が見え
る"といったことを"審美障害"とする場合もあります。この判断は、結局患者さんによります。すなわち、ケースバイケースであり、主観的判断も介在しま
す。同じ修復でも歓迎される場合とそうでない場合があるということです。









術後・正面







術後の正面観です。

この患者さんの場合は、前歯はコンポジットレジン修復で、臼歯はアートグラスという第三世代のレジン系修復物でインレー、クラウンとブリッジのいずれも対応しました。左右中切歯は、充填のみです。右側中切歯は、遠心の豊隆部を修整することで左右対称観を出しました。



費用の問題は別として、例えば前歯をセラモメタル冠などで修復する方法論もあります。しかし私は、まず侵襲の少ない修復方法をファーストチョイスにする考え方を基本的にします。もちろん、患者さんが見かけに不満な際は、そのまま形成すればセラミック系の冠も装着できます。



大変に口元がキレイになりました。

修復物だけでなく、歯周組織も健康的になった点もご注目下さい。









術後・5枚法







全顎的に歯周治療を施し、以前装着されていた金合金の修復物を全部除去して、アートグラスで再修復しています。二次カリエス(二次う蝕)が沢山見つかり、
かなり時間が掛かりました。ブリッジも、金属のスケルトンを作り、その表面に同材料を築盛して仕上げています。アートグラス修復では、セラモメタルクラウ
ン(メタルボンド冠:瀬戸の歯)やキャスタブルセラミックなどと比べ、少し安価になります。さらに、セラミックで生じる破折が、起こりずらいといった点も
利点といえます。一方、ステインやプラークが付き易いという欠点があります。とはいえ、口腔ケアが良好な患者さんでは、綺麗な修復がセラミック系と比較し
て安価(三割ほど)で達成できて良い材料の1つであると思います。









上下顎比較









これは術前・術後の口腔内の比較です。



術前、品のない暗い感じの口元だったのですが、金属が露出していないので明るい口元になりました。







臼歯だけ比較









第一小臼歯~第二大臼歯までの4本をアートグラス修復しました。以前の不適合・金属修復物と比べ適合も良好です。これで、審美障害は解消できたようです。



*第一大臼歯の色合いが少し白くなりましたが、シェード調整がセラミックとは違うためです。このケースは、技工所のS歯研に依頼しました。こういったカ
ラーマッチングなど、前歯部に比較して臼歯部ではさほど問題にならなかったようで気になりませんでした。この患者さんの主訴を解決するためには、前歯部の
ような色調の厳格さは必要なかったようです。







患者さんご自身が大変に喜んでいただけたことが、何よりと私も嬉しく思います。









2009年2月 4日

[ 症例 M.K. ]



年齢:75歳 男性

主訴:噛めないので、噛めるようにしてもらいたい



ある日、長身でお年とは見えない頑強な体格をされた方が来院されました。この方は、学校の先生をされていた方で、校長を歴任された後、退職されて今は第二
の人生を楽しんでいらっしゃるとのことでした。とにかく噛めるようにして欲しいとのことで拝見したのですが、上下ほとんど噛み合う場所が無くお困りのよう
でした。



この方のように、全くまともに噛み合う歯がない状態で何年も過ごしていらっしゃる患者さんが世の中には沢山いらっしゃいます。治療に行くのもなかなかきっ
かけが無く、毎日食べ物を丸呑みのようなカタチで召し上がっている方です。実際に、ご来院いただければ多くの場合何らかの方法論で噛めるように治療をする
ことは可能だろうと思います。

「 歯科医師は、大工さんのよう 」

補綴をするに当たっては、治療費が派生します。高度で時間の掛かる治療にはそれなりの自費治療費がかかります。しかし、患者さんにも予算がありますから、
むやみに高額な治療にするわけにもゆきません。予算内で患者さんのご希望をふまえ、より良い治療をさせていただかなければなりません(初めから予算内では、無理なケースもあります)。
また、治療費を削った結果、すぐに壊れるようなことがあってもいけません。私はできるだけ、安全に長くお使いいただける設計や材質の補綴物をお作りしたいと考えています。



こういったところは、街の工務店によく似ています。希望に可能な限り沿い、予算をふまえた設計をするのは、なかなか難しいのではないかと思います。私も、設計・施工をする大工さんと同じ思いを持ちながら治療しています。

komemtoto 正面観




義歯も、壊れたモノなら有るとおっしゃっていましたが、まともに噛めるモノではありませんでした。

術前・5枚法


まともに噛み合う(咬合する)部分がありません。下顎を少し噛めそうなところに動かして、咬合させているようでした。

術前きちんと咬合していない

黄色の矢印の示す部分は、本来は上下で咬合すべきところですが、噛んでいないかわずかに噛んでいるといった状態です。



この方のように、上下顎でまともに噛み合う位置に歯が並んでいない場合は、工夫が必要です。このケースでは、上下の顎の間隔をもう少し開ける方法、すなわち"咬合挙上(バイトアップ)"を行い、補綴学的に歯冠形態を工夫して、正常な噛み合わせを獲得することにしました。



全顎的に歯周病の治療をすると共に、プロビジョナル・レストレーション(意味のある暫間補綴物)を作製して装着しました。

プロヴィシオナル作製




ラボで、咬合の回復と生理的咬合関係が得られるように設計して、プロビジョナル・レストレーションを装着しました。



こういった設計をスムーズに担当技工士とできるのは、補綴の専門教育を徹底的にした先生と同じレベルの教育を彼が受けているからです。私の仕事を依頼して
いる青木・技工士は、以前から研究会で技工士の方々に講師として教えております。私は、彼に全幅の信頼を置いて技工物を作製してもらっております。
TEKセット口腔内




しばらくの間、このプロビジョナルで様子を見て、冠の形態など修正しながらより良いモノに近づけました。


ココで、少し問題になったのは発音の問題でした。今まで義歯のない(=歯のない)状態で生活していたので、計算して設計した理想に近いモノでも発音がしづ
らくなったのです。新しい補綴物が入るとよく見られることですが、慣れが重要です。この場合、前歯を削るわけには行かないので,形態がどうのというより、
この形態に慣れていただけるようにご自宅でできるだけおしゃべりをしてもらうようにお願いしました。

頑強な支台歯




これは、補綴物装着前の上顎の状態です。残りの歯がしっかりと残っていたので、前歯が4本無くなったこういったケースでも一続きのブリッジ(フル・ブリッ
ジ)にできました。残存歯が何本有ればフルブリッジにできるかといった法則はありません。力学的に,明らかに無理な場合もありますが、プロビジョナル・レ
ストレーションを作って補綴物が持つか持たないかを確かめて決定します。このケースでは、ブリッジが揺れることもなくしっかり数ヶ月保てたので、最終補綴
物もこの設計を採ったのです。



試行錯誤の余地が、こういった暫間補綴で与えられるので安全です。こういった基本を理解していない先生も多いので、時に補綴の失敗を目にします。



上の写真のように、歯並びは四角いカタチ(スクウェア型)に並んでいます。こういった歯並びのヒトは、概してしっかりとした骨格の丈夫そうな方が多いので
す。また、顔貌も咬筋が発達したお顔立ちです。このように,歯列と顔貌や、時に体格にも相関性や類似性があります。スクウェア型の歯列の患者さんは、咬合
力も強い方が多いのです。この方も例外ではなく、プロビジョナル・レストレーションもかなり擦り減りが早かったのです。ですから、この強い咬合力に耐え
て、耐久性のある補綴設計が必要とされました。すなわち、咬合面を金属で覆うタイプで、前歯部舌面も金属で覆い、下顎前歯切端がそこを滑走する様(*)に
しました。



*ヒトは閉口時には上下歯牙がきっちりと咬合し、生理的顎運動を行う際には上顎前歯舌面のある範囲を下顎前歯切端が滑走して運動します。このときの前歯部
でガイドする働きやこういった誘導要素を"アンテリアー・ガイダンス(anterior
guidance)"と呼んでいます。生理的な咬合回復では,アンテリアー・ガイダンスが適切に設定されるよう前歯部での歯の形態と咬合関係を適切に回復
することが必要です。これは現代咬合論の基本中の基本なのです。



前歯説面で滑走




黄色の矢印部分の金属部が、前歯の切端が滑走する領域です。このようにアンテリアー・ガイダンスが適切に設定されています。



主訴など考慮して、この75歳男性患者の咬合回復に、咬合面の審美回復を考えるのは見当外れです。

ファイナル・セット後5枚法




最終的な補綴物が装着されたところです。

正面観

良く噛めるようになりました。

「 設計はケースバイケース 」


同じような欠損形態でも、補綴設計は幾通りも存在します。

それに応じて治療計画も当然変わります。



ー 決定要因 ー


○患者さんサイド:
性別・年齢・職業・趣味(ライフスタイル)・性格・知性(歯科的理解)・予算(経済力)・希望・時間的制約など...

○歯科医師サイド:

学問的制約・コスト的制約・時間的制約・術者の技量 など...



これらの要因により決定されます。



この患者さんの場合は、私からご提案した「良く噛めて、丈夫な補綴物」を喜んで受け入れてくれたため、問題なく安全な方法論を採れました。例えば、患者さ
んが金属が口腔内に露出することを拒むと、ポーセレン(瀬戸)などの材質で咬合面を覆う設計になってしまい、強い咬合力による破折のリスクが高くなりま
す。ただ、このケースでは初めから予算的制約で上顎をポーセレンにはできなかったのですが...



予算の問題は有りますが、最近の多くの先生は下顎の両側欠損部への補綴処置としてインプラントを勧める傾向があります。患者さんのお年も考えて、適応か否
か考えることは必要です。さらに、歯を失った原因が歯周病であり、口腔ケアが難しくなりやすい年齢で、リスクが倍増することも忘れないようにしていただき
たいと思います。

さらにさらに、咬合圧も強い状態も加味すれば、このケースはインプラントの禁忌症だと思います。シンプルで「良く噛めて,壊れにくい設計」こそ、この患者さんの希望にかなう合目的の設計だと思います。

「 治療の価値に関する認識は、情報や知識で変わる 」
この患者さんも、この治療の価値をお解り頂けたようです。偶然、この患者さんの教え子に技工士さんがいたそうで、いろいろと自分の受けた治療の話をしたそ
うです。私は、中心位という位置で咬合器に模型を装着するので、フェイスボーという器具で生体の三次元的位置を咬合器に移し装着するのですが、こういった
操作などしていることや徹底的な歯周病の治療を受けたことを教え子の技工士さんに話したところ、「そのようなことまでしてくれる先生がいるのか」と驚かれ
たと言って、さらに喜んでくださいました。



日常行っている治療のステップも、他院では行われていないことも多いのです。例えば、技工士さんのような方が聞けば治療の違いがわかります。有り難いこと
に、客観的にその技工士さんが指摘したことで、当院での治療の努力やレベルを患者さんがより一層認識していただけるようになったのです。



当院は、精度を上げる操作はできるだけ割愛しないで丁寧に行っております。行わなくて良い場合もありますが、全て割愛すると精度を保証できるものがなくなってしまいます。エラーを作らないように、丁寧に必要なことを行っておりますので、治療を安心してお任せ下さい。

皆さんも、単に医院が近いという理由で受診するのではなく、的を射た治療方針を提案して下さるような良い先生をお捜しになって下さい。

« 2009年1月 | メイン | 2009年3月 »

Powered by
本サイトにて表現されるものすべての著作権は、当クリニックが保有もしくは管理しております。本サイトに接続した方は、著作権法で定める非営利目的で使用する場合に限り、当クリニックの著作権表示を付すことを条件に、これを複製することができます。
麹町アベニューデンタルオフィス 麹町アベニューデンタルオフィス 院長 戸村真一

麹町アベニューデンタルオフィス
院長 戸村真一

こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

街の歯科医院へ行くと感じる嫌な感覚を皆様が受けないような雰囲気にしました。 スカンジナビアン調に私自らがエントランスから室内の隅々に至るまでデザインし、 患者さんがリラックスできる清潔で清々しいセンス溢れる空間をご用意しました。

 巷の歯科治療の嫌な記憶を思い出すことのない快適な環境でお持ちしております。気持ちよく治療をお受け下さい。

日本の医療機関のホスピタリティーは低くセンスが感じられないのが現状です。 当院の室内環境は、私の診療哲学の現れです。 また、私のオフィスでは正しく丁寧に本当の歯科治療を致します。 正に、日本の酷い歯科医療のアンチテーゼを具現したのが私のオフィスです。