先日、週刊朝日に3週連続企画でインプラントに関わる危ない実態の記事が載っていました。マスコミの中では、歯科に関して面白い記事を書くことで有名な週刊朝日が、真っ当な記事を載せていました。

「週刊朝日」10/16号、10/23号、10/30号の3週連続企画として、インプラント周辺の諸々の危険な問題を伝えています。
今回の「週刊朝日」は真摯にレポートしていると私は評価いたします。ただ、最終的にはどのケースでもインプラント自体にリスクが大きく存在する事までは、
歯科医師の反論に留意して触れていませんでした。大きくインプラント治療を宣伝したM大学の教授やインプラント学会の記事広告(お金を払って掲載する記事
を装った宣伝)も既に「週刊朝日」は掲載している訳ですから、こういった広告を出してくれるお客さんがいるので、余り悪く書けない訳です。
しかし、この企画では"インプラント周囲炎(peri-implantitis)"の話を挙げていたのですから、聡明な読者の一部は、ここに書かれていな
い本来のリスクの存在をも行間から読み解いたことは想像に難くありません。そのリスクに関しては、この後書かせて頂きます。
*週刊朝日を購読していない方で、この記事をお読みになりたい方はバックナンバーが公立図書館に保存されていますから、上の3号の複写を図書館に請求して下さい(詳しくは各図書館におたずね下さい)。
「 まずは義歯を第一選択にする 」
ここで、最もリスクが少ない義歯の長所と「義歯は噛めない」といった誤った認識に関して、認識を新たにして頂きたいと思います。
私は、著書や論文の共著者でもあり、今回「週刊朝日10/23号」にもコメントを寄せた弘岡秀明先生のオフィスへ10年ほど前までは頻回に遊びに行っておりました。その当時、患者さんも数名任されていました。
任された患者さんの中で、某有名会社の役員をされている患者さんがいました。この方は、上顎が重度歯周病で、全部保存できない状態だったので、全部抜歯し
てインプラントを埋入する予定でした(弘岡先生の治療計画)。まず、予め歯がある状態で印象して、抜歯した状態を想定して義歯(即時義歯)を作製してお
き、抜歯と同時に義歯を装着しました。治癒と共に変化する顎に合わせて何回も修整して、3ヶ月程で即時義歯で快適に噛めるようになりました。
患者さん曰く、「これで何でも良く噛めるね」「義歯は噛めないって聞いてたけど、ウソだね」「でも、インプラントならもっとしっかりしていいんでしょ?」
多くのインプラントを希望する患者さんは、義歯ではご馳走が噛めないと思っているようです。噛めないと思っているから、インプラントにしようと考えるので
しょうが、適切に調整した義歯は,例えこのような即時義歯でも大変に良く噛めて吸着も良いのです。これは、局部床義歯(部分義歯)でも同様です。
結局この患者さんは、この後その義歯のままインプラントへ移行しなかったように聞いています。ちょうどその頃、この患者さんの会社の女子スポーツ部(実業
団系チーム)が解散したとのニュースを聞きました。業績悪化で役員給与もカットされたような状況だったのでしょう。そういった中、高価なインプラントでな
くて総義歯で充分だと思われたのだと想像しています。この患者さんにとっては、むしろ総義歯がベターな選択だったかも知れません。
このように、何本ものインプラント体をケアし、リスクを背負って生活するよりも、チャージも安い安全な義歯で解決する方が患者さんにとって良い場合は圧倒的に多いと考えています。もちろん、リスクを受け入れた患者さんの選択ならインプラント治療も可能ではありますが。
「 埋入後はインプラント周囲炎対策は必須 」
「週刊朝日10/23号」にも載っているように、インプラントが埋入される部分以外の残存歯部分にはインプラント埋入前に、歯周病やう蝕などの感染を充分に除去しておく必要があります。
もっときちんとした言い方をすれば、歯周病処置(う蝕処置含む)をする中で、欠損部対応の一方法論として、インプラントを使用するのです。もちろん、術後のプラークコントロールはインプラントおよび残存歯牙ともに徹底する必要があります。
残念ながら、多くの先生が全顎的に歯周病治療を全く施さないで、欠損部にいきなりインプラントを埋入しているのが現状です。全顎的に歯周病治療をしないで、インプラントを埋入するような先生の治療を受けるのは、大変に危険ですから絶対に避けて下さい。
歯周病やう蝕などの感染除去を徹底する根拠は、(細菌が棲む)感染組織が口腔内にある場合は、そこから悪い細菌が移動してインプラント周囲へ棲み着く可能
性があります。そうなると,インプラント周囲炎の可能性が高くなるのですから。(=インプラントがダメになる可能性が大きい)
また、私は歯周病の講習会でインストラクターをしておりましたが、インプラントを精力的にしている名前が出ている先生が、基本的な歯周病の治療や知識がな
いことを目の当たりにして、歯科界の現状にショックを受けました。またどれだけ、患者さんに迷惑を掛けたのだろうかと怖くなったことを思い出します。
「 インプラントは強いと言った先生は嘘つき 」
都内Yデンタルクリニックの院長は、日頃「インプラントは強い」と言ってはばからないそうです。インプラント周囲炎が、平気なのでしょうか?
天然歯に比べて、インプラント周囲は細菌感染に強くはありません。むしろ、天然歯牙周囲(歯茎)より細菌感染の侵襲を受け易い側面があります。ですから、ダメになりやすい傾向があります。
あるインプラントの第一人者と言われている先生に至っては、インプラント周囲につくプラークが無害のような事を、講演で平気で言及されていたことは有名な
話です。特に、残存歯があるのにプラークに問題が無いというのは、細菌学や歯周病学を知らないヒトのコメントです。スーパーバイザーとして驚く程の無知で
無責任なコメントと言わざるお得ません。権威者と目される方までこの程度ですから、一般の無知な歯科医師では、どの程度のレベルか想像に難くないと思いま
す。
更に付け加えると、天然歯牙の場合は歯周組織へスケーリングなどの歯周病の治療が可能ですが、人工物のインプラントの場合は、そう簡単に治療できるわけで
も、やられた組織が天然歯牙のように簡単に治癒するわけでもありません。多くの場合進行を止めることすら難しいのです。未だ、侵されたインプラント周囲の
治療方法は確立していません。インプラントの周囲炎では、一度やられた際には、天然の歯牙における歯周病より遙かに急速に進行してしまいます。
ですから、既に埋入されている患者さんでは、インプラント周囲炎にならないように天然歯以上の厳格なプラークコントロールが必要なのです。患者さんにイン
プラントを埋入した後、患者さん自身が質の高いケアが可能か否か想像してみて下さい。そもそも、歯牙を失った原因は歯周病です。これは、プラークコント
ロールが悪いから生じた訳なのですから。どんなに、プラークコントロールを指導しても、どれだけ長い間こういったケアが持続できるか?特に高齢者では、以
前より質の高いケアなど非常に困難なのですから。
「 ケアが困難なヒトに、インプラントを勧めるのは良心的か? 」
人間、60代頃から急に体が故障する傾向が強くなります。入院をすると、必ず口腔清掃は悪くなります。そういった時、インプラントが口腔内に埋入されてい
る患者さんは、インプラント周囲炎のリスクが著しく高くなります。(インプラント埋入患者さんは、平均して60代以上の方が多いと思います。)
現在、日本の病院ではインプラント装着患者を想定したような質の高い口腔ケアを看護師がしてくれる訳ではありません。もちろん自宅でも充分なケアは無理で
しょう。ですから入院した場合や自宅療養でも、インプラントがダメになり易い事を考えなければなりません。そういったことを公で誰も語らないことは不思議
でなりません。
大学の教授などへは、研究費の一部や一種の見返りが業者からきているので、インプラント関連でネガティブな事を言わない傾向にあります。また、無知な臨床
家に沢山インプラント材料を売る業者は、インプラント関連で問題が起きても、自社に火の粉がかからない程度であれば、自社製品を沢山売ることだけに奔走し
ます。このように歯科界での全く顧みられない悪循環は、多くの患者さんに結果的に迷惑を掛けているのです。ただ多くの患者さんは、インプラントがダメに
なって初めて気がつくのものなのです。
お年寄りや、初老の患者さん達(=小金持ちの方々)をターゲットにして,どう考えてもケアができないような状況が想像できるのに、平気でインプラント治療を第一選択として勧めるような歯科医師が良心的でしょうか?
この点、よく考えて下さい。
私は、こういった患者さんにリスクを説明することなしに、すすんでインプラントを第一選択で勧めるのは、一種の詐欺行為だと考えています。
これは、口腔清掃ができなくなった患者さんの例です。こういった事を知って、あなたはどうお考えになりますか?
「 インプラントの故郷・スウェーデンでも困っています 」
忘れてはいけないのは、インプラントは社会保障制度が充実した北欧・スウェーデンに生まれたシステムだということです。
0歳から居住区内のドクターに毎年検診を受けて、う蝕や歯周病に関する知識の指導やそのケアを受けるように国家的にサポートが整っています。スウェーデンで国をあげての医療改革が行われて既に30数年経っています。ですから、う蝕も歯周病も激減しています。
また、国の負担(現在は一部負担かも知れません)でインプラント治療も行われていますが、診査を受けて適応症の患者さんに専門医が治療する訳です。ですから、埋入前・埋入時・埋入後のケアは日本に比べれば遙かに正確で徹底しています。
病院では入院患者には、専門のスタッフがケアをしてくれます。このようにオールラウンドのバックアップがスウェーデンでは存在します。こういった状況でも、スウェーデンでは1/4人がインプラント周囲炎に罹患してしまうとの統計が既に出ています。
さあ、全てにいい加減な日本ではどうなるか想像して下さい。全く、日本の国民(患者さん)は本当の姿を解っていないようです。現在も沢山訴訟が出ているよ
うな状況です。十年後は、トンデモナイ結末になると考えています。そうなれば、日本のインプラント治療の本当の姿を知って、インプラントを安易に希望する
患者さんはいなくなるのではないかと想像しています。
「 インプラントとは本来、リスクがあるモノ 」
日本では、多くの先生がリスクを説明しないでインプラントを患者さんへ埋入しています。(リスクを説明すれば、インプラント治療をあきらめてしまうと考えて、説明すらしないことが一般的です。)
診療契約時、インフォームドコンセント(説明と同意)をする際、リスクの説明が不可欠です。リスクの説明がない先生方は、インフォームドコンセントが完了していないまま治療に入ったことになり、これは法的にも大問題だと言えます。
どんなに、完璧にインプラント治療が完了しても、その後が問題です。インプラント周囲炎などは、あらゆるケースで生じる可能性があります。ですから、良い先生に診てもらったと喜んでいる患者さんも、ケアを怠れば結局ダメになるものなのです。
私は、17年前に米国のメイヨ・クリニックの教授のレクチャーや実習を受けてブローネ・マルク・インプラントを教えて頂きました。しかし、歯周病学を深く
知るにつれてインプラントのリスクが大きいことを感じ、(上に書いたような理由から、)インプラントを臨床で勧めることを止めました。
インプラント治療中までは、ほぼ歯科医師がコントロールできるステージです。しかし、その後は我々歯科医師が必ずしもコントロールできないステージになり
ます。必ずしも責任を持ってケアできないステージが長いほど、問題は我々に処理できない部分で発生します。ですから、責任ある治療をしようと考える私には
どうしても選択できないのです。
何も解らない多くの先生方が無批判にインプラント治療を行っているこの状況だからこそ、尚更自信を持ってインプラントを避けるべき方針を私は表明します。
私だけではなく、海外留学をされた先生や専門的見識が非常に高い先生の中に、批判的な方が意外に多くいることも心強く思っています。
安全な方法論を採って、患者さんに確かな治療をお勧めすることが私のポリシーです。
◎麹町アベニューデンタルオフィスでは、このブログで述べたようなポリシーをもって正確に治療しています。ポリシーに共鳴された方、歯でお困りの方は虫歯一本から丁寧に治療させて頂きますので、お気軽にご連絡下さい。
また、お口の中全体に及ぶ治療をお考えの方は、カウンセリング(診断及びご相談)の時間を充分お取りしますので、お問い合わせ下さい。
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