私は、インプラントではなく義歯をオススメします。
休日、銀座へ行った折、アップルストアへ寄りました。クリスマス前なので、沢山のお客さんが展示品を操作していました。その中で、MacBookProの
前でたぶん70代後半とおぼしき品の良いご婦人がスタッフの説明を受けておりました。失礼ながら、とてもお年とは思えないキーボード操作に私は驚きまし
た。横からこの方が話しているお話しが耳にはいりました。「GHQが退去してから、だから昭和20年代後半ですけどね、大手町でわたしタイプを打っていた
の。」とのこと、どおりでお上手なはずです。この方、今の丸の内OLの大先輩といえます。尊敬_(._.)_
今ではかなり高齢の方でもコンピュータをお使いになるようになりました。自宅にいながら、食材をオーダーしたり、お友達やコミュニティーとアクセスしたり
と、ネット経由で豊かな生活の可能性が広がったに違いありません。ただし、ここで知識や情報といったモノをどのように正確に活用するかが問題となります。
実は、このBlogを書くきっかけは、ネットや巷にあふれる歯科関連の情報や知識を皆様に少し考え直してもらいたいと思ったからなのです。
私は、基本的治療を丁寧に行うという極めて当たり前な方針を貫く歯科医師です。ここにあげる症例も、特にご高齢の方で欠損補綴をご希望される方、またご本人やご家族が義歯かインプラントかの選択に迷われている方にご覧頂きたいと思います。
[ インプラントのリスク知ってますか? ]
現在、「入れ歯が要らない。」「硬いモノが何でも噛める。」とか、とかくインプラント治療が最良の選択肢のような書き方をした記事広告(記事を装った単なる広告)が週刊誌やネットに氾濫しています。
医院HPにも私は書いていますが、歯の掃除を自分自身でできなくなったらインプラントはどうなるのか?誰も説明していません。
60才以上になって、入院しないで一生を全うできる自信のある方などいないのではないでしょうか?すなわち、入院してお掃除を適切に出来るでしょうか?い
いや、入院などしない状態でも、お年の方がどれだけお口のお掃除を出来るでしょうか?病院でも、自宅でも特に年をとってから十分に口腔清掃が行われる適切
な環境は、未だ日本にはなかなか見つかりません。
もし、口腔清掃出来ないことがあればインプラントはどうなりますか?
もし、インプラントがダメになったら誰がどのように直してくれますか?
こういったリスクを全く説明しないまま、埋入してしまう臨床医が多いのは社会的な大問題です。
欧米なら、この医師は説明不足のため訴訟で多額の賠償金を払うことになるでしょう(日本でも、潜在的に沢山のインプラントがらみの訴訟が行われている現実を、あなたはご存じですか?)。
インプラントは、天然歯より強くはありません。
むしろ細菌の侵襲に弱い面があります。
天然の歯ならば、歯周病に侵されてもスケーリングなど歯周治療を行えば治ります。しかし、インプラントではそうはゆきません。元来、インプラントの植立している解剖学的状況が、こういった侵襲に弱いモノなのです。
おまけに、ダメになったら骨がえぐれたように大きく失われます。
問題になったときのことを考えて治療をお受けになった方がよいと思います。
*インプラントの功罪に関しては、今後改めて書かせていただきます。
・・・
ここに挙げるのは、インプラントなどより遥かにシンプルな当たり前の部分義歯を作製した例です。問題が生じずらい義歯の何モノかをご理解いただけたら幸い
です。口腔清掃を考慮すれば、シンプルな構造かつ脱着可能なものが良いことは、お解り頂けると思います。また、よい義歯の判断基準もご理解いただけると思
います。
[ 症例 I.M. ]

この方は、60才の女性です。退職されて、時間が出来たので全顎(お口の中全体)の歯科治療を希望されて来院しました。歯周病も進んでいました。

下顎の臼歯部(奥歯)が無かったり、冠が被った歯がありますが、古い治療で虫歯が出来ていたり、前歯の見かけが悪かったりしています。
*上顎・中切歯2本には40年ほど前に装着された金の冠がみられます。通称"額縁"といわれるモノですが、今でも農村部に行くと、こういった冠が被った方を見かけます。

全顎の歯周病治療を行い(歯周外科はまだ行われていない)、技工所で正確に作製されたプロビジョナル・レストレーション(意味のある仮歯)を装着しました。
この時点で、患者さんは日常生活には困らなくなる訳です。歯周治療や歯内療法の途中でも、気にせず治療期間を延ばすことが可能です。最終的な補綴物のカタチなど仮の歯を修正した結果決定され、最終補綴物のカタチへ移し替えられます。

完成です。術前と比べてください。

これは、最終補綴物(冠=セラモメタルクラウン)が入った口腔内写真です。
歯周組織の再検査(再評価)の結果、歯周組織が健全になりました。プロビジョナル・レストレーションを参考にした最終補綴物が装着されました。

これは更に金属床・局部床義歯(パーシャルデンチャー)を装着した状態です。キッチリ義歯が装着され、健全で機能的に咀嚼出来る状態に調整されています*。
*通常、義歯は数回の調整が必要です。新しい義歯をお入れいただき、"当たる"ところや"痛い"箇所を削除します。これを何回か行わないと本当の"使える義歯"にはなりません。

それぞれの部分の役割と各々のカタチに、義歯として機能するための意味があります。この義歯は、義歯の一部に貴金属(ヴァイタリウム)を使用した舌感の良いモノです。私の医院では、下顎の最終義歯にはこのタイプをオススメしています。
写真2,3:赤いレジン床部の辺縁は、舌が動いたり、口を空いたときの粘膜の動きを阻害しないで咀嚼運動が自由に出来るように決定されています。
写真1(金属部・裏側から):舌の前・下顎の前歯・歯頚部数歯に渡された金属部に注目してください。通常、この部分の厚さは1ミリ以下で、舌感が良くなっ
ています。前歯の歯頚部1/3程度もカバーし、圧が歯牙と粘膜に可能な限り均一に分散するように考慮され設計されています。
つい一昨日も義歯は気になって嫌だとおっしゃる患者さんがいました。今回のようなタイプの義歯なら、慣れたら装着している感じがなくなります。これは、眼
鏡と同じで最初眼鏡のフレームが気になっても、慣れれば眼鏡をかけていることさえ忘れるほど気にならなくなるのと同じです理由です。

咬合面から見て犬歯には維持するためのレスト座(ミドリ矢印部)を設定しています。上顎の犬歯から犬歯の6本は、連結して作られています。犬歯より後ろがダメになったときに、両側犬歯に維持を求めてこのレスト座に維持装置がかかり義歯が入るように予め設計されています。
このように、先読みによる設計も重要です。


今回の症例は、私が良く設計するパーシャルデンチャーの典型的ケースです。
義歯にかかる咬合力などの力は、欠損部粘膜、金属(床)部、レスト(ミドリ矢印部)、線鉤(針金部)、鉤歯などに可能な限り力が均等に分散されるように設計しています。
ヘタな義歯は、鉤歯に力の負担を掛けすぎる為、早期に鉤歯(線などが掛かる歯)がダメになり義歯も使えなくなります。
義歯を作る技術的なことは、多分に経験則によるところがあり、義歯を普段作ったことがない先生には難しいといえます。私は、20年ほど沢山の義歯を作ってきたので、自信を持って治療させていただいております。
義歯の作製を希望される方は、お気軽にご相談下さい。
ところであなたは、まだインプラントを選択されますか?