あなたは、自分の受けた治療の内容やレベルを本当に理解していますか?不完全でトンデモナイ治療を受けているかも知れませんよ!?
ここにお見せするのは、かなり大きな医原性疾患を他院のある歯科医師が作ってしまった例です。ある日(15年前のこと)、30代後半の患者さんが来院され
ました。「ある医院で口の中全体に白い歯を被せてもらったが、鼻の下辺りが何箇所も腫れてどうしようもない。」「元の医院に行っても直してくれないので、
いろいろな医院を廻ったが、抗生物質をもらうだけで治療してくれない。」といったことだった。数軒廻ったあげく、我が医院へたどり着いたらしいのです。医
院に訪れたときには、抗生物質のおかげか小康状態で特に腫れた状況ではなかったのです。
この患者さんが通われた医院は、私の前の医院の近くだったのですが、何故あそこへ行ったのか?全く理解に苦しみます。
医院内の様子や、歯科医師に会って話を聞いた時の印象だけでも、ある程度は解るはずなのに...世の中には、ヒトが生きてゆくために必要な"勘"が悪い方
がいるようです。この患者さんも"勘"が狂っていたように思います。(それから、この医院は燃えないゴミを医院の裏で焼却して、何度も市役所から注意され
ていた札付き医院でした。待合室も小汚い...)
この患者さんの正面観です。
前歯に被せられた冠が何か変です。
切端も一致してもいませんし、歯肉も...
これが、お口の中の様子です。
陶材を金属に焼き付けたセラモメタルクラウン(=通称"メタルボンド冠"・自費負担)が沢山装着されています。
まともな歯科医師ならこれを見ただけで、この症例が何かおかしい治療であることがだいたい解るのですが、この患者さんは白い歯が入ったということで当時は、とても喜んでいたそうです。
そして、お口の中のレントゲンを撮影し、驚くべき状況が判明しました!
前歯の根管治療(根の治療)が全くされていないまま、いたずらに大きく太いコア(支台築造物)がそこへ挿入されています!!それらの歯の先端には、黒い影に見える根尖病巣が確認できます。これが、腫れの原因だったわけです。
これは、ハッキリ言って"犯罪"です。
その他の部分も根充不足だったり、根充がオーヴァーだったり著しく歯内療法の状態が不良です。歯内療法の問題は、毎日いらっしゃる患者さんの多くが、大なり小なり抱えている問題ですが、これほどまでに沢山いい加減な治療をされているのは初めてでした。
別途・追記を参照していただきたいのですが、冠も歯の削ったマージンと全く一致していません。不良補綴物が装着されています。前歯部では辺縁の歯肉を不適
合な冠が無理に押していますし、無理に歯肉溝の深いところまで削っています(生物学的幅径の破綻:後述)。それによって、歯肉が悲鳴を上げています
(>_<)ゞ
生物学的幅径は、結合組織性付着と上皮性付着を合わせて約2ミリで、歯間乳頭部ではこの幅が広く、唇側ではより狭い傾向があります。生理的歯肉溝を考慮すると、骨頂からおよそ3ミリの部分に補綴物のマージンを設定するようにすることが必要と考えられます。
これは、歯内療法・歯周治療(オペを含む)など終えて(詳細は追記を参照のこと:要クリック!)、患者さんのお口にプロヴィジョナル・レストレーション
(仮の樹脂製(レジン)の冠)を装着したところです。この状態でオペ後の更なる歯肉の成熟、口腔清掃のし易さ、かみ合わせの具合、歯のカタチに関する修
整...等々をチェックして良好ならば、外形を参考に最終補綴物(=冠やブリッジ)を作製して装着します。
最終補綴物が装着されました。
この患者さんは、歯肉角化層の薄い部分がある歯肉のタイプです。時々、女性で見かけられるタイプです。プロービングでBOP(ー)(=出血がない=炎症がない)でも、辺縁歯肉が少し赤みがかり炎症を思わせるような外観です。(しかし、炎症はありません)
バイトアップ(かみ合わせを挙上)し、骨を削除するオペをしたことで、前歯部は歯が長い状態になりましたが、健全な歯周組織と正常な咬合(かみ合わせ)が獲得されました。
*セラモメタルクラウンの設計も、ご注目いただきたい。
セラミックとセラミック(陶材=瀬戸もの)、金属と金属が噛み合うように設計されています。特に気をつけるべきことは、セラミックと金属が噛み合うような
場合は、セラミック冠が著しく摩耗してしまい、破折の原因にもなります。こういったことを歯科医師でも知らないヒトがもの凄く多いのです。補綴学の基本の
トレーニングが出来ていない先生に大きな規模の補綴治療を受けるのは危険なのです。
これが、私が治療した後のX線写真です。術前と比較して十分に根管治療が成されてことがお解り頂けると思います。
今から15年ほど前なので、今より技量の点では未熟だったと思いますが、かなり一所懸命にこの症例に向き合ったことを思い出します。結局、まるまる2年治療期間がかかりました。
前歯部だけ、術前・術後を比較するともっと解りやすくなります。
根尖病巣(根の先の黒い部分)の消失と縮小が確認できます。術前、ある程度長い間感染した状態に根が放置されたことから、象牙質深部まで細菌の感染が懸念
され、一端病巣が消失しても安心は出来ません。厳しく言えば、予後は必ずしも良好とは言えないのです。ここが難しいのです。どんなに後でよい治療が施され
ても再発を抑えられる保証が必ずしも無いのです。→最初にきちんと治療してもらわないと歯の寿命は短くなります。ちゃんと治療できる先生のいる医院へ受診
しましょう。
前医が、コアを装着するために根管上部を大きく拡大したことで、今後破折のリスクが高くなりました。この点は私ではどうも出来ないことで全く残念です。
削った歯は戻ってきません。こういった原理・原則を正しいカタチで理解して臨床で実践する臨床医に診てもらいたいものです。
更に、術前・術後の二枚を比較してみましょう。
ほぼ消失・縮小が解ります。
◎治療過程をもう少し詳しく知りたい方は、以下をご覧下さい。
[ 治療過程・詳細 ]
1.前歯セラモメタルクラウンと歯のマージン(継ぎ目の部分)をプローブで探っているところです。マージンが著しく不一致なことが解りました。この後、冠を除去しました。
マージン相当部を尖った器具(探針など)で探ると、ここに段差を感じることがあります。これが明らかな時は、精度の悪い補綴物が装着されていると考えられます。
2.冠を除去するとコア(金属の土台)が出てきました。形成が全くデタラメでヘタです。一本のマージンに仕上げられていません。
3.これが除去されたセラモメタルクラウンです。たぶん1本10万円くらいかけて装着したのでしょう。気の毒です。
4.これが除去されたコアです。一度、装着されたコアを外すのは容易なことではありません。この時もかなり時間がかかりました。それから、コアを外す際に残存歯質に力が沢山かかるため根の破折が生じるリスクが高くなります。
冠を除去し、コアを除去した後の痛々しい歯周組織(下の写真1に続く)
コアを外した後は、感染根管処置をしました。
1.コアが外された根の周囲の歯肉にびらん状の歯肉の腫脹が見られます。全く適合していない冠が装着されたことにより、歯肉は不用意に圧迫されていたことが解ります。先に書いた"歯肉の悲鳴"とは、このことです。
2.根管治療をしているところです。歯根が歯肉縁下に潜っているため、ラバーダムを正規の方法で掛けられず、妥協的に写真の様な格好で装着しました。この際。周辺軟組織には器具を接触させずに時間を掛けて行いました。この後、水酸化カルシウム系の糊剤で仮充填しました。
3.仮封(仮のフタ)して、
4.前歯部だけ、プロヴィジョナル(仮歯)を仮着しました。
しばらく、水酸化カルシウム系の糊剤で仮充填した後、ガタパーチャポイント(樹脂系根充剤)による根管充填をしました。
1.前歯部に、歯冠長進展術(crown lengthening)を施しました。
これは、いわゆる生物学的幅径(Biologic
width)を得るために行いました。この症例のように、不適切な位置に形成された場合すなわち、歯周組織の生理的かつ解剖学的適正な位置を超えて冠の
マージン設定などされてしまうと歯周組織は悲鳴を上げるわけです。こういったケースでは、歯冠長進展術を行います。この手術後精度が高いジャストフィット
の補綴物を装着することで歯周組織の生理的環境が獲得されます。
2.これは、オペ後1週間の抜糸前の画像です。
3.これは、オペ後3ヶ月の画像です。歯肉が引き締まりきれいな治癒が達成されています。
4.プロヴィジョナルの装着後です。
1.下顎左側臼歯部の不良補綴物を除去しました。このブリッジも精度が悪く、前歯部と同じような不適合を呈していました。
2.ここでも、不明瞭な形成形態が明らかになりました(=ヘタな形成です)。歯肉が悲鳴を上げています。
3.生物学的幅径が侵され確保されていません。ですから、これを獲得するために骨切除を伴う歯冠長進展術(crown lengthening(歯周外科手術の一種))を施さざるを得なかったのです。本当は、大切な歯を支持している骨は除去したくないのですが...
1.プロヴィジョナルが装着された状態です。これから形態等が決定されました。半年くらいこの状態だったので、良い情報が得られました。
こういったプロヴィジョナル・レストレーションの状態で様子を見ることが大切です。単に、"仮歯"という仮の"被せ物"ではなく、ここから得られる情報が最終の補綴物に反映することこそ、ねらいなのです。
2.最終印象後、バイト採得(かみ合わせを記録)しているところ。当初、顎間距離(上下の顎の距離:噛み合わせの高さに関係する)が低くなっていたので、これ前歯で3ミリほど挙上しました。これにより、咬合学的に生理的状態を獲得しました。
3.4上下顎の最終印象時の様子