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2012年4月 9日




「 やはり手つかずの歯が一番 」


久しぶりに、殆ど歯科治療を受けた経験がない患者さんを拝見しました。

歯は、切削(形成)されて補綴されるよりもそのままの手つかずのまま保存する方がより長持ちします。 

削って補綴されると補綴物と歯との隙間などから後で細菌の侵入などを許し歯質に入り込み神経組織(歯髄)が侵され歯髄炎を生じたり等々で、とにかく細菌の侵入で数々のトラブルが生じ得ます。ですから必要があって補綴処置する際には高い精度の治療が必要です。


この方の場合は、一本だけう蝕治療としてインレーが装着されているだけです。それ以外は歯が全く削られずに何も不可逆的侵襲が加えられていません。  もちろん治療するようなう蝕が無かったので、何も治療がされていないのです。


う蝕はありませんが、この患者さんの場合は歯周病であることを自覚されて歯周病治療を希望し来院されました。



namura sHigeyuki blog'.jpg

この患者さんが本当に幸いなことは、不適切なう蝕治療を受けた経験が無く二次的に疾患が生じる危険が無かった点です。


これは以前から私が色々な場所で話している通り、不適切な治療を受けて後年、それ等治療から派生した二次的う蝕や更に進行し歯髄炎を併発するような再発症状で嫌な思いをされる事がなかったのです。なので私はこのケースを幸いだと表現しました。


 以前、ブログ記事で(主に保険の)インレー装着の後に二次う蝕から再発症状が生じやすい事は幾回か書きました。

巷の歯科医院では、一般的に茶褐色の感染歯質(軟化象牙質など)を取り残したまま金属インレー装着しています。
また、インレー装着のために大きく健全な歯質を削除し窩洞を形成して、しかも精度と辺縁封鎖性の悪い硬い(12%金銀パラジュウム合金)金属インレーを装着しています。



実は,歯が悪くなる原因が、むしろこういった不適切な歯科医が行ったう蝕治療*です。情けないことにこれが保険中心の歯科治療の実態です。

* 医療人が作った疾患を医原性疾患と呼びます. 歯科界の治療の多くは原因除去が不十分な状態をつくる=医原性疾患に溢れています。


特に保険制度下では、同じう蝕治療ならより保険点数が高い金属インレーで、症例を精査せずにとにかく治療して一円でも多く治療費を稼ごうとするつまらない歯科医の思惑があります。結果的にこのような不適切なう蝕治療に終始しているのが現状です。
これは他の歯科治療でも同様で、歯科治療は歯科医原性疾患だらけです。ですから歯科医院は非常に危険です。



ちなみに、私は物質的特性が悪い12%金銀パラジュウム合金のインレー(保険適応)での治療は20年近く行っていません。
大きな窩洞の場合の金属修復では主に辺縁封鎖性が良いハイカラットの金合金インレーやハイブリッド型レジン製インレー、時にはアマルガムを用いています。一方、小さなう蝕窩洞では主にコンポジットレジン(CR)修復を行っています。


特にコンポジットレジン修復は、窩洞が小さい時には歯質接着性も最近のボンディング剤は優れているため辺縁封鎖性が良好です。
正しい治療手順で行えば経年変化も少ない方法です。可能な限り汚染歯質のみ選択的に除去削除するいわゆる"ミニマル・インターベンション:MI"を充分に活かせて利点が多い方法です。
MIはでき等限り健全歯質を残し感染歯質のみを削除する最少限の侵襲で済む理想に近い治療概念です(後日、MIについては別途記事を書きます)。



この方の歯周病は中等度です。もちろん現代のコンセンサスを得っている歯周病のオーソドックスな基本的治療であるスケーリングとルートプレーニング(SRP)で治療できます。




「子供の頃、虫歯が無かったヒトは大人になって歯周病で苦労する?」

この患者さんは、虫歯は無くても歯周病に罹患しています。
良く話題になることですが、「子供の頃、虫歯が無かったヒトは大人になって歯周病で苦労する」といった話が出ますが、う蝕にならないヒトでも何故歯周病には罹患しやすいのでしょうか?

ここで細菌学的話ですが、う蝕を起こす細菌と歯周病を起こす細菌(原因菌)は全く別種で細菌の性質も異なります。

う蝕原性細菌(虫歯を起こす細菌)は、歯の表面などある程度空気と触れ合いやすい環境に生きる細菌(通性嫌気性)です。
一方、歯周病原性菌(歯周病を起こす細菌)は歯茎の周りの歯周ポケットのような溝の空気が少ない環境(嫌気性)を好んで住む性質があります。このように細菌も口の中で棲み分けています。


う蝕は下の図(Kayesの輪)のような3要素(細菌(Bacteria)・歯(Tooth)・細菌の栄養分(Diet))が存在して初めて生じます。

*私のブログ記事「バイオフィルムと言う概念」も細菌学の基礎としてご参照下さい。


Kayes circle 3.jpg
Kayes' circleの図



う蝕(虫歯)の実態とは、歯垢に存在する細菌が産生する酸で歯の表面を脱灰(Caが溶け出し崩壊)する現象です。
ですから、細菌の出す酸にやられやすい歯の質を持つヒト(Tooth)や歯ブラシを充分にしないで細菌(Bacteria)を付着させっぱなしにしているヒトや甘い物(Diet)をだらだらと食べているヒトは虫歯になるリスクが高くなります。

一方、歯周病原性菌では:歯周ポケットのような環境には、ポケットの上に付いた歯垢から特に歯周病原性の細菌達が移動してより良い棲息場所の嫌気的な環境であるポケット内へ移動してゆきます。

子供の頃、歯が丈夫(う蝕に成りづらい歯)でう蝕にならなかったヒトは概して、う蝕にならなかったことでブラッシングする習慣が無いヒトが多い傾向があります。

また、歯科医院へ通院して歯の治療や歯周病の検査や除石など受けた機会がほとんど無く、潜在的に歯周病が進行してその状況を放置しやすいのです。

このようにして、大人になり歯周ポケット内で棲息していた歯周病原性細菌達にかなり歯周組織を侵されている(歯周炎に罹患している)ことが多いのです。

このように、子供の頃、歯が良くて虫歯に成らなかったヒトは、大人になった歯周病で苦労するようなケースが多いと言えます。



虫歯がないと自慢のあなたも歯周病に罹患しているかも知れませんよ

2010年10月19日

>この数年、週に数名インレーが外れた、詰めた歯が痛むといった患者さんがお出でになります。
今までにも、私の別ブログでも再三述べてきましたが、巷の虫歯(う蝕)治療は非常に雑です。特に保険で可能な12%金銀パラジューム合金によるインレーやクラウン(冠)などの治療は、治療として成立していないモノが多く見受けられます。患者さんの多くは、当然補綴・修復物が装着されると一応、安心されると思いますがその内のかなり多くが、精度不良・軟化象牙質の取り残しをしたまま治療完了に勝手にされているのです。現状から言わせて頂けば、日本の歯科医師はかなりの割合で、基本的なう蝕治療さえ充分なレベルで行っていないのです。もちろん、当院のようにルーティンでラバーダム防湿下で時間をかけて丁寧な処置を正しく励行している歯科医院は極めて希だろうと思います。


歯の寿命を考えると虫歯は早期に適切に治療すべきです。インレーが外れていらっしゃる患者さんのように一度う蝕処置を受けている場合には、再治療になり時間もかかり、生きた歯の歯髄を保存することも技術的に難しくなります。私が日常的に拝見している多くのケースは、治療し直しでう蝕の病巣が深部まで及んで進行した状態のモノです。

 


    /////////////////  最近の一症例  ////////////


DSC_0042.JPG

ここにお見せする一症例は、つい最近インレーが外れてしまって、窩洞底部(歯を削った底の部分)に深いう蝕が存在したケースです。インレーが外れてから来院されたのはすぐではありませんが,明らかに軟化象牙質を残したままインレー修復されたと思われます。たぶん不適合で不完全なインレーがう蝕によってセメントの溶解と共に外れたことは想像に難くありません。内部に軟化象牙質を残してインレーのような詰め物を装着すると、後で内部に残る細菌が増殖しう蝕の病巣は大きくなり疼痛を発生します。それと共に装着物も外れることもあります。そしてインレーなどが外れて初めて、このケースのように変色した軟化象牙質を発見することになります。

我々は、レントゲン撮影後、特に初診の患者さんには充填物下のう蝕病巣の存在の有無の説明と治療の必要性をご説明しています。痛くなる前に発見され多くの患者さんからご評価頂いております。


watanabe mio. jpg

レントゲンでは少し解りにくいと思いますが、歯冠部の中央より少しずれて丸い影が見えます。中は茶褐色の軟化象牙質と食物残渣が存在しています。

DSC_0044.JPG

う窩の着色した軟化象牙質を除去してゆき、う蝕検知液といわれる細菌が存在する象牙質だけ染まる液で 染め出し→除去→染め出し→除去といったことを数回繰り返して染まる象牙質がなくなるまで超音波の器具と手で丁寧に赤く染まった象牙質を除去してゆきました。この時、非常に歯髄(神経と毛細血管が存在する生きた歯には大切な組織)に近いところまで除去してゆきます。だいたいこの時は染まった象牙質の丁寧な除去に50分ほど時間がかかりました。写真はほぼ除去が終わった時点です。


DSC_0045.JPG

これは、コンポジットレジンというペースト状の高分子材料を充填した後、強い可視光線を照射し硬化させ充填が終了した状態です。精度の悪いインレーなどと比べれば、遙かに充填物と歯質の間に隙間を生じず適切な修復処置と言えます。また、昨今はメタルが口腔内に見えるコトが敬遠されるので、自然観ある歯質色の充填は多くの方に受け入れ易いとも思います。

*当院ではラバーダム防湿法による治療を励行しておりますので、世界に誇る日本製のコンポジットレジンや接着性材料であるボンディング剤などの素晴らしい材料の特性を最大限に生かせると思います。厳密な処置過程を取らないと、後で細菌の侵入を許す隙間などを生じやすいのです。

この症例の患者さんと同様に、かなり離れた場所からも、私のブログをご覧になり、ラバーダム防湿下での正しく丁寧なう蝕治療を希望されて患者さんがお見えになります。

今までに沢山のう蝕治療を受けて、インレーなどの修復物を装着されている患者さん、貴方のお口のう蝕治療も不十分かも知れません。ご心配の方は、おいで下さい。また、虫歯があることが解っているのに歯科医院へ通われていない患者さん、
修復方法は幾通りかありますが、適応症であればコンポジットレジン修復の場合、即日完了致します。特にやり直しの虫歯治療の場合、通常1時間半ほどのお時間を頂いております。

 お問い合わせ 


2010年9月 2日

先日、ある名古屋にお住まいの女性がお見えになりました。下顎第一大臼歯部に欠損部があったので、私は治療の経緯をお聞きしました。



「ある歯科医院へかかりました。そこの先生にインプラントを入れた方が良いと言われたのでインプラント治療を御願いしました。」

「結局、インプラント埋入後しばらくして、インプラントの周囲にレントゲンで観ると影が出た(周囲炎が起きた)ので、撤去されました。」とおっしゃっていました。



iwamoto tomoko
画像1


撤去してからかなり時間が経っているようです。



このケース(画像1参照)ですが、前後の臼歯が歯周組織も特別問題が無くしっかりしているので、通常は従来型のブリッジの適応症と考えるのが普通だと思います。

もちろん、インプラントを選択することもできますが、インプラントが唯一の処置法ではありません。

この頃、多くみられるのが、こういった下顎大臼歯の1ないし2歯欠損にインプラントが埋入されたケースです。"欠損前後の歯を削らないで済むので、インプ
ラントが良い"といった理屈を語る先生がいますが、こういった理屈には注意が必要です(特に、米国の臨床家は,こういった理由を正当化するヒトがいま
す。)。

インプラント周囲は、清掃が悪いとインプラント周囲炎(peri-implantitis)を生じます。一方、天然歯の支台歯周囲では、清掃不良で歯周炎
を生じ得ますが、歯周病は治療を適切に行い清掃をしっかりすれば治癒します。しかし、インプラント周囲炎は,未だ治療法方法が確立していませんから、ダメ
になるリスクは高いといえます。

*元々、下顎大臼歯部はプラークコントロールが難しい部位です。







hideo itoh
画像2


イメージ画像2:記事の症例ではありません。インプラント周囲炎など併発していない良好な例です。



ここで問題は、処置の複数の選択肢を与えられずに、高額な治療費となるインプラントを唯一の処置方法のように,もしくは安全で一番良い処置法のようなカタ
チで選択されている点です。すなわち、歯科医師が自分の都合で行っているのです。皆さんは、こういったケースに疑問を持たないでしょうか?特に、下顎大臼
歯部というのは清掃が難しく、インプラント周囲炎の好発部位といえますから、埋入部位としてもより安全な部位ではありません。一般に、従来型のブリッジを
装着する方が、天然の歯牙を支台歯とするので、より安全性は高いと考えます。これは、一種の正解だと考えられます。





「基礎疾患がある患者さんは、インプラントの禁忌症」

ごく最近、お見えになり歯周病の治療と義歯の調整をした患者さんの話です。

この患者さんは、基礎疾患があり、現在白血球数が減少しているという状態です。

「前医から、インプラントを勧められた」とおっしゃっていました。これは、全く驚くことです。基礎疾患をお持ちの方にインプラントは、禁忌症だからです。
解りやすく言えば、例えば糖尿病やC型肝炎などを患う患者さんは、口腔内の細菌感染で、歯周組織やインプラント周囲の支持組織(骨)に侵襲を受けやすいか
らです。健康な方よりも、それだけ口腔内の疾患をコントロールしづらい、いわゆる"ハイリスク"の患者さんだからです。



インプラントを行う上で症例の見極めは基本ですし、禁忌症を避けることは常識です。しかし、これを無視してハイリスクの患者さんにインプラントを薦めるというのは臨床医として最低の態度と考えます。

しかも、その患者さんの場合は近い将来入院など、口腔清掃が困難になる状況が考えられるのですから。



恐ろしい事ですが、日本の歯科臨床医は、この程度だということです。もっとはっきり言えば、高額な治療費が手に入れば患者さんがどうなっても良いと考えているのでしょう。

残念ですがこれが現実ですから、私は皆様に色々なカタチで、危険を回避できるように注意を促しているのです。究極的には、ご自分の身は自身で守らなければなりません。



○既にBlog上でアップしている記事へ、全国から沢山のアクセスがあり、インプラントは多くの方の関心事であることがよく解りました。また、患者さんからメールを頂くことがありますが、かなり多くの方が治療後に問題を生じているようです。

2010年5月 1日

ある日、医科系出版社の編集者R女史より、「ある方が歯が痛んで困っている」「担当医も原因が解らないらしいので、診てくれないか」との連絡がありました。日本でも著名な数十名の臨床医を知っているRさんから、そういった先生方にではなく、私のような者へファースト・コールを頂いたので、有り難く拝見させていただきました。



お出で頂いた患者さんは、佐藤英子(仮名)さんという会社を経営されている品の良いご婦人でした。全顎的にある先生に治療を受けているようで、お口の中には前歯のパーシャルベニアを含めてしっかりとした精度の良い補綴がなされていました。お痛みがあるという歯は、左側第二大臼歯で、小臼歯からブリッジが装着されていました。打診をすると違和感があるようで、間違えなくこの歯が患歯(問題の歯)であることが解りました。来院時、激痛は緩和されていました(失活していた=歯髄が死んでいる)。




panorama













このような状態です。


前日、激痛にうなされて担当医を訪れたそうですが、院長は遠方の学会に出席しているので代診の先生が代わりに診察したそうですが、原因がわからず対症療法としてお薬を処方されただけだったそうです。



デンタル1












デンタル写真です。

第二大臼歯近心に、8ミリ近い深いポケットが存在していました(出血なし)。




この時点で、歯根破折を疑いました。また、反対側(右側)の第二大臼歯は以前破折して失っているそうです。実はこの既往が大切なのです。以前歯牙破折しているということは、今回も破折が関係している可能性は濃厚だからです(=口腔診断学の基本)。




破折が生じるとその破折線に沿って根尖方向へ細菌が移動して、骨が根尖方向へくさび状に深く破壊されるからです。これはいわば常識で、根部に破折が生じた印です。破折歯の多くは、よっぽどのことがない限り破折部が割れた状態で見えてきません。ですから、気がつかずに放置しやすいのでしょう。ただ、こういった骨欠損があるとき、歯周病も破折も考えずに補綴をする先生は、はっきりと不見識と言えます。先生自身がプローブで診査するようなことを行っていない医院ではこうしたことがおこりがちです。この医院も例外ではないのでしょう。

デンタル2














近心には、上の写真のアウトラインに示すような欠損があります。また、既に根尖(根の先)には根尖病巣を思わせる不明瞭な影が確認できます。一方、口腔内所見では当該部位のポーセレン製の咬合面が、著しく咬耗していました。ブラキシズムと呼ばれるような"くいしばり"などの悪習癖があるものと想像されます。こういった方は、歯牙破折しやすいのです。


*下顎は、第二大臼歯にポーセレン製のインレーと、第一大臼歯には咬合面がポーセレンのセラモメタルクラウンが装着されています。佐藤さんのようなケースでは、メタルでカバーすべきでしょう。

ポーセレンでは著しい咬耗とポーセレンが破折をする可能性が高いからです。審美性を損なわせないためかも知れませんが、設計ミスだとも思います(安全な方法は、ブラキシズムの患者には、咬合面はメタルカバーが安全です )。
もちろん、上下顎咬合する箇所はメタルが安全です。ポーセレン修復ではなく、メタル修復もしくは一部メタルにすべきでしょう。患者さんの希望もありますが、安全な処置方法をとるコトや説明してそれをススめるコトは臨床家として大切なことだと考えます。

このように私は、"審美歯科"などという言葉を掲げて、安全な選択肢を忘れることは臨床上根本的問題だと思っています。




口腔内での確定診断として、破折線を確認する必要があります。この症例では、露出根からポケット内への根面を染色剤で染め出して斜め45度からマイクロス コープで観察した結果、根面にわずかに染まった破折線を発見しました。すなわち、この症例では歯根破折が原因であると確定したのです。


キャリアのある歯科医師でも、う蝕のない生活歯の歯髄炎の場合、"原因がわからない"としてしまう先生が多いようです。もちろん、失活歯(歯内療法がなされた歯)でも、歯根破折であることが解らない先生もいます。これは、診断能力がないのです。

生活歯の歯牙破折は今まで何例も経験があり、私自身も下顎第二大臼歯を歯牙破折で失っています。ですから、私に関しては幸か不幸か、まず破折歯の例は見逃しません。
さらに、歯牙破折を上行性歯髄炎と勘違いする先生もいるようです(ちなみに、根尖近くに何ら病変もないのに上行性歯髄炎は生じません)。破折初期には、この先生と同じように知覚過敏症と勘違いしやすいので注意が必要です。私自身の歯牙破折の場合も初期は"知覚過敏症"だと勘違いしてしまいました。

たぶん、佐藤さんの例では近心にくさび状に骨欠損が既に存在することから、かなり前に破折は起きていて、破折に気づかず補綴物を装着してしまったと思われ ます。そして、装着後かなり時間が経ってから歯髄炎に移行したのだろうと思います。私の経験ですが、破折でもかなり時間が経ってから本格的歯髄炎に移行す ることも多いようです。この佐藤英子さんも、以前に数回当該部位に軽い"うずき"や"違和感"、"浸みる感じ"を感じたことがあるということでした。まず 間違いなく、破折は補綴物装着前に起きていたことが解ります。


その後佐藤さんにはお会いしていませんが、R女史から聞くところでは新たに補綴物が装着されたとのこと。破折歯に補綴物を装着された?? 驚きました。全く困ったものです(>_<)ゞ


このケースは、反面教師です。我々も行ってしまう可能性がある過ちを行った例です。人ごとではなく、良い臨床的示唆を与えてくれました。しかし、患者さんはお気の毒です。


そういえば、この麹町周辺の先生は我が医院で歯周病の治療を受けた医療コンサルタントX氏のインプラントも以前埋入しています。X氏の場合は、歯周病の全顎的治療が 完了していないまま、すなわち深いポケットが残存(6mm以上有り)したままインプラントが埋入されていました。信じられないことですが、先生が患者さん の口腔内をチェックせずに埋入しているのでしょう。もしくは、知っていながら平気なのかも知れません。歯周病治療が完了しないでインプラント埋入をしてし まう先生が日本では多くいるようです。

この先生は審美とか補綴で業界でも名前の出ている先生ですが、実情はこの程度です。保存治療を十分にしないで、審美補綴もインプラントもあったものではあ りません。皆さんに言いたいのは、これが歯科界の実情だということです。さらに、治療の基本を忘れると患者さんに大きな迷惑がかかるのです。

 

皆さんも、虫歯でない歯が痛んだら破折を疑ってください。
それが予想できない先生は、診断能力が劣ると思って間違いないと思います。



2009年9月29日

今回は、上顎前突を矯正学的に改善して、全顎的に安全な方法論で補綴処置した症例をご覧頂きます。今回も、自分のことを棚に上げて言いたいことを書かせて頂きますが、ご容赦下さい。







◎症例のイントロ



「 米国人はルックスから、英国人は日本人と同じ? 」



 ところで、日本人は民族的に上顎前突が多いのでしょうか?欧米の雑誌に、日本人旅行客が眼鏡をかけ、出っ歯(上顎前突)で首からNikonのカメラをさ
げた風刺絵を、日本人がエコノミックアニマルと呼ばれた70~80年代によく見かけました。これは、日本人を揶揄していたのですが、欧米のヒト達から見る
と日本人にみられる上顎前突が非常に奇異に映ったのでしょう。



 米国の中流家庭なら、もし子供が歯並びが悪ければティーンのうちに矯正をすることはごく普通のことです。私的体験ですが、チェルノブイリの事件があった
80年代半ば、米国の中流家庭はヨーロッパの汚染を恐れて、夏のバカンスは遠いハワイに変更して長期滞在することが多かったようです。私の宿泊したホテル
のプールでも、米国人らしいティーンエージャーが沢山遊んでいましたが、皆歯に矯正治療のブラケットを付けていたことを思い出します。ホントにほとんどの
プールで遊ぶローティーンが矯正治療しているので、びっくりしました。



 審美的な部分に執拗に固執する傾向は、特に米国人に強いようで、これに比べると例えば英国人などとは対照的な気さえします。



 例えば、グラムロックで有名だったデヴィッド・ボウィは、80年代まで乱ぐい歯(前歯叢生)のままでした。クィーンのボーカリストのフレディー・マーキュリーは上顎前突で、それを治さないままこの世を去ってしまいました。また、女性憧れのエルメスのバッグ=バーキンで有名なジェーン・バーキン(フランス在住、実は英国出身)は、前歯が空いた正中離開のまま活躍しています。この3人のショービズ界のセレブリティーがこういった状態なのです。こんな事に象徴されるように、精神性では米国人より英国人の方が日本人に近いように思えるのです。







「 多少の歯列不正なら問題はなし、でも重症な場合は... 」



 私は、日常的に歯列不正を抱えた患者さんを沢山診ていますが、歯列不正が余りにも著しい場合以外は、それを「治しなさい」などと滅多なことでは言いませ
ん。多少の歯列不正なら、その方の欠点にならない場合がほとんどだからです。口腔衛生の観点からも、正しい磨き方を身につければ、虫歯や歯周病にならずに
すむのですから。ちょっとした歯並びの不正も他人から観て気づかないことも多いですし、むしろ時としてチャームポイントにさえなる事だってあるように思い
ます。



 今回は、そういったチャームポイントなどにはなりえない、ご本人も長い間、気になさっていた上顎前突の症例を矯正学的に改善し、全顎的に補綴治療を施した一症例をご覧頂きます。







・・・・・・・・・・・・・・・





◎症例



患者:鈴木美保(仮名)

性別:女性

年齢:50歳

主訴:右上奥歯の冠が脱落したので治して欲しい



 鈴木さんが、「右上奥歯の冠が脱落したので治して欲しい」と来院されました。初めは、脱落部だけを治して欲しいとのことでしたが、お話ししている中で、上顎前歯部の前突も気になっていたので、これを含めて全顎的治療をすることになりました。







スライド1




上顎臼歯部の冠が脱落しています。これらの支台歯の歯質も変色しています。



 そして何より上顎前歯が突出して、前歯では噛み合わせがありません。口腔内に装着している補綴物も不適合なモノばかりです。





スライド15




 鈴木さんは、前突のために唇を上手く閉じられません。ひどくこのことを気になさっていました。前突になる方の唇の周りにある口を閉じるための口輪筋は、
筋力が弱い傾向にあります。口輪筋の力に対して、口の中の舌の突出圧が強いときには、歯が唇側に傾斜するようになり、結果"前歯が前突"することになりま
す。どうやら、前突した状態で以前にセラモ・メタル・クラウン(瀬戸の歯)が装着されたようです。



 この症例では、通常の症例同様にまず、全顎的にスケーリング&ルート・プレーニングしてできる限り歯周病学的問題を解決しました。



 また、前歯の根尖には病巣が存在したため、歯内療法学的治療(歯根の治療)もしました。(その各々には、コア(金属支台築造)を装着する予定)



そして再評価後、前歯の矯正処置に取りかかりました。









◎技工ラボでの仕事



スライド2




 矯正で歯牙が理想的位置に移動した状態を模型上で想定して、その状態で歯牙が並び綺麗に上下顎で噛めるような状態のプロヴィジョナルレストレーション(以後PRと略す)とコアを作製しているところです。



1.前歯では根管の方向と歯軸とはほぼ一致するので、根管にようじを挿入して、歯牙の平行性などを考慮して、歯牙が理想的状態に移動した状態にセットアップしているところです。



2.1の状態で、各々の根管に適合するコアを作製した状態



3.1を咬合面方向から観たところ。各前歯の平行性がとれています。



4.PRを作製するためのワックスアップ(ロウで歯冠をカタチ作った状態)





スライド3




5.4を咬合面から見たところ。PRという仮の修復物でありながら、最終補綴物同様の解剖学的形態をワックスアップで再現しています。当院の担当技工士=青木啓高氏の丁寧な仕事には頭が下がります。



6.PR完成後の右側方面観



7.同、正面観



8.同 左側側方面観



*これら、PRは即時重合レジンという一種のプラスチックのような素材でできていますが、加圧釜などで高圧下で重合硬化させているので非常に硬く数ヶ月の使用にも充分耐える耐摩耗性があります。







「 レベルの高い技工士とチームを組むことは必須 」



 こういった臨床的接点の多い難しい仕事も、青木氏のような見識ある技工士には可能です。それは、歯科医師と同じ勉強を高いレベルで習得されているためです。私が説明することを難なくラボで実現してくれるので、当院の患者さんへも全く迷惑をかけることなく、素晴らしい治療が可能になります。



 臨床家は、技術・知識共に高い、信頼できる技工士と共に治療することは必須です。コストを下げる余り、価格競争ばかりしているような低級な技工所などを
使う医院では、精度ある信頼できる処置は不可能です。患者さんの多くがこのレベルの事情まで理解していないと思いますが....



*自費治療費の違いの根底には、先生の治療レベルや手間などの違いの他に、技工レベル(技工費)の大きな違いも関係していることは知っておいて下さい。(安いところと、高級な仕事をするところでは、技工料は3~4倍以上違います。)



 また、近いうちにブログに書きますが、良い治療を受けたい方が自費治療費の額の違いで、歯科医院を選択する(安い医院へ行く)ことは、全くナンセンスであることも知っておいて下さい。









◎矯正学的治療について:





 「 Interdisciplinary approach とは 」



 私は、矯正家ではありませんから、通常矯正治療はしません。ただし、このケースでは治療費の問題と時間的問題などを考慮して私が行うことにしました。た
だ、今後は極簡単な限局的矯正以外は自身では行う予定はありません。やはり、専門家に任せる方が問題を起こすリスクが低く、安全だと考えるからです。



 また、歯周病や補綴処置などに高いレベルの認識がない矯正家の先生とは、共に一人の患者の治療を進めることは難しいと思います。私の場合には、幸運にも
米国でTMDのマスターを取得し、帰国後に矯正医専門医として活躍されているある先生とはコラボが可能なので、その方に歯周病治療や補綴を含むケースで
は、矯正治療を依頼することにしています。



 専門医制度が充実した欧米では、一人の患者さんに関して、複数の専門医が分担して治療するような、いわゆる"interdisciplinary
approach"といわれる治療方法が試みられる事も珍しくはありません。そうした場合、各専門医同士の高いレベルでの学問的共通認識とコミュニケー
ションが円滑である必要があります。





 「 日本では専門医が育たない 」



 ところで、日本には米国でのいわゆる"Board"のようなハードルが高く、本物の権威ある専門医制度がありません。日本には、歯科に限っていえば、各
学会単位で専門医・指導医といったモノは存在しています。ただ、米国のように難しい取得試験がある制度ではなく、臨床家としての高いレベルを保証するモノ
ではありません。



 また、現状では高いレベルの本物の臨床教育を行っている研修機関も私が知る限りでは"無い"に等しいと思います。私自身、大学院に入って初めて解った事
ですが、授業すら行われていないのです。最高学府がこの状態ですから、日本には専門医を育てる環境はないと思います。ですから、専門医を目指し向学心のあ
る先生方は、まともな指導をしてくれる海外の大学院に留学するのです。



 この状況ですから、interdisciplinary approachも一部のグループや先生方を除いては日本では一般的ではありません。



 そういったことから、必然的に日本では一般開業医が多くの学問分野を高いレベルで身につける必要が出てきます。そして、ほぼ一人で難しい症例も治療しなければいかない状況が、一般的になってしまいます。





 「 誰にも良い医療機関が解らない現状 」



 欧米であれば、治療費は高価であっても、専門医に受診すれば概ね高度な治療を受けられる保証があります。しかし、日本では難しい症状や崩壊した口腔内を
もつ患者さんはどこに行ったら高いレベルの治療を受けられるのか解らないと思います。おそらく、開業医がお金を出して掲載する怪しい「全国名医辞典」や
ネットのいかがわしい宣伝などを参考にして探すことが多いことでしょう。その結局、不見識で無責任な自称"○○専門医"の治療を受けて、トンデモナイ状況
に陥ってしまうことも巷には多く散見されます*。また、専門医が育たない機関である大学付属病院でも、残念ながら高度な治療は保証されません。毎年、何人
ものそういった医療機関で良い治療を受けられなかった患者さんが当院にも訪れますから、これは本当の話です。



*こんな信頼性のない情報に翻弄されて、無駄に時間を費やすかわいそうな患者さんの話も有ります。





◎この症例で行った矯正治療の流れ:



 主なステップを解説します。



スライド4




前歯部には、金属製コアをセットして、さらにPRを装着し、ブラケットをPRに付けた状態で矯正治療を始めました。



1.ライトワイヤーで手始めに、歯牙を挺出させた。



1-2.矯正を始めた時点のオーバージェットとオーバーバイト(水平・垂直的噛み込みの距離)の状態に注目。前歯部では咬合していない(開口状態と同じ)



2.矯正用ワーヤーをベンディング(曲げて)して、4前歯を舌側に傾斜移動すると同時に、下顎方向へ挺出させるために工夫した。



2-2.オトガイ(あごの)方向から観た噛み合わせ像:下顎前歯と咬合するには、まだかなり距離がある。







スライド5




3.2より1ヶ月ほど



3-2.2-2より更に歯牙移動が認められ、上顎中切歯2本が下顎前歯とほぼコンタクトした。



4.この時点から、金属製ワイヤーを外し、パワーチェーン(矯正用のゴム)に交換して、単純な舌側移動のみを行った。



4-2.もう少し側切歯を舌側に移動させる必要があるため、PRのコンタクト部を削り、更に側切歯が移動できるようにした。





スライド6




5.ほぼ歯牙が理想的な状態にまで移動した。



5-2この程度まで移動できれば、補綴学的な範囲で充分上下顎前歯の咬合獲得が可能。



6.5の時点でPR同士を即時重合レジンで連結結合した。ここから、数ヶ月保定期間に入る。



6-2咬合は良い状態が得られた。











◎外科的処置:





Iizuka_Hisae025




手術で、歯肉を剥離した状態



 この外科手術の意図するところは、極めて専門的な事になるので、詳しい説明は割愛します。



 要するに、矯正学的に傾斜や挺出といった歯牙移動をした際には、歯根膜組織と共に、歯槽骨も局所的に吸収や添加されますが、移動後保定期間になってもその後に上手く生物学的で生理的な歯周組織の環境が整わない場合が多いため、外科的に修整します。



 今回は、前歯部の最終補綴物を連結するため、永久保定状態になりますが、上の手術をすることで、後戻りもかなり防げるようになります。



 補綴物が脱落した臼歯部分の歯質は縁下まで着色と共に一部軽い軟化状態を呈していたため、縁上に健全歯質がでるよう修整しました。この結果、右側臼歯~
犬歯は、歯冠長が長い状態を呈することなりました。見かけ上の欠点にはなりますが、健全歯質のみ保存できたため、後年歯根が腐るリスクは低くなります。





Iizuka_Hisae026




オペ後、緊密に縫合した時の状態



オペ後約半年、PRのまま数ヶ月保定した後、支台歯を再形成し印象しました。







◎最終補綴物:



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技工士による最終補綴が出来上がりました。



 鈴木さんの場合は、臼歯咬合面は笑っても目立たないため、セラモ・メタル・クラウンは、咬合面は金属で覆うタイプにしました(もちろん、陶材で覆うフルベイクタイプでも作れます)。また、臼歯には全部鋳造冠も装着しました。



 上顎前歯は5本の連結冠で1ユニットとし、臼歯部がダメになった際には、臼歯部に局部床義歯を装着できるよう、犬歯(上顎右側犬歯:13)には、維持装
置のレストがかかるように設計されています。同様に、臼歯も局部床義歯を意識したレストが掛かる設計を下顎右側臼歯(46,47)と下顎左側犬歯(33)
に施してあります。



 このように、ある程度の年齢になった患者さんには、比較的近い将来問題が起こることを仮定した設計も必須です。大幅にやり直しをしなければいけないよう
な設計は、患者さんには迷惑をかけることになります。安全で、問題が生じたときに対応が可能な設計を可能な範囲で補綴処置に施すことが必要です。







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矯正学的治療によって、上の写真のように上顎前歯の前突が改善されました。





スライド1009-2




噛み合わせを観ると、このように充分な前歯部での咬合が得られました。





スライド1009




術前と比べて、前歯部の状態のみならず、口腔内環境が改善された状態にもご注目頂きたいと思います。





スライド16




術前と術後です。



口元の完成で、鈴木さんもよろこんで頂けました。









・・・







*私のブログは、全て実際に私が治療した症例の資料を基に、私自身が全て書いたモノです。当院の診療姿勢やエッセンスとお考え下さい。(多くの医院HPのように業者提供の写真・資料や他人の症例の流用ではありません。)





◎当院では、他院ではイイ加減に行いがちな目に見えないレベルまで基本的治療を正確に行っています。精度ある正しい治療をご希望の方、歯でお困りの方は、麹町アベニューデンタルオフィスへご相談下さい。

2009年9月15日

「 危ないインプラント治療と医原性疾患 」





このブログトピックは、次のトピックと共に読んで頂きたいと思います。患者さんの多くは、ここに書かれたブログの意味するところがよくお解りにならないだ
ろうと思います。ただ私が言いたいのは、現在の一般的歯科治療は良くない方向に向かっているということです。我々歯科医師の側の都合(報酬が多い方向)
で、治療をしてゆき、不必要な方法で治療が進められてしまう事が多いのです。



また、不必要な事のみならず、リスクが高くなる方法(補綴方法など)で治療されてしまうことが実に多いのです。



患者さんに、"将来問題が生じずらい方法論"を採るような先生が誠に少ない事は、医療の本質を忘れてしまってるとしか考えられません。もちろん、この点は私自身反省すべきところですが、こうしたことを全く反省しない先生方が余りにも多いという現実を知って下さい。





例えば、何度もブログで言及されているダメになるリスクを増やすようなインプラント治療が良い例です。



その一例を以下に示します。



最近、お出で頂いた患者さんに下顎第二大臼歯にインプラントが

埋入・植立されていました。



matsunaga側方




黄色の矢印が、インプラントの上部構造(歯冠部)です。



最後臼歯に必要のない審美性を考えたのか?歯肉にめり込むように歯冠部が作られています。人工的に、歯肉溝のような部分が作られてしまいました。この中は、どうやって清掃するのでしょうか?



これでは、一度細菌達が進入したら大変なことになります。



しかし、細菌学や歯周病学など科学的な知識が皆無な患者さんは、「歯が元通りになった」と、むしろよろこんでいるケースがほとんどです。これは、知らないということが恐ろしい事だと認識できる典型的ケースですね。





panorama-matsunaga




これが、全顎のレントゲン像です。



下顎右側第二大臼歯相当部に埋入されています。次のブログトピックで私が述べたように、下顎第二大臼歯は欠損した状態にしても、上顎の第二大臼歯が(噛む
歯がないので)挺出しますが顎を動かせた際、下顎の歯と全く干渉(衝突)することはありません。→ 欠損したままで良いと思います。





panorama-matsunaga1




この歯以外は残存していますから、この歯が欠損しても、咀嚼能力は差ほど大きくは落ちないはずです。



インプラントを、このような部位に埋入すると非常に清掃が難しいのです。しかも、上に書いたような変な上部構造を作ってしまったために細菌がインプラント周囲に付着してインプラント周囲炎*を生じるリスクを更に高めてしまっているのです。



panorama-matsunaga1'




白線部が歯肉を現しています。



以上のことから、以下のようにお解り頂けると思います。



患者さんのことを全く考えていない不要で危ないモノを高い自費治療費を頂き埋入してしまったという驚くべき例です。



こういった、必要もなくむしろリスクの高い状態でインプラントを埋入してしまうような先生が非常に多いのです。そして、インプラント周囲炎によりダメになる可能性が極めて高いのです。



     ↓     ↓     ↓     ↓



これは、「歯科医師による医原性疾患を高いお金で患者さんが買ってしまった」ようなものです。





初めから、する必要のない治療をするような、こういったトンデモナイ先生方は、自分が治療した後がどうなってもかまわないと思っているのでしょう。たぶん、治療費が沢山頂ければよいと思っているのです。





これをお読みの患者さんは、是非正しい知識を持って良い医療機関に受診できるようになって下さい。



よい医療を受けるには、まずは良い歯科医師(歯科医療機関)の選択が重要です。これが全てかも知れません。

2009年9月14日

「 症例のイントロ 」



患者さんごとに、その方のためになる妥当な処置方針を考える事が、我々臨床医には必要です。同じ症例を観ても、いくつもの方法が存在します。



例えば、まともな臨床講習会では、ある症例を呈示されて、治療計画を立てるといったトレーニングをすることがあります。この時、先生方の見識の違いが如実
に現れるものです。この頃は、欠損歯があれば、もしくは歯周病に罹患した歯があれば、これを抜歯してインプラントを選択してしまうような先生が多いことに
驚かされます。



結局、現在のベーシックな学校教育が徹底していないことが原因とも思えます。オーソドックスな歯周病の処置を全くしたことがない先生ほど、または、従来型
の義歯さえできない先生ほど、安易に自費治療費が得られる方法論として、インプラント治療を第一選択にするようです。こういったことは、多くの患者さんが
ご存じない大変に恐ろしいことなのです。結果的に、そういった見識のない多くの歯科医師によって多くの患者さんにご迷惑をお掛けしているのです。



さて、ここでは残存する天然歯を従来から行われている歯根分割を応用して処置して、しかも将来を考え、対合歯として乱れた咬合平面を整えた一症例をご覧頂きます。余計な処置など全くせずに、妥当な処置の一つとしてこういった方法論を採ったわけです。



これをお読みの患者さんには、理解しずらいと思いますがお読み頂ければ幸いです。









「 症例 」



・患者:大野順子(仮名)

・年齢:70歳 女性

・主訴:歯周病の治療をして欲しい





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初診時、正面観



臼歯部下顎右側第二大臼歯(47)の挺出*と共に、前歯中切歯(11,21)の挺出が顕著です。前歯部の咬合状態が悪く、中切歯がほとんど下顎前歯と噛んでいないのでこのような挺出をしたものと思います。



また、歯冠部及び歯頸部にかけての充填が沢山観られます。



*我々の口の中では、各々歯が噛み合(咬合)っています。適切に咬合していれば、ある位置に安定して植立していますが、どちらかが欠損してしまうと、噛む歯を求めて伸び出したように"挺出(ていしゅつ)"します。



挺出歯は、上顎の最後臼歯(一番奥にある臼歯)の場合、下顎臼歯と干渉しないため問題になりませんが、今回のように、下顎の最後臼歯が挺出した場合は、下顎が前方に運動する際に上顎の臼歯に干渉(衝突)を起こして問題になります。



今回は、47と16が干渉していました。





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これは、初診時の口腔内全体の状態です。





Onodera_Jyunko001''




青い部分:分岐部病変部

黄色の根:抜去される根

緑色の根:保存される根



○問題点:



・大臼歯(16,46)に分岐部病変があること(上図・青部分が分岐部病変部です)



・上下顎の大臼歯各々の予知性を考えて、大臼歯部にいかに補綴処置するか



写真上で、青い部分は根分岐部病変部で骨が細菌に冒されて骨が吸収し、その空間が細菌の巣窟になっているところです。この部分は、洞窟状に歯肉縁下にある
ため、清掃できずに骨破壊が進行してしまうため問題となるのです。そのため、この部分を清掃できるような状態に修整する必要があります。



この症例のように歯根分割・抜去することで、分岐部を清掃可能な部分へと変えることができます(他には、トンネリングという方法などもあります)。





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全顎をスケーリング&ルートプレーニングして、再評価(再度診査する)をした際の口腔内写真です。



歯周病が右側上下顎大臼歯部(16,46)をのぞき、スケーリングとルートプレーニングで解決できました。分岐部は、外科処置で解決しました。これは、以下を参照してください。





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歯周病の治療により、腫脹した歯肉が退縮して歯の間に空隙を作った状態になると、この部分は写真のように歯間ブラシで適切に清掃する必要があります。



歯間ブラシは、この空隙の大きさによって、その空間に適当な摩擦が生まれるような大きさの適切なモノを選択し使用します。写真では、Lサイズの歯間ブラシを使用しています。



また、歯ブラシは基本的に手で丁寧に行ってもらうように指導しています。最近では、電動ブラシをお使いになっている方も多いようですが、ブラシの当て方が間違っている場合は、磨き残しが多く残ってしまった例をよく見かけます。



小学生に漢字を覚えさせるのに、まずパソコンを使わせる事はしないと思います。それと同じ理由で、磨き方を指導させて頂く患者さんに電動ブラシを勧めたりはしません。まずは手で、しっかり適切に磨けるようにトレーニングしてもらいます。



○このケースでは、歯頸~根面部での充填の既往が顕著であるため、今後さらに根面う蝕の発生が懸念され、根面う蝕(根面カリエス)への対策が必要となりました。具体的には、メンテナンス毎の高濃度フッ化物塗布と、日常での患者さんのフッ化物含有歯磨剤使用を指導しました。









「 外科処置 」





◎上顎右上第一大臼歯の歯周外科手術





スライド5




1.口蓋根を切る前の状態



2.歯冠部から口蓋根をタービンバーでカットした直後



3.抜去された口蓋根



4.口蓋根・抜去後の状態





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1.遠心頬側根の根本をタービンバーでカットした状態



2.抜去された遠心頬側根



3.遠心頬側根と口蓋根が抜去された後、歯槽骨を修整して歯肉弁で可能な限り抜いた後(穴)を覆い縫合した状態



4.同・側方面から観た状態



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1.手術後7日後に抜糸した際の咬合面観



2.手術後7日後に抜糸した際の右側側方面観



3.手術後5ヶ月の咬合面観



4.手術後5ヶ月の右側側方面観



臼歯部での適切な咬合平面を得るため、手術後の46とその前の45の咬合面を削除・修整しています(写真2と4を比較のこと)。



分岐部病変(歯の根の間に歯周病による破壊が進んでいる)があるため、一番骨植のよい近心頬側根を残しました。さらに、歯冠部咬合面を小臼歯の形態にして保存し、概ねもう一本小臼歯が存在するような状況を作りました。(特に金属補綴などしていません)



このようなアクロバットのような処置は、一般的には行わないと思いますが(私も行いません)、患者さんの努力と抜歯を希望しないというご希望もあって、このようなカタチに保存できました。実際に、問題なくお噛み頂いています。



また、15と分割後の16に、コンタクトが回復しました。硬く固定せずに、ワイヤーを介して咬合時に自然動揺するように暫間固定を続けています。問題が生じなければ、このままお使い頂きます。







◎下顎右側第一大臼歯の歯周外科手術 



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1.歯根切除する前の咬合面観



2.同・右側側方面観



3.右側下顎第一大臼歯(46)を分岐部に合わせてカットし状態



4.同・46の近心根を抜去し縫合した後の状態*



*歯根分割抜去(ヘミセクション)の場合は、いくら上手く分割抜去で来た場合でも、歯肉弁を剥離して一般の歯周外科に準じた方法で行います。すなわち、取り残しの歯石を除去したり、分岐部相当部から支台部にかけての形態修整などを行います。





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1.手術時、縫合後、右側側方面観



2.術後3ヶ月、テンポラリークラウンを装着して歯肉成熟を待っているところ



3.最終補綴物を装着後・右側側方面観



4.同・右側舌側面観:近心根相当部は、ある程度空隙を狭めて、歯間ブラシでの清掃の際に、適当な摩擦を得るような状態に歯冠形態を付与しています。





下顎右側第一大臼歯(46)には、分岐部病変があり、このことで根分割抜去による保存方法を選択し、併せて第二大臼歯の挺出を是正するために咬合面を削除しました。これにより、第二大臼歯(47)と第一大臼歯遠心根、第二小臼歯(45)を連結補綴しました。



患者さんの口腔清掃状態が良好であるため、46の遠心根を保存しました。清掃状態が悪いのなら、46は一本まるまる抜歯して、45と47を支台としたブ
リッジにする方法か、もしくは分岐部に触れずに*(そのままで)歯冠形態を整えるだけの補綴をしても良かったかも知れません。



補綴の方法は、患者の清掃状態、年齢、希望、予算などにより決定されるものです。正に、ケース・バイ・ケースといえます。



*分岐部の処置には、チェアータイム、諸々の手間やそれ相応の治療費が派生します。清掃ができない患者さんの場合は、近い将来ダメになる可能性が非常に高いため、行っても無駄だと考えます。一般に、口腔清掃良好でない限りは、歯周外科は禁忌です。





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初診時の右側側方面観で図示すると、黄色の点線が現すような位置が自然な咬合平面(上下顎の歯牙が噛む点をつないだ仮想の平面)と考えます。



今回の上下顎臼歯部の処置で、咬合平面の乱れを上のような位置に(上図・黄色の点線部を参照)修整し、将来上顎もしくは下顎に欠損補綴を装着することになっても、適切な咬合関係を保てるように修整しました。





Onodera_Jyunko035




このように、最低限の歯周病学的かつ補綴学的に環境を改善することで、現実的にこの患者さんに関する妥当な対応ができたと思います。



現在、問題なく使用されているアクロバチックな分割歯牙16は、いつまで使用できるのか保証はありません。しかし、これを残したことで患者さんの希望がかない、なおかつ、この歯牙を保存することで高い口腔清掃を維持する事が可能になりました。



また、現時点での状態は決してゴールではありません。問題が生じれば順次柔軟に対応してゆく必要があります。根面う蝕予防やう蝕の再充填を含めて口腔内を高いレベルで維持してゆきます。





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現在、多くの先生方が16、46を抜歯してインプラントを埋入するような計画を平気で立ててしまいます。こういったことに、疑問を感じないような風潮が一番危険なのです。







・・・・・







必要のないインプラントを不適切に埋入した症例も提示しています。このブログを理解して頂くためにも次のブログを参照してください。

2009年9月 9日

街を歩いていると、歯科医師である職業病か他人の歯が気になる事があります。よく前歯の色やカタチが不自然な方を見かけます。本人も気になさっている場合が多いようですが、多くの方がなかなか治せないでいるようです。



今回紹介する40歳台のこの患者さん(女性)は、お子さんも大きくなり余裕が出てきたので、前歯のカタチと色合いの不調和を主訴に同部位の治療を希望し来院されました。



スライド2




ご覧頂いたとおり、上顎・左右側中切歯(11,21)、上顎・左右側側切歯(12,22)、上顎・左側犬歯(23)、右側第一小臼歯(銀色の冠が被っている歯:14)が治療の対象となりました。



まず、前歯で一番目立ち、中心にある上顎・左右側中切歯(11,21)の二本の色とカタチが悪く治して欲しいと言うことでしたが、お話しするうちに、他の4本も直すこととなりました。



スライド1




臼歯部を中心に、保険適応の銀色のインレーで修復されています。これら充填物下には二次的う蝕も発見されましたが、まず今回は前歯部を中心にした審美障害部位を解決することになりました。



スライド3




右が来院時軽く表面をポリッシングした後の硬質レジン冠です。ここには画像記録がありませんが、初診時にはもっと硬質レジン前層冠に汚いステインが沈着していました。



硬質レジン前層冠というのは、金属冠の見えるところに歯質に似せた白いレジンという(一種のプラスチックのような)物質を盛って白く覆った冠のことです。



この冠は、表面が瀬戸物のセラモ・メタル・クラウンやキャスタブル・セラミック・クラウンに比べると比較的安価に治療できます。しかし、耐摩耗性が悪く、歯垢、色素沈着や変色がしやすく、決して自然観のある審美性を保持できる補綴物ではありません。



当院では、特にお若い患者さんの場合には硬質レジン前層冠での修復は、全くオススメしていません。その理由は、このケースを見て頂ければお解り頂けると思います。



再修復するにあたり、硬質レジン前層冠を除去しました(上図右写真)。



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歯内療法と併せて、歯周病の問題があったため、口腔内の全歯牙にスケーリングとルートプレーニング(徹底的歯石除去)を行いました(上図上左写真)。



そして、上顎前歯6本を対照に4ミリ以上のポケットを残した部分と生物学的幅系(以前の私のブログ参照)を侵した部位に、歯冠長伸展術など歯周外科手術で修正を施しました(縫合後の状態:上図上右写真)。



手術後6ヶ月ほど経過した最終印象前の状態です。正常な歯周組織の獲得が得られました(上図下左写真)。



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前医の支台形成(歯の削り方)や築造(土台)がいい加減であることが解ります。支台歯の築造(土台)が不適切なカタチのレジン*で作られていることも解ります。辺縁周囲に歯石やセメントのカスなどが堆積しています(上図左写真)。



*支台築造は、レジンで作る方がむしろ歯牙に負担無く良いケースも多いのですが、この場合は歯肉縁上に健全歯質を保存せず築造してあるため、適切な状況ではありませんでした。



支台築造は、歯肉に接するマージンから数ミリ健全歯質を保存して、その上に金属などで移行的に作られるべきモノです(上図右写真)。



術前の支台築造と私が行った築造を比較してください(上図参照・左右を比較)。



スライド7




もちろん、歯内療法も必要がある箇所はやり直しています(下のレントゲンが術後)。上のレントゲン写真のように、歯内療法をしないまま感染根管で放置されたところや、根管充填後、根尖病巣が残っている箇所を治しました(黒い影が消失か縮小しています)。



◎このように患者さんの見えない部分まで真面目に整えることが、予後の良い補綴には必須です。





スライド5




術前と完成後の状態を比較してください。



術前の中切歯は幅広の形態でした。この患者さんは面長の顔貌でしたから、前歯のカタチと顔のカタチとの不調和*がありましたが、完成後はこの点が改善されました。また、完成後のセラミック特有の自然観は十分に患者さんの主訴を解決しています。



*ヒトは、特に前歯のカタチと顔貌とは相似形である事が多く、調和を取るために、顔貌(のカタチ)を参考にすべきです。



スライド6




このように自然なカタチで修復を終えました。



歯周組織や外面的には解らない歯内療法的(歯の内部)健康まで得られました。



とかく、見かけの色やカタチだけを問題にすることが多いのですが、歯を取り巻くインフラまで健康を得る必要があります。こういった一面的でない治療価値を大切にして、審美性を獲得することが求められるのです。





◎当院では、このように見えない部分の治療を徹底して行います。



 このような正しい補綴処置をご希望の方は、是非ご相談ください。

2009年6月 3日


「 症例のイントロ 」

今回、数日前に終わったちょっとした症例をご覧頂きます。

この方は、私のブログを以前から良く読んでくれた読者で、適切に治療してくれそうな医院を探していたそうです。文京区に住み、区内のIT関連会社に勤務する20代の若い患者さんです。


有り難いのは、お住まいの周辺や会社周辺でも沢山歯科医院があるのに、千代田区麹町までお通いいただけたことです。すなわち、ネット上などから自分が得た知識で我が医院の治療内容を気に入って通ってくれたのです。逆に、一般的患者さんの場合には、オフィスに近いという来院動機が多いのです。
この場合、どういった医院かも解らずに近いだけで歯科医院を選んでいることになります。

ところで、女性の中には美容室選びに神経を使ってる方は多いはずです。先日は「私、美容室難民なの」と、ある女性が言っていました。すなわち、表参道にある美容室の前任の美容師が遠方の美容室に移ったので、適当な新しい美容室を探しているが、まだ見つけられないで困っているといったことらしいのです。このように、女性の多くは、美容室選びにはかなり真剣です。埼玉の実家から、表参道まで通うこともいとわないのですから。

ここで、私はあえて言いたいのです。
「美容室と同じくらい、歯科医院も真剣に選んだらどうですか」と。

この頃、女性のみならず男性も含めて、多くの患者さんが本当に良い歯科医院を探しているのか疑問に思うことが多いので、もう少し真剣に歯科医院を選択した方がよいのではないかと思っているのです。明らかに怪しい歯科医院に受診して、困ったときには、また違う医院へ転院して複数院を延々と渡り歩いている方が世の中に多いのです。そして、歯の寿命は短くなります。
 これは、時間もお金も無駄になり、歯の寿命は短くなり・人生における大きな無駄です。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

患者:安田忠夫さん(仮名)


年齢:25歳


全顎的には、軽い歯肉炎や下に提示するような、二次う蝕(二次カリエス)を数本治療して終了しました。後は、本人のご希望通り、3ヶ月に一度のメインテナンスに来て頂くだけです。



パノラマ臼歯部




下顎右側・第二小臼歯(45)、第一大臼歯(46)、第二大臼歯(47)に矢印に示す部分にカリエスが認められます。



治療1~4

1:治療する45,46,47にラバーダム防湿法を施し、外部(口腔内)と隔絶しました。これは唾液汚染、乾いて綺麗な環境の確保、器具による事故防止といった条件を得るために、必須な方法です。*ラバーダム防湿法に関しては、以前のブログを参照のこと

なお当院では、保険・自費にかかわらず、ラバーダムを装着できる時には必ず使用しています。
(現在、ラバーダムは保険請求上算定できません。=医院負担です。)

2:以前充填された充填物とカリエスが認められる部分を切削・削除しました。

3:2の窩洞にう蝕検知液(カリエス・ディテクター)を滴下した後、水洗し赤く染まった感染歯質を確認しました。赤く染まった部分は、細菌の侵入がある部分で、必ずこれは除去しなければならない部分です。
4:検知液で染まった感染歯質を注意深く除去して、窩洞は綺麗になり、45遠心にCRを充填する直前。46近心との間に金属マトリックス装着とバイタイン
リングにより、コンタクト部を拡張したところ。マトリックスと45歯質とは隙間無く適合して、また46とのコンタクトを適切に回復させる必要があります。

こういった方法を高いレベルで再現するには,術者のトレーニングによる高い技量が必要です。
詳しくは、以前のブログを参照のこと。技術的にいい加減な場合は、二次的に障害を与えることがあります。
治療5~8




5:46と47間にマトリックスを装着し、46の遠心~咬合面にボンディング・プライマー塗布前にエッチング処理しているところ。ブルーのジェルがエッチング剤(ortho-phosphate37%)です。



6:エッチング後、ボンディング剤を塗布する前の状態

ボンディング前に、処理した窩洞歯質面に余計なモノ(唾液・呼気・その他汚染物質)が付くと接着が阻害されます。この点からも,このようなラバーダムによ
る術野の隔絶が必要な理由が理解していただけると思います。処理面が汚染されると、接着が不十分になり、後で亀裂などが生じ、二次う蝕や時には充填物脱落
などの懸念があります。



7:これが、充填完了時の状態です。綺麗に充填完了したことを確認してください。この後、注意深い充填部辺縁の診査、形態修整、咬合調整、最終研磨、クリアコーティングを行い完了します。
8:次回来院時に、撮影した口腔内での修復物像 
適切なコンタクトの付与(接触点回復)、咬合回復が得られています。

術前・術後


術前・術後の拡大像での比較

46は、辺縁不適合で充填物(CR:コンポジットレジン)と歯質のマージン(辺縁・境目)に黒く色素が入り込んでいます。ここから、細菌が入り込み二次う
蝕(充填後二次的に生じる虫歯)が生じます。また、47は保険のパラジューム合金によるインレーが装着されていますが、肉眼では解りずらいですがマージン
部に隙間や不適合があります。これら充填物辺縁(マージン部)の隙間は、う蝕を作る細菌レベルでは大変大きなモノになるのです。我々は細菌レベルで、マー
ジン部からの細菌進入を防ぐ方法をとる必要があるのです。

上のような観点から、47のような雑な金属充填や46の不適切なCR充填では処置したことにならず、むしろ二次的なう蝕(二次カリエス)を誘発させていることになります。
私が行ったこのようなCR充填と同じように、厳格な環境や条件で治療されたときに、安定した予後の良い修復が可能になります。一般的な医院で行われているラバーダムすら使用しないような充填では、予後の良い治療を達成するのは困難です。

多くの患者さんが、「虫歯治療なら、どこでも同じだろう」と考えているようですが、全く間違っています。これは、上の例を見ていただければおわかり頂けると思います。不十分な治療は歯の寿命を縮めます。

現在、街場の多くの歯科医院でみられる治療がそのレベルで、大変いい加減です。より精度の高い安全な方法での治療を望む方は、高いレベルの治療をルーティンで実践している先生を捜す必要があります。
  さて、皆さんはどちらの治療を受けたいですか?

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「 いかに正しい知識や技量を習得しているか 」

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先進的欧文教科書

私が使用している先進的歯科修復学の教科書(の一例)

こういった修復方法は、学校では教えないモノです。ですから、欧米の教科書を取り寄せて勉強しています。また、歯周病学は著名な教科書以外に欧文学会誌を3誌購読しています。学会誌は、特に最新トピックに関しては必須です。


世界的にインパクトファクター*が高い学会誌や著名で上質な教科書は、ネット経由もしくは専門書店で購入や購読が可能です。ですから、日本中どこにいても
世界標準の歯科医療は勉強できるのです。利用しない方が可笑しいと思います。講習会に頻回に通っている先生が周りに沢山いますが、どれだけ身につくか疑問です。
また、これらは主催の先生の我流の治療法など、指導する先生方のフィルターが加わっている講習が大半で怪しいモノが多いのです。やはり、歪曲されていない欧米研究者のオリジナルを勉強しなければいけません。
ある程度基礎を身につけたら、くだらなく怪しい講習会に何万円も払うよりも、教科書や文献を取り寄せた方が沢山の情報が得られ、それを使って繰り返し勉強が可能になるため、よっぽどマシだと思います。(良い講習会や勉強会を判断して、そこで基礎固めをすることは、もちろん若い先生方には必須です)
インパクトファクターとは、どれだけその雑誌(Journal:学術雑誌)から論文の引用があるかといった、引用率のことです。これが高いということは、多くの研究者がその雑誌の論文に注目していることであり、それだけ学術的信頼度の高い良い雑誌であるということです。

「 自分の目で歯科医師を選択するのが基本 」

残念ながら、医療機関には"ミシュラン"のようなモノは存在しません。いわゆる「全国名医辞典」といった本も医師自らが掲載料を払って載せているので、良医選択の客観的基準ではあり得ません。ですから、そういったモノを鵜呑みにしないで下さい。

このブログを書くきっかけの一つに、こちらの診療内容やレベルを開示し、患者さんに広く見ていただこうということがありました。もちろん、これで何らかの
信頼を持っていただけたなら、ご来院いただきたいのですが、いい加減でウソの多い一般歯科診療を避けて、良医に巡り会っていただきたいという一種の啓蒙的
意味合いもあるのです。

これをお読みの方々は、今回この症例の安田忠夫さんのように、よく勉強してから良医を選択して歯科医院へ通った方がよいかも知れません。

◎このブログを初めてお読みになった方へ・是非、以前書かれたブログもお読み下さい。

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◎当院・院長手製の小冊子↓



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◎当院では、虫歯1本から徹底的治療を致します。

歯でお困りの方は、是非ご相談下さい。

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2009年6月 1日

全顎的症例を着手すると、概ね1年以上の時間がかかります。いくら1回数時間集中して治療しても、各々の治癒期間や歯周病学的常識から、数回で全顎症例を
終わりにするようなことは出来ません。しかし、恐ろしいことに「通院最大でも10回の集中治療で治せる」とか、インプラントは4回で治療終了などと、平気
で宣伝している歯科医院があることに驚きます。皆さんは、こういったうたい文句に踊らされることなく、真摯に正しい治療をごまかし無くしてくださる先生を
捜してください。



ところで、今回は最近の症例をお見せします。これは、主に上顎の補綴物などの崩壊と共に反対咬合で正しく咬合出来ない患者さんの全顎的症例です。





「 Case H.○. 」



40代の男性患者さんです。

補綴物が壊れていることと、全顎的歯周病(中等度~一部重度)、反対咬合などが主な問題といえます。





panorama




このレントゲン画像からは、色々な情報がありますが、ここでは歯内療法の不備、複数の補綴物が壊れている点などを確認して下さい。



initial frontal view






初診時5枚法




初診時の口腔内



レントゲンでは解らなかった、右側小臼歯部から~左側側切歯に及ぶ反対咬合の状態が解ります。下顎左側側切歯および中切歯(31,32)が舌側に傾斜しています。下顎左側中切歯は、根が露出して排濃も観られます。



上顎右側補綴物は、壊れています。また、マージン部が不適合です。上顎左側補綴物は、マージン部が不適合でポンティック部も清掃性が悪い状態です。



また下顎の充填・補綴物も総じて不良です。充填物は、カリエスの可能性も疑われます。



結果的に、上顎左側犬歯(23)以外は外科的手術をする必要がありませんでした。

=非外科的処置SRPのみにより、全顎的にポケットは3ミリ以下を達成しました。



再評価時




これは、全顎的にスケーリング&ルート・プレーニング(SRP)を徹底的に終えた後の画像です。



既存の補綴物は、歯肉に害を及ぼさないように、不適合である歯肉周囲をカットして(オーバーマージンの除去)、清掃しやすい状態にしてからSRPしました。全顎的に歯肉が引き締まり、歯間乳頭部に空隙が生じた状態が確認できます。



nakata/pr




SRPで歯周組織にある程度の治癒が得られました。 



SRP完了後、provisional
restorations(PR)をセットしました。PRをセットしたことで、患者さんはセット直後から快適に噛むことが出来るようになり、この後数ヶ月
続くであろう治療にも、その期間を気にすることなく生活し、通院していただけるようになりました。



残念なことに、このPRをセット出来きる前に来院しなくなる患者さんがいます。数回(4~7,8回)のSRPを我慢できないといった時点で、全顎的治療は
無理なのです。少しの辛抱が出来ずに、止めてしまう患者さんは、大変残念ですが如何なる医療機関でも、きちんとした治療は無理だろうと思います。せっかく
始めたSRPも無駄になりますし、思い立って決意した治療を放り投げては、状態が悪化してモノが噛めないまま一生を過ごすのがオチです。最近、お仕事が忙
しいとの理由でSRPを途中でキャンセルし次回予約をしていない患者さん方、良くお考え下さい。



PR装着後、下顎犬歯間にワイヤ&ブラケットによる通常の限局的矯正を行い、可能な範囲で歯牙の切端が綺麗なアーチを描くよう揃えました。切端が揃ったため、前歯部で正常な咬合状態を獲得することが容易になりました。



31の根の露出部では、長い年月反対咬合で生じた外傷性により骨吸収が生じています。今回の歯牙移動では、わずかに改善されたものの審美的な問題は残って
います。しかし、反対咬合が改善されたことと、清掃を良くしてもらうことで問題を生じないとの判断で、ココへは今回は積極的加療は行いません。必要があれ
ば将来何らかの方法で解決する約束をしました(ご本人は、さほど気にしていない)。



23の歯冠長伸展術




この歯牙(上顎左側三番(犬歯):23)は、クロスアーチと言われる上顎全部に渡る1ユニットの補綴物を安全に支えるためには"キー(かなめ)"になる大変重要な歯牙と言えます(23はKey toothと言います)。



クロスアーチでは、特に犬歯部には側方顎運動時には、強い側方圧*が掛かるため、是非この犬歯は良い状態で保存して支台歯として利用しなければならなかったのです。



この残根(23)は、歯肉縁下に埋もれています。正しく、マージンを設定するためには、健全歯質が歯肉縁上にくるように、生物学的幅計を考慮して支持骨を
切除し、crown
lengthening(歯冠長伸展術)を施す必要がありました。また、長く適正な状態を保つために、犬歯のみならず隣在歯の支持骨も残念ながらすこし削
除しなければなりませんでした。(極端な隣り合う歯牙の骨レベルの違いは、生理的ではありませんから。)



結果的には予想外に良い状態で犬歯(23)を保存できて、クロスアーチブリッジも、強固にサポートできました。



*側方圧が大きすぎると長い年月には、クロスアーチが壊れたり、冠内部の合着セメント層が崩壊したり、結果的にクロスアーチの脱落が生じることさえありま
す。特にある部分のみに大きな側方圧がかかることを避けるために、グループファンクションなどの複数歯でのガイドを設定するように歯冠部の形態を付与しま
す。また、オーバーバイトが深いと結果的に側方圧が大きくなるので、バイトが深かったケースでは、バイトアップして噛み合わせを浅くして、側方への圧のベ
クトルを小さくします(側方圧を小さくします)。



この症例でも、バイトアップして、グループファンクションに準ずる咬合様式の付与をしています。これにより、クロスアーチへの側方圧が軽減できました。





final 5枚法




最終補綴物を装着した状態です。



このケースでは、クロスアーチブリッジの大臼歯部は、審美性に余り支障が生じないので全部被覆金属冠としました(金属被覆冠にすることで、治療費の節約が可能でした)。



また、セラモメタルクラウンの咬合面は、強い咬合力による陶材破折を防止するため、金属にしました。このようにこの患者さんは、顔貌がスクエアで咬筋も発
達しているため、フレームワークの設計には気を遣いました。(上顎犬歯の遠心斜面は陶材の破折好発部位なので、金属被覆にしてあります。)さらに、金属の
咬合面から、歯髄に問題が生じた時には歯内療法処置が容易に出来るという利点があります。



下顎臼歯部の補綴物は、近い将来補綴するという前提で、コンポジットレジンなどで暫間充填しています。ただし、失活歯全てに歯内療法を完了(再治療)しています(歯周組織&歯内療法での感染除去は完了済み)。



before&after




歯周組織の改善と共に、かなり良い咬合の回復が得られました。



ご本人も、良く噛めているので満足していただけたようです。



*ご理解が深まるように、以前の全顎症例もご覧下さい。





  ・・・・・・・・ お知らせ ・・・・・・・・・・



◎当院では、この症例のように丁寧に全顎的治療を行っております。

もちろん、巷でいい加減に行われている虫歯治療1本でも喜んでお受けいたします。



治療の規模や難易にかかわらず、完全な歯科治療をお望みの方は、是非ご相談下さい。



*ご予約は、電話にて承ります。

症例
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麹町アベニューデンタルオフィス 院長 戸村真一

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院長 戸村真一

こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

街の歯科医院へ行くと感じる嫌な感覚を皆様が受けないような雰囲気にしました。 スカンジナビアン調に私自らがエントランスから室内の隅々に至るまでデザインし、 患者さんがリラックスできる清潔で清々しいセンス溢れる空間をご用意しました。

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