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2015年6月18日


「 症例のイントロ 」

今回、数日前に終わったちょっとした症例をご覧頂きます。

この方は、私のブログを以前から良く読んでくれた読者で適切に治療してくれそうな医院を探していたそうです。
文京区に住み、区内のIT関連会社に勤務する20代の若い患者さんです。


有り難いのはお住まいの周辺や会社周辺でも沢山歯科医院があるのに、千代田区麹町までお通いいただけたことです。
すなわち、ネット上から自分が得た知識で我が医院の治療内容を気に入って通ってくれたのです。逆に、一般的患者さんの場合には会社に近いという来院動機が多いのです。
この場合、どういった医院かも解らずに近いだけで歯科医院を選んでいることになります。

ところで、女性の中には美容室選びに神経を使ってる方は多いはずです。
以前,「私、美容室難民なの」と、ある女性が言っていました。
すなわち、表参道にある美容室の前任の美容師が遠方の美容室に移ったので適当な新しい美容室を探しているが、まだ見つけられないで困っているといったことらしいのです。
このように、女性の多くは美容室選びにはかなり真剣です。埼玉の実家から表参道まで通うこともいとわないのですから。

ここで、私はあえて言いたいのです。
「美容室と同じくらい、歯科医院も真剣に選んだらどうですか」と。

この頃、女性のみならず男性も含めて、多くの患者さんが本当に良い歯科医院を探しているのか疑問に思うことが多いので、もう少し真剣に歯科医院を選択した方がよいのではないかと思っているのです。明らかに怪しい歯科医院に受診して、困ったときには、また違う医院へ転院して複数院を延々と渡り歩いている方が世の中に多いのです。そして、歯の寿命は短くなります。
 これは、時間もお金も無駄になり、歯の寿命は短くなり・人生における大きな無駄です。

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患者:安田祐司さん(仮名)


年齢:25歳


全顎的には、軽い歯肉炎や下に提示するような、二次う蝕(二次カリエス)を数本治療して終了しました。後は、本人のご希望通り、3ヶ月に一度のメインテナンスに来て頂くだけです。



パノラマ臼歯部




下顎右側・第二小臼歯(45)、第一大臼歯(46)第二大臼歯(47)に矢印に示す部分にカリエスが認められます。



治療1~4

1:治療する45,46,47にラバーダム防湿法を施し、外部(口腔内)と隔絶しました。これは唾液汚染、乾いて綺麗な環境の確保、器具による事故防止といった条件を得るために、必須な方法です。*ラバーダム防湿法に関しては、以前のブログを参照のこと

なお当院では、保険・自費にかかわらず、ラバーダムを装着できる時には必ず使用しています。
(現在、ラバーダムは保険請求上算定できません。=医院負担です。)

2:以前充填された充填物とカリエスが認められる部分を切削・削除しました。

3:2の窩洞にう蝕検知液(カリエス・ディテクター)を滴下した後、水洗し赤く染まった感染歯質を確認しました。赤く染まった部分は、細菌の侵入がある部分で、必ずこれは除去しなければならない部分です。
4:検知液で染まった感染歯質を注意深く除去して、窩洞は綺麗になり45遠心にCRを充填する直前。46近心との間に金属マトリックス装着とバイタインリングによりコンタクト部を拡張したところ。
マトリックスと45歯質とは隙間無く適合して、また46とのコンタクトを適切に回復させる必要があります。

こういった方法を高いレベルで再現するには術者のトレーニングによる高い技量が必要です。
詳しくは以前のブログを参照のこと。技術的にいい加減な場合は二次的に障害を与えることがあります。
治療5~8




5:46と47間にマトリックスを装着し、46の遠心~咬合面にボンディング・プライマー塗布前にエッチング処理しているところ。ブルーのジェルがエッチング剤(ortho-phosphate37%)です。



6:エッチング後、ボンディング剤を塗布する前の状態

ボンディング前に、処理した窩洞歯質面に余計なモノ(唾液・呼気・その他汚染物質)が付くと接着が阻害されます。この点からも,このようなラバーダムによ
る術野の隔絶が必要な理由が理解していただけると思います。処理面が汚染されると接着が不十分になり、後で亀裂などが生じ、二次う蝕や時には充填物脱落
などの懸念があります。



7:これが充填完了時の状態です。綺麗に充填完了したことを確認してください。この後、注意深い充填部辺縁の診査、形態修整、咬合調整、最終研磨、クリアコーティングを行い完了します。

8:次回来院時に、撮影した口腔内での修復物像 
適切なコンタクトの付与(接触点回復)、咬合回復が得られています。

術前・術後


術前・術後の拡大像での比較

46は、辺縁不適合で充填物(CR:コンポジットレジン)と歯質のマージン(辺縁・境目)に黒く色素が入り込んでいます。ここから、細菌が入り込み二次う
蝕(充填後二次的に生じる虫歯)が生じます。また、47は保険のパラジューム合金によるインレーが装着されていますが、肉眼では解りずらいですがマージン
部に隙間や不適合があります。これら充填物辺縁(マージン部)の隙間は、う蝕を作る細菌レベルでは大変大きなモノになるのです。我々は細菌レベルで、マージン部からの細菌進入を防ぐ方法をとる必要があります。

上のような観点から、47のような雑な金属充填や46の不適切なCR充填では処置したことにならず、むしろ二次的なう蝕(二次カリエス)を誘発させていることになります。
私が行ったこのようなCR充填と同じように、厳格な環境や条件で治療されたときに安定した予後の良い修復が可能になります。
一般的な医院で行われている唾液が術部を汚染するような充填では、予後の良い治療を達成するのは困難です。

多くの患者さんが、「虫歯治療なら、どこでも同じだろう」と考えているようですが、全く間違っています。これは、上の例を見ていただければおわかり頂けると思います。不十分な治療は歯の寿命を縮めます。

現在、一般的歯科医院でみられる治療がそのレベルで、大変いい加減です。より精度の高い安全な方法での治療を望む方は高いレベルの治療をルーティンで実践している先生を捜す必要があります。
  さて、皆さんはどちらの治療を受けたいですか?

* う蝕治療の充填処置では、ラバーダムは条件により使用できない時や他の方法で術部を汚染しないで治療出来る際には行う必要はありません。
ただし、歯内療法(神経の治療)ではラバーダム防湿法を使わない方法は一切行っていません。


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「 いかに正しい知識や技量を習得しているか 」

<
先進的欧文教科書

私が使用している先進的歯科修復学の教科書(の一例)

こういった修復方法は、学校では教えないモノです。ですから、欧米の教科書を取り寄せて勉強しています。また、歯周病学は著名な教科書以外に欧文学会誌を3誌購読しています。学会誌は、特に最新トピックに関しては必須です。


世界的にインパクトファクター*が高い学会誌や著名で上質な教科書は、ネット経由もしくは専門書店で購入や購読が可能です。ですから、日本中どこにいても
世界標準の歯科医療は勉強できるのです。利用しない方が可笑しいと思います。講習会に頻回に通っている先生が周りに沢山いますが、どれだけ身につくか疑問です。
また、これらは主催の先生の我流の治療法など、指導する先生方のフィルターが加わっている講習が大半で怪しいモノが多いのです。やはり、歪曲されていない欧米研究者のオリジナルを勉強しなければいけません。
ある程度基礎を身につけたら、くだらなく怪しい講習会に何万円も払うよりも、教科書や文献を取り寄せた方が沢山の情報が得られ、それを使って繰り返し勉強が可能になるため、よっぽどマシだと思います。(良い講習会や勉強会を判断して、そこで基礎固めをすることは、もちろん若い先生方には必須です)
インパクトファクターとは、どれだけその雑誌(Journal:学術雑誌)から論文の引用があるかといった、引用率のことです。これが高いということは、多くの研究者がその雑誌の論文に注目していることであり、それだけ学術的信頼度の高い良い雑誌であるということです。

「 自分の目で歯科医師を選択するのが基本 」

残念ながら、医療機関には"ミシュラン"のようなモノは存在しません。いわゆる「全国名医辞典」といった本も医師自らが掲載料を払って載せているので、良医選択の客観的基準ではあり得ません。ですから、そういったモノを鵜呑みにしないで下さい。

このブログを書くきっかけの一つに、こちらの診療内容やレベルを開示し、患者さんに広く見ていただこうということがありました。もちろん、これで何らかの
信頼を持っていただけたなら、ご来院いただきたいのですが、いい加減でウソの多い一般歯科診療を避けて、良医に巡り会っていただきたいという一種の啓蒙的
意味合いもあるのです。

これをお読みの方々は、今回この症例の安田忠夫さんのように、よく勉強してから良医を選択して歯科医院へ通った方がよいかも知れません。

◎このブログを初めてお読みになった方へ・是非、以前書かれたブログもお読み下さい。

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◎当院・院長手製の小冊子↓



syousassi

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◎当院では、虫歯1本から徹底的治療を致します。

歯でお困りの方は、是非ご相談下さい。

ご予約は、お電話でお願いします。


2012年7月15日




「 やはり手つかずの歯が一番 」


久しぶりに、殆ど歯科治療を受けた経験がない患者さんを拝見しました。

歯は、切削(形成)されて補綴されるよりもそのままの手つかずのまま保存する方がより長持ちします。 

削って補綴されると補綴物と歯との隙間などから後で細菌の侵入などを許し歯質に入り込み神経組織(歯髄)が侵され歯髄炎を生じたり等々で、とにかく細菌の侵入で数々のトラブルが生じ得ます。ですから必要があって補綴処置する際には高い精度の治療が必要です。


この方の場合は、一本だけう蝕治療としてインレーが装着されているだけです。それ以外は歯が全く削られずに何も不可逆的侵襲が加えられていません。  もちろん治療するようなう蝕が無かったので、何も治療がされていないのです。


う蝕はありませんが、この患者さんの場合は歯周病であることを自覚されて歯周病治療を希望し来院されました。



namura sHigeyuki blog'.jpg

この患者さんが本当に幸いなことは、不適切なう蝕治療を受けた経験が無く二次的に疾患が生じる危険が無かった点です。


これは以前から私が色々な場所で話している通り、不適切な治療を受けて後年、それ等治療から派生した二次的う蝕や更に進行し歯髄炎を併発するような再発症状で嫌な思いをされる事がなかったのです。なので私はこのケースを幸いだと表現しました。


 以前、ブログ記事で(主に保険の)インレー装着の後に二次う蝕から再発症状が生じやすい事は幾回か書きました。




「子供の頃、虫歯が無かったヒトは大人になって歯周病で苦労する?」

この患者さんは、虫歯は無くても歯周病に罹患しています。
良く話題になることですが、「子供の頃、虫歯が無かったヒトは大人になって歯周病で苦労する」といった話が出ますが、う蝕にならないヒトでも何故歯周病には罹患しやすいのでしょうか?

ここで細菌学的話ですが、う蝕を起こす細菌と歯周病を起こす細菌(原因菌)は全く別種で細菌の性質も異なります。

う蝕原性細菌(虫歯を起こす細菌)は、歯の表面などある程度空気と触れ合いやすい環境に生きる細菌(通性嫌気性)です。
一方、歯周病原性菌(歯周病を起こす細菌)は歯茎の周りの歯周ポケットのような溝の空気が少ない環境(嫌気性)を好んで住む性質があります。このように細菌も口の中で棲み分けています。


う蝕は下の図(Kayesの輪)のような3要素(細菌(Bacteria)・歯(Tooth)・細菌の栄養分(Diet))が存在して初めて生じます。

*私のブログ記事「バイオフィルムと言う概念」も細菌学の基礎としてご参照下さい。


Kayes circle 3.jpg
Kayes' circleの図



う蝕(虫歯)の実態とは、歯垢に存在する細菌が産生する酸で歯の表面を脱灰(Caが溶け出し崩壊)する現象です。
ですから、細菌の出す酸にやられやすい歯の質を持つヒト(Tooth)や歯ブラシを充分にしないで細菌(Bacteria)を付着させっぱなしにしているヒトや甘い物(Diet)をだらだらと食べているヒトは虫歯になるリスクが高くなります。

一方、歯周病原性菌では:歯周ポケットのような環境には、ポケットの上に付いた歯垢から特に歯周病原性の細菌達が移動してより良い棲息場所の嫌気的な環境であるポケット内へ移動してゆきます。

子供の頃、歯が丈夫(う蝕に成りづらい歯)でう蝕にならなかったヒトは概して、う蝕にならなかったことでブラッシングする習慣が無いヒトが多い傾向があります。

また、歯科医院へ通院して歯の治療や歯周病の検査や除石など受けた機会がほとんど無く、潜在的に歯周病が進行してその状況を放置しやすいのです。

このようにして、大人になり歯周ポケット内で棲息していた歯周病原性細菌達にかなり歯周組織を侵されている(歯周炎に罹患している)ことが多いのです。

このように、子供の頃、歯が良くて虫歯に成らなかったヒトは、大人になった歯周病で苦労するようなケースが多いと言えます。



虫歯がないと自慢のあなたも歯周病に罹患しているかも知れませんよ






2010年10月19日

この数年、週に数名インレーが外れた、詰めた歯が痛むといった患者さんがお出でになります。
今までにも、私の別ブログでも再三述べてきましたが、巷の虫歯(う蝕)治療は非常に雑です。特に保険で可能な12%金銀パラジューム合金によるインレーやクラウン(冠)などの治療は、治療として成立していないモノが多く見受けられます。患者さんの多くは、当然補綴・修復物が装着されると一応、安心されると思いますがその内のかなり多くが、精度不良・軟化象牙質の取り残しをしたまま治療完了に勝手にされているのです。現状から言わせて頂けば、日本の歯科医師はかなりの割合で、基本的なう蝕治療さえ充分なレベルで行っていないのです。もちろん、当院のようにルーティンでラバーダム防湿下で時間をかけて丁寧な処置を正しく励行している歯科医院は極めて希だろうと思います。


歯の寿命を考えると虫歯は早期に適切に治療すべきです。インレーが外れていらっしゃる患者さんのように一度う蝕処置を受けている場合には、再治療になり時間もかかり、生きた歯の歯髄を保存することも技術的に難しくなります。私が日常的に拝見している多くのケースは、治療し直しでう蝕の病巣が深部まで及んで進行した状態のモノです。

 


    /////////////////  最近の一症例  ////////////


DSC_0042.JPG

ここにお見せする一症例は、つい最近インレーが外れてしまって、窩洞底部(歯を削った底の部分)に深いう蝕が存在したケースです。インレーが外れてから来院されたのはすぐではありませんが,明らかに軟化象牙質を残したままインレー修復されたと思われます。たぶん不適合で不完全なインレーがう蝕によってセメントの溶解と共に外れたことは想像に難くありません。内部に軟化象牙質を残してインレーのような詰め物を装着すると、後で内部に残る細菌が増殖しう蝕の病巣は大きくなり疼痛を発生します。それと共に装着物も外れることもあります。そしてインレーなどが外れて初めて、このケースのように変色した軟化象牙質を発見することになります。

我々は、レントゲン撮影後、特に初診の患者さんには充填物下のう蝕病巣の存在の有無の説明と治療の必要性をご説明しています。痛くなる前に発見され多くの患者さんからご評価頂いております。


watanabe mio. jpg

レントゲンでは少し解りにくいと思いますが、歯冠部の中央より少しずれて丸い影が見えます。中は茶褐色の軟化象牙質と食物残渣が存在しています。

DSC_0044.JPG

う窩の着色した軟化象牙質を除去してゆき、う蝕検知液といわれる細菌が存在する象牙質だけ染まる液で 染め出し→除去→染め出し→除去といったことを数回繰り返して染まる象牙質がなくなるまで超音波の器具と手で丁寧に赤く染まった象牙質を除去してゆきました。この時、非常に歯髄(神経と毛細血管が存在する生きた歯には大切な組織)に近いところまで除去してゆきます。だいたいこの時は染まった象牙質の丁寧な除去に50分ほど時間がかかりました。写真はほぼ除去が終わった時点です。


DSC_0045.JPG

これは、コンポジットレジンというペースト状の高分子材料を充填した後、強い可視光線を照射し硬化させ充填が終了した状態です。精度の悪いインレーなどと比べれば、遙かに充填物と歯質の間に隙間を生じず適切な修復処置と言えます。また、昨今はメタルが口腔内に見えるコトが敬遠されるので、自然観ある歯質色の充填は多くの方に受け入れ易いとも思います。

*当院ではラバーダム防湿法による治療を励行しておりますので、世界に誇る日本製のコンポジットレジンや接着性材料であるボンディング剤などの素晴らしい材料の特性を最大限に生かせると思います。厳密な処置過程を取らないと、後で細菌の侵入を許す隙間などを生じやすいのです。

この症例の患者さんと同様に、かなり離れた場所からも、私のブログをご覧になり、ラバーダム防湿下での正しく丁寧なう蝕治療を希望されて患者さんがお見えになります。

今までに沢山のう蝕治療を受けて、インレーなどの修復物を装着されている患者さん、貴方のお口のう蝕治療も不十分かも知れません。ご心配の方は、おいで下さい。また、虫歯があることが解っているのに歯科医院へ通われていない患者さん、
修復方法は幾通りかありますが、適応症であればコンポジットレジン修復の場合、即日完了致します。特にやり直しの虫歯治療の場合、通常1時間半ほどのお時間を頂いております。

 お問い合わせ 


2010年9月 2日

先日、ある名古屋にお住まいの女性がお見えになりました。下顎第一大臼歯部に欠損部があったので、私は治療の経緯をお聞きしました。



「ある歯科医院へかかりました。そこの先生にインプラントを入れた方が良いと言われたのでインプラント治療を御願いしました。」

「結局、インプラント埋入後しばらくして、インプラントの周囲にレントゲンで観ると影が出た(周囲炎が起きた)ので、撤去されました。」とおっしゃっていました。



iwamoto tomoko
画像1


撤去してからかなり時間が経っているようです。



このケース(画像1参照)ですが、前後の臼歯が歯周組織も特別問題が無くしっかりしているので、通常は従来型のブリッジの適応症と考えるのが普通だと思います。

もちろん、インプラントを選択することもできますが、インプラントが唯一の処置法ではありません。

この頃、多くみられるのが、こういった下顎大臼歯の1ないし2歯欠損にインプラントが埋入されたケースです。"欠損前後の歯を削らないで済むので、インプ
ラントが良い"といった理屈を語る先生がいますが、こういった理屈には注意が必要です(特に、米国の臨床家は,こういった理由を正当化するヒトがいま
す。)。

インプラント周囲は、清掃が悪いとインプラント周囲炎(peri-implantitis)を生じます。一方、天然歯の支台歯周囲では、清掃不良で歯周炎
を生じ得ますが、歯周病は治療を適切に行い清掃をしっかりすれば治癒します。しかし、インプラント周囲炎は,未だ治療法方法が確立していませんから、ダメ
になるリスクは高いといえます。

*元々、下顎大臼歯部はプラークコントロールが難しい部位です。







hideo itoh
画像2


イメージ画像2:記事の症例ではありません。インプラント周囲炎など併発していない良好な例です。



ここで問題は、処置の複数の選択肢を与えられずに、高額な治療費となるインプラントを唯一の処置方法のように,もしくは安全で一番良い処置法のようなカタ
チで選択されている点です。すなわち、歯科医師が自分の都合で行っているのです。皆さんは、こういったケースに疑問を持たないでしょうか?特に、下顎大臼
歯部というのは清掃が難しく、インプラント周囲炎の好発部位といえますから、埋入部位としてもより安全な部位ではありません。一般に、従来型のブリッジを
装着する方が、天然の歯牙を支台歯とするので、より安全性は高いと考えます。これは、一種の正解だと考えられます。





「基礎疾患がある患者さんは、インプラントの禁忌症」

ごく最近、お見えになり歯周病の治療と義歯の調整をした患者さんの話です。

この患者さんは、基礎疾患があり、現在白血球数が減少しているという状態です。

「前医から、インプラントを勧められた」とおっしゃっていました。これは、全く驚くことです。基礎疾患をお持ちの方にインプラントは、禁忌症だからです。
解りやすく言えば、例えば糖尿病やC型肝炎などを患う患者さんは、口腔内の細菌感染で、歯周組織やインプラント周囲の支持組織(骨)に侵襲を受けやすいか
らです。健康な方よりも、それだけ口腔内の疾患をコントロールしづらい、いわゆる"ハイリスク"の患者さんだからです。



インプラントを行う上で症例の見極めは基本ですし、禁忌症を避けることは常識です。しかし、これを無視してハイリスクの患者さんにインプラントを薦めるというのは臨床医として最低の態度と考えます。

しかも、その患者さんの場合は近い将来入院など、口腔清掃が困難になる状況が考えられるのですから。



恐ろしい事ですが、日本の歯科臨床医は、この程度だということです。もっとはっきり言えば、高額な治療費が手に入れば患者さんがどうなっても良いと考えているのでしょう。

残念ですがこれが現実ですから、私は皆様に色々なカタチで、危険を回避できるように注意を促しているのです。究極的には、ご自分の身は自身で守らなければなりません。



○既にBlog上でアップしている記事へ、全国から沢山のアクセスがあり、インプラントは多くの方の関心事であることがよく解りました。また、患者さんからメールを頂くことがありますが、かなり多くの方が治療後に問題を生じているようです。


























2010年5月 1日


ある日、医科系出版社の編集者R女史より、「ある方が歯が痛んで困っている」「担当医も原因が解らないらしいので、診てくれないか」との連絡がありました。日本でも著名な数十名の臨床医を知っているRさんから、そういった先生方にではなく、私のような者へファースト・コールを頂いたので、有り難く拝見させていただきました。



お出で頂いた患者さんは、佐藤英子(仮名)さんという会社を経営されている品の良いご婦人でした。全顎的にある先生に治療を受けているようで、お口の中には前歯のパーシャルベニアを含めてしっかりとした精度の良い補綴がなされていました。お痛みがあるという歯は、左側第二大臼歯で、小臼歯からブリッジが装着されていました。打診をすると違和感があるようで、間違えなくこの歯が患歯(問題の歯)であることが解りました。来院時、激痛は緩和されていました(失活していた=歯髄が死んでいる)。




panorama
















このような状態です。


前日、激痛にうなされて担当医を訪れたそうですが、院長は遠方の学会に出席しているので代診の先生が代わりに診察したそうですが、原因がわからず対症療法としてお薬を処方されただけだったそうです。



デンタル1
















デンタル(X線)写真です。

第二大臼歯近心に、8ミリ近い深いポケットが存在していました(出血なし)。




この時点で、歯根破折を疑いました。また、反対側(右側)の第二大臼歯は以前破折して失っているそうです。実はこの既往が大切なのです。以前歯牙破折しているということは、今回も破折が関係している可能性は濃厚だからです(=口腔診断学の基本)。




破折が生じるとその破折線に沿って根尖方向へ細菌が移動して、骨が根尖方向へくさび状に深く破壊されるからです。これはいわば常識で、根部に破折が生じた印です。破折歯の多くは、よっぽどのことがない限り破折部が割れた状態で見えてきません。ですから、気がつかずに放置しやすいのでしょう。ただ、こういった骨欠損があるとき、歯周病も破折も考えずに補綴をする先生は、はっきりと不見識と言えます。先生自身がプローブで診査するようなことを行っていない医院ではこうしたことが起こりがちです。この医院も例外ではないのでしょう。
 

デンタル2















近心には、上の写真のアウトラインに示すような欠損があります。また、既に根尖(根の先)には根尖病巣を思わせる不明瞭な影が確認できます。一方、口腔内所見では当該部位のポーセレン製の咬合面が、著しく咬耗していました。ブラキシズムと呼ばれるような"くいしばり"などの悪習癖があるものと想像されます。こういった方は、歯牙破折しやすいのは歯科常識です。


*下顎は、第二大臼歯にポーセレン製のインレーと、第一大臼歯には咬合面がポーセレンのセラモメタルクラウンが装着されています。佐藤さんのようなケースでは、メタルでカバーすべきでしょう。
 

ポーセレンでは著しい咬耗とポーセレンが破折をする可能性が高いからです。

審美性を損なわせないためかも知れませんが、設計ミスだとも思います(安全な方法はブラキシズムの患者には、咬合面はメタルカバーです )。

もちろん、上下顎咬合する箇所はメタルが安全です。ポーセレン修復ではなく、メタル修復もしくは一部メタルにすべきでしょう。患者さんの希望もありますが、安全な処置方法をとることや説明してそれをススめることは臨床家として大切なことだと考えます。


このように"審美歯科"などという言葉を掲げて、安全な選択肢を忘れることは臨床上根本的問題の考慮不足だと私は考えています。




口腔内での確定診断として、破折線を確認する必要があります。この症例では、露出根からポケット内への根面を染色剤で染め出して斜め45度からマイクロス コープで観察した結果、根面にわずかに染まった破折線を発見しました。すなわち、この症例では歯根破折が原因であると確定したのです。


キャリアのある歯科医師でも、う蝕のない生活歯の歯髄炎の場合、"原因がわからない"としてしまう先生が多いようです。もちろん、失活歯(歯内療法がなされた歯)でも、歯根破折であることが解らない先生もいます。これは、診断能力がないのです。

生活歯の歯牙破折は今まで何例も経験があり、私自身も下顎第二大臼歯を歯牙破折で失っています。ですから、私に関しては幸か不幸か、まず破折歯の例は見逃しません。
さらに、歯牙破折を上行性歯髄炎と勘違いする先生もいるようです(ちなみに、根尖近くに何ら病変もないのに上行性歯髄炎は生じません)。破折初期には、この先生と同じように知覚過敏症と勘違いしやすいので注意が必要です。私自身の歯牙破折の場合も初期は"知覚過敏症"だと勘違いしてしまいました。

たぶん、佐藤さんの例では近心にくさび状に骨欠損が既に存在することから、かなり前に破折は起きていて、破折に気づかず補綴物を装着してしまったと思われ ます。そして、装着後かなり時間が経ってから歯髄炎に移行したのだろうと思います。私の経験ですが、破折でもかなり時間が経ってから本格的歯髄炎に移行す ることも多いようです。この佐藤英子さんも、以前に数回当該部位に軽い"うずき"や"違和感"、"浸みる感じ"を感じたことがあるということでした。まず 間違いなく、破折は補綴物装着前に起きていたことが解ります。


その後佐藤さんにはお会いしていませんが、R女史から聞くところでは新たに補綴物が装着されたとのこと。破折歯に補綴物を装着された?? 驚きました。全く困ったものです(>_<)ゞ


このケースは、反面教師です。我々も行ってしまう可能性がある過ちを行った例です。人ごとではなく、良い臨床的示唆を与えてくれました。しかし、患者さんはお気の毒です。


そういえば、この先生は我が医院で歯周病の治療を受けた医療コンサルタントX氏(守秘義務を守らない事で有名なコンサルタント:この歯科医院の内部事情も平気で話していました)のインプラントも以前埋入しています。

X氏の場合は、歯周病の全顎的治療が 完了していないまま、すなわち深いポケットが残存(6mm以上有り)したままインプラントが埋入されていました。

信じられないことですが、この先生は患者さん の口腔内をチェックせずに埋入しているのでしょうか?もしくは知っていながら平気なのかも知れません。歯周病治療が完了しないでインプラント埋入をしてし まう先生が日本では多くいるようです。 

この先生は審美補綴で名前を売っている先生ですが、実情はこの程度です。

保存治療を十分にしないで、審美補綴もインプラントもあったものではあ りません。皆さんに言いたいのは、これが歯科界の実情だということです。さらに、治療の基本を忘れると患者さんに大きな迷惑がかかるのです。

 

皆さんも、虫歯でない歯が痛んだら歯の破折を疑ってください。
それが予想できない先生は、診断能力が劣ると思って間違いないと思います。



2009年9月29日

今回は、上顎前突を矯正学的に改善して、全顎的に安全な方法論で補綴処置した症例をご覧頂きます。今回も、自分のことを棚に上げて言いたいことを書かせて頂きますが、ご容赦下さい。







◎症例のイントロ



「 米国人はルックスから、英国人は日本人と同じ? 」



 ところで、日本人は民族的に上顎前突が多いのでしょうか?欧米の雑誌に、日本人旅行客が眼鏡をかけ、出っ歯(上顎前突)で首からNikonのカメラをさ
げた風刺絵を、日本人がエコノミックアニマルと呼ばれた70~80年代によく見かけました。これは、日本人を揶揄していたのですが、欧米のヒト達から見る
と日本人にみられる上顎前突が非常に奇異に映ったのでしょう。



 米国の中流家庭なら、もし子供が歯並びが悪ければティーンのうちに矯正をすることはごく普通のことです。私的体験ですが、チェルノブイリの事件があった
80年代半ば、米国の中流家庭はヨーロッパの汚染を恐れて、夏のバカンスは遠いハワイに変更して長期滞在することが多かったようです。私の宿泊したホテル
のプールでも、米国人らしいティーンエージャーが沢山遊んでいましたが、皆歯に矯正治療のブラケットを付けていたことを思い出します。ホントにほとんどの
プールで遊ぶローティーンが矯正治療しているので、びっくりしました。



 審美的な部分に執拗に固執する傾向は、特に米国人に強いようで、これに比べると例えば英国人などとは対照的な気さえします。



 例えば、グラムロックで有名だったデヴィッド・ボウィは、80年代まで乱ぐい歯(前歯叢生)のままでした。クィーンのボーカリストのフレディー・マーキュリーは上顎前突で、それを治さないままこの世を去ってしまいました。また、女性憧れのエルメスのバッグ=バーキンで有名なジェーン・バーキン(フランス在住、実は英国出身)は、前歯が空いた正中離開のまま活躍しています。この3人のショービズ界のセレブリティーがこういった状態なのです。こんな事に象徴されるように、精神性では米国人より英国人の方が日本人に近いように思えるのです。







「 多少の歯列不正なら問題はなし、でも重症な場合は... 」



 私は、日常的に歯列不正を抱えた患者さんを沢山診ていますが、歯列不正が余りにも著しい場合以外は、それを「治しなさい」などと滅多なことでは言いませ
ん。多少の歯列不正なら、その方の欠点にならない場合がほとんどだからです。口腔衛生の観点からも、正しい磨き方を身につければ、虫歯や歯周病にならずに
すむのですから。ちょっとした歯並びの不正も他人から観て気づかないことも多いですし、むしろ時としてチャームポイントにさえなる事だってあるように思い
ます。



 今回は、そういったチャームポイントなどにはなりえない、ご本人も長い間、気になさっていた上顎前突の症例を矯正学的に改善し、全顎的に補綴治療を施した一症例をご覧頂きます。







・・・・・・・・・・・・・・・





◎症例



患者:鈴木美保(仮名)

性別:女性

年齢:50歳

主訴:右上奥歯の冠が脱落したので治して欲しい



 鈴木さんが、「右上奥歯の冠が脱落したので治して欲しい」と来院されました。初めは、脱落部だけを治して欲しいとのことでしたが、お話ししている中で、上顎前歯部の前突も気になっていたので、これを含めて全顎的治療をすることになりました。







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上顎臼歯部の冠が脱落しています。これらの支台歯の歯質も変色しています。



 そして何より上顎前歯が突出して、前歯では噛み合わせがありません。口腔内に装着している補綴物も不適合なモノばかりです。





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 鈴木さんは、前突のために唇を上手く閉じられません。ひどくこのことを気になさっていました。前突になる方の唇の周りにある口を閉じるための口輪筋は、
筋力が弱い傾向にあります。口輪筋の力に対して、口の中の舌の突出圧が強いときには、歯が唇側に傾斜するようになり、結果"前歯が前突"することになりま
す。どうやら、前突した状態で以前にセラモ・メタル・クラウン(瀬戸の歯)が装着されたようです。



 この症例では、通常の症例同様にまず、全顎的にスケーリング&ルート・プレーニングしてできる限り歯周病学的問題を解決しました。



 また、前歯の根尖には病巣が存在したため、歯内療法学的治療(歯根の治療)もしました。(その各々には、コア(金属支台築造)を装着する予定)



そして再評価後、前歯の矯正処置に取りかかりました。









◎技工ラボでの仕事



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 矯正で歯牙が理想的位置に移動した状態を模型上で想定して、その状態で歯牙が並び綺麗に上下顎で噛めるような状態のプロヴィジョナルレストレーション(以後PRと略す)とコアを作製しているところです。



1.前歯では根管の方向と歯軸とはほぼ一致するので、根管にようじを挿入して、歯牙の平行性などを考慮して、歯牙が理想的状態に移動した状態にセットアップしているところです。



2.1の状態で、各々の根管に適合するコアを作製した状態



3.1を咬合面方向から観たところ。各前歯の平行性がとれています。



4.PRを作製するためのワックスアップ(ロウで歯冠をカタチ作った状態)





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5.4を咬合面から見たところ。PRという仮の修復物でありながら、最終補綴物同様の解剖学的形態をワックスアップで再現しています。当院の担当技工士=青木啓高氏の丁寧な仕事には頭が下がります。



6.PR完成後の右側方面観



7.同、正面観



8.同 左側側方面観



*これら、PRは即時重合レジンという一種のプラスチックのような素材でできていますが、加圧釜などで高圧下で重合硬化させているので非常に硬く数ヶ月の使用にも充分耐える耐摩耗性があります。







「 レベルの高い技工士とチームを組むことは必須 」



 こういった臨床的接点の多い難しい仕事も、青木氏のような見識ある技工士には可能です。それは、歯科医師と同じ勉強を高いレベルで習得されているためです。私が説明することを難なくラボで実現してくれるので、当院の患者さんへも全く迷惑をかけることなく、素晴らしい治療が可能になります。



 臨床家は、技術・知識共に高い、信頼できる技工士と共に治療することは必須です。コストを下げる余り、価格競争ばかりしているような低級な技工所などを
使う医院では、精度ある信頼できる処置は不可能です。患者さんの多くがこのレベルの事情まで理解していないと思いますが....



*自費治療費の違いの根底には、先生の治療レベルや手間などの違いの他に、技工レベル(技工費)の大きな違いも関係していることは知っておいて下さい。(安いところと、高級な仕事をするところでは、技工料は3~4倍以上違います。)



 また、近いうちにブログに書きますが、良い治療を受けたい方が自費治療費の額の違いで、歯科医院を選択する(安い医院へ行く)ことは、全くナンセンスであることも知っておいて下さい。









◎矯正学的治療について:





 「 Interdisciplinary approach とは 」



 私は、矯正家ではありませんから、通常矯正治療はしません。ただし、このケースでは治療費の問題と時間的問題などを考慮して私が行うことにしました。た
だ、今後は極簡単な限局的矯正以外は自身では行う予定はありません。やはり、専門家に任せる方が問題を起こすリスクが低く、安全だと考えるからです。



 また、歯周病や補綴処置などに高いレベルの認識がない矯正家の先生とは、共に一人の患者の治療を進めることは難しいと思います。私の場合には、幸運にも
米国でTMDのマスターを取得し、帰国後に矯正医専門医として活躍されているある先生とはコラボが可能なので、その方に歯周病治療や補綴を含むケースで
は、矯正治療を依頼することにしています。



 専門医制度が充実した欧米では、一人の患者さんに関して、複数の専門医が分担して治療するような、いわゆる"interdisciplinary
approach"といわれる治療方法が試みられる事も珍しくはありません。そうした場合、各専門医同士の高いレベルでの学問的共通認識とコミュニケー
ションが円滑である必要があります。





 「 日本では専門医が育たない 」



 ところで、日本には米国でのいわゆる"Board"のようなハードルが高く、本物の権威ある専門医制度がありません。日本には、歯科に限っていえば、各
学会単位で専門医・指導医といったモノは存在しています。ただ、米国のように難しい取得試験がある制度ではなく、臨床家としての高いレベルを保証するモノ
ではありません。



 また、現状では高いレベルの本物の臨床教育を行っている研修機関も私が知る限りでは"無い"に等しいと思います。私自身、大学院に入って初めて解った事
ですが、授業すら行われていないのです。最高学府がこの状態ですから、日本には専門医を育てる環境はないと思います。ですから、専門医を目指し向学心のあ
る先生方は、まともな指導をしてくれる海外の大学院に留学するのです。



 この状況ですから、interdisciplinary approachも一部のグループや先生方を除いては日本では一般的ではありません。



 そういったことから、必然的に日本では一般開業医が多くの学問分野を高いレベルで身につける必要が出てきます。そして、ほぼ一人で難しい症例も治療しなければいかない状況が、一般的になってしまいます。





 「 誰にも良い医療機関が解らない現状 」



 欧米であれば、治療費は高価であっても、専門医に受診すれば概ね高度な治療を受けられる保証があります。しかし、日本では難しい症状や崩壊した口腔内を
もつ患者さんはどこに行ったら高いレベルの治療を受けられるのか解らないと思います。おそらく、開業医がお金を出して掲載する怪しい「全国名医辞典」や
ネットのいかがわしい宣伝などを参考にして探すことが多いことでしょう。その結局、不見識で無責任な自称"○○専門医"の治療を受けて、トンデモナイ状況
に陥ってしまうことも巷には多く散見されます*。また、専門医が育たない機関である大学付属病院でも、残念ながら高度な治療は保証されません。毎年、何人
ものそういった医療機関で良い治療を受けられなかった患者さんが当院にも訪れますから、これは本当の話です。



*こんな信頼性のない情報に翻弄されて、無駄に時間を費やすかわいそうな患者さんの話も有ります。





◎この症例で行った矯正治療の流れ:



 主なステップを解説します。



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前歯部には、金属製コアをセットして、さらにPRを装着し、ブラケットをPRに付けた状態で矯正治療を始めました。



1.ライトワイヤーで手始めに、歯牙を挺出させた。



1-2.矯正を始めた時点のオーバージェットとオーバーバイト(水平・垂直的噛み込みの距離)の状態に注目。前歯部では咬合していない(開口状態と同じ)



2.矯正用ワーヤーをベンディング(曲げて)して、4前歯を舌側に傾斜移動すると同時に、下顎方向へ挺出させるために工夫した。



2-2.オトガイ(あごの)方向から観た噛み合わせ像:下顎前歯と咬合するには、まだかなり距離がある。







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3.2より1ヶ月ほど



3-2.2-2より更に歯牙移動が認められ、上顎中切歯2本が下顎前歯とほぼコンタクトした。



4.この時点から、金属製ワイヤーを外し、パワーチェーン(矯正用のゴム)に交換して、単純な舌側移動のみを行った。



4-2.もう少し側切歯を舌側に移動させる必要があるため、PRのコンタクト部を削り、更に側切歯が移動できるようにした。





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5.ほぼ歯牙が理想的な状態にまで移動した。



5-2この程度まで移動できれば、補綴学的な範囲で充分上下顎前歯の咬合獲得が可能。



6.5の時点でPR同士を即時重合レジンで連結結合した。ここから、数ヶ月保定期間に入る。



6-2咬合は良い状態が得られた。











◎外科的処置:





Iizuka_Hisae025




手術で、歯肉を剥離した状態



 この外科手術の意図するところは、極めて専門的な事になるので、詳しい説明は割愛します。



 要するに、矯正学的に傾斜や挺出といった歯牙移動をした際には、歯根膜組織と共に、歯槽骨も局所的に吸収や添加されますが、移動後保定期間になってもその後に上手く生物学的で生理的な歯周組織の環境が整わない場合が多いため、外科的に修整します。



 今回は、前歯部の最終補綴物を連結するため、永久保定状態になりますが、上の手術をすることで、後戻りもかなり防げるようになります。



 補綴物が脱落した臼歯部分の歯質は縁下まで着色と共に一部軽い軟化状態を呈していたため、縁上に健全歯質がでるよう修整しました。この結果、右側臼歯~
犬歯は、歯冠長が長い状態を呈することなりました。見かけ上の欠点にはなりますが、健全歯質のみ保存できたため、後年歯根が腐るリスクは低くなります。





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オペ後、緊密に縫合した時の状態



オペ後約半年、PRのまま数ヶ月保定した後、支台歯を再形成し印象しました。







◎最終補綴物:



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技工士による最終補綴が出来上がりました。



 鈴木さんの場合は、臼歯咬合面は笑っても目立たないため、セラモ・メタル・クラウンは、咬合面は金属で覆うタイプにしました(もちろん、陶材で覆うフルベイクタイプでも作れます)。また、臼歯には全部鋳造冠も装着しました。



 上顎前歯は5本の連結冠で1ユニットとし、臼歯部がダメになった際には、臼歯部に局部床義歯を装着できるよう、犬歯(上顎右側犬歯:13)には、維持装
置のレストがかかるように設計されています。同様に、臼歯も局部床義歯を意識したレストが掛かる設計を下顎右側臼歯(46,47)と下顎左側犬歯(33)
に施してあります。



 このように、ある程度の年齢になった患者さんには、比較的近い将来問題が起こることを仮定した設計も必須です。大幅にやり直しをしなければいけないよう
な設計は、患者さんには迷惑をかけることになります。安全で、問題が生じたときに対応が可能な設計を可能な範囲で補綴処置に施すことが必要です。







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矯正学的治療によって、上の写真のように上顎前歯の前突が改善されました。





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噛み合わせを観ると、このように充分な前歯部での咬合が得られました。





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術前と比べて、前歯部の状態のみならず、口腔内環境が改善された状態にもご注目頂きたいと思います。





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術前と術後です。



口元の完成で、鈴木さんもよろこんで頂けました。









・・・







*私のブログは、全て実際に私が治療した症例の資料を基に、私自身が全て書いたモノです。当院の診療姿勢やエッセンスとお考え下さい。(多くの医院HPのように業者提供の写真・資料や他人の症例の流用ではありません。)





◎当院では、他院ではイイ加減に行いがちな目に見えないレベルまで基本的治療を正確に行っています。精度ある正しい治療をご希望の方、歯でお困りの方は、麹町アベニューデンタルオフィスへご相談下さい。

2009年9月15日

「 危ないインプラント治療と医原性疾患 」





このブログトピックは、次のトピックと共に読んで頂きたいと思います。患者さんの多くは、ここに書かれたブログの意味するところがよくお解りにならないだ
ろうと思います。ただ私が言いたいのは、現在の一般的歯科治療は良くない方向に向かっているということです。我々歯科医師の側の都合(報酬が多い方向)
で、治療をしてゆき、不必要な方法で治療が進められてしまう事が多いのです。



また、不必要な事のみならず、リスクが高くなる方法(補綴方法など)で治療されてしまうことが実に多いのです。



患者さんに、"将来問題が生じずらい方法論"を採るような先生が誠に少ない事は、医療の本質を忘れてしまってるとしか考えられません。もちろん、この点は私自身反省すべきところですが、こうしたことを全く反省しない先生方が余りにも多いという現実を知って下さい。





例えば、何度もブログで言及されているダメになるリスクを増やすようなインプラント治療が良い例です。



その一例を以下に示します。



最近、お出で頂いた患者さんに下顎第二大臼歯にインプラントが

埋入・植立されていました。



matsunaga側方




黄色の矢印が、インプラントの上部構造(歯冠部)です。



最後臼歯に必要のない審美性を考えたのか?歯肉にめり込むように歯冠部が作られています。人工的に、歯肉溝のような部分が作られてしまいました。この中は、どうやって清掃するのでしょうか?



これでは、一度細菌達が進入したら大変なことになります。



しかし、細菌学や歯周病学など科学的な知識が皆無な患者さんは、「歯が元通りになった」と、むしろよろこんでいるケースがほとんどです。これは、知らないということが恐ろしい事だと認識できる典型的ケースですね。





panorama-matsunaga




これが、全顎のレントゲン像です。



下顎右側第二大臼歯相当部に埋入されています。次のブログトピックで私が述べたように、下顎第二大臼歯は欠損した状態にしても、上顎の第二大臼歯が(噛む
歯がないので)挺出しますが顎を動かせた際、下顎の歯と全く干渉(衝突)することはありません。→ 欠損したままで良いと思います。





panorama-matsunaga1




この歯以外は残存していますから、この歯が欠損しても、咀嚼能力は差ほど大きくは落ちないはずです。



インプラントを、このような部位に埋入すると非常に清掃が難しいのです。しかも、上に書いたような変な上部構造を作ってしまったために細菌がインプラント周囲に付着してインプラント周囲炎*を生じるリスクを更に高めてしまっているのです。



panorama-matsunaga1'




白線部が歯肉を現しています。



以上のことから、以下のようにお解り頂けると思います。



患者さんのことを全く考えていない不要で危ないモノを高い自費治療費を頂き埋入してしまったという驚くべき例です。



こういった、必要もなくむしろリスクの高い状態でインプラントを埋入してしまうような先生が非常に多いのです。そして、インプラント周囲炎によりダメになる可能性が極めて高いのです。



     ↓     ↓     ↓     ↓



これは、「歯科医師による医原性疾患を高いお金で患者さんが買ってしまった」ようなものです。



初めから、する必要のない治療をするような、こういったトンデモナイ先生方は、自分が治療した後がどうなってもかまわないと思っているのでしょう。たぶん、治療費が沢山頂ければよいと思っているのです。



これをお読みの患者さんは、是非正しい知識を持って良い医療機関に受診できるようになって下さい。


よい医療を受けるには、まずは良い歯科医師(歯科医療機関)の選択が重要です。これが全てかも知れません。

とにかく、治療費獲得しか考えていない不良歯科医に騙されないで下さい!


2009年9月14日

「 症例のイントロ 」

患者さんごとに、その方のためになる妥当な処置方針を考える事が、我々臨床医には必要です。同じ症例を観ても、いくつもの方法が存在します。



例えば、まともな臨床講習会では、ある症例を呈示されて、治療計画を立てるといったトレーニングをすることがあります。この時、先生方の見識の違いが如実
に現れるものです。この頃は、欠損歯があれば、もしくは歯周病に罹患した歯があれば、これを抜歯してインプラントを選択してしまうような先生が多いことに
驚かされます。



結局、現在のベーシックな学校教育が徹底していないことが原因とも思えます。オーソドックスな歯周病の処置を全くしたことがない先生ほど、または従来型
の義歯さえできない先生ほど安易に自費治療費が得られる方法論としてインプラント治療を第一選択にするようです。こういったことは多くの患者さんがご存じない大変に恐ろしいことなのです。
結果的に、そういった見識のない多くの歯科医師によって多くの患者さんにご迷惑をお掛けしています。


さて、ここでは残存する天然歯を従来から行われている歯根分割を応用して処置して、しかも将来を考え、対合歯として乱れた咬合平面を整えた一症例をご覧頂きます。余計な処置など全くせずに、妥当な処置の一つとしてこういった方法論を採ったわけです。



これをお読みの患者さんには、理解しずらいと思いますがお読み頂ければ幸いです。


「 症例 」

・患者:大野順子(仮名)
・年齢:70歳 女性

・主訴:歯周病の治療をして欲しい



Onodera_Jyunko002

初診時、正面観

臼歯部下顎右側第二大臼歯(47)の挺出*と共に、前歯中切歯(11,21)の挺出が顕著です。前歯部の咬合状態が悪く、中切歯がほとんど下顎前歯と噛んでいないのでこのような挺出をしたものと思います。
また、歯冠部及び歯頸部にかけての充填が沢山観られます。

*我々の口の中では、各々歯が噛み合(咬合)っています。適切に咬合していれば、ある位置に安定して植立していますが、どちらかが欠損してしまうと、噛む歯を求めて伸び出したように"挺出(ていしゅつ)"します。

挺出歯は上顎の最後臼歯(一番奥にある臼歯)の場合、下顎臼歯と干渉しないため問題になりませんが、今回のように下顎の最後臼歯が挺出した場合は、下顎が前方に運動する際に上顎の臼歯に干渉(衝突)を起こして問題になります。
今回は47と16が干渉していました。

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これは初診時の口腔内全体の状態です。

Onodera_Jyunko001''


青い部分:分岐部病変部
黄色の根:抜去される根
緑色の根:保存される根

○問題点:
・大臼歯(16,46)に分岐部病変があること(上図・青部分が分岐部病変部です)
・上下顎の大臼歯各々の予知性を考えて、大臼歯部にいかに補綴処置するか

写真上で青い部分は根分岐部病変部で骨が細菌に冒されて骨が吸収し、その空間が細菌の巣窟になっているところです。
この部分は洞窟状に歯肉縁下にあるため清掃できずに骨破壊が進行してしまうため問題になります。→この解決方法として、この部分を清掃できるような状態に修整する必要があります。
この症例のように歯根分割・抜去することで分岐部を清掃可能な部分へと変えることができます。

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全顎をスケーリング&ルートプレーニングして、再評価(再度診査する)をした際の口腔内写真です。
歯周病が右側上下顎大臼歯部(16,46)をのぞき、スケーリングとルートプレーニングで解決できました。分岐部は、外科処置で解決しました。これは、以下を参照してください。

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歯周病の治療により、腫脹した歯肉が退縮して歯の間に空隙を作った状態になると、この部分は写真のように歯間ブラシで適切に清掃する必要があります。


歯間ブラシは、この空隙の大きさによって、その空間に適当な摩擦が生まれるような大きさの適切なモノを選択し使用します。写真では、Lサイズの歯間ブラシを使用しています。

また、歯ブラシは基本的に手で丁寧に行ってもらうように指導しています。最近では、電動ブラシをお使いになっている方も多いようですが、ブラシの当て方が間違っている場合は、磨き残しが多く残ってしまった例をよく見かけます。

小学生に漢字を覚えさせるのに、まずパソコンを使わせる事はしないと思います。それと同じ理由で、磨き方を指導させて頂く患者さんに電動ブラシを勧めたりはしません。まずは手で、しっかり適切に磨けるようにトレーニングしてもらいます。

○このケースでは、歯頸~根面部での充填の既往が顕著であるため、今後さらに根面う蝕の発生が懸念され、根面う蝕(根面カリエス)への対策が必要となりました。具体的には、メンテナンス毎の高濃度フッ化物塗布と、日常での患者さんのフッ化物含有歯磨剤使用を指導しました。

「 外科処置 」

◎上顎右上第一大臼歯の歯周外科手術

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1.口蓋根を切る前の状態

2.歯冠部から口蓋根をタービンバーでカットした直後

3.抜去された口蓋根

4.口蓋根・抜去後の状態

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1.遠心頬側根の根本をタービンバーでカットした状態

2.抜去された遠心頬側根

3.遠心頬側根と口蓋根が抜去された後、歯槽骨を修整して歯肉弁で可能な限り抜いた後(穴)を覆い縫合した状態

4.同・側方面から観た状態

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1.手術後7日後に抜糸した際の咬合面観
分岐部病変(歯の根の間に歯周病による破壊が進んでいる)があるため、一番骨植のよい近心頬側根を残しました。さらに、歯冠部咬合面を小臼歯の形態にして保存し、概ねもう一本小臼歯が存在するような状況を作りました。(特に金属補綴などしていません)


2.手術後7日後に抜糸した際の右側側方面観
臼歯部での適切な咬合平面を得るため、手術後の46とその前の45の咬合面を削除・修整しています(写真2と4を比較のこと)

3.手術後5ヶ月の咬合面観
このようなアクロバットのような処置は、一般的には行わないと思いますが(私も行いません)、患者さんの努力と抜歯を希望しないというご希望もあって、このようなカタチに保存できました。実際に、問題なくお噛み頂いています。

4.手術後5ヶ月の右側側方面観
また、15と分割後の16に、コンタクトが回復しました。硬く固定せずに、ワイヤーを介して咬合時に自然動揺するように暫間固定を続けています。問題が生じなければ、このままお使い頂きます。

◎下顎右側第一大臼歯の歯周外科手術 

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1.歯根切除する前の咬合面観

2.同・右側側方面観

3.右側下顎第一大臼歯(46)を分岐部に合わせてカットし状態

4.同・46の近心根を抜去し縫合した後の状態*

*歯根分割抜去(ヘミセクション)の場合は、いくら上手く分割抜去で来た場合でも、歯肉弁を剥離して一般の歯周外科に準じた方法で行います。すなわち、取り残しの歯石を除去したり、分岐部相当部から支台部にかけての形態修整などを行います。

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1.手術時、縫合後、右側側方面観

2.術後3ヶ月、テンポラリークラウンを装着して歯肉成熟を待っているところ

3.最終補綴物を装着後・右側側方面観

4.同・右側舌側面観:近心根相当部は、ある程度空隙を狭めて、歯間ブラシでの清掃の際に、適当な摩擦を得るような状態に歯冠形態を付与しています。


下顎右側第一大臼歯(46)には、分岐部病変があり、このことで根分割抜去による保存方法を選択し、併せて第二大臼歯の挺出を是正するために咬合面を削除しました。これにより、第二大臼歯(47)と第一大臼歯遠心根、第二小臼歯(45)を連結補綴しました。

患者さんの口腔清掃状態が良好であるため、46の遠心根を保存しました。清掃状態が悪いのなら、46は一本まるまる抜歯して、45と47を支台としたブ
リッジにする方法か、もしくは分岐部に触れずに*(そのままで)歯冠形態を整えるだけの補綴をしても良かったかも知れません。

補綴の方法は、患者の清掃状態、年齢、希望、予算などにより決定されるものです。正に、ケース・バイ・ケースといえます。
*分岐部の処置には、チェアータイム、諸々の手間やそれ相応の治療費が派生します。清掃ができない患者さんの場合は、近い将来ダメになる可能性が非常に高いため、行っても無駄だと考えます。一般に、口腔清掃良好でない限りは、歯周外科は禁忌です。

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初診時の右側側方面観で図示すると、黄色の点線が現すような位置が自然な咬合平面(上下顎の歯牙が噛む点をつないだ仮想の平面)と考えます。

今回の上下顎臼歯部の処置で咬合平面の乱れを上のような位置に(上図・黄色の点線部を参照)修整し、将来上顎もしくは下顎に欠損補綴を装着することになっても適切な咬合関係を保てるように修整しました。

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このように、最低限の歯周病学的かつ補綴学的に環境を改善することで、現実的にこの患者さんに関する妥当な対応ができたと思います。
現在、問題なく使用されているアクロバチックな分割歯牙16は、いつまで使用できるのか保証はありません。しかし、これを残したことで患者さんの希望がかない、なおかつこの歯牙を保存することで高い口腔清掃を維持する事が可能になりました。

また、現時点での状態は決してゴールではありません。問題が生じれば順次柔軟に対応してゆく必要があります。根面う蝕予防やう蝕の再充填を含めて口腔内を高いレベルで維持してゆきます。

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現在、多くの先生方が16、46を抜歯してインプラントを埋入するような計画を平気で立ててしまいます。こういったことに、疑問を感じないような風潮が一番危険なのです。

・・・・・

必要のないインプラントを不適切に埋入した症例も提示しています。このブログを理解して頂くためにも次のブログを参照してください。

2009年9月 9日

街を歩いていると、歯科医師である職業病か他人の歯が気になる事があります。よく前歯の色やカタチが不自然な方を見かけます。本人も気になさっている場合が多いようですが、多くの方がなかなか治せないでいるようです。



今回紹介する40歳台のこの患者さん(女性)は、お子さんも大きくなり余裕が出てきたので、前歯のカタチと色合いの不調和を主訴に同部位の治療を希望し来院されました。



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ご覧頂いたとおり、上顎・左右側中切歯(11,21)、上顎・左右側側切歯(12,22)、上顎・左側犬歯(23)、右側第一小臼歯(銀色の冠が被っている歯:14)が治療の対象となりました。



まず、前歯で一番目立ち、中心にある上顎・左右側中切歯(11,21)の二本の色とカタチが悪く治して欲しいと言うことでしたが、お話しするうちに、他の4本も直すこととなりました。



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臼歯部を中心に、保険適応の銀色のインレーで修復されています。これら充填物下には二次的う蝕も発見されましたが、まず今回は前歯部を中心にした審美障害部位を解決することになりました。



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右が来院時軽く表面をポリッシングした後の硬質レジン冠です。ここには画像記録がありませんが、初診時にはもっと硬質レジン前層冠に汚いステインが沈着していました。



硬質レジン前層冠というのは、金属冠の見えるところに歯質に似せた白いレジンという(一種のプラスチックのような)物質を盛って白く覆った冠のことです。



この冠は、表面が瀬戸物のセラモ・メタル・クラウンやキャスタブル・セラミック・クラウンに比べると比較的安価に治療できます。しかし、耐摩耗性が悪く、歯垢、色素沈着や変色がしやすく、決して自然観のある審美性を保持できる補綴物ではありません。



当院では、特にお若い患者さんの場合には硬質レジン前層冠での修復は、全くオススメしていません。その理由は、このケースを見て頂ければお解り頂けると思います。



再修復するにあたり、硬質レジン前層冠を除去しました(上図右写真)。



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歯内療法と併せて、歯周病の問題があったため、口腔内の全歯牙にスケーリングとルートプレーニング(徹底的歯石除去)を行いました(上図上左写真)。



そして、上顎前歯6本を対照に4ミリ以上のポケットを残した部分と生物学的幅系(以前の私のブログ参照)を侵した部位に、歯冠長伸展術など歯周外科手術で修正を施しました(縫合後の状態:上図上右写真)。



手術後6ヶ月ほど経過した最終印象前の状態です。正常な歯周組織の獲得が得られました(上図下左写真)。



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前医の支台形成(歯の削り方)や築造(土台)がいい加減であることが解ります。支台歯の築造(土台)が不適切なカタチのレジン*で作られていることも解ります。辺縁周囲に歯石やセメントのカスなどが堆積しています(上図左写真)。



*支台築造は、レジンで作る方がむしろ歯牙に負担無く良いケースも多いのですが、この場合は歯肉縁上に健全歯質を保存せず築造してあるため、適切な状況ではありませんでした。



支台築造は、歯肉に接するマージンから数ミリ健全歯質を保存して、その上に金属などで移行的に作られるべきモノです(上図右写真)。



術前の支台築造と私が行った築造を比較してください(上図参照・左右を比較)。



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もちろん、歯内療法も必要がある箇所はやり直しています(下のレントゲンが術後)。上のレントゲン写真のように、歯内療法をしないまま感染根管で放置されたところや、根管充填後、根尖病巣が残っている箇所を治しました(黒い影が消失か縮小しています)。



◎このように患者さんの見えない部分まで真面目に整えることが、予後の良い補綴には必須です。





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術前と完成後の状態を比較してください。



術前の中切歯は幅広の形態でした。この患者さんは面長の顔貌でしたから、前歯のカタチと顔のカタチとの不調和*がありましたが、完成後はこの点が改善されました。また、完成後のセラミック特有の自然観は十分に患者さんの主訴を解決しています。



*ヒトは、特に前歯のカタチと顔貌とは相似形である事が多く、調和を取るために、顔貌(のカタチ)を参考にすべきです。



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このように自然なカタチで修復を終えました。



歯周組織や外面的には解らない歯内療法的(歯の内部)健康まで得られました。



とかく、見かけの色やカタチだけを問題にすることが多いのですが、歯を取り巻くインフラまで健康を得る必要があります。こういった一面的でない治療価値を大切にして、審美性を獲得することが求められるのです。





◎当院では、このように見えない部分の治療を徹底して行います。



 このような正しい補綴処置をご希望の方は、是非ご相談ください。

2009年6月 1日

全顎的症例を着手すると、概ね1年以上の時間がかかります。いくら1回数時間集中して治療しても、各々の治癒期間や歯周病学的常識から、数回で全顎症例を
終わりにするようなことは出来ません。しかし、恐ろしいことに「通院最大でも10回の集中治療で治せる」とか、インプラントは4回で治療終了などと、平気
で宣伝している歯科医院があることに驚きます。皆さんは、こういったうたい文句に踊らされることなく、真摯に正しい治療をごまかし無くしてくださる先生を
捜してください。



ところで、今回は最近の症例をお見せします。これは、主に上顎の補綴物などの崩壊と共に反対咬合で正しく咬合出来ない患者さんの全顎的症例です。





「 Case H.○. 」



40代の男性患者さんです。

補綴物が壊れていることと、全顎的歯周病(中等度~一部重度)、反対咬合などが主な問題といえます。





panorama




このレントゲン画像からは、色々な情報がありますが、ここでは歯内療法の不備、複数の補綴物が壊れている点などを確認して下さい。



initial frontal view






初診時5枚法




初診時の口腔内



レントゲンでは解らなかった、右側小臼歯部から~左側側切歯に及ぶ反対咬合の状態が解ります。下顎左側側切歯および中切歯(31,32)が舌側に傾斜しています。下顎左側中切歯は、根が露出して排濃も観られます。



上顎右側補綴物は、壊れています。また、マージン部が不適合です。上顎左側補綴物は、マージン部が不適合でポンティック部も清掃性が悪い状態です。



また下顎の充填・補綴物も総じて不良です。充填物は、カリエスの可能性も疑われます。



結果的に、上顎左側犬歯(23)以外は外科的手術をする必要がありませんでした。

=非外科的処置SRPのみにより、全顎的にポケットは3ミリ以下を達成しました。



再評価時




これは、全顎的にスケーリング&ルート・プレーニング(SRP)を徹底的に終えた後の画像です。



既存の補綴物は、歯肉に害を及ぼさないように、不適合である歯肉周囲をカットして(オーバーマージンの除去)、清掃しやすい状態にしてからSRPしました。全顎的に歯肉が引き締まり、歯間乳頭部に空隙が生じた状態が確認できます。



nakata/pr




SRPで歯周組織にある程度の治癒が得られました。 



SRP完了後、provisional
restorations(PR)をセットしました。PRをセットしたことで、患者さんはセット直後から快適に噛むことが出来るようになり、この後数ヶ月
続くであろう治療にも、その期間を気にすることなく生活し、通院していただけるようになりました。



残念なことに、このPRをセット出来きる前に来院しなくなる患者さんがいます。数回(4~7,8回)のSRPを我慢できないといった時点で、全顎的治療は
無理なのです。少しの辛抱が出来ずに、止めてしまう患者さんは、大変残念ですが如何なる医療機関でも、きちんとした治療は無理だろうと思います。せっかく
始めたSRPも無駄になりますし、思い立って決意した治療を放り投げては、状態が悪化してモノが噛めないまま一生を過ごすのがオチです。最近、お仕事が忙
しいとの理由でSRPを途中でキャンセルし次回予約をしていない患者さん方、良くお考え下さい。



PR装着後、下顎犬歯間にワイヤ&ブラケットによる通常の限局的矯正を行い、可能な範囲で歯牙の切端が綺麗なアーチを描くよう揃えました。切端が揃ったため、前歯部で正常な咬合状態を獲得することが容易になりました。



31の根の露出部では、長い年月反対咬合で生じた外傷性により骨吸収が生じています。今回の歯牙移動では、わずかに改善されたものの審美的な問題は残って
います。しかし、反対咬合が改善されたことと、清掃を良くしてもらうことで問題を生じないとの判断で、ココへは今回は積極的加療は行いません。必要があれ
ば将来何らかの方法で解決する約束をしました(ご本人は、さほど気にしていない)。



23の歯冠長伸展術




この歯牙(上顎左側三番(犬歯):23)は、クロスアーチと言われる上顎全部に渡る1ユニットの補綴物を安全に支えるためには"キー(かなめ)"になる大変重要な歯牙と言えます(23はKey toothと言います)。



クロスアーチでは、特に犬歯部には側方顎運動時には、強い側方圧*が掛かるため、是非この犬歯は良い状態で保存して支台歯として利用しなければならなかったのです。



この残根(23)は、歯肉縁下に埋もれています。正しく、マージンを設定するためには、健全歯質が歯肉縁上にくるように、生物学的幅計を考慮して支持骨を
切除し、crown
lengthening(歯冠長伸展術)を施す必要がありました。また、長く適正な状態を保つために、犬歯のみならず隣在歯の支持骨も残念ながらすこし削
除しなければなりませんでした。(極端な隣り合う歯牙の骨レベルの違いは、生理的ではありませんから。)



結果的には予想外に良い状態で犬歯(23)を保存できて、クロスアーチブリッジも、強固にサポートできました。



*側方圧が大きすぎると長い年月には、クロスアーチが壊れたり、冠内部の合着セメント層が崩壊したり、結果的にクロスアーチの脱落が生じることさえありま
す。特にある部分のみに大きな側方圧がかかることを避けるために、グループファンクションなどの複数歯でのガイドを設定するように歯冠部の形態を付与しま
す。また、オーバーバイトが深いと結果的に側方圧が大きくなるので、バイトが深かったケースでは、バイトアップして噛み合わせを浅くして、側方への圧のベ
クトルを小さくします(側方圧を小さくします)。



この症例でも、バイトアップして、グループファンクションに準ずる咬合様式の付与をしています。これにより、クロスアーチへの側方圧が軽減できました。





final 5枚法




最終補綴物を装着した状態です。



このケースでは、クロスアーチブリッジの大臼歯部は、審美性に余り支障が生じないので全部被覆金属冠としました(金属被覆冠にすることで、治療費の節約が可能でした)。



また、セラモメタルクラウンの咬合面は、強い咬合力による陶材破折を防止するため、金属にしました。このようにこの患者さんは、顔貌がスクエアで咬筋も発
達しているため、フレームワークの設計には気を遣いました。(上顎犬歯の遠心斜面は陶材の破折好発部位なので、金属被覆にしてあります。)さらに、金属の
咬合面から、歯髄に問題が生じた時には歯内療法処置が容易に出来るという利点があります。



下顎臼歯部の補綴物は、近い将来補綴するという前提で、コンポジットレジンなどで暫間充填しています。ただし、失活歯全てに歯内療法を完了(再治療)しています(歯周組織&歯内療法での感染除去は完了済み)。



before&after




歯周組織の改善と共に、かなり良い咬合の回復が得られました。



ご本人も、良く噛めているので満足していただけたようです。



*ご理解が深まるように、以前の全顎症例もご覧下さい。





  ・・・・・・・・ お知らせ ・・・・・・・・・・



◎当院では、この症例のように丁寧に全顎的治療を行っております。

もちろん、巷でいい加減に行われている虫歯治療1本でも喜んでお受けいたします。



治療の規模や難易にかかわらず、完全な歯科治療をお望みの方は、是非ご相談下さい。



*ご予約は、電話にて承ります。












2009年3月16日

「 儲かると思って歯科医師になった先生 」



 親が歯科医師でないヒトが圧倒的に多く歯科医師になっています。別に、世襲制の歯科医院が良いと言っているわけではありませんが、歯科医師の心持ちのよ
うなモノが狂ってきているのでこういったことを言及しているのです。私が大学に入学した頃は今よりはまだ歯科医師の実入りが良い頃で、何を間違えたのか儲
かると錯覚して歯科大に入学する学生が多かったように思います。今頃になってようやく、歯科界の状況が悪いことが解ったらしく、最近は獣医になる人が多い
そうです。しかし、何か間違っているように思います。私の同級生でも商人や一般の経営者の息子は、ベースとして歯科医師になったのは金儲けのためと考える
ことが圧倒的に多いようです。私から言わせれば、品格に欠ける先生方です。概して、そういった先生は内容の悪い無理な治療をする傾向があります。基本的な
知識の吸収をおろそかにして、ド派手なインプラント治療など平気でするコワイ先生も多いのです。多くの先生の技量や見識のいい加減さや頭の悪さを患者さん
が知ったら、治療など怖くて受けられなくなるはずです。(しかし、知らずに大枚を払って治療されている患者さんも多いのです。)





・・・





「 インプラント治療の良心とは? 」



例えば、1顎全部1歯に1本ずつ(欠損歯分)インプラントを埋入している例を見かけることがあります。これが安全な方法論のコンセンサスではないし、むし
ろリスクを高めていると私は思います。そういった治療をした方は責任取れるのでしょうか??たぶん、責任を取れるからおやりになったのでしょう。



沢山埋入できれば先生は儲かりますが、元々の歯の本数だけ埋入するケースでは、術者はインプラントと天然歯との違いがわかっていないと私は思います。以下
に示す私の症例は、何か歯周病学的問題が生じても歯周病治療ができる天然歯牙を支台にする場合です。インプラントでは、天然歯のように簡単にスケーリング
したりできません。高齢な方ならなおさら、近々に病気になったり入院する確率が高く、つまり口腔清掃不足でダメになる確率がかなり高いと思います。天然歯
とインプラントの場合の良い比較になるとも思います。



私が行った以下に示すケースは、残存歯を保存した結果としての補綴学的対応として必然性があり、対処方法は妥当だと私は思います。抜歯後、無歯顎に総義歯の選択をしないで、顎堤に人工物を欠損歯分埋入したインプラントとは全く質的に異なります。



cf.一例です。





たしかに、インプラントという人工歯根で、天然歯と同じように使用できればそれにこしたことはありません。もし、天然歯と同じ特性が得られれば素晴らしい
ことだと思います。しかし、まだそんな理想的システムは発明されていません。もちろん全欠損歯に対してインプラントを埋入するケースを選択した場合は、埋
入本数に起因するリスクを術者も患者も承知していなければなりません。 







 私の見解は↑のようですが、皆さんはこれをどう思いますか?



 無歯顎にインプラントを欠損歯牙の本数だけ埋入することを希望しますか?





・・・







「 親子二代で治療に関わる 」



 さて、本題です。数年前のある日、私の父が40年前に治療した患者さんが、再度補綴治療を希望して来院されました。昔父親が苦労して作ったと思われる補
綴物が装着されていましたが、一部歯周病で歯を失ったり、前層冠のレジンもすり切れて壊れてきたようで、良く噛めるように治して貰いたいとの希望でした。



 我が家は、祖父から3代歯科医院を営んでおります。この患者さんは現在70代後半くらいですが、早く下顎の奥歯を無くし、おそらく30歳代後半にこの治療を受けたと思われます。これくらい補綴物が保てば、患者さんに叱られることもないと思います。



父が治療した後を約40年経ってから私に再度治療させていただけることは、大変に有り難いことです。そういったことを感謝しながら、この症例をお受けしました。



昨今の将来どうなっても術者の責任がないような治療の姿勢とは対極とまではいかなくても、そういった治療より遙かに責任を持ったコンセプトがこの症例には存在すると思います。皆さんは、この症例をどうお感じになりますか?









[ 症例Y.S. ]





jytuzenn




上顎左側臼歯の欠損があります。前歯前層冠も摩耗しています。また、局部義歯の装置が狂い、顎堤吸収のため義歯も安定せず噛みづらいとのことでした。



前歯部の歯周病も進んでいました。



術前5枚






↑これが、術前の状態です。



 この設計の欠点は、前歯と臼歯は別々の連結冠で作られている点です。ですから、もしどれか1本でもダメになったら歯が欠けたままになって困ります。その
都度クラウンなりブリッジを再作製するのは非効率で無駄です。しかし、この設計自体は健全歯が多く残存していた時点では当然かも知れません。

 お歳や口腔内の状況を考えて、私は上顎は義歯をお入れになりたくないとの意向から、クロスアーチタイプの連結冠を設計し長期間補綴物が安全に長持ちする
よう考えました。これなら,どれか一本ないしは複数本歯がダメになっても、連結冠はそのまま使用し続けることができます。





義歯が入った状態と義歯




これが、術前の局部義歯



父親の作製した局部床義歯はIバー(維持装置)を使っています。



この装置は鉤歯(維持装置をかける歯)にストレスが強く掛かる可能性がある装置です。鉤歯にストレスを余り掛けたくないので、最終補綴には線鉤(線を利用した維持装置)を使うことにしました。



昔の義歯の多くが、維持装置に頼る考え方のため、床が小さい特徴があります。私は、総義歯に準ずる辺縁を持つ床を作り、維持装置に依存しない局部総義歯を作製しています。こうすると、安定し維持装置に問題も起こりません。







クラウン除去4枚




古いクラウンなど補綴物を除去しました。

陥没部には、暫間的にセメントを充填して、大まかな形成を済ませました。

当時の補綴の常識や技工士・技工所の問題を考慮するとこういったレベルが水準だったのかも知れません。しかし、問題はあるとはいえ、ここまで保存できたことは十分だと思います。



今後、痛んだ歯牙を支台歯にした私の補綴物は、そんな長期保存はできません。お年を考えるとこれから十数年でも十分なのかも知れませんが、高い補綴物の精度で問題を生じないようにすることがもちろん必要です。いつものように、精度の高い形成と印象や技工で対応しました。



プロビジョナル5枚法模型上




予め、プロビジョナル・レストレーション(仮の歯)をラボで作製しておきました。



写真のように最終補綴物を仮定して、咬合状態など一部の補綴物にだけストレスが掛からないように、グループファンクションに近い咬合状態を達成しました。



作製したプロビジョナル・レストレーションで上手く咀嚼できるのなら、そのカタチを参考に最終補綴物を作製します。





プロビジョナルセットデンチャー有無6枚




プロビジョナル・レストレーションを装着して、調整を終えたところ。



この後、歯周外科手術など行い治癒を待ちます。プロビジョナルを装着し安定した状態で咀嚼できるようにしています。この後、快適にいられるので数ヶ月の治癒期間も困りません。(こういったプロビジョナルを装着せずに数ヶ月間放置することは,避けるべきです。)



ココには画像は掲載していませんが、プロビジョナル装着後、前歯部も歯周外科手術により健全な歯周組織を獲得しました。





左側臼歯歯冠長伸展術




クロスアーチ連結冠にするため、できるだけ多くの歯牙を支台歯として利用したいので、上顎左側小臼歯は歯冠長伸展術により、健全歯質を縁上に出し支台築造をすることを目指しました。



また、左側第二大臼歯は抜歯しました。





印象前2枚




歯周外科手術後、上顎左側小臼歯2本は支台形成でき、両側第二小臼歯まで支台として利用できました。



歯質をスーパーボンドとコンポジットレジンという材料で、歯冠形態を修整や添加した上で支台歯の形成を完了しました。これは印象前の状態です。印象前の歯肉圧排用コードを歯肉溝に挿入したところです。



クロスアーチ連結冠を装着するための支台歯の平行性に注意しました。2、3回仮印象を行いサベイヤーで平行性のチェックもしています。平行性が少しでも
狂っていると、連結冠のクロスアーチは支台に適合しません。高い技量が術者と技工士に必要とされます。こういった仕事は、十分トレーニングをした術者にの
み可能となります。技量が追いつかないと、結果的に不正確な補綴物により問題を生じ、患者さんに迷惑を掛けます。



*初めにも書きましたが、このケースは天然の歯牙を支台にしています。これがインプラントだったら、患者さんの口腔内清掃が悪くなったら、どうなるでしょ
うか?植立し過ぎは、清掃不良を助長します。ダメになるリスクを高めます。元来、天然歯よりも細菌の感染に弱いインプラント周囲がやられるわけです。ダメ
になったら、どうします??



cf.一例です。



ファイナルセッティング5枚




連結されたセラモメタル・クラウンを装着しました。



上顎両第一大臼歯は、延長ポンティックとしました。これにより、咀嚼能率も上がり良く噛めるような補綴物になりました。



(連結冠は、後ロウ着でフルブリッジの各パーツをロウ着しました。)





義歯入った正面




マージン・フィット(辺縁適合性)が良好で精度が高い補綴物が装着できました。引き締まった歯肉に現れているとおり、歯周治療により健全な歯周組織も獲得されています。





デンチャー装着 装着下顎




デンチャーは、白金加金製の線鉤を用いて、支台歯にストレスをかけ過ぎないように考慮しました。これは基本ですが、線鉤のような"逃げ"のある装置にした
方が鉤歯への負担が軽減され、鉤歯を長持ちさせることが可能です。また、粘膜にタッチする面積を多くして、粘膜負担を多くして均一に圧がサポートされるよ
うに留意しました。これらは、いつも私が行っている安全で安定の良さを狙うデンチャー設計です。この患者さんには、装着後ほとんど調整せずに快適にお噛み頂けました。



露出根面には、以前の根面カリエスの痕跡から、将来も根面カリエスが生じる可能性があるため、フッ素剤の塗布など、口腔ケアも併せて指導しました。長く快適にお使いいただけることを願います。









  親子二代で関わった一症例でした。





2009年2月10日

この頃、審美的歯科治療が脚光を浴びています。いろいろな場所で、いわゆる"審美歯科"なる言葉を私はあえて使わないと主張していますが、歯科の審美的側
面に無関心いったことではありません。むしろ、審美性には常に気をつけております。ただ、"審美歯科"という安易な使われ方や、多くの臨床家が使う"上部
だけの語感"を嫌っているのです。



女性や人前に出る患者さん、審美的要求が高い方には、健康な歯周組織のもと綺麗な修復ができるよう努力しています。



今回の症例は、口腔内の不良金属修復物で口の中が暗く見えることを主訴に来院された患者さんのお話です。



[ 症例 H.Y. ]



45歳女性



主訴:「口の中が暗く見えるので綺麗にして欲しい」





術前・正面



前歯部から不良なコンポジットレジンの充填が目につきます。こういった指で詰めたような充填がされていること自体、担当医の責任感を疑います。また、下顎
左側側切歯には、4/5冠という金合金の充填物が見えます。これもやけに目立ちます。金属と不良充填物、欠損の放置で、失礼ながらはっきりと言えば大変に
品のない口元だったと思います。





術前・5枚法







この患者さんの場合、お話をしていて前歯のみならず、口の中の充填物がかなりよく見えるしゃべり方をしています。同じような治療をされていても、それらが
目立つヒトとそうでないヒトがいます。例えば、タレントの久本雅美さんのように、歯茎がむき出しになる笑い方をされるヒトは、口の中の治療状態が他人に露
わになります。ですから、そういった方の場合はしっかりと恥ずかしくない治療が必要です。また、そういったケースでは、金属の露出は避けたいと思うのは,
特に女性では当たり前だろうと思います。



先日のブログでは、ご老人の修復で審美的側面を問題にしないので、金属冠で奥歯を修復した例をご呈示しました。反対に、今回のケースのように"金属が見え
る"といったことを"審美障害"とする場合もあります。この判断は、結局患者さんによります。すなわち、ケースバイケースであり、主観的判断も介在しま
す。同じ修復でも歓迎される場合とそうでない場合があるということです。









術後・正面







術後の正面観です。

この患者さんの場合は、前歯はコンポジットレジン修復で、臼歯はアートグラスという第三世代のレジン系修復物でインレー、クラウンとブリッジのいずれも対応しました。左右中切歯は、充填のみです。右側中切歯は、遠心の豊隆部を修整することで左右対称観を出しました。



費用の問題は別として、例えば前歯をセラモメタル冠などで修復する方法論もあります。しかし私は、まず侵襲の少ない修復方法をファーストチョイスにする考え方を基本的にします。もちろん、患者さんが見かけに不満な際は、そのまま形成すればセラミック系の冠も装着できます。



大変に口元がキレイになりました。

修復物だけでなく、歯周組織も健康的になった点もご注目下さい。









術後・5枚法







全顎的に歯周治療を施し、以前装着されていた金合金の修復物を全部除去して、アートグラスで再修復しています。二次カリエス(二次う蝕)が沢山見つかり、
かなり時間が掛かりました。ブリッジも、金属のスケルトンを作り、その表面に同材料を築盛して仕上げています。アートグラス修復では、セラモメタルクラウ
ン(メタルボンド冠:瀬戸の歯)やキャスタブルセラミックなどと比べ、少し安価になります。さらに、セラミックで生じる破折が、起こりずらいといった点も
利点といえます。一方、ステインやプラークが付き易いという欠点があります。とはいえ、口腔ケアが良好な患者さんでは、綺麗な修復がセラミック系と比較し
て安価(三割ほど)で達成できて良い材料の1つであると思います。









上下顎比較









これは術前・術後の口腔内の比較です。



術前、品のない暗い感じの口元だったのですが、金属が露出していないので明るい口元になりました。







臼歯だけ比較









第一小臼歯~第二大臼歯までの4本をアートグラス修復しました。以前の不適合・金属修復物と比べ適合も良好です。これで、審美障害は解消できたようです。



*第一大臼歯の色合いが少し白くなりましたが、シェード調整がセラミックとは違うためです。このケースは、技工所のS歯研に依頼しました。こういったカ
ラーマッチングなど、前歯部に比較して臼歯部ではさほど問題にならなかったようで気になりませんでした。この患者さんの主訴を解決するためには、前歯部の
ような色調の厳格さは必要なかったようです。







患者さんご自身が大変に喜んでいただけたことが、何よりと私も嬉しく思います。









2009年2月 4日

[ 症例 M.K. ]



年齢:75歳 男性

主訴:噛めないので、噛めるようにしてもらいたい



ある日、長身でお年とは見えない頑強な体格をされた方が来院されました。この方は、学校の先生をされていた方で、校長を歴任された後、退職されて今は第二
の人生を楽しんでいらっしゃるとのことでした。とにかく噛めるようにして欲しいとのことで拝見したのですが、上下ほとんど噛み合う場所が無くお困りのよう
でした。



この方のように、全くまともに噛み合う歯がない状態で何年も過ごしていらっしゃる患者さんが世の中には沢山いらっしゃいます。治療に行くのもなかなかきっ
かけが無く、毎日食べ物を丸呑みのようなカタチで召し上がっている方です。実際に、ご来院いただければ多くの場合何らかの方法論で噛めるように治療をする
ことは可能だろうと思います。

「 歯科医師は、大工さんのよう 」

補綴をするに当たっては、治療費が派生します。高度で時間の掛かる治療にはそれなりの自費治療費がかかります。しかし、患者さんにも予算がありますから、
むやみに高額な治療にするわけにもゆきません。予算内で患者さんのご希望をふまえ、より良い治療をさせていただかなければなりません(初めから予算内では、無理なケースもあります)。
また、治療費を削った結果、すぐに壊れるようなことがあってもいけません。私はできるだけ、安全に長くお使いいただける設計や材質の補綴物をお作りしたいと考えています。



こういったところは、街の工務店によく似ています。希望に可能な限り沿い、予算をふまえた設計をするのは、なかなか難しいのではないかと思います。私も、設計・施工をする大工さんと同じ思いを持ちながら治療しています。

komemtoto 正面観




義歯も、壊れたモノなら有るとおっしゃっていましたが、まともに噛めるモノではありませんでした。

術前・5枚法


まともに噛み合う(咬合する)部分がありません。下顎を少し噛めそうなところに動かして、咬合させているようでした。

術前きちんと咬合していない

黄色の矢印の示す部分は、本来は上下で咬合すべきところですが、噛んでいないかわずかに噛んでいるといった状態です。



この方のように、上下顎でまともに噛み合う位置に歯が並んでいない場合は、工夫が必要です。このケースでは、上下の顎の間隔をもう少し開ける方法、すなわち"咬合挙上(バイトアップ)"を行い、補綴学的に歯冠形態を工夫して、正常な噛み合わせを獲得することにしました。



全顎的に歯周病の治療をすると共に、プロビジョナル・レストレーション(意味のある暫間補綴物)を作製して装着しました。

プロヴィシオナル作製




ラボで、咬合の回復と生理的咬合関係が得られるように設計して、プロビジョナル・レストレーションを装着しました。



こういった設計をスムーズに担当技工士とできるのは、補綴の専門教育を徹底的にした先生と同じレベルの教育を彼が受けているからです。私の仕事を依頼して
いる青木・技工士は、以前から研究会で技工士の方々に講師として教えております。私は、彼に全幅の信頼を置いて技工物を作製してもらっております。
TEKセット口腔内




しばらくの間、このプロビジョナルで様子を見て、冠の形態など修正しながらより良いモノに近づけました。


ココで、少し問題になったのは発音の問題でした。今まで義歯のない(=歯のない)状態で生活していたので、計算して設計した理想に近いモノでも発音がしづ
らくなったのです。新しい補綴物が入るとよく見られることですが、慣れが重要です。この場合、前歯を削るわけには行かないので,形態がどうのというより、
この形態に慣れていただけるようにご自宅でできるだけおしゃべりをしてもらうようにお願いしました。

頑強な支台歯




これは、補綴物装着前の上顎の状態です。残りの歯がしっかりと残っていたので、前歯が4本無くなったこういったケースでも一続きのブリッジ(フル・ブリッ
ジ)にできました。残存歯が何本有ればフルブリッジにできるかといった法則はありません。力学的に,明らかに無理な場合もありますが、プロビジョナル・レ
ストレーションを作って補綴物が持つか持たないかを確かめて決定します。このケースでは、ブリッジが揺れることもなくしっかり数ヶ月保てたので、最終補綴
物もこの設計を採ったのです。



試行錯誤の余地が、こういった暫間補綴で与えられるので安全です。こういった基本を理解していない先生も多いので、時に補綴の失敗を目にします。



上の写真のように、歯並びは四角いカタチ(スクウェア型)に並んでいます。こういった歯並びのヒトは、概してしっかりとした骨格の丈夫そうな方が多いので
す。また、顔貌も咬筋が発達したお顔立ちです。このように,歯列と顔貌や、時に体格にも相関性や類似性があります。スクウェア型の歯列の患者さんは、咬合
力も強い方が多いのです。この方も例外ではなく、プロビジョナル・レストレーションもかなり擦り減りが早かったのです。ですから、この強い咬合力に耐え
て、耐久性のある補綴設計が必要とされました。すなわち、咬合面を金属で覆うタイプで、前歯部舌面も金属で覆い、下顎前歯切端がそこを滑走する様(*)に
しました。



*ヒトは閉口時には上下歯牙がきっちりと咬合し、生理的顎運動を行う際には上顎前歯舌面のある範囲を下顎前歯切端が滑走して運動します。このときの前歯部
でガイドする働きやこういった誘導要素を"アンテリアー・ガイダンス(anterior
guidance)"と呼んでいます。生理的な咬合回復では,アンテリアー・ガイダンスが適切に設定されるよう前歯部での歯の形態と咬合関係を適切に回復
することが必要です。これは現代咬合論の基本中の基本なのです。



前歯説面で滑走




黄色の矢印部分の金属部が、前歯の切端が滑走する領域です。このようにアンテリアー・ガイダンスが適切に設定されています。



主訴など考慮して、この75歳男性患者の咬合回復に、咬合面の審美回復を考えるのは見当外れです。

ファイナル・セット後5枚法




最終的な補綴物が装着されたところです。

正面観

良く噛めるようになりました。

「 設計はケースバイケース 」


同じような欠損形態でも、補綴設計は幾通りも存在します。

それに応じて治療計画も当然変わります。



ー 決定要因 ー


○患者さんサイド:
性別・年齢・職業・趣味(ライフスタイル)・性格・知性(歯科的理解)・予算(経済力)・希望・時間的制約など...

○歯科医師サイド:

学問的制約・コスト的制約・時間的制約・術者の技量 など...



これらの要因により決定されます。



この患者さんの場合は、私からご提案した「良く噛めて、丈夫な補綴物」を喜んで受け入れてくれたため、問題なく安全な方法論を採れました。例えば、患者さ
んが金属が口腔内に露出することを拒むと、ポーセレン(瀬戸)などの材質で咬合面を覆う設計になってしまい、強い咬合力による破折のリスクが高くなりま
す。ただ、このケースでは初めから予算的制約で上顎をポーセレンにはできなかったのですが...



予算の問題は有りますが、最近の多くの先生は下顎の両側欠損部への補綴処置としてインプラントを勧める傾向があります。患者さんのお年も考えて、適応か否
か考えることは必要です。さらに、歯を失った原因が歯周病であり、口腔ケアが難しくなりやすい年齢で、リスクが倍増することも忘れないようにしていただき
たいと思います。

さらにさらに、咬合圧も強い状態も加味すれば、このケースはインプラントの禁忌症だと思います。シンプルで「良く噛めて,壊れにくい設計」こそ、この患者さんの希望にかなう合目的の設計だと思います。

「 治療の価値に関する認識は、情報や知識で変わる 」
この患者さんも、この治療の価値をお解り頂けたようです。偶然、この患者さんの教え子に技工士さんがいたそうで、いろいろと自分の受けた治療の話をしたそ
うです。私は、中心位という位置で咬合器に模型を装着するので、フェイスボーという器具で生体の三次元的位置を咬合器に移し装着するのですが、こういった
操作などしていることや徹底的な歯周病の治療を受けたことを教え子の技工士さんに話したところ、「そのようなことまでしてくれる先生がいるのか」と驚かれ
たと言って、さらに喜んでくださいました。



日常行っている治療のステップも、他院では行われていないことも多いのです。例えば、技工士さんのような方が聞けば治療の違いがわかります。有り難いこと
に、客観的にその技工士さんが指摘したことで、当院での治療の努力やレベルを患者さんがより一層認識していただけるようになったのです。



当院は、精度を上げる操作はできるだけ割愛しないで丁寧に行っております。行わなくて良い場合もありますが、全て割愛すると精度を保証できるものがなくなってしまいます。エラーを作らないように、丁寧に必要なことを行っておりますので、治療を安心してお任せ下さい。

皆さんも、単に医院が近いという理由で受診するのではなく、的を射た治療方針を提案して下さるような良い先生をお捜しになって下さい。

2009年1月29日


「 治療の価値をご理解いただくこと 」



およそ15年前、近所に住む若い患者さんが来院しました。お父さんは、会社を経営されている方で、将来はこの患者さんが会社を継ぐであろうことが想像でき

ます。経営者として、ふさわしいオトナになっていただきたいと思いました。まずは、お口の中の治療が必要です。前歯がこんな状態の社長さんが信頼されるで

しょうか?





初対面で、少しびっくりしたのは頭髪が金髪であったことです。少し"やんちゃ"をしていたようないかにも"言うことを聞かないタイプ"に見えました。しか

し、話してみると意外なほど素直でまじめな子であることが解ったのです。「最後まで治療に通ってくれますか?」との私の問いに、「はい、通います」ときち

んと返事をしてくれたので、徹底的に治療させていただくことにしました。





ところで、まだ働いていない二十歳の青年ですから、自費治療費はたぶん親御さんが払うことになるだろうと解っていました。ある段階で自費治療費のお話をお母さんとさせて頂くことになりました。





当時は、現在ほど診療契約を厳密に行っていなかったので、自費治療費の説明が治療が始まってしばらくしてからといったこともありました。この症例でも仮歯

(テンポラリー・レストレーション:TEK)の状態になってご両親に説明することになりました。説明のためにスライドフィルムをコンピュータに取り込ん

で、引き延ばして大きなカラー写真にして提示する必要がありました。しかし、当時はまだ現在ほどデジタル化されていなかったので、業者に頼むと1枚数千円

だと言われました。あまりに経費がかかりすぎるので困っていたら、青山の知り合いがタダで引き受けてくれました。これには本当に助かりました。


早速、大きな写真を十数枚携えて、お母さんとお話しすることにしました。シャープに細部までよく写り込んだ写真を比較すると、私の仕事が理解していただけたようです。自費治療の承諾を得ることができました。








ー 治療の価値は患者さん本人しか解らない ー





治療の価値というものは、その治療を受けた人だけしか解らないものです。治療を受けた方と、治療費をお支払い頂く方が異なる場合、なかなか価値をご理解い

ただけないことがあり、我々も困ることがあります。この症例の場合、1年半ほど治療期間が掛かりました。何回も通って、長い時間お互いに苦労したことは、

私と患者さんご本人以外には理解できないのです。











[ 症例 N.T. ]








正面・術前





術前・正面観


上顎・左右中切歯のう蝕が目立ちます。


その下の歯間乳頭部の腫脹も気になります。前歯の歯肉表面のぶつぶつが目立ちます。これは、線維性の歯肉と呼ばれる状態です(後述:参照のこと)。








術前・5枚法<

術前・5枚法写真





う蝕・歯周病の状態など、気になるところが沢山あります。








前歯部の治療期間での変化

1.術前





2.前歯う蝕は暫間充填して、全顎のスケーリング&ルートプレーニングを終えた状態です。かなり、ポケットも浅くなり回復しましたが、上顎中切歯部の歯冠

乳頭の腫脹は、未だ残っています。まだ、4ミリ以上のポケットを形成しています。これを残しては、再発のリスクがありますから、生理的環境に修正する必要

がありました。





この症例のように、慢性的に炎症が生じている部位に、線維性と言われる"セルライト"のような"オレンジの皮"のようなぶつぶつが大変目立つ歯肉が出現す

ることがあります。歯肉の下の方に"結合組織"というコラーゲン線維などの多い層があります。炎症の繰り返しにより線維組織を作り替える過程で線維成分が

なかなか代謝されずに沢山残ってしまったと考えられます。炎症が無くなってもなかなかこの性状は変わりません。こういった症例では、手術で、線維成分が異

常に多い厚くなった結合組織層を削いで薄くすることで、生理的性状の歯肉が獲得できます。





*健康な歯肉にも、"スティップリング"とよばれる小さなぷつぷつがみられます。これは生理的なモノで異常ではありません。





3.オペ後、堅い歯肉を縫合した状態です。





4.術前に比べ、前歯歯冠乳頭の生理的形態が戻ってきた状態を比較し(1,2と4)ご理解下さい。線維性の性状も改善されました。








クラウンレングスニング




う蝕で歯冠が無くなっています。正しく補綴するために歯根を歯肉上に出すために、crown lenngtheningという手術を施し補綴物をセットしました。





第一大臼歯には金のインレー、第二小臼歯にはセラモメタルクラウンを装着しました。








技工物




技工所から補綴物が出来上がってきました。





末永く口腔内で機能してくれることを願っています。ですから、全ての技工物はスキルのある優秀な技工士により仕上げられ、全ての技工物の歯質との辺縁部(マージン)は、顕微鏡(マイクロスコープ)で仕上げてもらっています。





このことで、歯と高い精度で適合して、マージン部の不適合による二次的う蝕の発生や脱落などのリスクを下げています。技工物の精度管理は、口腔内で永い間機能するための必要条件と考えています。当院では、責任をもった治療には必須と考えています。








ファイナル・セット後5枚法




補綴物が、高い精度でセットされた術後の状態です。





右上第一大臼歯は、旧補綴物のまま手を付けませんでした。咬合面の小さいう蝕は、アマルガムという充填物を充填しました。当時は、今のように信頼のできる良いCR(コンポジットレジン)が無かったので、アマルガム*を使用していました。








下顎術前



術後下顎






術前術後の下顎咬合面観を比較すれば、精度ある補綴の状況が解ると思います。


ブリッジ咬合面は、メタルで作ってあります。咬合力が強く、ブラキシズムを持っている可能性があるため、咬合面を白いポーセレン(瀬戸)などの材料にせ

ず、白金加金という金合金でカバーしました。長い間問題なくお使いいただくには良い設計だと思います(ポーセレンでカバーする設計ももちろんできます)。

術前の保険インレーと術後のハイカラット金インレーを比較すれば、辺縁部の適合性が遙かに良いことがおわかり頂けると思います。


また、銀色の小さな充填物は辺縁適合が良いアマルガム充填です。





*現在でも、患者さんがご希望ならばアマルガムを充填しています。アマルガムは正確に使用すれば、二次う蝕にもなりずらい優秀な充填材料だと考えています。











術後正面






正面観・術後





腫脹した歯冠乳頭形態は消え、生理的で引き締まった歯肉形態が獲得されました。どうぞ、術前と比較してください。








術前メラニン色素



正面・術後




黄色の線で囲まれた部分に黒いメラニン色素の沈着があります。術後の同じ部位のメラニンが消失していることをご覧下さい。





メラニン色素の出現は、生体防御の一つです。紫外線に当たると出現しますが、同じように長い間炎症が存在したままの部位にも時にメラニン色素の沈着が起きます。逆に、炎症が取れて生理的な歯肉環境が得られると消失すると言われています。この症例は、それを示す典型例です。





*色素沈着部(黄色く囲われた部分)に線維性歯肉の特徴である"ぶつぶつ"の存在がご覧頂けると思います。歯の間にある三角形の部分(歯間乳頭)にある"

ぷつぷつ"は、スティップリングと呼ばれる生理的なもので、これは健康的な歯肉に現れるものです(術後の歯間乳頭に見られます)。この点は、間違えないで

ください。

















「 全顎的治療の必要性 」





当院では、全顎的に徹底した歯周治療を行った上、健康的歯周組織が獲得された後に補綴物を装着しています。一口腔内は、一つの世界のようなモノです。ある

特定の歯だけ歯石を取ったり,綺麗にしても、他の歯の歯周ポケットやう蝕から、細菌は唾液に混じって移動することが科学的に解っています。付着したところ

からプラークというコロニーを形成しその場でう蝕を起こしたり、ポケットの中へ移動したりします。ですから、口腔内全部を綺麗にして、全体を健康な状態に

しない限り治療した部分の再発のリスクも大きくなるのです。





「 インプラント治療では気をつけて 」




同じ理由から、全顎的治療を徹底的にしないインプラント治療がダメな訳がご理解頂けると思います。日本の多くの先生がこの点をいい加減にしています。リス

クが大きいままインプラント治療を終了しています。全顎的に徹底的なう蝕治療や歯周治療をしないインプラント治療は大きな非難をするに値します。


全顎の歯周治療などには時間が掛かかります。ですから、長い治療期間のためにインプラントを希望している患者さんの気が変わって止めてしまわないうちに、早く埋入してしまうのでしょう。全く無責任です。

*欧米では全顎の感染除去をしていない場合は禁忌症で、埋入できないことが常識として強調されています。




そういった先生が多すぎるので、お気を付け下さい。





このような知識や技量もない無責任な歯科医師が、高額な治療費獲得のためにインプラント治療を執拗に勧める傾向が見られます。これは非常に恐ろしいことです。


最近の歯科界全体が間違った方向に進んでいます。こういった危機感や現状を、より多くの患者さんにご理解いただき、正しい治療をなさる良心的な先生を見つけてください。












2009年1月22日

現在、医療のトピックとして一番注目を集めている分野が「再生医療」です。歯科界でも、歯周組織再生をねらったエムドゲイン(エナメル基質蛋白の商品名)による再生療法が90年代後半に一般臨床で応用されるようになりました。



それまでも、ゴアテックス膜などを介在させて組織の治癒過程のスピードをコントロールすること、すなわち上皮の根尖側方向への増殖をブロックし、セメント
質の再生(新生)と歯根膜線維を再生することで、失われた歯周組織を再生させる方法(GTR法)は有りました。ところで、エムドゲインによる歯周組織再生
法では、より胎生学的な組織構築の過程を再現することに因る、より真の組織に近い再生をねらうモノとして大変エポックメイキングでした。



私は、スウェーデン・デンタル・センター弘岡秀明先生と共に、臨床医に対する初期のガイド役として、文献を何編も書き、この組織再生に関する本邦初の教科
書を執筆しました。当時、私自身も初めて接する分野であったため一から勉強し,共著者が執筆を私に丸投げしたこともあって、やっとの思いで教科書を作り上
げました。



ココにお見せするのは、エナメル基質蛋白であるエムドゲインを使用して歯周組織を再生させた典型的な症例のうちの一つです。私が、この療法に関して精通し
ていることを知ったある先生から患者さんを紹介されて、この療法を試みたのです。以下、20代後半の男性患者にエムドゲインによる歯周組織再生療法を試み
た症例です。







[ 症例 M.F. ]



五枚法




初診時の口腔内5枚法写真です。



問題となるのが、左側下顎第一大臼歯の近心部です。

ポケットが8ミリBOP(+)、歯槽骨はクサビ状吸収しています。







術前




術前の手術部の写真



全顎のスケーリング&ルートプレーニング(口全体の歯石可能な限り除去)を行いました。

*原因除去療法を行ったわけです。紹介者である担当医がいるので、補綴物・充填物には一切触れませんでした)。



この後、この療法を行ったのです。





reflection




歯肉への切開後、歯肉を剥離して骨欠損部の炎症性結合組織を十分除去、根面のルートプレーニングをしたところ。



第一大臼歯の近心に骨欠損部が現れています。





欠損部図示・reflectionと同じ写真で




写真の角度の問題で,骨の欠損部が解りずらいのですが、黄色斜線部に深さ約4ミリ、幅2ミリ以上の深い骨欠損があります。まさに、典型的なエムドゲインの適応症といえます。





EDTAゲルで清掃




近心根面を十分にスケーリング&ルートプレーニングした後、根面へEDTAジェル(PrefGel™)を塗布し、根面の脱灰による清掃とコンディショニングを行いました。





・根表面に残存する恐れがある内毒素などの再生阻害因子の除去

・脱灰によるコラーゲン構造の骨格露出による再生担当細胞の遊走(chemotaxis:細胞を誘引する働き)をうながすこと



以上の2つの目的のためEDTAゲルを塗布しました。



洗浄中




EDTAジェルを生理的食塩水で洗浄しているところです。





エムドゲイン塗布



根面が完全に清掃されたところで、エムドゲインのゲルをシリンジで注入・塗布しているところです。





縫合




ナイロンの糸で、変法マットレス縫合という方法で縫合し終わったところです。



完全に手術部が閉鎖されて、抜糸までほどけないようにします。





抜糸前




10日後、抜糸前の状態



縫合直後と基本的な外観には変化がありません。



抜糸後




抜糸直後



この後、6週間ほど手術部は歯ブラシは避けて、洗口剤で洗口してもらいました。

またこの間、歯肉縁上のポリッシングを2週に1回行いました。

このように、初期の再生治癒を妨げないように、歯肉に機械的刺激を与えずに清掃することが必要です。







・・・・







この結果、次のようなX線上での骨や歯周組織の再生を確認できました。



骨の時間的成長




術前~6ヶ月(6Ms)~1年6ヶ月(1.5Y)後と、時間経過と共に骨(歯周組織)の再生が変化してゆく過程が解ります。



6ヶ月(6Ms)の時点では、まだ、歯槽骨の石灰化度が低いため明瞭な骨の再生を現していません。一方、1年6ヶ月(1.5Y)後には、歯根膜組織の再生
を現す明瞭な白線を伴う骨組織が現れています。エムドゲインにおける再生療法では、単に歯槽骨ができるのみならず、セメント質の新生を伴った歯根膜組織の
再生が生じているのです。これは、一般的歯周外科手術では果たせません。故に、エムドゲインによる歯周再生療法の意義があります。



・・



歯周再生療法を行うに当たって、十分な初期治療(スケーリング&ルートプレーニングなどを含む原因除去療法)が行われる必要があります。原因除去療法によ
りある程度の治癒を得た結果、まだ残っている深いポケットを伴う骨欠損で適応症に当てはまる部位に、この療法が試みられて初めて成功への第一段階をクリア
したことになります。手術は、上に提示したような臼歯部の場合では、歯周外科手術に関するスキルが要求されます。



この再生法は、基本的歯周治療をルーティーンで行っている医院でないと難しいと考えています。また、多くの先生のお話では、初期治療を行わないで直接行っ
ているようなことも耳にしますが、それでは無理です。この再生法の本質を理解していない人があまりにも多いことは嘆かわしい次第です。



多くの医院ホームページで、「当院ではエムドゲインによる再生療法ができる」と宣伝されていますが、本当にこの療法をやりこなすだけの見識と技量をもった
先生は,私の観たところそんなに多くはないと思います。それは先に書いた様なことで、本質を理解できていない先生が多いからです。簡単にそういった"宣
伝"を信じず、見識と技量のある先生に診てもらうようにしてください。







エムドゲインの手術風景です。良かったらご覧下さい(解説は英語です)。









・・・・





「 エムドゲインについて 」



エナメル基質蛋白は、胎生期にヒトの歯胚内で分泌される蛋白で、アメロジェニン(amelogenin)が主成分です。製品化するにあたり、ヒトの胎生期
の蛋白を採取するわけにはいかないので、ブタの歯胚から採取・精製しています。もう、全世界で100万件以上の手術が行われ、問題は起こっておりません
(感染対策など施されています=ご安心下さい)。このように精製されて商品化されたエナメル基質蛋白が、エムドゲイン(EMDOGAIN)です。スウェー
デンのBiora社から発売されています。



エムドゲインの主成分といえるアメロジェニンは、歯牙のエナメル質形成に関与しており、また、歯周組織のセメント質の形成など歯根膜組織を形成する際に働
くことも解っています。換言すると、エムドゲインを使用した歯周組織再生療法は、この性質を使用して歯周組織を再生させるように考えられた療法です。





「 細胞外マトリックスについて 」



エムドゲインの主成分であるアメロジェニンは、いわゆる細胞外マトリックス(Extracellular
matrix:ECM=細胞外基質)の一種です(*)。ECMとは、細胞の間にコラーゲン線維などの骨格形成(足場)をしているモノと共に存在して、細胞
を支持したり、細胞に栄養したり、細胞の移動を容易にしたり、細胞に"シグナル"といわれる(信号の様な)指示を与える役目を担っています。



*アメロジェニンは、歯周組織や歯胚に限局して存在し、存在時期も限定されるため、一般的にはECMとして語られません。しかし、その役割・働き等からココでは細胞外マトリックスとして分類しました。



シグナルによって、ある種の細胞を作業現場にリクルートして、組織や器官形成の一部の仕事を担当させます。歯周組織の場合は、残存歯周組織から細胞がリクルートされて再生が開始すると思われています。形成する対象に応じて、形成に役立つ専門の細胞がリクルートされます。



ある仕事に特化した働きをする専門の細胞は"分化した細胞"といわれます。一方、仕事内容が定まっていない専門家ではなく素人の細胞を"未分化な細胞"といいます。歯周組織再生では、歯根膜から未分化な細胞(

未分化間葉細胞)がECMなどのシグナルを受け、分化して線維芽細胞などになり再生を始めると考えられています。また、現場では指示を与えられた細胞達がさらに隣接する組織構造を作る細胞を呼び寄せて、次々に組織が再生してゆくものと考えられています。



このECMにはいろいろな種類があり、女性にお馴染みの保湿成分であるヒアルロン酸も一種のECMです。お肌の表皮は、角化層の下に細胞が敷き詰められて
いますが,その下層に細胞がまばらなコラーゲン線維やヒアルロン酸などECMが豊富な"結合組織"が存在して、これが表皮を支持しています。ヒアルロン酸
の保湿効果は、このECMが水分を抱え込む性質に因ります。また、肌の弾力があるのは、この層のおかげです。さらに、老化の実態は、ECMの存在が減った
り,バランスが悪くなったモノといえます。



ところで、このECMが最近の再生医療の一番ホットな分野でもあるのです。先日、あるTV番組でも特集された
ですが、指先が切断されたヒトの傷口に、ブタの膀胱内皮から抽出したECMを連続して毎日塗布したところ、4週間で完全に指先が再生されたという驚くべき
モノでした。私も、興味深くこの番組を観ていました。後日、信憑性のある文献を調べたらこれが真実であることが書かれていました。



エムドゲインでも、こういったECMによる再生が使われていたことになります。エナメル基質蛋白というECMは、89年に研究がスタートしたそうですか
ら、ECMを使用した再生医療では、医科の再生医療に先んじてパイオニアといえます。今後、さらに臨床成績が良い確実な再生方法が発見されることを切に
願っています。









2009年1月16日

今日は、観て簡単に解るブログを書きます。皆さんは、前歯の見かけを気にすることが多いと思います。もし、治療して白い歯を被せるのなら、ヒトからは直したように見えない自然な状態になる方が良いと思いませんか?



今日は、我が医院のスタンダードな前歯修復例の一例をお見せいたします。



TVを観ていても職業病か、芸能人の歯が気になります。前歯数本だけ白く目立ちすぎる不自然な歯の芸能人が意外に多いのです。解りやすく言うと、これは
残っている(隣の)歯と色合わせができていない例だろうと思います。多くの患者さんは、残っている歯より白くしたがる傾向があります。しかし、部分的に歯
を白くすると特に前歯の場合は、直した歯だけが不自然に白く浮き出て見えるようになってしまいます。ですから、当院ではこういった自然観に関することをご
理解いただき、単に患者さんのご希望にそのまま従うことを致しません。





[ 症例 S.K. ]



この患者さんは、年齢28歳のOLで、会社でつまずいて右側中切歯を折ってしまったそうです。電話を頂いてからすぐに来院されました。





歯冠部破折・正面



正面観



中切歯が横に折れています。



歯冠部破折・咬合面観



咬合面観



写真では解りずらいのですが、中切歯の歯髄(神経)の角がわずかに露出(露髄)していました。



露髄したので、この後ラバーダム防湿の下抜髄(神経を抜く)しました。ここでは写真で記録はありませんが暫間的にコンポジットレジンで歯冠を盛り上げ、社
会生活に支障がないように即日に仮修復しました。根充後は、金属コアを装着→支台歯形成→テンポラリークラウン(仮の冠)作製→シリコン印象剤で印象など
しました。また、印象時に色合わせ(shade taking)も併せて行い、印象と共にラボ(技工所)に作製を依頼しました。



ラボでセラモメタルクラウン*を作製し、装着しました。



*セラモメタルクラウン=メタルボンドクラウン=陶材焼き付け鋳造冠

 金属にセラミック(瀬戸物)を焼き付けた自然観のある冠



この患者さんは、以前当院で歯周病の治療を受けていてBOP(-)であり、歯周処置を割愛できたので今回は治療の実日数が減りました。





shade taking



これが、shade taking資料の一部で使用したスライド

VITAシェードという陶材の色見本を隣在歯である左側中切歯に合わせて写真を撮っているところ。



色見本と比べて(比色して)、本物の色合いを技工士は知ることになります。優秀な技工士は、歯科医師のコメント(描写)とこういった資料でその場にいなくとも、正確な患者さんの歯の色合いを再現できるのです。



こういった仕事は、熟練した優秀な技工士とコミュニケーションをしっかりとり行う必要があります。



ラボの技工料というのはピンから切りまであります。安い技工料のラボと高いラボでは4倍ほどの違いがあります。すなわち、これは技量の差と比例します。当
院の技工士は、テクニシャンとしてトップクラスの技量を持ち、技工料も一般のラボより高いのです。レベルに合う対価を頂けるよう自費単価を決定していま
す。





セット後 正面1/2



セット後の正面観です。





正面





右側中切歯が人工物とは解らない自然な再現性です。



良くごらん頂きたい。横走する少し茶色がかった部分*も正確に再現しています。歯肉より1/2は少し茶色く、歯冠側1/2はより白くより透明観もあります。



私と組んでいる青木啓高・技工士は、
一流のテクニックを持っているので、こういった自然な再現が可能です。私は、彼の極めて徹底した精度管理や保守的までに丁寧な姿勢が気に入り、仕事をお願
いしております。また、マイクロ・スコープによるマージン部の処理・作製もルーティンで行っていただいております。(ここのラボは、レベルの高い医療機関
のみ仕事を限定して行っております。)





*天然の歯は、一様な色合いから均一に出来上がっているのではなく、色の付いたシマ模様や内部での部分的着色などがあるのです。そういった特徴を自然に再
現することが、こういった左右一方を補綴するときには必要になります。左右の歯の色が違う人の多くは、こういった正しい再現ができていないレベルの低い技
工過程で冠が出来上がっているものと思います(概して、下手な技工士による安いモノとも言えます)。



自然観を得るなら、セラモメタル・クラウンやキャスタブル・セラミック・クラウン、オールセラミック・クラウンなどにより、上に書いたような配慮ある仕事をする歯科医院で治療する必要があります。当院ではこれを励行しています。







ですから、「安かろう、悪かろう」という考え方もある程度は本当なのです。







smile





 スマイルも自然





皆さんも、キチンとした治療をしてくれるバランスの良い歯科医師を見つけてください。





◎よく" 審美歯科 "という言葉をお使いになる先生がいますが、私はこの言葉が余り好きではないので極力使いません。巷では、この言葉を使えば患者さん
が来るのではないかと頻繁に使っている先生方が沢山おります。そういった先生の多くで、目に見えづらい大切な歯周病や歯内療法などの"保存療法"を十分に
行っていない傾向が目に付くのです。さらに、審美歯科の看板を掲げてホワイトニングなど必要のない場合にも行い、実質的歯科保健とは方向の異なる治療で高
額な自費治療費を受け取っていることも多いと思います。



私はそういった先生方と臨床家としての姿勢を異にしています。





2009年1月13日

日本は、年々高齢化が進んできています。高齢化が進むと、介護するヒトも沢山必要ですし、高齢者に対する医療費も大変な予算がかかる訳です。



予算に関しては、国のお仕事かも知れませんが、直接家族に高齢者を抱える方々は、身近なレベルでそれに立ち向かわなければなりません。ここに、ちょっとし
たある高齢者の方の例を提示します。同様なケースは世の中に沢山存在すると思いますが、実際に画像でご覧いただけることは希であろうと思います。







[ 高齢者症例 I.T. ]



この患者さんは、長年学校の先生をされていた方で、校長先生も数校歴任されていた教育者です。奥様も、教職者で私も小学校時代教わった経験があります。奥様も難治な持病を抱えながら旦那様のお世話をされています。医院にいらっしゃる時も,奥様が同伴でお見えになるのです。







初診正面





初診時5枚法



初診時、79才でした。写真の通りにお口の中には沢山う蝕があり、以前充填された充填物も壊れています。ここには、X線写真を提示しませんが、根尖病巣も沢山存在していました。これらを治療し、全顎的に治療を終えました。



術後正面



術後5枚法



これが、一応治療を終えた直後の状態です。

この時、ちょうど80才で市の高齢者の歯の健康コンクールで選ばれ表彰されたりしたのです。



高齢者で、治療をきちんと受け、ケアが行き届いていたことが評価されたのでしょう。

ですから、この時点まではご自身でお口のケアを十分していたのです。

私も、"模範的な患者さん"だとご本人や奥様に褒めたことを覚えています。





 ところが、2,3年後お会いした時には





ぼろぼろ正面





ぼろぼろ5枚法

このようになったのです。



はっきり言ってボロボロです。



奥様によると、認知症が突然進行してしまったとのこと。最近出た治療薬が利いたので、少し落ち着いたそうですが、身の回りの簡単なことができなくなってきたそうです。

現在は、病院にいるそうですが、お口の清掃ができないため困っているということでした。

(=奥様にも、旦那さんの歯ブラシをしてあげることは困難なのです。これが現実です。)



この方の場合は、不幸にして"認知症"によって口腔ケアができなくなった例ですが、半身麻痺などで手が利かなくなった場合も同じような結果になります。

困ったことに、日本の病院では患者の口腔ケアは、病院の看護士も介護士もまず十分に行ってくれません。ですから、必然的にこの場合のような悲惨なことにな
ります。日本の医療現場のこれが現実です。例え、ご家族がいてもどれだけ口腔ケアを寝たきりのご家族にしてあげられるのかも疑問です。



高齢者というわけでなく、あらゆるお年の方でも、病院に入院したり、寝込んでしまったときには同様です。こういった時に、お口の中にインプラントが有ったらどうなるでしょうか?



例えば、○医科大学の病院には歯科室があります。この歯科室には○歯科大学から先生が派遣されて勤務しています。この歯科室は、入院患者で歯科室まで移動
して来れるヒトや外来を受け付けていますが、寝たきりの患者さんの口腔ケアなどはしていません。たぶん、入院患者の口腔清掃など関心がないようです。変な
ことですがこれが現実です。入院する期間が長くなればそれだけ、歯が悪くなってしまうのが今の日本の病院なのです。



こういったことも考えて、インプラント治療を考え直してみてください。高齢者を中心として、駄目になったインプラントが病院で歯科的な手を下されないまま
放置されている例が潜在的にたくさんある現実を知る必要があります。現在の医療機関のこうした現状を考慮すると、特に高齢の方には、インプラントなど埋入
することは、絶対に止めるべきだと考えています。



患者の皆さんに、このような本当の姿を知ってもらいたいと思います。



リスクを知って、あなたの責任で治療を選択してください。





 入院した時のこと

 インプラントの具合が悪くなった時、誰が処置をしてくれるのか?

 そして、どうなるのか?







 盛んにインプラントを埋入入している先生に聞いてみてください。

 どんな回答が聞けるやら...







2008年12月25日

休日、銀座へ行った折、アップルストアへ寄りました。クリスマス前なので、沢山のお客さんが展示品を操作していました。その中で、MacBookProの
前でたぶん70代後半とおぼしき品の良いご婦人がスタッフの説明を受けておりました。失礼ながら、とてもお年とは思えないキーボード操作に私は驚きまし
た。横からこの方が話しているお話しが耳にはいりました。「GHQが退去してから、だから昭和20年代後半ですけどね、大手町でわたしタイプを打っていた
の。」とのこと、どおりでお上手なはずです。この方、今の丸の内OLの大先輩といえます。尊敬_(._.)_ 



今ではかなり高齢の方でもコンピュータをお使いになるようになりました。自宅にいながら、食材をオーダーしたり、お友達やコミュニティーとアクセスしたり
と、ネット経由で豊かな生活の可能性が広がったに違いありません。ただし、ここで知識や情報といったモノをどのように正確に活用するかが問題となります。
実は、このBlogを書くきっかけは、ネットや巷にあふれる歯科関連の情報や知識を皆様に少し考え直してもらいたいと思ったからなのです。



私は、基本的治療を丁寧に行うという極めて当たり前な方針を貫く歯科医師です。ここにあげる症例も、特にご高齢の方で欠損補綴をご希望される方、またご本人やご家族が義歯かインプラントかの選択に迷われている方にご覧頂きたいと思います。







[ インプラントのリスク知ってますか? ]



現在、「入れ歯が要らない。」「硬いモノが何でも噛める。」とか、とかくインプラント治療が最良の選択肢のような書き方をした記事広告(記事を装った単なる広告)が週刊誌やネットに氾濫しています。



医院HPにも私は書いていますが、歯の掃除を自分自身でできなくなったらインプラントはどうなるのか?誰も説明していません。



60才以上になって、入院しないで一生を全うできる自信のある方などいないのではないでしょうか?すなわち、入院してお掃除を適切に出来るでしょうか?い
いや、入院などしない状態でも、お年の方がどれだけお口のお掃除を出来るでしょうか?病院でも、自宅でも特に年をとってから十分に口腔清掃が行われる適切
な環境は、未だ日本にはなかなか見つかりません。



もし、口腔清掃出来ないことがあればインプラントはどうなりますか?

もし、インプラントがダメになったら誰がどのように直してくれますか?



こういったリスクを全く説明しないまま、埋入してしまう臨床医が多いのは社会的な大問題です。

欧米なら、この医師は説明不足のため訴訟で多額の賠償金を払うことになるでしょう(日本でも、潜在的に沢山のインプラントがらみの訴訟が行われている現実を、あなたはご存じですか?)。





インプラントは、天然歯より強くはありません。

むしろ細菌の侵襲に弱い面があります。

天然の歯ならば、歯周病に侵されてもスケーリングなど歯周治療を行えば治ります。しかし、インプラントではそうはゆきません。元来、インプラントの植立している解剖学的状況が、こういった侵襲に弱いモノなのです。



おまけに、ダメになったら骨がえぐれたように大きく失われます。

問題になったときのことを考えて治療をお受けになった方がよいと思います。



*インプラントの功罪に関しては、今後改めて書かせていただきます。





・・・





ここに挙げるのは、インプラントなどより遥かにシンプルな当たり前の部分義歯を作製した例です。問題が生じずらい義歯の何モノかをご理解いただけたら幸い
です。口腔清掃を考慮すれば、シンプルな構造かつ脱着可能なものが良いことは、お解り頂けると思います。また、よい義歯の判断基準もご理解いただけると思
います。





[ 症例 I.M. ]





正面



この方は、60才の女性です。退職されて、時間が出来たので全顎(お口の中全体)の歯科治療を希望されて来院しました。歯周病も進んでいました。



術前5枚



下顎の臼歯部(奥歯)が無かったり、冠が被った歯がありますが、古い治療で虫歯が出来ていたり、前歯の見かけが悪かったりしています。



*上顎・中切歯2本には40年ほど前に装着された金の冠がみられます。通称"額縁"といわれるモノですが、今でも農村部に行くと、こういった冠が被った方を見かけます。





PR5模型・口腔内



全顎の歯周病治療を行い(歯周外科はまだ行われていない)、技工所で正確に作製されたプロビジョナル・レストレーション(意味のある仮歯)を装着しました。



この時点で、患者さんは日常生活には困らなくなる訳です。歯周治療や歯内療法の途中でも、気にせず治療期間を延ばすことが可能です。最終的な補綴物のカタチなど仮の歯を修正した結果決定され、最終補綴物のカタチへ移し替えられます。



ishiimari 正面完成



完成です。術前と比べてください。





final rest。



これは、最終補綴物(冠=セラモメタルクラウン)が入った口腔内写真です。



歯周組織の再検査(再評価)の結果、歯周組織が健全になりました。プロビジョナル・レストレーションを参考にした最終補綴物が装着されました。



義歯入れた状態の5枚法



これは更に金属床・局部床義歯(パーシャルデンチャー)を装着した状態です。キッチリ義歯が装着され、健全で機能的に咀嚼出来る状態に調整されています*。



*通常、義歯は数回の調整が必要です。新しい義歯をお入れいただき、"当たる"ところや"痛い"箇所を削除します。これを何回か行わないと本当の"使える義歯"にはなりません。





denturekaisetu



それぞれの部分の役割と各々のカタチに、義歯として機能するための意味があります。この義歯は、義歯の一部に貴金属(ヴァイタリウム)を使用した舌感の良いモノです。私の医院では、下顎の最終義歯にはこのタイプをオススメしています。



写真2,3:赤いレジン床部の辺縁は、舌が動いたり、口を空いたときの粘膜の動きを阻害しないで咀嚼運動が自由に出来るように決定されています。



写真1(金属部・裏側から):舌の前・下顎の前歯・歯頚部数歯に渡された金属部に注目してください。通常、この部分の厚さは1ミリ以下で、舌感が良くなっ
ています。前歯の歯頚部1/3程度もカバーし、圧が歯牙と粘膜に可能な限り均一に分散するように考慮され設計されています。



つい一昨日も義歯は気になって嫌だとおっしゃる患者さんがいました。今回のようなタイプの義歯なら、慣れたら装着している感じがなくなります。これは、眼
鏡と同じで最初眼鏡のフレームが気になっても、慣れれば眼鏡をかけていることさえ忘れるほど気にならなくなるのと同じです理由です。







resutoza



咬合面から見て犬歯には維持するためのレスト座(ミドリ矢印部)を設定しています。上顎の犬歯から犬歯の6本は、連結して作られています。犬歯より後ろがダメになったときに、両側犬歯に維持を求めてこのレスト座に維持装置がかかり義歯が入るように予め設計されています。



このように、先読みによる設計も重要です。





dennture

 



義歯解説図



今回の症例は、私が良く設計するパーシャルデンチャーの典型的ケースです。



義歯にかかる咬合力などの力は、欠損部粘膜、金属(床)部、レスト(ミドリ矢印部)、線鉤(針金部)、鉤歯などに可能な限り力が均等に分散されるように設計しています。



ヘタな義歯は、鉤歯に力の負担を掛けすぎる為、早期に鉤歯(線などが掛かる歯)がダメになり義歯も使えなくなります。



義歯を作る技術的なことは、多分に経験則によるところがあり、義歯を普段作ったことがない先生には難しいといえます。私は、20年ほど沢山の義歯を作ってきたので、自信を持って治療させていただいております。



義歯の作製を希望される方は、お気軽にご相談下さい。











 ところであなたは、まだインプラントを選択されますか?

2008年12月19日

あなたは、自分の受けた治療の内容やレベルを本当に理解していますか?不完全でトンデモナイ治療を受けているかも知れませんよ!?

ここにお見せするのは、かなり大きな医原性疾患を他院のある歯科医師が作ってしまった例です。ある日(15年前のこと)、30代後半の患者さんが来院され ました。「ある医院で口の中全体に白い歯を被せてもらったが、鼻の下辺りが何箇所も腫れてどうしようもない。」「元の医院に行っても直してくれないので、 いろいろな医院を廻ったが、抗生物質をもらうだけで治療してくれない。」といったことだった。数軒廻ったあげく、我が医院へたどり着いたらしいのです。医 院に訪れたときには、抗生物質のおかげか小康状態で特に腫れた状況ではなかったのです。

この患者さんが通われた医院は、私の前の医院の近くだったのですが、何故あそこへ行ったのか?全く理解に苦しみます。

医院内の様子や、歯科医師に会って話を聞いた時の印象だけでも、ある程度は解るはずなのに...世の中には、ヒトが生きてゆくために必要な"勘"が悪い方 がいるようです。この患者さんも"勘"が狂っていたように思います。(それから、この医院は燃えないゴミを医院の裏で焼却して、何度も市役所から注意され ていた札付き医院でした。待合室も小汚い...)


正面ー術前

この患者さんの正面観です。
前歯に被せられた冠が何か変です。
切端も一致してもいませんし、歯肉も...


術前五枚法

これが、お口の中の様子です。
陶材を金属に焼き付けたセラモメタルクラウン(=通称"メタルボンド冠"・自費負担)が沢山装着されています。
まともな歯科医師ならこれを見ただけで、この症例が何かおかしい治療であることがだいたい解るのですが、この患者さんは白い歯が入ったということで当時は、とても喜んでいたそうです。

そして、お口の中のレントゲンを撮影し、驚くべき状況が判明しました!


術前X-RAY

前歯の根管治療(根の治療)が全くされていないまま、いたずらに大きく太いコア(支台築造物)がそこへ挿入されています!!それらの歯の先端には、黒い影に見える根尖病巣が確認できます。これが、腫れの原因だったわけです。

これは、ハッキリ言って"犯罪"です。

その他の部分も根充不足だったり、根充がオーヴァーだったり著しく歯内療法の状態が不良です。歯内療法の問題は、毎日いらっしゃる患者さんの多くが、大なり小なり抱えている問題ですが、これほどまでに沢山いい加減な治療をされているのは初めてでした。

別途・追記を参照していただきたいのですが、冠も歯の削ったマージンと全く一致していません。不良補綴物が装着されています。前歯部では辺縁の歯肉を不適 合な冠が無理に押していますし、無理に歯肉溝の深いところまで削っています(生物学的幅径の破綻:後述)。それによって、歯肉が悲鳴を上げています (>_<)ゞ

生物学的幅径は、結合組織性付着と上皮性付着を合わせて約2ミリで、歯間乳頭部ではこの幅が広く、唇側ではより狭い傾向があります。生理的歯肉溝を考慮すると、骨頂からおよそ3ミリの部分に補綴物のマージンを設定するようにすることが必要と考えられます。

プロビジョナル5枚法

これは、歯内療法・歯周治療(オペを含む)など終えて(詳細は追記を参照のこと:要クリック!)、患者さんのお口にプロヴィジョナル・レストレーション (仮の樹脂製(レジン)の冠)を装着したところです。この状態でオペ後の更なる歯肉の成熟、口腔清掃のし易さ、かみ合わせの具合、歯のカタチに関する修 整...等々をチェックして良好ならば、外形を参考に最終補綴物(=冠やブリッジ)を作製して装着します。


final 正面

最終補綴物が装着されました。

この患者さんは、歯肉角化層の薄い部分がある歯肉のタイプです。時々、女性で見かけられるタイプです。プロービングでBOP(ー)(=出血がない=炎症がない)でも、辺縁歯肉が少し赤みがかり炎症を思わせるような外観です。(しかし、炎症はありません)

final 5枚法

バイトアップ(かみ合わせを挙上)し、骨を削除するオペをしたことで、前歯部は歯が長い状態になりましたが、健全な歯周組織と正常な咬合(かみ合わせ)が獲得されました。

*セラモメタルクラウンの設計も、ご注目いただきたい。
セラミックとセラミック(陶材=瀬戸もの)、金属と金属が噛み合うように設計されています。特に気をつけるべきことは、セラミックと金属が噛み合うような 場合は、セラミック冠が著しく摩耗してしまい、破折の原因にもなります。こういったことを歯科医師でも知らないヒトがもの凄く多いのです。補綴学の基本の トレーニングが出来ていない先生に大きな規模の補綴治療を受けるのは危険なのです。


final X-ray

これが、私が治療した後のX線写真です。術前と比較して十分に根管治療が成されてことがお解り頂けると思います。

今から15年ほど前なので、今より技量の点では未熟だったと思いますが、かなり一所懸命にこの症例に向き合ったことを思い出します。結局、まるまる2年治療期間がかかりました。



上下6前歯比較 X-ray

前歯部だけ、術前・術後を比較するともっと解りやすくなります。

根尖病巣(根の先の黒い部分)の消失と縮小が確認できます。術前、ある程度長い間感染した状態に根が放置されたことから、象牙質深部まで細菌の感染が懸念 され、一端病巣が消失しても安心は出来ません。厳しく言えば、予後は必ずしも良好とは言えないのです。ここが難しいのです。どんなに後でよい治療が施され ても再発を抑えられる保証が必ずしも無いのです。→最初にきちんと治療してもらわないと歯の寿命は短くなります。ちゃんと治療できる先生のいる医院へ受診 しましょう。

前医が、コアを装着するために根管上部を大きく拡大したことで、今後破折のリスクが高くなりました。この点は私ではどうも出来ないことで全く残念です。 削った歯は戻ってきません。こういった原理・原則を正しいカタチで理解して臨床で実践する臨床医に診てもらいたいものです。


二枚比較

更に、術前・術後の二枚を比較してみましょう。

ほぼ消失・縮小が解ります。


◎治療過程をもう少し詳しく知りたい方は、以下をご覧下さい。



[ 治療過程・詳細 ]

クラウン・コア除去4枚


1.前歯セラモメタルクラウンと歯のマージン(継ぎ目の部分)をプローブで探っているところです。マージンが著しく不一致なことが解りました。この後、冠を除去しました。

マージン相当部を尖った器具(探針など)で探ると、ここに段差を感じることがあります。これが明らかな時は、精度の悪い補綴物が装着されていると考えられます。

2.冠を除去するとコア(金属の土台)が出てきました。形成が全くデタラメでヘタです。一本のマージンに仕上げられていません。

3.これが除去されたセラモメタルクラウンです。たぶん1本10万円くらいかけて装着したのでしょう。気の毒です。

4.これが除去されたコアです。一度、装着されたコアを外すのは容易なことではありません。この時もかなり時間がかかりました。それから、コアを外す際に残存歯質に力が沢山かかるため根の破折が生じるリスクが高くなります。


sakurai

冠を除去し、コアを除去した後の痛々しい歯周組織(下の写真1に続く)


endo治療

コアを外した後は、感染根管処置をしました。

1.コアが外された根の周囲の歯肉にびらん状の歯肉の腫脹が見られます。全く適合していない冠が装着されたことにより、歯肉は不用意に圧迫されていたことが解ります。先に書いた"歯肉の悲鳴"とは、このことです。

2.根管治療をしているところです。歯根が歯肉縁下に潜っているため、ラバーダムを正規の方法で掛けられず、妥協的に写真の様な格好で装着しました。この際。周辺軟組織には器具を接触させずに時間を掛けて行いました。この後、水酸化カルシウム系の糊剤で仮充填しました。

3.仮封(仮のフタ)して、

4.前歯部だけ、プロヴィジョナル(仮歯)を仮着しました。

しばらく、水酸化カルシウム系の糊剤で仮充填した後、ガタパーチャポイント(樹脂系根充剤)による根管充填をしました。


上顎ope4枚

1.前歯部に、歯冠長進展術(crown lengthening)を施しました。
これは、いわゆる生物学的幅径(Biologic width)を得るために行いました。この症例のように、不適切な位置に形成された場合すなわち、歯周組織の生理的かつ解剖学的適正な位置を超えて冠の マージン設定などされてしまうと歯周組織は悲鳴を上げるわけです。こういったケースでは、歯冠長進展術を行います。この手術後精度が高いジャストフィット の補綴物を装着することで歯周組織の生理的環境が獲得されます。

2.これは、オペ後1週間の抜糸前の画像です。

3.これは、オペ後3ヶ月の画像です。歯肉が引き締まりきれいな治癒が達成されています。

4.プロヴィジョナルの装着後です。

右側冠除去 ope

1.下顎左側臼歯部の不良補綴物を除去しました。このブリッジも精度が悪く、前歯部と同じような不適合を呈していました。

2.ここでも、不明瞭な形成形態が明らかになりました(=ヘタな形成です)。歯肉が悲鳴を上げています。

3.生物学的幅径が侵され確保されていません。ですから、これを獲得するために骨切除を伴う歯冠長進展術(crown lengthening(歯周外科手術の一種))を施さざるを得なかったのです。本当は、大切な歯を支持している骨は除去したくないのですが...



上下形成後,B.T.など

1.プロヴィジョナルが装着された状態です。これから形態等が決定されました。半年くらいこの状態だったので、良い情報が得られました。

こういったプロヴィジョナル・レストレーションの状態で様子を見ることが大切です。単に、"仮歯"という仮の"被せ物"ではなく、ここから得られる情報が最終の補綴物に反映することこそ、ねらいなのです。

2.最終印象後、バイト採得(かみ合わせを記録)しているところ。当初、顎間距離(上下の顎の距離:噛み合わせの高さに関係する)が低くなっていたので、これ前歯で3ミリほど挙上しました。これにより、咬合学的に生理的状態を獲得しました。

3.4上下顎の最終印象時の様子
2008年12月18日

患者さんの口の中に装着されていた金属修復物(インレーなど)を取り去ると虫歯の感染巣が出てくるようなケースが多いのです。金属などが装着されているか
ら治療が出来ていると思ってしまうのは大間違いのようです。ここでは、そういった症例でCR修復で対処したものをご覧頂きます。



充填物の下にう蝕を発見した場合、既存の充填物を除去して充填し直すのですが、そういったときにはCR修復は都合がよいのです。(もちろん、金属やセラミック製の修復方法も行えます。)

[ 症例1 ]




1



下顎左側第二大臼歯には、金のインレーが充填されていますが、辺縁が不適合な不良な充填状態です。詰め物と歯との間から細菌が内部に侵入していることも疑
われます。このような不良修復物に、金であるというだけの理由で数万円の自費治療費を支払ったのですから、この患者さんは気の毒です。



2



金インレーを除去したら、近心側(歯の前側のコンタクト部)にう蝕(虫歯)が見つかりました。下層にはう蝕が大きく広がっています。写真では隠れています
が、遠心側にもコンタクトから波及しているう蝕がレントゲン上で確認できました。これも(写真には出ていませんが、)近心側と同様に治療しました。



3



近心側にう蝕検知液(虫歯に侵された部分を染める液)に赤く染まる感染巣が確認できます。感染歯質(虫歯に侵された部分)の除去と検知液での染色・水洗を何回も繰り返しました。繰り返すことで、細菌に冒された部分と細菌を除去できます。



4



検知液で赤く染まった感染歯質を完全に取り去った後の様子



術中には超音波器具に小さいダイヤモンドチップを付けたモノを使用したり、エキスカベーターという耳かきのような小さな先端部をもった手用器具で丹念に除
去してゆきました。この時は25分ほど時間を要しました。除去状態の確認は、マイクロスコープ(医科手術用顕微鏡)を使用し拡大下で行いました。

また、近心側コンタクト部には、メタル製隔壁(マトリックス)、クサビ(写真ではブルーのモノ)やリングでコンタクト部をわずかに離開させて充填し、マトリックス除去後にコンタクトが喪失しないように形状を再現しました。(←この方法が正しくできる先生は実に少ない)



5



充填を完了し、水洗した後



コンポジットレジンという強い可視光線で硬化する材料により天然歯のように綺麗に充填を完了しました。この時、必要な解剖学的形態を再現し、小部位に分けて充填してゆきました。このため、充填操作に30分要しました。



ちなみに当院では、これは3万円からの自費治療*です。技量や治療時間など考慮されていない保険治療(3000円くらい)では著しく不採算になり、この方
法は行えません。治療価値をご理解いただき、真っ当な歯科治療をさせて頂きたいと思います。この症例のような方法では来院1回で充填は完了します。この点
は、綺麗な仕上がりと共にこの方法のアドヴァンテージです。特に余り大きくない虫歯治療ではオススメです。



*この治療費は、虫歯の状態や充填物の種類により異なります。また、充填する範囲や噛み合う歯によって、充填方法や材質などが変わります。詳しくは来院時にお尋ね下さい。







[ 症例2 ]


この方は、下顎右側臼歯が痛むことを主訴に来院されました。

症例1と同様に、保険適応12%金銀パラジューム合金によるインレーを除去して、CR充填にて修復した症例です。





古いインレー除去前



第二、第三大臼歯に金属インレーが装着されています。第二大臼歯も辺縁に歯質と金属間に著しい間隙を持っています。

(第二大臼歯は、第三大臼歯修復後に全部被覆冠で補綴修復予定)



インレー除去後



インレーを除去した状態です。黒く変色した感染歯質が認められます。

この症例では、二次的に進行したう食よりも、むしろ元々十分なう食感染巣が除去されることなく金属を充填したものと考えられます。これは、歯科医師(破壊者)による医原性疾患と言えます。



検知液で染まっています



既に、4,5回染色と除去を繰り返していますが、まだう食検知液に染まった部分が残っています。

う食検知液で何回も染色して、赤い染色部を丁寧に除去してゆきます。この操作に大変時間がかかります。



エキスカベート後



ほぼ染色部分が除去されたところ。古墳発掘現場のように穴が空いています。この後、症例1と同様にマトリックスを介してCRが充填されました。



頬側から生じたう蝕も見つかったため、深い穴が空いたように見える部分もあります。少し着色が残っているように見えますが、検知液非染色部まで除去しています。



充填後



術後の状態:天然歯のようにきれいに仕上がっています。

もちろん、術後痛もなく良好に経過しています。



充填後 ラバーダム下で



これは、ラバーダムを外した口腔内での状態



下に舌が写っています。このように舌がすぐ傍らに存在する環境を想像してください。とても、安全でドライな環境ではありませんよね?ですから、ラバーダム防湿はこの点でも必須な方法であることがご理解いただけると思います。



この症例は、自費治療です。技量や治療時間など考慮されていない保険治療ではこれは行えません。

本当の治療をご理解いただき、真っ当な歯科治療を受けて頂きたいと思います。





・・・・・



[ 自費治療費とは対価です ]



日本では、健康保険でかなりの治療が出来るようなシステムが出来上がっています。

ここで、注意が必要なのは、"治療を受けたということ"と"十分に治療が成された"ということは全く違うということです。何を言いたいかといえば、例えば
症例2の様に保険の充填物を歯医者さんに装着してもらっても、金属の下にはう蝕を起こすバイ菌が沢山取り残されていれば、再度痛くなって来院することにな
るのです。平均すると、採算の合わない保険治療では、十分な時間が取れず、"短時間診療"="雑な診療"となる傾向があります。症例2のケースは、ごく普
通に毎日のように患者さんのお口の中に見られることです。たぶん、保険ベースの荒い治療の多くで取り残しや適合不良による二次う蝕が存在するモノと考えて
います。



そのような不十分な治療と、対価を払ってこの治療のように十分な時間をかける良い治療(自費治療)を受けるのとではどちらをあなたは選びますか?



今回のような正しい方法の丁寧な齲蝕治療では、たった1本の歯にも麻酔を施す時間を含めればチェアータイムが1時間以上(平均1.5時間)かかります。う
蝕処置では微小部分を丁寧に治療する必要があります。どうか、繊細な操作を必要とする治療の価値をご理解いただきたいと思います。





*もちろん、当院も保険治療を行っておりますが、"時間がかかる治療"や"完全な治療をお望みの方"には、自費負担での治療をお願いしております。







[ ラバーダム防湿は必須 ]



○ラバーダムを使わない医院では治療を受けるな!



歯の背景の緑色の部分は、ラバーダムというゴムの膜です。これが正しい保存療法では必須であることは、世界中のコンセンサスです。世界中の教科書に"使用しなければならない"と載っています。

これを使用しないと細菌を含んだ唾液や呼気の湿気などで術野が汚染され、無菌的処置や接着が適切に行えません。当院では、歯内療法やこのような修復処置時
には必ずラバーダム防湿法を使用しております。しかし、残念ながら日本では多くの医院で(95%とも言われている)使用されていません。さらに、健康保険
の点数改正で、ラバーダムの点数が無くなりました。これも更に追い打ちをかける結果になったように思います(もともと算定だけして、実際は使用しない医院
が多かったようですが...)。





*当院では、保険・自費の区別無く、使用できる場合には必ずラバーダム防湿法を行っております。安心して治療をお受けになって下さい。





○ラバーダム防湿法の励行は、真っ当な先生の印



特に、歯内療法(根の治療)時にラバーダム防湿法を使用しないような歯科医師は、適切な診療をしないダメな先生だと思います。細菌を歯の中から除去すべき
処置なのに、逆に細菌感染を新しく起こしているのです。危険ですから、そんな医院で治療を受けない方が賢明です。真っ当な治療をしている医院を探してくだ
さい。



*歯内療法時に使用するリーマーやファイルという(ヤスリ状の針のような)小器具の誤飲防止にも必須です。誤飲して、気管に入ったら大変です。毎年かなりの数の誤飲例が全国で報告されています。ですから、ラバーダムはそういった観点からも使用しないと危険なのです。



◎当院では、多くの歯科医院でいい加減な処置をされている部分を、丁寧で正確に治療しております。これはラバーダム使用の励行だけではなく、治療全般にわたります。すなわち、後日患者さんへ迷惑をお掛けしない充分な治療のためには正確な治療過程が必須だからです。



歯茎、歯の根の治療など基礎的な治療の多くは、保険の治療が可能です。ただし、この治療のようにお時間と技術を使う治療では自費治療費を頂きます。充填方法・材質や補綴方法など選択肢が複数ある場合も多いので、治療方法や治療費などは個別にご説明・ご相談いたします。



また、巷でみられる、いわゆる「15分治療」などの短時間で雑な診療は一切しておりません。初診時には、お困りの部分のみならず、お口全体の状況を診察す
るために、多くの場合1時間以上お時間を頂いております。丁寧で安全な精度ある治療をお望みの方は、是非当院へお越し下さい。



・ご予約は、電話(03-5637-7300)でお願いします。



              麹町アベニューデンタルオフィス院長

2008年12月16日

ここに、ちょっとした治療の一例を示します。光硬化型コンポジットレジン(CR)という材料を使って、見かけ上も美しく即日完了するちょっとした治療の一例です。このケースのように問題が生じずらいシンプルな方法論を患者さんへ提示ですることも、我々歯科医師のつとめであると考えています。


[ 症例1 ]



この患者さんは、上顎の左側前歯(左側中切歯)と右側前歯(右側中切歯)の先端部(切縁)のカタチが揃っていないことによる見かけの悪さの改善を希望していました。

治療方法は以下のように幾つかあります。



1.左の歯を削り(形成して)、白い歯(セラモメタルクラウンやキャスタブルセラミック)をかぶせる方法
2.左側中切歯の表層だけ形成しラミネートベニア(薄い瀬戸モノの歯や合成樹脂や競れミック系の薄い歯を貼る方法)を切端まで処理する方法

3.切端部をCR充填して処理する方法



等々が考えられます。



このうち、1と2の方法は歯の前面の表層もしくは全周を形成する事になり、しかも費用は比較的高額になります。また精度が良くないと歯周炎やう蝕といった問題も起きるリスクを含んでいます(逆に、精度ある仕事が成されれば長持ちのする良い方法でもあります。)

一方、3の方法は変色や摩耗などは1,2に比べ劣るものの、治療費は安価であり、修整・やり直しも容易です。



注意:1~3は、ある確かな意図があればどの方法を選択しても良いわけです。その意図するところが、適切であれば問題ではありません。



tezuka1



術前:左右側の中切歯の切縁が不揃いで、審美的に問題があります。



左側中切歯の切縁から続くやや茶色い部分は深部から生じておりますが、患者さんが気にされていないので手をつけないことにしました。



tezuka2



術後:左右側の切縁が自然観を持って揃い、かなりきれいに修復できました。



左側切縁の透明感も再現されています。現在材料の向上とテクニックでこのくらいは可能です。



歯をほとんど削らずにしかも、形態や色の再現もかなり出来て治療費も抑えられるので左側中切歯切縁部にCRを充填しました訳です。





[ 症例2 ]


この症例では、患者さんは前歯切縁近くの白斑が気になり、この改善を希望して来院されました。





furomoto術前



切縁近くに白濁した白斑*があります。

(白斑周囲の黒い線は、鉛筆で書いた線が写り込んだものです。)

白斑削除後.jpg

歯を余り切削したくないという意図に沿って白斑の層のみを一層切削しました。



furomoto充填後



白斑があった部分へCRを充填して研磨を終えたところです。





*白斑とは歯を覆うエナメル質の表層から数十~数百ミクロン下の層に軽い脱灰を起こした状態ですがこれは臨床的にはう蝕(虫歯)ではありません。よって、
ブラッシングなどコントロールをしていれば、う蝕とは違って特に進行しません。そういった白斑ですが、審美的問題(観た目が悪いこと)の改善を希望されました。



他医院でパーシャルベニアやクラウンで修復する方法を奨められたそうですが、私のすすめる侵襲が少ないCR充填法を希望され修復に至ったわけです。



敢えて顔の間近で手鏡でよく観察するとCRを充填した部分は一応は判別できます。患者さん本人はその点を少し気にされるかもしれませんが、他人からはそういったことなど全く解らないと思います。このようなケースとしては、臨床上は十分成功したケースと考えています。

また、クラウンなどで修復する方法はありますが、十数万円の自費治療費が派生します。しかし今回のような低侵襲の方法で、もし将来更に希望する場合はより侵襲が多い方法を行えば良いと思います。
基本は出来るだけ侵襲が少ない方法を第一選択にしてより侵襲の多い方法はその次のステップと考えるのが合理的だと思います。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



現在、やたらに歯科医師が歯牙を切削する傾向が見られます。臨床家は補綴・修復をするときにはもちろん形成を行うわけですが、必要のない事をするような、いわゆる"オーバー・トリートメント"を行う傾向が巷に散見されます。この背景には、歯科医師側の高額治療費を得ようとする思惑があると思います。
また、例えオーバー・トリートメントであっても精度が高い仕事であれば良いのですが、精度不良では治療したこと自体が結果的に歯の寿命を縮めることになります。それは一種の医原性疾患です。



私の学生時代にはCRは強度や耐久性に劣り、安物の修復材料のように見られていました。しかし、現在では接着歯学歯科材料学の向上からケースによっては金属やセラミックに代わり得る歯科材料として推奨できるものと考えています。

2008年12月15日

皆さん、降圧剤を飲んで歯肉が腫れることをご存じですか?近年、高血圧の患者さんも増えています。それらの多くの方が、降圧剤を服用していますが、ここで問題なのがそのうちの何割かに歯肉増殖症が発症するという事実です。


特に、ニフェジピンによる歯肉増殖症が有名です。これは、一種の副作用です。服用者の2~5割に程度の差こそあれ発症するといわれています。
しかし、一般的に内科医はこういった歯科領域の副作用を患者に注意することはないようです。
降圧剤服用+歯周疾患により発症する副作用なので、服用者であっても歯周病を治療することで必ず治ります。
発症予防のためにも降圧剤を服用されている患者さんには歯周病の治療をオススメいたします。



[ 症例:H.S. ]

ここに示す症例は、40代女性の降圧剤服用患者で、下顎前歯部の歯肉の腫脹を主訴に来院されました。



正面



ご覧のように、下顎前歯部に歯冠を半分以上覆うくらい歯肉が腫れています。

典型的な増殖症です。





初診・5枚法



前歯部の腫れが著名ですが、ほかの部分も歯周病によって侵され、発赤・腫脹しています。



この症例では、腫脹部以外も含めて歯周病の基本的治療であるスケーリング&ルート・プレーニング(徹底的歯石除去など)を全顎的に行いました。





BOP正面



前歯の歯肉は腫れることで見かけ上、歯の周りに大きな溝="ポケット"(仮性ポケット)を作っています。歯周病のポケット測定に使うプローブという器具でポケットを測ると深いポケットを形成して、出血が著しいことがわかります。



このポケットには、細菌の塊(プラーク)が存在しこれが悪さをして強い炎症を生じています。





時間経過



これは、歯肉腫脹部の治療過程を経時的に比較したものです。
はじめは、患者さんにブラッシングだけしてもらいました。これによって少し腫脹の消退がみられます
(0→1W)。
さらに、超音波スケーラーでポケット内のスケーリング(除石)と洗浄をしました。
この時点で顕著な腫脹の消退がみられました(1W→2Ws)。
そして、手用キュレットで丁寧にスケーリング&ルート・プレーニングしました(2Ws→3Ws)。
3Ws以降は、特に歯肉縁下には触れず、歯肉縁上を磨く(PMTC)だけで経過観察しました。
3週目(3Ws)で既に腫脹は消えています。
3週(3Ws)以降は2ヶ月(2Ms)まで安定して再発の兆候は見られませんでした。







術前・術後



術前・術後の歯肉の状態を比較してください。



前歯部の腫脹のみならず、他の部分も含めてお口の中全体の歯周病が改善され、引き締まった健康な状態となりました。



*降圧剤服用者で、歯間乳頭部(歯と歯の間の歯肉の三角地帯)が丸く膨らみだしたら、初期症状が始まっているかもしれませんので、歯周病治療をお受けください。





術後



きれいになりました。



メインテナンスの励行で、よい状態が保て再発を抑えられます。





・・・





[ 歯肉増殖症の話 ]



薬剤を服用していても歯周病でなければ、歯肉増殖症は生じません。また、増殖症を発症しても、歯周病の原因因子であるバイ菌(歯垢=プラーク)を局所から取り除けば(歯周病治療すれば)、必ず増殖症は改善されます。



○歯肉増殖症になる可能性がある薬剤



・ニフェジピンなど、降圧剤(カルシウム拮抗剤)

・ダイランチンなど抗てんかん薬

・シクロスポリンAなどの免疫抑制剤



現在、上の3種類の薬剤を服用して副作用としての歯肉増殖症を発症することが知られています。臨床上、見かけはニフェジピンと他の2剤の場合は同じで区別できません。また、全て治療方法も同じです。



○治療方法



使用を中止すれば改善されますが、原則的に各々薬剤の服用は中止できませんから、治療方法は発症するための原因因子(バイ菌=歯垢・歯石)を除去して治療することになります。ですから、具体的治療方法は以下の2つになります。



・スケーリング&ルート・プレーニングによる、オーソドックスな歯周病治療



・歯肉切除による方法(スケーリングも併用する)



今回は、浮腫性の増殖だったので、歯肉切除は行いませんでしたが、セルライト(オレンジ・ピールスキン)のようなぶつぶつした見かけの繊維性の歯肉増殖を
起こしたケースでは、反応が悪いことが考えられるため、歯肉切除を選択することがあります。一度に悪循環を改善できるので、著しい改善が早期に得られま
す。



○その他気をつけること



・歯肉増殖症の患者さん(ニフェジピン服用者)が医科の病院に受診して、腫瘍を疑われて生検(バイオプシー)を採取されたり、各種検査を受けた方がいまし
た。口腔内のことは、歯科にまずは受診すべきでしょう。こういった疾患は、医師には認識がないので大事(おおごと)になってしまったようです。ただ、残念
なことにこの疾患を全く知らない歯科医師も多いので、歯科医院へ行っても治療できないかもしれません。



・改善しても、メインテナンスを含め口腔環境をある程度厳格にキープしていないと再発の危険性が大きいといえます。基本は、一般の歯周病と同じですがさらに徹底した管理が必要です。







*ご来院ご希望の方は、まずお電話にてご連絡下さい。



常時、歯科全般及び、上のような歯肉増殖症の患者さんをお受けしております。お気軽にご来院下さい。

症例
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麹町アベニューデンタルオフィス 麹町アベニューデンタルオフィス 院長 戸村真一

麹町アベニューデンタルオフィス
院長 戸村真一

こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

街の歯科医院へ行くと感じる嫌な感覚を皆様が受けないような雰囲気にしました。 スカンジナビアン調に私自らがエントランスから室内の隅々に至るまでデザインし、 患者さんがリラックスできる清潔で清々しいセンス溢れる空間をご用意しました。

 巷の歯科治療の嫌な記憶を思い出すことのない快適な環境でお持ちしております。気持ちよく治療をお受け下さい。

日本の医療機関のホスピタリティーは低くセンスが感じられないのが現状です。 当院の室内環境は、私の診療哲学の現れです。 また、私のオフィスでは正しく丁寧に本当の歯科治療を致します。 正に、日本の酷い歯科医療のアンチテーゼを具現したのが私のオフィスです。