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2016年4月27日

最近,下顎大臼歯が破折したり歯周病に罹患して抜歯するケースも増えています。大臼歯部の破折の場合には抜歯になるケースが多いので患者さんの希望も考慮して妥当で安全な治療方針を提示する事が我々臨床家には重要な使命になります。
ところで今回ご紹介する症例は破折線が歯髄を通っていなかったことにより幸運にも歯髄を抜髄しないで歯を保存する事が出来た症例です。

先日,歯が割れてある男性が来院されました。問題の歯はかなり前に割れて会社の歯科室で歯の割れた欠片をスーパーボンドという歯質に接着する歯科用接着剤で接着し原状に歯の形態を戻し治療した経緯がありました。
一般的に一度割れた歯を接着しても強い力が掛かれば再び歯は割れます。この症例もそういった典型例です。この症例では破折線が幸い歯髄を避けるように入っていたために歯髄に接致命的障害を与えないまま有髄(歯髄が生きたまま)の状態で機能していました。しかし接着が破綻していて破片が動いてしまうので、それが不快だといって事が主訴でした(下に示す写真参照のこと).

以前初めて歯が破折した時は飛び上がるような激痛を感じたと語っていました。もちろん破折部はエナメル質からその下の象牙質を横切っているので象牙質に存在する象牙細管という管を通じて歯髄へあらゆる破折面からの刺激が伝わるので痛みを感じます。

しかし今回来院した際に破折部をピンセットで動かしても,痛みを感じないとおっしゃっていました。
歯が破折してからもう数ヶ月時間が経つので歯髄の象牙細管も二次象牙質が出来て刺激をブロックしていたようです。
二次象牙質とは象牙細管を通じて刺激が続く際に歯髄にとっても不都合な刺激をブロックするために象牙質の歯髄側に形成される石灰化した防御層のことです。 これは知覚過敏症の際にも形成される極めて生物学的な防御機構です。今回もこの防御層が形成されることを患者さんに説明しましたが,硬組織が後から形成されることを初耳だと驚かれていました。二次象牙質の形成は生きた歯髄ならではの素晴らしい防御システムですから、歯髄を生きた(有髄の)まま保存することが大切だと改めてご理解頂けると思います。

レントゲンコピー.jpg

会社の歯科室で撮影されたレントゲン画像です。画像のコピーを携えてこの患者さんは来院されました。
この画像では偶然,破折して離開した部分が歯冠部に写っています。

図1-2.jpg

*図では智歯(親知らず)は割愛し描かれていません

術前01.JPG


下顎左側第二大臼歯の遠心の一部が破折しています。来院時はスーパーボンドが完全に剝がれて破折片が動いていました。
この破折片を再度スーパーボンドで接着したら再び同様な状態にも戻りますが、それでは患者さんが来院した意味がありません.私は破折片を除去し破折面をコンポジットレジンで被覆することにしました。元の形態に戻したら咬合圧によって再び破折してしまうので、豊隆を敢えて控えめにして薄めの層になるように被覆しました。このコンポジットレジンの層は露出した象牙質を完全に被覆して象牙質への細菌の侵入と刺激を完全にブロックするためのものです。

このような治療で患者さんのご意向にも沿えて,抜歯も抜髄もしないで、また破片が動くような不快感からも抜け出せたことで患者さんは近所の歯科医院ではなく私のオフィスにご来院頂いた甲斐があり,当オフィスを選択して頂いたことが正解だったことになります。
たぶん他院へ受診したらよくても以前と同様に破折片をスーパーボンドで接着して終わりにしてしまっただろうと思います(これではまた以前と同様の不快感が続く事になります)。

○私は以前にも歯牙破折に関するブログ記事を書いています。併せてお読み頂ければ幸いです。


図2(CR).jpg


術前術後.jpg

左:破片をピンセットで除去した状態.   右:破折面をコンポジットレジンで被覆した状態.

今回は出血が無かったので、破折面に接着に必要なエッチング等の適切な表面処理を出血や唾液に汚染されないで行えました。これは大変幸いなことでした。
もし破折部が出血していたら,この日のような適切な治療は不可能でした。

破片.JPG

上の画像は破折片です.

◎良い治療を受けるには出来る歯科医を見付ける事が大切


この患者さんのように歯科医院選びでは自分の症状を適切に治療できる歯科医を選択する事がキーポイントです。

実際に同種の治療実績がある"出来る歯科医師"をブログの解説や実際の臨床写真で確認して歯科医を選ぶことも大切です。  
良く勉強をしていて臨床例を大切にする真摯な臨床家は口腔内写真で症例を保存します。やりっ放しにしていない先生が多いので、こういった観点でも良医が解ります。 
また臨床写真を撮影するのは短時間診療体制の雑な歯科医院では難しいと思います。

皆さんもこの方同様に治療が出来る歯科医師をネットによってピンポイントで探し出して受診してはいかがでしょうか?



















































2016年3月 8日

「イントロダクション」

本日,遠方からtwitterをご覧になりう蝕治療に患者さんが来院されました。 この患者さんは矯正の動的治療期間中でブラケットやワイヤーが口腔内に装着されていました。

主訴は犬歯のエナメル-象牙境部(Cej:歯冠と歯根の境界部)に出来たう蝕を治療して欲しいとのことでした。
う蝕はCej部に沿って以前帯状にコンポジットレジンが充填されていました。その一部が充填不十分で穴が開いていたところが気になるので充填して欲しいとのことでした。


矯正のブラケットやワイヤー等が装着されたままでは歯頸部のう蝕治療は制約がありますが、何とか充填は完了しました。動的期間中に問題が起きない程度の充填は出来ました。

まず今日は治療前にレントゲン撮影(パノラマ画像)を撮影しました。

WN01.jpg

レントゲン画像を観れば一見して解ることは、智歯が4本抜歯されないで放置されていることです。
そもそも特別な意図で智歯を利用する場合以外はこうした智歯は動的治療前に抜歯するのが常識だろうと思います。

今回のように前方の歯との間にう蝕を作る可能性が有ることと抜歯しないで放置すると後方から前方の歯を押すことで動的期間が終わって矯正が完了された歯列を乱してしまう可能性があります。このように矯正治療では智歯の抜歯は必須の合目的な治療行為になるのは歯科界では極く初歩的基本事項です。 


しかし、このような歯科常識も抜歯して治療開始が後にずれて患者の気が変わって治療を止めると言い始めたら治療費がもらえなくなるので、必要な抜歯をしていない不完全な状態でも一日も早く動的治療を始めてしまおうとする思惑が如実に表れています。こうして矯正治療も他の歯科治療同様に歯科医の都合が優先する傾向が強い治療だと解ります。  


WN02.jpg


この画像から想像すると、既にう蝕病巣は歯髄腔にまで及んでいる可能性も想像されます。
概ね歯髄は失活している可能性が大ですが、画像上では根尖病巣は確認されません。

* この患者さんには、矯正担当医にレントゲン像を観てもらうためにCDにこのレントゲン画像を焼いてお土産に持たせてお帰り頂いた。
こんなトンデモナイ治療でも私から担当医に直接助言するのは一種の内政干渉ですから患者さんご本人にまともな治療をする様に担当医にクレームを言ってもらうことにしました。


矯正治療の有無にかかわらず特に最後臼歯の智歯は前方の第二大臼歯と遠心部で接して歯垢の堆積が助長され清掃困難なことから第二大臼歯の遠心面(や智歯の歯冠部)にう蝕が形成されます。
第二大臼歯遠心面のう蝕は器具操作の関係で充分な治療が困難ですから、このようなう蝕を作らないように早期に智歯を抜歯することが肝要です。

こういったタイプのう蝕は最近、最も頻繁に見受けられるう蝕形態の一つといっても過言ではありません。 




「まとめ」

以前から私は成人歯科矯正の問題点をブログ記事に書いていますが、矯正治療で矯正を担当した先生が作る医原性疾患は非常に多くまた,動的治療期間中は治療が困難な場合が多いので患者さんが来院されても治療を充分に行えないで困る事が多いのも実状です。

何よりも矯正医にはう蝕と歯周病の問題は適切なケアで防いで頂きたいと思います。 また逆にそれが出来ない矯正医に治療を受けるのは危険ですから止るべきです.
いつも説明していることですが、動的期間中にクリーニングを含めた諸々のオーラルケアが院内で不可能な矯正歯科医院の場合には他院で管理してもらえるように依頼して適切なオーラルケアの体制を整えるのが最低限の矯正医の臨床的ルールだと考えます。 
しかし、未だ日本では"ただ歯を動かすだけの矯正医"  が多い事は信じられないほど無責任な状態ですが歯科矯正治療の分野ではそういった事が常態化している実態の反映だとも思います。

 歯科矯正を受ける予定のある方は、私が言及した歯科矯正の問題点を理解して学問的見識が高く良心的治療をしてくれる素性が確かな矯正医を探して是非受診して下さい。









ー当院へ受診希望の方へー

最近,他院での歯科治療の方針に関するセカンドオピニオンや治療に関する説明を行うカウンセリングへおいでになる方々が増えています。充分時間を割いて予約で行っているため1時間自費1万円(税抜き)で行っていますのでご了承下さい。

また、今回のように矯正関連で歯周病やう蝕治療を矯正科医の先生からご依頼頂く事も有りますが、どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。矯正前に歯周病の治療を済ませられるように余裕を持ってご来院頂けるよう御願い致します。

私の診療姿勢に共鳴され,ご来院希望の方は是非ご予約下さい。
診療に関しては麴町アベニューデンタルオフィスにお問い合わせ下さい.

























2016年3月 3日






先日,下顎臼歯の歯を抜いたがどのような方法で補綴したら良いのかと前医の延長ブリッジによる補綴方法が妥当か否か意見を私に聞くためにある患者さんが来院された。

麹町のある歯科医院で左側下顎第二大臼歯を歯周病のために抜歯されたそうです。
抜歯後にその歯科医院の先生が延長ブリッジ(延長ポンティックを付けた連結冠)を勧めてきたそうです。


HM.1jpg.jpg

*左側下顎第二臼歯は重度歯周炎のため抜歯されたばかりです。これから数ヶ月経てば抜歯したところも癒えて顎堤も綺麗になるでしょう。
歯内療法が不良の歯も有ります。将来根尖病巣の再発など懸念されます。
また、全顎的には中等度歯周炎が存在しています。

下顎臼歯部の欠損に使える補綴方法

一般的に臼歯部の欠損には、
延長ブリッジ(Ⅰ),従来型の局部床義歯(Ⅱ),インプラント(Ⅲ)などの補綴方法が可能ですが、臨床的にそれ等が妥当なモノか否か吟味する必要があります。

我々の咀嚼機能はこの患者さんのように第一大臼歯まで歯が揃っていれば充分に円滑に咀嚼出来ます。
失った第二大臼歯の咀嚼能力を補綴物を装着する事で回復できたら良いだろうと考える先生もいるようですが、
しかし臨床的にその補綴物によるデメリットがメリットをはるかに上回ってしまう事に気づかないようでは単なる馬鹿な臨床家です。

すなわち、この症例で前医の想定した
Ⅰ:延長ブリッジ(延長ポンティックを付けた連結冠)を装着した場合には支台(支えの歯)となる第二小臼歯や第一大臼歯に大きな力学的ストレスが掛かりますし、これを維持するためには支台歯と延長ブリッジのポンティック周囲を極めて綺麗に清掃する必要がありますが,これが出来ない場合には支台を含めて壊れる可能性が高い方法と言えます。

実は前医は歯周病治療も全くしていませんでしたから歯周炎が存在する状態で力学的ストレスが過大に加われば歯槽骨に予想外の大きな吸収を招く事も懸念されました。

延長ブリッジ1.jpg

こういった延長ブリッジの真の適応症は余りありません。 私は歯周補綴のフルブリッジの臼歯部欠損の場合に力学的に安定性が得られれば行うこともあります。しかし希にしか行わない方法論です。補綴学の実践的ディシジョン・メイキングのトレーニングが出来ていない臨床家ほど勝手で無責任な治療をしてしまう傾向が強いようです。


Ⅱ:また1歯欠損のために局部床義歯を入れる事も可能ですが、これも鉤歯(支えの歯)にかかるストレスが大きくメリットをデメリットが上回り患者さんに厳密なケアを強いてまで快適な義歯装着を得ることが難しいと思います(使用に耐えない義歯)。
今回の症例でも遊離端義歯は現実的では無く蛇足治療に他なりません。


cf.最も典型的な片側遊離端の局部床義歯装着症例ー

例えば,下顎片側に小臼歯から大臼歯に掛けて数本の欠損が存在する場合には典型的な局部床義歯の適応症です。
最近,歯科医に写真(下の画像参照)のような下顎遊離端の従来型局部床義歯を作製する能力が無い人間が多いらしく、使用に耐えない不良な義歯を持って来院される患者さんが多い現実には驚きます。

パーシャルデンチャー.jpg

上は実際に去年、全顎的に補綴の治療し直しを行った患者さんの下顎局部床義歯の画像です。






Ⅲ:インプラントをここに埋入するのは歯科医の一方的な都合、高額治療費を得るために埋入する典型例です。良好な予後も期待できない典型例です。

最近,根拠の無いインプラントによる補綴症例を患者さんの口腔内に見かける事が多くなっています。歯科界の経済的状況の反映が根拠無きこういった歯科医の都合による治療を産んでいるのでしょう。

また、シングルでインプラントを植立した場合でも高度な清掃を継続しなければ容易にインプラント周囲炎になり得ます。
元々歯周病で歯を失った患者へ高度なケアを行ってもらえるか否かよく考えれば一種の不安を抱くことが臨床家として自然です。
コンプライアンス良くオーラルケア出来る患者なら良いと思いますが、オーラルケアが継続できる確証が無い類の患者さんへ厳密なケアが必須な補綴治療を行うのは余りに臨床医として無責任過ぎます。しかも歯周病治療さえ行っていない臨床医が行うのなら最低です。







蛇足の補綴物.jpg

2画像ある内で上の写真は下顎第二大臼歯の抜歯直後を現します。一方,下の写真は下顎第二大臼歯が抜歯されてしばらく時間が経った後に下顎の方向に第二大臼歯が挺出*した状態を現しています。


上顎第二大臼歯が残っていて下顎第二大臼歯が欠損した場合には上顎第二大臼歯は下顎の歯と噛み合おうとして伸び出します。
*このような歯牙の生理的な移動を"提出"(ていしゅつ)と呼びます。
例えば数ミリの挺出が起きても下顎は前方に運動するために挺出した歯と下顎の第一大臼歯などは干渉して問題を起こすことは全くありません。

特に何もしないで放置してよいケースとして欧米の補綴学の教科書にも掲載されている典型例です。今回もその典型通りに歯周病治療以外には何も補綴治療をしない予定です。


とにかく今回の症例でも何も補綴治療を行う必要が無いことを患者さんへ説明しました。
むしろ補綴物によって二次的に新たに歯をダメにする可能性が大きいことを説明しました。
患者さんも余計な補綴物を入れないで済む根拠が有るシンプルな治療方針を喜んで頂けました。

私はかねたから言い続けてきたことですが、「敢えて何もしないことが最良だという選択肢を常に持っている者が良い臨床家」だと思います。

また、この患者さんは今まで口腔内にインレーやクラウン他補綴治療をされていながら適正な歯周病治療を全く受けていなかったので、むしろ次回から歯周病治療を徹底的に行って現在ある歯を全て健全なカタチで保存するように私が提案しました。
これには患者さんも前向きに同意して次回から歯周病治療を行う予定となりました。


◎歯科医師が治療行為として行う補綴治療には、意味の無い補綴治療や,むしろ二次的に大きな障害を誘発する治療もある事実を知り臨床的見識が高い上位から5%の良い歯科医を是非見つけて虫歯一本でも適切な治療を受け医原性疾患からアナタの身を守って下さい。




昨今,歯科医院が業者に依頼して作成した高額治療に誘導するためのブログ記事やwebサイトが多いのが現状です。
患者さんがそのようないかがわしい思惑の歪な情報に混乱しないよう患者さん本位の視点で正しい歯科知識の啓蒙のためこのブログを作成しています。私がオフィスで実際に行った臨床例をもとに作成しています。
これらコンテンツ全ては私が作成した私自身の臨床姿勢を反映したものです。

最近,他院での歯科治療の方針に関するセカンドオピニオンや治療に関する説明を行うカウンセリングへおいでになる方々が増えています。充分時間を割いて予約で行っているため1時間自費1万円(税抜き)で行っていますのでご了承下さい。

私の診療姿勢に共鳴され,ご来院希望の方は是非ご予約下さい。
診療に関しては麴町アベニューデンタルオフィスにお問い合わせ下さい.














2016年2月25日

一昨日,上顎の奥歯が痛むことを主訴に患者さんが来院しました。

お痛みの左側大臼歯部にはう蝕も無く口腔内全体も歯科治療を受けた既往が無い大変に歯が綺麗な患者さんでした。

以前,虫歯が無いのに歯が痛む時には歯牙破折を疑えという記事を私は書きましたが,今回は歯冠部をよく調べましたが破折線などの異常所見は全く見あたりませんでした。

そしてパノラマレントゲン画像を撮影したところ、直ぐに原因が判明しました。


TS.jpg


上顎左側最後臼歯部に埋伏智歯が存在して、第二大臼歯を後ろ(遠心)から接して押していました。






こういったケースでは咬合圧が第一、第二大臼歯に掛かると痛みを感じるのが通常です。

こういった埋伏智歯が前方の大臼歯を押して疼痛を感じるのは珍しいケースではありません。
疼痛は虫歯のような痛みでは無く違和感のような軽い痛みや鈍痛が一般的です。


この症例の治療方法は,埋伏智歯の抜歯です。抜歯すれば症状は消失します。









昨今,医療機関が業者に依頼して作成した高額治療に誘導するためのブログ記事やwebサイトが多いのが現状です。
患者さんがそのようないかがわしい思惑の歪な情報に混乱しないよう正しい歯科知識の啓蒙のため私がオフィスで実際に行った臨床例をもとに作成しています.コンテンツ全ては私が作成した私自身の臨床姿勢を反映したものです。

私の診療姿勢に共鳴されご来院希望の方は是非ご予約下さい。
診療に関しては麴町アベニューデンタルオフィスにお問い合わせ下さい.

























2016年2月16日

先日,親子でカウンセリングを受けに来院された患者さんがいました。患者さんはお嬢様の方で、お父様は娘さんの治療を心配されて一緒においでになったとのことです。
元々,お父様が私のブログの読者で以前治療においで頂いた私の診療方針をご理解頂いている方です。

昨今,一般的傾向では歯科治療はかかりつけ医院を持たないで治療の度に複数の医療機関に受診するケースが多いようです。何一つ担当医との信頼関係も成立しないまま新しい医院へ渡り歩く方が多いので、今回のような親子で同一歯科医院へ信頼関係で繋がるケースは患者と歯科医両者にとって安定した関係性が継続する理想的な診療のあり方だと私は考えています。




さて、今回の患者さんは16歳の高校一年生のお嬢さんですが、数年前に学校で前歯部に打撲を負って、上下前歯が不完全脱臼(亜脱臼)状態で大きく動揺する状態になったので、即座に上下とも近所の歯科医院で歯槽窩の適切な位置に整復して暫間固定してもらったようです。暫間固定も前医で外された状態で私のオフィスへおいでになりました。

s_mizuki1.jpg




○歯の脱臼に関して:


・不完全脱臼(亜脱臼):
定義からは、歯の転位はないが明らかな動揺を伴う歯周組織への外傷。歯根膜の一部に断裂がある場合を亜脱臼と呼んでいます。
今回は歯が歯槽窩(歯槽骨に歯が植わる穴)から脱離していない状態で少し位置は変異し動揺も増加していたそうですが元の歯槽窩に整復できたケースです(緊急歯科治療により行われた)。
このように歯が脱落しないで元の位置に即座に整復できた場合(不完全脱臼)は比較的予後が良く、元の位置で機能的に歯周組織が修復されることもあります。

外傷を受けた歯は、歯根膜細胞と歯根膜線維が保存された状態の場合には歯槽窩に戻せば良い治癒が期待できます。
今回は上下顎前歯は打撲という傷害を受けて一様に不完全脱臼状態だったとのことですが、下顎右側中切歯のみ歯髄壊死して失活しています(歯の神経が死んでいます)。


不完全脱臼3.jpg

前方から打撲などを負って不完全脱臼状態(亜脱臼)の前歯 :歯根膜線維,神経と血管の断裂で歯髄は失活します。
歯根膜の線維や細胞が歯根面に殆どそのまま残るので、上手く整復すると歯周組織の修復が進行し比較的予後が良い場合も多いと思います。




・完全脱臼:
学校保健会で常識化している事ですが、完全脱臼して歯が口腔外に飛び出して脱落してしまった場合には、素早く汚れを洗い直ぐに牛乳へ浸して歯科医に受診し元の位置に整復されれば歯周組織の修復は比較的良好に起きます。

歯根膜細胞が障害を受けないように歯の歯根面に極力触れないで乾燥もさせないようにする事が肝要で細胞培養に使用する緩衝液や培養液等に浸漬する事が理想的ですが、学校などではミルクや生理的食塩水に漬けた状態で歯科医院へ受診すべきでしょう。
第一選択で牛乳を使用する訳はヒトの母乳同様に血清成分によりできた液体ですから歯根膜細胞には刺激が少なく優しい液体だからです。

歯髄は保存出来るのか?:

不完全脱臼では本ケースの上顎前歯部同様に失活しないで歯髄神経の反応を担保したまま保存出来るケースもあります(下顎右側中切歯のみ失活して根尖病巣を作った)。

ただ、今回の下顎中切歯のように脱臼時に毛細血管が完全に断裂されてしまった場合では基本的に歯髄組織には血液が送られないので歯髄は壊死します。
今回の下顎右側中切歯は壊死したためにレントゲン写真の画像の通り根尖病巣ができてしまいました。


s_mizuki2.jpg


根尖病巣の図.jpg

このように、歯髄という血液供給により生きた状態で機能している組織は血液が到達しなければ容易に壊死します.
死んだ組織の残骸(変性タンパク質)が歯根尖端の根尖孔から外部に漏れます。これらの変性タンパク質は免疫学的には正常な状態では体に存在しない物質ですから白血球によって非自己の抗原として処理されます。
白血球が攻撃した結果、局所の骨組織が崩壊して白血球の死骸である膿が溜ります。このように根尖病巣の内容物はいわゆる膿です。

上の様な過程で根尖病巣を作った歯根には、歯内療法学的視点で適切な根管治療を行い根管を根管充填材で緊密に閉鎖し根管内から抗原物質が根尖へ漏出しない状態にすれば根尖病巣は自然に治癒し消失します。

本症例は非感染性の壊死で生じた根尖病巣であったために比較的予後の良い治療が可能です。
間違いなくオーソドックスなラバーダム防湿下での滅菌性の高い器具での根管治療を行えば良好な治癒が期待できます。





○今後の治療計画:


・歯内療法;下顎右側中切歯の根管治療


 下顎前歯は例外的に歯内療法後に築造して冠(クラウン)など装着しない方が予後が良い例があります。

上下顎前歯比較.JPG


右が下顎の中切歯,左が上顎の中切歯です。

*歯の模型ですが解剖学的平均値で作られたリアルな模型です.
画像でお解りの通り上顎前歯に比較して下顎前歯は非常に歯根が細く、根管治療根充後に土台(支台築造=コア)を根管内へ装着した際は物理的な圧力によって破折の危険性が高いことを想像して頂けると思います。

以前から、私は根管治療した歯根は最終的にはコロナルリーケージが存在するので精度が高い辺縁閉鎖性が良い補綴物を必ず装着すべきだと説明してきました(歯内療法学では現在は常識)。

しかし唯一下顎前歯(下顎側切歯と中切歯)は例外的で,根管充填された歯に関してはむしろ歯冠補綴によって歯根破折し易い傾向から接着性の高い充填方法で根管口を閉鎖して終了する方が長期でのより長い歯牙保存が可能になるものと考えています。

このように,私の25年ほどの臨床経験からも下顎前歯部で無髄歯で歯冠補綴された歯に歯根破折を認めた例に幾度か遭遇しているので、日常臨床では常に下顎前歯部は歯内療法治療を行わないで済むようにう蝕を作らないようにケアすべきと考えています。

*最近の歯質接着性材料(ボンディング剤やセメント)がコンポジットレジンと併せて使用する事で長期での封鎖性と接着性の維持が良好なので適切な充填を歯冠部根管口に行えば臨床上コロナルリーケイジの問題は回避可能と考えています。

下顎前歯でも細い既製コアとレジン系築造材などを使い歯冠修復する事はもちろん可能ですが、
もし希望があれば患者さんの年齢を考慮して、今すぐに補綴修復しないで将来補綴した方が歯牙の寿命は長くなると考えます。 

根充後の根管口の修復2.jpg





・矯正顎的な治療;矯正専門医による分析に従った歯牙移動

スタディモデルを観れば解る通り前歯部がやや前突して咬合状態は前歯部で理想的な咬合からはかなり逸脱した状態です。
私は前歯部打撲以前の咬合状態を知りませんが、受傷後に歯牙の位置関係も多少変わったと患者さん本人とお父様も語っていることから、やはり受傷後に多少変異したことが想像できます。


石膏模型で患者さんの咬合状態や歯列不正の状態をご覧下さい。

study.jpg




以前から私が言及しているとおり、歯科矯正治療は、年齢にかかわらず行うことが出来ます。 

何らかの理由があって早期に治療を開始したい場合以外は矯正治療は患者さんの生活の中で無理のない時期に行えば良いと私は説明しています。
すなわち、今回の患者さんはまだ高校一年生ですから、大学受験が控える時期ですから、勉強の障害になると考える場合には、そういった時期を過ぎて大学に入った後や就職が決まって生活が落ち付いた時期に始めても良いと思います。


矯正医は生活のために来院した患者を逃さないように、受診すると治療を急いで薦める傾向があるので事前に患者さんには注意しています。
急ぐ理由がない時には、患者さんの生活や経済的状況に合わせて行うことで失敗無く矯正治療を受けられると思います。 







昨今,医療機関が業者に依頼して作成した高額治療に誘導するためのブログ記事やwebサイトが多いのが現状です。
患者さんがそのようないかがわしい思惑の歪な情報に混乱しないよう正しい歯科知識の啓蒙のため私がオフィスで実際に行った臨床例をもとにこのブログを作成しています.コンテンツ全ては私が作成した私自身の臨床姿勢を反映したものです。

私の診療姿勢に共鳴されご来院希望の方は是非ご予約下さい。
う蝕治療一本から,適切な治療をお受け下さい。
診療に関しては麴町アベニューデンタルオフィスにお問い合わせ下さい.










2016年2月 7日

私のオフィスへ遠方からもカウンセリングに来院される方が増えています。
今まで歯科医から治療根拠の説明や治療概念の説明を殆ど受けたことが無い方が多く、そういった方々が歯科診療自体に不安を持って来院されます。
巷の歯科医院では理由もわからないで治療を漠然と受け続ける患者さんが潜在的に沢山存在しているのが現実です。


今回,この記事では口腔内細菌の動態(移動や増殖)に関しての簡単な基本概念とその根拠に沿った歯周病治療に関して述べたいと思います。

以前,私のブログでは口腔内細菌の棲息形態としてバイオフィルムという概念を説明しました。
口腔内ではデンタル・プラーク(歯垢)という粘着性のペースト状のカタチで歯面に付着して多種類の細菌がエコロジカルな一種の社会を構成して棲息しています。そういった細菌が作る棲息形態をバイオフィルムと呼んでいます。
デンタル・プラークとバイオフィルムは同じモノを違った学問的用語で呼んでいるだけです。細菌学一般で通用する棲息形態をバイオフィルムという用語で呼んでいますが,これが口腔内に形成される時に特にデンタル・プラーク(歯垢)という用語を使っていると考えれば解り易いと思います。
余談ですが,キッチンシンクの排水溝に出来るヌメリも雑菌が作るバイオフィルムです.
換言すれば我々の口腔内デンタル・プラークも全く同じようなもので大変に汚いものだとお解り頂けると思います。

う蝕の図2.jpg
歯面に付着した歯垢の塊の下で細菌が出す酸によりエナメル質表面が脱灰され崩壊している状態を表現した模式図です.これがすなわちう蝕の本態です。

上の図のように,う蝕(虫歯)とは歯質表面に歯垢というカタチで細菌達が付着しエナメル質の場合にはカルシウムに富む石灰化結晶の集合体を酸で脱灰しボロボロに崩壊させてう窩(虫歯の穴)を作る事です.


口腔疾患の殆どは口腔内細菌によって生じています。
う蝕はう蝕原性菌によって起こります。
一方,歯周病は歯周病菌によって生じます。これら歯科の2大疾患の細菌は各々棲息環境も違いその細菌学的性質も異にします。

・う蝕病原菌:歯の表面に歯垢として塊で付着して歯周ポケット内よりも空気が多い通性嫌気性*の環境に住む性質があります。
*次に記す嫌気性に対しての用語です。通性嫌気性とはう蝕病原菌の好む環境で、これはすなわち歯質表面に付着した歯垢の内部環境,ある程度酸素にさらされる程度の酸素分圧の特徴を表現した用語だと考えて下さい。

・歯周病菌:歯周ポケット内の極めて空気が少ない,酸素分圧が低い(嫌気的*)環境を好んで棲息します。
  *空気の少ない嫌気的環境に住むことを好む細菌を嫌気性菌と呼びます。歯周病は嫌気性菌により生じます。
上に記した通り歯周病とう蝕ではそれを起こす細菌の性質を異にします。上のようにう蝕と歯周病では全く別な細菌によって生じることをまず知って下さい。

よってう蝕が沢山あっても歯周病には殆ど罹患していない方もいます。一方,若い頃から虫歯が一本もできなくても中年以降は歯周病には罹患する方も多いのが現実です。
これは全く異なる細菌によって生じる細菌学的原因論を知れば概ね理解出来ると思います。

更に、歯周ポケット内では酸素が極めて少ない嫌気的環境のためにう蝕病原菌は活動できません.つまり歯周ポケット内ではう蝕が生じません。これは幸いなことで、もし歯周ポケット内でう蝕が起きてしまったら,知らぬ間に歯の歯根途中に出来たう蝕で次々と歯を失ってしまうでしょう。



○う蝕は歯面に細菌を付着させなければ生じません


 う蝕(Caries)の成因は細菌が歯面(Tooth)に歯垢というカタチで付着して細菌(Bacteria)へ食餌(Diet)を供給する環境があれば成立します.あくまで歯垢が歯の表面に付着して歯の表面で起きる現象です。

Kayes circle 3.jpg


よって,う蝕が成立しないようにする現実的な方法はブラッシングで歯垢を歯の表面から除去することです。

更にブラッシングをしていても食餌(diet)の要因が強い場合(甘い物を長い時間口腔内に入れる)にはう蝕になるリスクが上がります。
ですから甘い物の摂取の仕方を注意することも重要になります。
お菓子を食べるならダラダラ食べないで、食べた後に口腔清掃を行えばう蝕は生じないことも理解できると思います。

何故か日本では甘いお菓子だけが悪者になっているようですが、摂取の仕方を理解して逆に清掃出来れば甘い物の摂取は全く問題がありません。甘党の方は甘い物と上手く付き合って下さい。



○歯周病治療は一口腔一単位:

歯周病治療では口腔内の全歯周ポケット内の歯根面に付着する歯石にスケーリング&ルートプレーニング(SRP)と呼ばれる徹底的な根面の機械的清掃を手用キュレット等を使って行います。
治療対象部位は口腔内全般です。ある特定の部位だけを歯周病治療しても意味を成しません。
これは口腔内で歯周病菌が他の部位(歯周ポケット)から唾液の環流によって移動してくるからです。

ミクロレベルの細菌にとっては口腔内は地球の如き巨大な環境です。
私は細菌の移動する特性とその概念の例え話に次のような話をよくします。

「福島で汚染物質を大気や海洋に放出すると、スイスの山奥の雪が汚染されたり、インド洋のマグロが汚染されます.」 このように口腔内の細菌も遙々唾液で他のポケットへと移動してゆくことが解っています。

通常,口腔内を6分割して6回に分けて全顎を対象にSRPを行いますが、時々全てのSRPを終えないで途中で来院しなくなる方がいます。
途中で治療を止めた場合にはSRPしていない部位が口腔内にあるので細菌が移動して治療(SRP)した部位まで無駄になってしまいます。途中で治療に来院しなくなるのなら、初めから治療を受けない方がむしろ時間や治療費を無駄にしないで済みます。

素人の患者さんには細菌の移動といった認識が無い事が多い様ですが更に少し付け加えると、元々歯肉溝には細菌は棲息していません。
成長と供に口腔内細菌の内から嫌気性菌の一部が歯肉縁上に付着した歯垢の中から入り込み歯肉溝へ移住して病的な環境を形成したものです。
歯周疾患を生じた状態を解剖学的な正常状態の歯肉溝と区別して歯周病に罹患した病的状態(病的な歯肉溝)を歯周ポケットと呼んでいます。
こういった事から、一般には歯周病治療をしている時には歯周ポケットや単にポケットという用語を使用しています。

一旦,歯周病治療のSRPを完了して歯周ポケット内の細菌が除去され細菌が存在しない良い環境になっても、また歯肉縁上に付着した歯垢から細菌が再び戻ってきます(下図参照)。

ブラッシングで除去されないで歯肉縁上に付着したままの歯垢は内部に存在する細菌が増殖し続けます。細菌の増殖によって歯垢全体のボリュームが増加して歯周ポケット内へ成長してゆきます。こうして歯周ポケット内へ増殖した歯垢の塊から嫌気性菌はポケット内へ戻ってゆきます。
このように歯垢は成長し拡がってゆく性質もあります(下図参照)。

縁上プラークの移動2.jpg
歯周ポケットの縁上歯質に付着した歯垢は清掃されないで放置されると歯垢全体は体積を増やし成長します。そして歯肉縁上からポケット内方向へも進展します。
こうして再びポケット内へ嫌気性菌が戻ってゆきます。

☆☆☆

インプラント埋入前には残存歯の歯周病治療を完了させておくことはこのような細菌の移動が細菌学的に明白なので臨床上特に重要です。

私の別のブログ記事で幾回も書いている通りインプラント周囲へ残存歯の歯周ポケットから歯周病菌が移動してくる可能性がある事実は特に日本の臨床家は無視している先生が多いことで極めて恐ろしい実態です。インプラント周囲炎が生じてインプラント周囲から排膿している症例も有りました。



○歯周病治療は定期検査(メインテナンス・ケア)とワンセット:その科学的根拠


極めて軽度の患者さんは別として殆どの歯周病治療を行う患者さんには歯周病の治療を終えても定期検査においで頂くことをルールにしています。

上に述べたように一旦細菌が除去されてきれいになったポケット内の環境も縁上の歯垢から嫌気性菌が歯周ポケットへ戻ってまた元と同様の環境へリバウンドすることが解っています。


SRP後の細菌数の変化.jpg


 歯肉縁上を清掃していない場合のポケット内の細菌数のリバウンドは2〜3ヶ月でSRPする前の状態に戻ってしまうことが解っています.
このような科学的根拠から3ヶ月に1回のメインテナンス・ケアのため来院して頂く事が重要となります。

 3ヶ月に一度の定期検査で細菌のリバウンドの有無を確認しもし一部にリバウンドの可能性すなわち,プロ-ビング時の出血やポケットの深化があれば再度その部分をスケーリングや洗浄して細菌叢を改善することが可能です。
歯周ポケット内は通常,3ヶ月では元のような硬い歯石形成はないので,修整には最初に行った時のような手間のかかるSRPは行う必要はありません。多くは歯石化していないバイオフィルムの状態ですから超音波やエアスケーラーなどの振動性イリゲーションディバイスでポケット内環境を改善できます。

こうしてポケット内環境の局所的改善をするのが定期検査の大切なポイントです。




昨今,医療機関が業者に依頼して作成した高額治療に誘導するためのブログ記事やwebサイトが多いのが現状です。
患者さんがそのようないかがわしい思惑の歪な情報に混乱しないよう正しい歯科知識の啓蒙のため私がオフィスで実際に行った臨床例をもとに作成しています.コンテンツ全ては私が作成した私自身の臨床姿勢を反映したものです。

私の診療姿勢に共鳴されご来院希望の方は是非ご予約下さい。
診療に関しては麴町アベニューデンタルオフィスにお問い合わせ下さい.











2016年2月 1日

先日,カウンセリングで患者さんが来院しました。「前医に執拗にインプラントを勧められたがインプラントとはどのようなモノで安全か?」といった旨の疑問を持った患者さんでした。

そんな患者さんの疑問から、多くの皆さんが知らないことで私のブログでもまだ書いていない事がありましたので、それをこのブログでは書かせて頂きます。

人工歯根の話をする前に我々の持つ天然の歯について説明する事でインプラントのような人工歯根の特性が理解出来ると思います。

我々の歯は歯槽骨に直接植わっているわけではなく歯槽骨に歯根膜線維と呼ばれるコラーゲンで出来た線維によって歯槽骨に機能的に固定されています。
噛む際に歯に加わる咀嚼圧に対して緩衝する層として歯根膜線維のこの層は歯根膜という空間を解剖学的に構成し機能的に咬合圧を緩衝させ,尚且つ歯根膜に存在する咀嚼圧を感じる圧受容器(センサー)によって咀嚼圧を感知しこれが神経線維によりその信号が中枢へ送られて噛み応えを感じています。この歯根膜空にある受容器と神経伝達機構のおかげで咀嚼が円滑に行えて噛み応えを楽しむ事も出来ます(下図参照のこと)。

咬合圧と受容体.2jpg

図に示したように咀嚼圧は歯根膜に存在する圧受容器によって感知されて噛み応えとして我々は認識しています。
圧受容器は歯髄では無く歯根膜空に存在するため、例えば歯髄神経が抜かれた(抜髄された)無髄歯でも噛み応えを感じます。ですから天然の歯は抜歯しないで済むように大切に保存すべきです。

人工歯根であるインプラント体では、その周囲はガッチリとオッセオインテグレーションといわれるインプラントの複雑な表面構造への歯槽骨組織の嵌合によって固定されていますが、天然の歯のような緩衝層も歯根膜線維もその周囲には存在していません。もちろんそこには圧受容器も存在していませんから咀嚼圧も感じません。すなわち人工歯根(インプラント)には噛み応えを感じる機能がありません。

先日の患者さんにもインプラント自体には噛み応えを感じる機能が無い事をシッカリ説明しました。

また、インプラント体では圧を感じないことで硬いもモノを誤って噛んだ際の開口反射も起きません。
実はこの点も大きなインプラントの欠点です。
誤って硬いモノを噛んだり、箸を噛んでしまった際には天然の歯なら瞬時に噛むのを止めて口が開くようなメカニズムが我々には備わっています(開口反射)。
しかしインプラントにはこれが無いために,時には上部構造のセラミックス製の歯が破折してしまうことも有り得ます。このような機械的な傷害を受けやすい欠点を認識すべきです。
天然歯の歯周組織に備わる安全装置は我々が人工的に作るインプラントでは得られない素晴らしいシステムだと知って下さい。
このような根拠から歯を歯周病治療で保存出来るにもかかわらず、抜歯してまでインプラントを埋入する論理的正当性は無いものとして歯を大切にして頂きたいと患者さんには切に御願いしています。

歯科医が高額自費治療費を安易に得ようとする傾向が強い昨今,正しいインプラントの特性も天然の歯との違いも臨床家は適切に説明していないようです。さらに、インプラント周囲を適切に清掃していないとインプラント周囲炎が生じることや,インプラント周囲炎を治療する方法論が未だ学問的に確立していない欠点も説明すらしないで歯科医は平然と治療し続けています。

レベルの低いこのような多くの臨床家に騙されて治療を受けた挙げ句に多くの患者さんが困り果てて行き場もなく歯科界にさ迷っている潜在的状況を知って安易にインプラント治療を受けないようにして下さい。


一般に 欠損歯部にはインプラント以外に従来型の可撤性義歯(入れ歯)やブリッジも選択できます。よってインプラント以外の選択肢が無いように歯科医から説明された場合には歯科医が高額な自費治療費が欲しいためにそのように言い張っていると考えることもできます。

皆さんはインプラント治療のダークサイドを充分に知って下さい。まずは歯科界の状況と歯科的常識を持って危ない歯科治療に近づかないようにサバイバルして下さい。











2015年12月15日


イントロダクション:


ある日、前歯部の継続歯(5歯連結.側切歯1歯欠損のブリッジ)が脱落した患者さんが来院されました。


元々,お嬢さんが私のオフィスに治療にお見えになったことが切っ掛けでお嬢さんからのご紹介で来院された方です。

初診当日には応急措置のため脱落部に即時重合レジン製の仮歯を作製してこれをセットしてお帰り頂きました。
初診日と次の来院から約2回程充分な時間を掛けてご本人と世間話から始まり生活全般の話をしました。それが済んだら三回目から私が計画した全顎的な治療し直しに関する説明と相談を開始しました。


NF前歯部3.JPG
*前歯部が無くなった状態で来院されましたが、その画像は記録にありません。



上の画像の通り上顎前歯部にはレジン製の側切歯1歯欠損のブリッジを暫間装着しています。各々の破折残根周囲組織は炎症による腫脹と発赤や出血を認めました。

NF初診五枚法2.jpg


この患者さん=藤川直美(仮名)さんは70歳代のご婦人です。
お嬢さんご夫婦と二世帯住宅の上下で暮らされているとのことです。
藤川さんは大変論理的な思考をされる一種日本人離れしたセンスをお持ちの知的な女性で、我々にとっては最も治療しやすいタイプの歯科治療を高いレベルでご理解いただける患者さんです。

趣味で競技ダンスをされているそうです。
お話からすると週数回練習する趣味の競技ダンスを中心に生活されているようなライフスタイルだと理解出来ます。そのように楽しい日々を謳歌されていることが解りました。
何よりもお歳からは想像できない程活動的かつ若々しい魅力的で聡明な女性です。



高齢化社会に突入した現代、藤川さんの様な活動的で若々しいシニア層が益々増える事が予想されます。生活の質(QOL)を担保できるライフスタイルに即した歯科診療上の配慮が歯科医師サイドにも要求される時代が到来しつつあると感じます。

正に、これからは現代の歯科医療は患者本位であるべきと換言できます。



NFパノラマ2.jpg
全顎のパノラマレントゲン画像:上顎前歯部は脱落し歯冠が無く残根が残っているだけです。左側臼歯部ブリッジは支台歯歯根が破折して咬合する度に痛むような状態です。小臼歯部も継続歯です。(その他詳細を後述)



継続歯:歯科医師法に抵触する不良治療

継続歯で歯根破折2.jpg


俗にいう"差し歯"の語源はこの継続歯に由来しています。
文字通り形成した根管へ継続歯のコア部を差し込むからです。

現在、大学の歯科教育では歯冠部とコア部が一体化したこの継続歯は一切教えていません。
これは継続歯が歯根を破折させ易い危険な前時代的補綴治療方法だからです。

上の模式図のように継続歯は歯根へクサビを打ち込む様な危険で過剰な力を与えます。
更に継続歯にジグリングフォースなどの傷害的力が掛かる事によって今回のように歯根破折し継続歯自体も脱離します。


我々の親世代が現役時代は継続歯で治療することが日常的にありました。
昭和30〜40年代なら、それは歯科常識として充分通用していました。
しかし現在臨床でこれを行うことは,現代歯科水準に即さないために不良歯科治療と見なされます。
歯科医師法に則れば「歯科医師はその時点での学問水準に準ずる臨床を行うよう規定されています」よって現在は継続歯を臨床で行うことは歯科医師法に抵触します。

藤川さんの言によれば、前医は余り年配の先生ではなく比較的若い先生だったそうです。
治療過程を割愛できるので、このような危険な治療方法を比較的若い先生でも時間短縮や経費節減のために採るのでしょう。このような継続歯は未だに患者さんの口腔内によく見かける事があります。



一方、比較のため現代の前歯部支台築造(コア)を下の模式図を参照してご理解下さい。


適正な支台築造2'.jpg

上の図のように、コアを根管へ装着してから支台歯形成して印象採得しその支台に精度良くジャストフィットする歯冠補綴物を装着します。

これは現代の常識的歯冠補綴の方法です。このようにコアと歯冠補綴物は別個に作製されコアがまず根管へ合着された後、支台歯形成後印象採得されて、ラボで歯質にジャストフィットするような精度の高い歯冠補綴物を作製して口腔内に装着します。

図のような方法なら歯冠部の圧力がクサビ状に歯根を破壊する暴力的ストレスを発生させないで破折のリスクは軽減されます。コアの適切な直径やマージン部に残す歯質の歯冠軸方向の高さを充分にとれば歯質にクサビ状の過負担を掛けないコアと歯冠補綴物によって安全な歯冠補綴になります。



フジワラ前歯継続歯2.JPG
上の継続歯が脱落して藤川さんが来院されました。
上の5前歯(1本欠損ブリッジ)の4本の根管が偶然並行だったために前医はこれを継続歯として治療できたのでしょう。

NF前歯破折2.jpg
継続歯のコア部を挿入する歯根が全てヒビが入っていました。すなわち歯根破折によって継続歯が脱落しました。継続歯はこのように歯根を破折させ易いので危険です。


暫間的に即時重合レジンでチェアーサイドで仮歯を作製し元の位置に装着しました。

*歯根が破折しているので継続歯の形態のまま仮歯を残根根管へ装着するのは不安がありますが、その方法以外にこの時点では仮歯を装着する方法が無いため、ある期間限定で藤川さんには前歯部にはこの仮歯で我慢して頂きました。

前歯部の破折した残根は第2弾のプロビジョナル/レストレーション装着時に抜歯しました。




歯科治療は患者さんの生活を考慮すること:


特にこのケースのような全顎的治療し直しでは患者さんのプロフィールや生活全般、すなわち患者さん自身を深く理解することが必須です。

どんな場合でも同じですが、まずは患者さんと充分にお話をする事から始めます。
今まで歯科治療で嫌な思いをされてきた方ですから、我々のポリシーをご理解いただき信用して頂けるに足るだけの説明や意思の疎通を先に確立すべきです。
歯科界では現在、高価なインプラントなど自費歯科治療を行う先生でもこういった常識的なステップを経ないで話しさえ充分にしないで治療を始める傾向が強く歯科界の信用が得られないのはそのような心のない点も大きな原因だと私は考えています。

患者さんの生活の背景を理解出来たら治療計画を立てて治療概念を丁寧に説明してゆきます。
藤川さんの場合には、好奇心が旺盛な方だったので毎回治療と歯科界の話などを時間を掛けてお話してから治療を開始するのがおきまりのスタイルでした。

藤川さんは競技ダンスを趣味として生活を楽しまれている方です。
そんな藤川さんの生活の質を落とさずに大いに趣味を楽しんで頂けるように歯科医としてサポートすることも大きな私の使命です。少なくともダンスの障害になるような補綴治療は禁忌となります。

また、藤川さんも歯科情報をよくご存じで昨今頻繁に行われているインプラント(人工歯根)はお嫌とのことで、無理のない安全で予知性の高い治療方法を受け入れてくれ私の治療案を採る事が出来ました。



補綴設計:とにかく安全で妥当な方法論


この症例の難点は継続歯は全てそのままの状態で支台として使用しなければいけない点です。
歯質も弱く支台のやり替えは不可能です。これ等の継続歯の歯冠を形成して支台として使用するための工夫も必要です。
このように補綴の治療し直しは現状で可能な方法論の中で最も安全で妥当なモノを採用する事です。これが経験則を必要とする治療し直しの難しい点です。

私はこの20年以上、他院で行われた全顎的治療のし直し(再治療)を手がけています。


単に歯科疾患を治療するといった狭い範疇で歯科医療を捉えてはいけません。
私はまず藤川さんの競技ダンスの障害にならないような補綴物を設計すべきと考えました。

例えば,ラテンダンスのような激しいダンスでも障害にならないように上顎欠損部には可撤式義歯ではなく固定性のブリッジを設計すべくフルブリッジが可能か否かの判定を石膏模型上で診断しました。診断の結果、上顎残存歯はフルブリッジとしての平行性が保てる事が解ったので上顎をフルブリッジで補綴する事にしました。

NF作業模型&プロビジョナル2.jpg


ラボで技工操作に使った作業模型(左)をご覧下さい。支台となる歯が8本と少なく維持力も弱そうな貧弱な支台が多い事が解ります。また前歯部には4本欠損部があります。
この症例のように個々の支台歯が不完全なケースで有利な固定性補綴物がフルブリッジと言えます。一種の相互補完的役割で、いずれかの歯に問題が生じてダメ(抜歯やカット)になっても上部構造のブリッジは長期間維持出来るというコンセプトです。


一方,下顎は左側臼歯部の破折したブリッジ支台歯とブリッジ本体を除去した後、局部床義歯で補綴すれば激しい競技ダンスでも躍り上がらない安定性が高い可徹性義歯が作製可能と診断されたので従来型の金属床フレーム(ヴァイタリウム合金)による局部床義歯の作製を計画しました。

脱落した上顎5前歯の継続歯部は初診日に応急処置として作製したモノをしばらく使いその他の歯冠補綴物は全て歯間部を形成(小臼歯部は装着されている継続歯の陶材部分を削合しその中心部に存在する金属コアを支台歯とした),即時重合レジンでプロビジョナル・レストレーション(仮歯)をチェアサイドで作製し装着しました。またこれを(第1弾のプロビジョナル・レストレーション)として暫間的にしばらく使用して頂きました。

そしてスケーリング&ルートプレーニングなどの基本的歯周病治療を行いました。歯周組織の治癒を確認して支台を形成し直し、印象採得して技工ラボで第2弾のプロビジョナル・レストレーションを作製しこれを装着しました(以下写真参照)。


NFTEK(5枚法)jpg.jpg
第2弾のプロビジョナル・レストレーションを装着時に前歯部の破折した残根を抜歯しました。そして顎堤が安定した形状に治癒した後に欠損部のポンティックにレジンを足して顎堤にタッチするように修整しました。画像は修正後の状態です。また,下顎左側臼歯欠損部は局部床義歯が装着されました。

プロビジョナル・レストレーションという言葉は最終補綴物に準ずる形態で最終的な補綴物の機能的なシュミレーションをするための暫間補綴物といった概念を強調した専門用語です。

もちろん私も第2弾のプロビジョナル・レストレーションで機能的な状態を確認しました。必要な箇所は形態修整し良い機能的形態の情報を得る事が出来ました。
プロビジョナル・レストレーションで完全に快適な咀嚼運動が出来るようになってから、この情報を参考にして最終補綴物を作製しました。

こういった機能的な最終補綴物のシュミレーションチェックが補綴治療の世界標準の専門医レベルのスタンダード・メソッドです。
私は原則的にこういった学問的常識に則り全顎補綴を行っています。どうしても長期間の治療になりがちですがプロビジョナル・レストレーションで快適に咀嚼できれば患者さんにも専門的な治療意図が体感的にもご理解頂けます。長い期間、快適な咀嚼も十分出来ない状態で放置しては患者さんの理解も得られないはずです。
プロビジョナル・レストレーションで満足して頂ける咀嚼機能の回復が出来て初めて上質なテーラー・メイドの補綴治療が可能になります。





NF臼歯破折2.jpg
左側下顎の臼歯部に装着されていたブリッジのレントゲン像です。
大臼歯のブリッジ支台歯が割れています。これを担当した前医は太い金属コアを根管内へ過分な圧力で装着しているのでしょう。ルートセパレーション(歯根分割)をしていた形跡がありますが歯根破折しています。


実は私のオフィスに歯に問題を生じて来院された患者さんの補綴物の特徴には不適切な支台築造(コア)を認める点が挙げられます。
根管治療された歯髄神経が無い失活歯ですからデリケートな配慮がなければ破折するのは当然です。
コアは根管の直径・残存歯質の厚み・コアの材質・接着方法など予後を左右する要因が沢山ある治療です。

極言ではコアの扱い方を観れば歯科医のレベルがわかります。
不見識な歯科医ほど支台築造を雑で不適切に行う傾向があります。





1年以上かかって最終補綴物が出来上がりました。


NF最終3.JPG


藤川さんもこの補綴治療には喜んで頂けました。
若々しく、綺麗な笑顔が素敵です。


NFsmile2.JPG




NF最終補綴(5枚法)2.jpg



最終補綴物の簡単な追加解説:


上顎は支台歯の維持力に不安があるため、それでも維持出来るようにフルブリッジを採用。軽量化するためにセラモメタルクラウンは重量の問題で止めて,今回はハイブリッドセラミックスにより軽量化したフルブリッジとしました。これで審美性を保ったまま軽量化できて患者さんの審美的要求性にもお答えできました。

また下顎は金属床局部床義歯(パーシャル・デンチャー)を装着しました。
クラスプが掛かる右側大臼歯には全部鋳造冠(FCK)を、右側ブリッジにはハイブリッドセラミックス、左側のクラスプが掛かる犬歯には耐摩耗性を考慮してセラモメタルクラウンを装着しました。

また、上下顎咬合面はハイブリッドセラミックス築盛ではなくメタルの咬合面とし破折や耐久性を考慮しました。藤川さんは通常の会話や笑顔では殆ど下顎の歯が見えないタイプの口元をされた方なので、ほぼ上顎のフルブリッジの綺麗な審美的印象が強く表情に反映され咬合面のメタルによる審美障害は全く気にならないので躊躇無くメタル同士が咬合する最も安全でリジッドな咬合関係を達成できる補綴治療が可能になりました。




○治療をご希望の患者さんへ:

このブログは私自身が実際に行った臨床例を紹介したものです。治療概念や治療根拠を細かく解説する活きたブログ記事です。
オフィスHPと同様に院長の私自らがコンテンツ一切を作成しています。
よって私の歯科医師としての姿勢を厳密に反映しています。
当オフィスの治療をご希望の方,う蝕治療1本から丁寧な我々の治療をお受け下さい。
カウンセリングやセカンドオピニオンも自費(1万円)で承っています。

お問い合わせや予約はメールではなく電話でお受けしています。

最近、 歯科医院ブログを業者が作成しているケース も存在しています。こういった業者ゴーストライターが作成したブログも存在しますから、そういったモノを掲載する不誠実な歯科医院に騙されないようにご注意下さい。






2015年12月 1日

イントロダクション:

現代社会は情報化社会と言われていながら日常的な常識レベルの認識を間違えたまま放置して頑なに信じ切って多くのヒト達がむしろその認識の誤りで損をしていることさえ有ります。

最近は、ヒステリックなまでに神経質な感覚を持つ患者さんが多くなりました。
しかし見当違いで本質的な事を知らないことが多いのが現状です。その代表的な治療用ゴム手袋(医療用グローブ)についてその役割や注意点を解説します。


先日,初診の方でレントゲンを撮影しようとゴム手袋を装着する前に歯列を簡単にミラーで確認したら、「ゴム手袋をしないで触れた!!」と怒り出した方がいました。
見当違いの感情的な文句を露わにされていましたが、そもそもゴム手袋の役目を間違って認識している方のようでした。
もちろん、その時は私は不良歯科医と認識されてしまったので私の治療を喜んで受けてもらえる状況でなくなったようなので、そのまま治療行為を行わずにお帰り頂きました。

この例は患者さんの認識の誤りで事実上真っ当な治療さえ受ける機会を失った例です。
換言すると、このような患者さんにはいい歳の大人なのだから正しく認識を改めて歯科治療をまともに受けられるようになって頂きたいと思い,この記事を書きました。





◎ゴム手袋をすれば安全な訳ではありません:ゴム手袋の正しい認識が重要

ゴム手袋1.jpg

ゴム手袋は第一義的には我々医療従事者を感染症から守る役割を持ちます。
しかしここで注意が必要なことは臨床で使っているゴム手袋自体は汚染を媒介する可能性が高いモノだという認識です。

すなわち汚染された場所に触れた後にはゴム手袋の表面が汚染されます。
当然、汚染された手袋により患者さんの口腔内には雑菌やウイルスなど入り込む可能性があります。いわゆる器物感染を生じ得ます。

一番頻繁に起きる注意すべき危険性は、例えば診療室内で同時に複数の患者を治療する歯科医院では歯科医や歯科衛生士などスタッフが患者の唾液や血液など手袋に付着したまま他の患者に触れる可能性があります。
実は多くの診療室で度合いの差こそあれ、こういった院内感染の危険性があるのが現状です。


短時間診療体制の歯科医院は要注意:

私のオフィスでは、原則的には急患が入らない限りは並行して2名の患者さんを同時に診療しません。通常は完全に一診療時間に1名の患者さんのみを診療するようにしています。

しかし同一診療時間に複数の患者を診療するタイプの歯科医院では1時間の間に数名を処置しているでしょう。ただ患者毎に手袋を完全に交換して処置する歯科医院は滅多にないのが実情です(コストの問題です)。

ゴム手袋を患者毎に交換しないでも、臨床的にはゴム手袋を装着したままで適切な手指の洗浄・消毒が出来れば問題は特に有りません。しかし、そのような手指消毒が殆ど出来ていない場面を院内見学でも普通に見かけます。

特に極端なケースでは衛生士や助手がほぼ半日同じゴム手袋を装着しっぱなしの状態で患者の処置から会計など雑務まで全て行っている光景を見ることもあります。

唾液や血液由来の汚染がゴム手袋(素手でも同様)を介して医院中の接触したあらゆるモノに拡散されます。歯科用ユニットの触れた場所,受付の引き出しやトイレや診療室のドアノブ,レセコン,キーボードや筆記具に至るまで全てに付着し得るでしょう。

現実的にはゴム手袋や素手の手指を介して菌やウイルスまでも診療室〜待合室にまで広く拡散した状態を気づいていないのが歯科界の衛生環境を省みない実情かも知れません。




歯内療法でも危険:

以前から私はラバーダムすら使用しないで歯内療法を行う9割近くの日本の歯科臨床医の危険性は充分にブログや医院HPで指摘してきました。
ところで、臨床現場ではゴム手袋をしている歯科医がリーマーやファイルを指先で曲げて根管に挿入する場面にもよく遭遇します。そうしてゴム手袋表面に付着した菌やウイルスが根管にへ移動します。
人為的に根管へ細菌やウイルス感染させているのだから根管治療の予後は良くなるはずはありません(=歯科医の医原性疾患の典型)。感染症発症の危険性さえもあります。


*歯内療法では、術部である根管周囲にリーマーやファイルが触れる可能性がある環境を清潔な状態に隔絶して滅菌環境の清潔性を確保できるようにラバーダム防湿法を施して歯内療法の根管治療を行っています。すなわち、このような不潔域と清潔域を明確に線引きする正しい認識が歯科医には必要です。

このような清潔域と不潔域の認識はゴム手袋の接触出来る範囲を臨床上で正しく認識することでも同様です。
また、他人の口腔内の汚染を他の患者に感染させないようにする認識と気遣いが
患者さんへの安全性を担保することになります。
極論ではゴム手袋をした医療従事者が正しい認識が無い時に患者は感染という危険に曝されます。






まとめ:

ゴム手袋はただ装着しているから安全というものでは無くそれを装着した先生や衛生士が正しく衛生観念を持ち、それに配慮して初めて患者さんの安全性が担保されます。

現実の歯科臨床の現場ではかなりこのような衛生管理の基本が曖昧になっている事は反省すべきです。患者さんの多くが気に留めていない院内感染の蔓延を防御するには医療従事者の正しい認識に全てがかかっています。

皆さんは正しい認識でより良い歯科医療を受けられるように知的にサバイバルして下さい。
認識を誤って人生を無駄をしないように気を付けましょう。

*麴町アベニューデンタルオフィスは昨今、誤った認識や非常識を流布するマスコミや歯科界のウソで皆さんが認識を誤り大きな障害や損失を被らないようにブログ等で啓蒙しています。

私のブログやオフィスHPは私院長自身が全て作成しています。ポリシーに共鳴して頂けましたら、是非ご来院下さい。

 お問い合わせはこちらまで。






2015年11月26日


同じような症例が何故か短期間に集中することはさほど珍しいことではありません。
つい最近、根尖病巣が治らないという主訴で来院された患者さんが数名続きました。
ここにその内の2症例を挙げます。
これ等はいずれも極めて基本的な治療概念を知らない担当医が真っ当な治療を行わなかったから治らなかっただけの典型的な症例です。

<症例Ⅰ

kobayashi_miyuki01.jpg


この症例は、上顎右側中切歯の根尖病巣が治らないので、歯根端切除術をして欲しい。更に下顎左側臼歯部にブリッジを装着して欲しい。等々と希望されて来院された患者さんです。
また、12月に国外転勤の辞令が出る予定なので、それまでに治療して欲しいとの要望の下で治療に着手しました。

この方は成人歯科矯正を受けています。上下前歯部には保定装置のワイヤーが設置されています。

歯内療法の都合上、上顎のワイヤを撤去しラバーダム防湿法下で中切歯の舌側から根管内へアクセスしたところ、根管中にはメインポイントらしき根管充填材が1本挿入されているだけで大きな間隙が空いている様な根管内の状態でした。しかも根管壁には清掃不良による感染歯質が沢山残っていました。すなわち真っ当な根管治療もしていないメインポイントを1本挿入しただけのデタラメの根管治療でした。

これでは清掃不良の根管から根尖孔を通って、デブリスや細菌(抗原)が根尖外に自由に放出されるので根尖病巣は治る訳はありませんし、むしろ大きくなることさえ有り得ます。

そこで、私は根管壁の充分なファイリング操作による機械的清掃とEDTA等による化学的清掃を行い根管には水酸化ナトリウムペーストを根管治療薬として封入しました。
水酸化ナトリウムは世界標準の根管治療薬です。これをもう一度交換して年末近くまでそのままにしておけば後は根管充填するだけで基本的には根尖病巣は治るはずです。
もちろん、基本的には外科的なアプローチなど今の時点では全く必要は無いはずです。
あくまでも通常の根管治療を終えても根尖病巣が治らない際に外科的なアプローチを考えます。まともな根管充填もされていない時点で外科的な処置を採る計画はしません。
また計画では根充後にはコロナルリーケージを封鎖すためにも直ぐに精度の高い歯冠補綴(セラモメタルクラウン)を装着するところまで行う予定です。


前医は「根尖病巣が大きいと根管治療だけでは治らない」といった勘違いをしていて外科的な歯根端切除術をやりたがったのでしょう。こういった勘違いをする歯科医が多いのが勉強もしていない歯科医の実情です。
そもそもこれを行った先生は根管治療もまともに出来ない歯科医です。
このケースのように単根の前歯の簡単な根管治療も出来ない無能な歯科医ほど外科的に処置したがる傾向が強いので驚きます。


kobayashi_miyuki02.jpg

根管には根管充填材のメインポイントが1本挿入されていました。
根管壁にはデブリスが付着し明らかに根管清掃が完了せずスカスカな状態で根尖外へは自由に抗原性があるモノが漏洩する状態です。



症例Ⅱ:


tamaki_sanae01.jpg

この症例はある歯科医院で上顎側切歯に歯根端切除術を受けたが根尖病巣が治らないといった問題でカウンセリング希望で二番町から来院された方です。

確かに上顎前歯部にオペによって出来たであろう切開の瘢痕が歯肉に残っていました。
よって患者さんが仰るようにオペは行われたはずです。
しかしレントゲン上からは何かおかしいと感じました。


tamaki_sanae.02jpg.jpg

レントゲン像からは限りが有る情報ですが、適切な歯根端切除術は行われていないように思われます。

このケースでは実際には歯根端部には触れない(もしくは少し削った程度)で根尖病巣の嚢胞など搔爬しただけにように思います。
もちろん逆根管充填もされていないようです。


もしそうなら、根尖病巣は治りません。
せっかく外科的に歯肉を切開をして歯肉を剥離し翻転したのなら、治療効果のある基本的手技を行わなければければ単なる傷害を与えたことにしかなりません。(=治療とは言えません)


歯根端の側枝の状態
根尖側枝.jpg

根尖付近3ミリは細菌侵入の可能性がある根尖周辺の側枝の95%が存在し得る部位なので、しっかりカットする事が必要です。また通常はカット面に露出した根管断面へは適切な封鎖性の良い充填材によって逆根管充填すべきです。

根尖の切除と供に逆根管充填によって根管から抗原性がある物質が漏洩する事をブロックする事で根尖病巣を治癒に導きます。
これが基本的な外科的歯内療法のアプローチの基本概念と治療の概略(下の模式図参照のこと)です。


歯根端切除術・模式図
オペ模式図.1jpg

歯肉を剥離翻転して根尖病巣部位の骨壁を唇側から除去し根尖部が明確に見える状態で根尖部約3ミリを除去し残った根尖の断面に露出した根管へ充填材で逆根管充填(斜線部)をします。

また、良く歯根端切除術がマイクロスコープを使わなければ出来ないと信じて問い合わせしてくる方がいますが、顕微鏡歯科に習熟して使いこなせるスキルがある歯科医が行ってより臨床成績が良い治療を可能に出来ますが、基本的には顕微鏡を使用しないでも数倍のルーペ付きグラス等で充分治療は可能です。
ちなみに、私のオフィスにはマイクロスコープが設置されています。


まとめ:

上の二つの症例は担当医が治療概念を理解していなかったと思われます。
各々真っ当な治療を行えば治るはずです。

患者さんは治療(オペなども)をした事実があれば治療が出来ているものと考えがちですが、全く治療として成立していない一種の傷害を与えられただけの今回と同様のケースが世の中には沢山存在しています。
患者さんが素人なので何も問題を感じないだけの話です。

歯科界では学生時代に本当に大切な基本を充分に教わらないで学生も基礎的歯科の学問を身につけないで卒業しているのが現状です。
充分に歯科の学問を学生に教えていないうちに何故か国家試験対策を始める大学が私立歯科大を中心として今では情けない常識になっています。
これは歯科大の経営上の問題で国家試験の合格率が低いと生徒が集まらずに経営危機になるので歯科大では優秀な人材を育てる使命を置き去りにしてまで合格率を良くする方策ばかり考えるようになったのです。
こうして何も歯科の学問を知らない馬鹿な卒業生が歯科医師免許を得、その多くは惰性で歯科医として働き臨床を行い続けます。
更に、卒後真剣に歯科の学問を基礎から学ぶというよりも、即自費治療のネタになる治療を行うためのハウツーを得る為に講習会で治療の仕方だけ身に付けることばかりに熱心になってしまうようです(その典型が業者主催のインプラント講習会への受講です)。

ほぼ一度も歯科の基礎的学問を深いレベルで勉強する機会が無かった先生ばかりが増殖しているのが恐ろしい歯科界の実態です。
このような実態を知ってもアナタは怪しい歯科医師に安心して口腔内の健康を委ねることが出来ますか?

リテラシーを持って、歯科医に騙されないで自分の身は自分で守って下さい。



*私のブログやオフィスのwebは基本的にコンテンツの文章や作図(イラストや模式図)に至るまで院長の私が全て作成しています。
よって、当オフィスのポリシーが全て反映されています。

お読み頂ければ幸いです。







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こんにちは、麹町アベニューデンタルオフィス院長 戸村 真一です。

街の歯科医院へ行くと感じる嫌な感覚を皆様が受けないような雰囲気にしました。 スカンジナビアン調に私自らがエントランスから室内の隅々に至るまでデザインし、 患者さんがリラックスできる清潔で清々しいセンス溢れる空間をご用意しました。

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日本の医療機関のホスピタリティーは低くセンスが感じられないのが現状です。 当院の室内環境は、私の診療哲学の現れです。 また、私のオフィスでは正しく丁寧に本当の歯科治療を致します。 正に、日本の酷い歯科医療のアンチテーゼを具現したのが私のオフィスです。